インフィニット・ストラトス ~その拳で護る者~ 作:不知火 丙
― 一樹・S・バニングス ―
「いつの間にラウラと知り合ったんだ?」
千冬さんの後を付いて行くとそんな事を聞かれた。
「アリサと世界旅行してたときにドイツで立てこもり事件のときにちょっとな」
「ああ、あのときの……一樹、お前あれに係わっていたのか?」
そう説明すると、驚いた表情をする。
「ん? 言ってなかったっけ?」
「言っとらん……しかし納得した。お前が通りすがりの日本人だったわけか」
「あん? そんな事言われてたのか?」
「銃を持つ犯人グループに脅える事無く、連れの老人と談笑しながら食事を続け、さらには犯人も食事に誘い自身の手料理を振る舞い、突入してきたISから客と犯人を護った謎の日本人……、なるほど聞けば聞くほど一樹だな」
千冬さんは自分の端末で当時の状況を調べて読んでいた。
「そのとき突入してきたのがラウラだった訳だ。後から聞いたらバックアップにクラリッサも居たらしい。っていうかたかだか人質立てこもりにIS引っ張り出してくるなよな。安全に無力化するのに一苦労なんだから。GSG-9あたりでいいだろうに」
どんな思惑があるにせよ立てこもりでISなんぞ出すなよ。ISの装備は救出作戦には向かない装備が満載なのだ、下手をすれば人質に死人が出るわい。
「で? ラウラから接触してきたのか?」
「ま、そんなとこだ。ラウラが個人として接触してきて俺に指導してくれとさ。クラリッサとはそのときに知り合った」
「ラウラ個人で?」
「ああ、あくまでも俺とはビジネスの関係だってよ。ラウラ個人がB・S・Sに依頼をしてきた。理由を聞いたら「私の教官は一人だけだ」だとさ。誰のことですかね~、教官ってのは」
俺が笑いながら千冬さんを見る。
「さて、誰のことだろうな」
とぼける千冬さん。そんな話をしているとひとつの部屋の前に着く。そこは学園長の部屋だ。千冬さんがノックをして扉を開けて入ったので俺も後に続く。部屋の中央にテーブルが置かれ、そのテーブルを挟むようにソファーが置かれている。片方には轡木学園長が座っていて、反対のソファーには女性二人が座っていた。一人はすずか、もう一人はヴィータだった。
「おお、来ましたね」
「お待たせして申し訳ありません。二人も待たせてしまったな、すまない」
学園長に対して謝る千冬さん。
「いや、そうでもねーよ」
「ええ、それにホームルームでは仕方ないですよ」
そう答える二人。
「お~、二人とも今日からなのか?」
二人の姿を見てそう答える。
「おう、宜しくな」
「ええ、宜しくお願いします」
二人が手を上げて答えてくる。
「ザフィーラは元気か?」
そうヴィータが聞いてくる。
「ああ、毎日女子高生にもみくちゃにされてるよ」
あの大きさで吠えない、大人しい、乗れると三拍子そろってるからな。そりゃあ人気も出る。今じゃのほほんさんの専用機みたいになってるしな。一回ザッフィーに乗って教室に入ってきたときは流石の俺も驚いた。
「で、俺は何をすればいいんだ?」
千冬さんにたずねる。
「一樹には二人の案内をしてもらおうと思ってな。授業自体は受けなくてもいいだろお前の場合は」
「いや、まあ、そうだけどさ。そこは出席扱いにしとくとか言わねーか普通」
「なに、案内するときにアリーナも回ればそれで出席にしておく」
「まあ、それでいいならそうするけど……良いのかそれで?」
「構わんさ。まあ、教育者という面から見れば駄目なんだろうがな」
そう言って肩をすくめる。
「まあ、普通だったらそうだろうな」
「そうですね。普通だったら駄目ですね」
「あまり言いたくは無いですが駄目ですね」
ヴィータ、すずか、おっちゃんの順に駄目出しをするが……
『一樹(君)だからな(ですからね)』
口をそろえてそんな事言ってきた。
「ふっ、俺は普通というカテゴリーには当てはまらないからな!」
「調子に乗るな、此方からすればいい迷惑だ!」
スパン! と頭を叩かれる。
「じゃあ、俺は二人を案内してくるよ、千冬さんは?」
頭をさすりつつ訪ねる。
「私は授業に戻る。お前に負けず劣らずの問題児達がそろっているからな。山田君一人では荷が重いだろう」
ため息をつき言ってくる。
「あ~、まあ、頑張ってな」
「ふん、言われるまでもない」
「じゃあまた後でな」
「ああ」
そう言って千冬さんは部屋から出て行った。千冬さんを見送った後、
「じゃ、俺達も行きますかね」
そう二人に言う。
「おう、しっかり案内しろよな」
とヴィータ。
「IS学園の設備がどれほどか見せてもらいましょう!!」
やや興奮気味のすずか。
「じゃ、おっちゃんまたな」
「ええまた。今度はお茶菓子も出しますよ」
「お、それなら私も一緒に良いか?」
ヴィータが茶菓子に釣られる。大人の姿になってもこのあたりは変わっていない。
「ええ構いませんとも」
おっちゃんはにっこりと微笑む。それは何処か孫を見るような暖かい目だった。きっとヴィータのロリな姿が見えたに違いない。
「ったく、行くぞヴィータ」
「お邪魔しました~」
そう言って俺達は学園長室を後にした。
「ヴィータは本当に変わらないな」
校内を案内しながらヴィータに話しかける。
「何でだよ? 十分変わっただろうが」
「さっきのを見たら逆バーローになっただけにしか思えねーよ」
「うっ!……し、仕方ねーだろこの体になったのはつい最近なんだよ!」
「へ? そうなの?」
それは初めて聞くな。
「……ああ、今年の初めにアーチェ……今の夜天の書主なんだけどな、アーチェが引き継いだらこの姿だ。最近やっとしっくりくるようになってきたんだ。流石に立ち振る舞いまで急に変わんねーよ」
「へ~、そうなのか。つうかそれは以前の自分がお子様だったって認めるんだな」
ニヤニヤしながらヴィータに聞く。
「………………ああそうだよ! 悪いか! 正規料金じゃなくて子供料金だったよ! ジェットコースターの身長制限にひっかかったよ! 買い物行くとよく「えらいね」って褒められてたよ! 悪いか!!」
若干涙目になりつつ口早にヴィータが言ってくる。
「仕方ないよ。前はこのくらいだったからね」
そういいながら親指と人差し指で大きさを表現するすずか。
「いくらなんでもそこまで小さかねーよ!」
それに対してすぐさま突っ込む。
「ま、元々ヴィータは姉御肌だからな。子供っぽい行動をなくしていけば違和感もなくなるだろうよ。ただまあ、普段厳しい人間が何処か子供っぽいところがある、というギャップ萌えを捨てるというのももったいない気もするが……」
「……、か、一樹はどうなんだよ?」
ヴィータが上目遣い気味に聞いてくる。
「俺か? まあ、ギャップ萌えに関してはアリだと思うが、今の姿で子供っぽいところを見せられてもいつものヴィータとしか感じられねーぞ?」
「そ、そうだよな……」
何故かしゅんとするヴィータ。そんなヴィータにすずかが耳打ちしてる。
「ヴィータちゃん大丈夫だよ! 逆に大人っぽいところを見せればギャップになるよ!!」
「おお! 確かにそうだな!!」
「だから……して……ね!」
「そうか! じゃあ……も……だな!」
「ええ!? でも……そ、そうだね! そうすれば……」
二人が何を話しているのかは聞こえなかったがとりあえず放っておく。
「お~い、置いて行っちまうぞ~?」
「あ、待てよ一樹」
そんな二人をよそにどんどん進んでいく。二人は慌てて付いてきた。
他愛も無い話をしながらサクサク案内をする。粗方案内が終わったのでアリーナの方へ向かう。途中すずかが格納庫でISをいじっていた女子生徒の方に行ったきり帰ってこなかった。まあ、どうせISの話で盛り上がっているんだろう。
「お~い千冬さ~ん」
アリーナに入り千冬さんに声をかける。
「む、やっと来たか」
俺達に気づきため息をひとつ。ん? ため息?
「どしたのさ? ため息なんかついて?」
「見れば分かる」
そう言ってグラウンドのほうを指差す。するとそこには、専用機持をリーダーとした班がつくられていて、
一夏とデュノアを見てキャーキャーいいながらISを動かすグループ。マリアはあきれてそれを放置している。
それを見て嫉妬して教え方がおざなりなセシリアと鈴のグループ。
お葬式みたいな雰囲気のラウラのグループ
がそれぞれ訓練? している。
「「これはひどい」」
俺とヴィータは声をそろえて言う。
「まともな班がひとつも無いというのはどういうことなんだろうな」
あ、千冬さんが激おこ一歩手前だ。
「まあまあ、見たところ今日はISになれる為のもんだろ? 初めてなんだし今日のところはそう目くじら立てなくてもいいだろ? 最後に釘刺しときゃ次の授業には直ってるだろ」
流石に同じ事を何度も繰り返す様なまねはしないだろ。厳しい選抜を潜り抜けた奴らなのだから……たぶん。
「今回はそうするか……」
またため息をつきつつ千冬さんが俺の意見を採用してくれた。そんな中ヴィータがISの方をジーっと見ながら、
「なあ一樹、あれってどのくらい強いんだ?」
と聞いてきた。
「何だ、興味あるのか?」
「そりゃあそうだろ。あれを相手に戦う可能性もあるんだろ?」
「まあ、確かにな……、専用機持ちの実力は上は良いとこカートリッジシステム無しのフェイトぐらいかな?」
俺は小声でヴィータに教える。
「ふ~ん……世界最強って言ってもそんなもんか」
そしたヴィータが態と大声というほどでもないが、その場にいる全員に聞こえるように言う。それを聞いた約一名が殺気のこもった視線を投げてくる。
ラウラだった。ものの見事にヴィータにつられたラウラだった。その証拠にヴィータはにんまりだ。
「ほう、そこまででかい口を叩くのだからお前は相当強いんだろうな?」
ヴィータに近づき言い放つ。
「ああ、強いぜ。少なくともそんなおもちゃでいい気になってるお子様よりはな」
不適にニヤリと笑うヴィータ。正におっぱいのついたイケメンである。
「ふん! そこまで言うなら相手をしてやる」
「と言うわけで千冬さん授業ももう少しで終わりだしそれまでちょっとお遊びに付き合ってもらってもおK?」
「教官! お願いします!」
「はあ……まあいいだろう。試合時間は授業の終了までだ。ルールは?」
う~ん、流石に模擬戦はなぁ~。そうするとなると……ちょうどいいから専用機持ち全員参加してもらうか。
「そうだな……専用機持ち全員集合~!」
そう言って号令をかける。
「何をするんですか? 一樹大御爺様」
首をかしげて聞いてくるマリア。
「何、マリアはやったことあるだろ? 俺とヴィータからロックをはずさなければ良いだけだ。ま、今回はラウラはヴィータから他は俺からロックを外さなければいいだけだ。ただ今回は俺とヴィータはISに乗らないけどな」
それを聞いたマリアは顔を青くし、それ以外はポカンとしている。
「え? え? それって意味あるの?」
デュノアが聞いてくる。まあ、普通そうだよな。
「そうよ! 生身の状態でISのロックが外れるわけないじゃない!」
続いて凰が噛み付いてくる。セシリアが黙っているあたり何かあると踏んでいるようだ。一夏とモッピーも同様だ。
「まあまあ、ものは試しにやってみればいいんだよ。時間も無いんだしな」
二人を適当にあしらう。
「それと俺達はこれを使うから」
そう言って俺はふところからあるものを取り出す。
「そ、それは!」
それを見たヴィータの顔が驚愕に染まる。
「そう! バニングス社が持っている技術をちょこっとだけ使ってなおかつ間違った方向に力を注いだ至高の一品!! これぞ無駄に洗礼された無駄の無い無駄な「ピコピコハンマーじゃねーか!」」
ヴィータがピコハンを奪って俺の頭を叩く。
ピコ!
ピコピコハンマー独特の音が鳴ると同時に頭と接触した部分から星が出る。
「星まで出るのかよ……」
ピコハンをしげしげと見るヴィータ。
「残念な事にピヨる所とエターナルなところは再現できなかった」
それを聞いてヴィータは、
「あ、それはアイゼンで出来るようになったからいいや」
「マジでか!?」
「ああ、今度見せてやるよ」
「ぜひ」
そんなくだらない話をしていると流石にラウラが痺れを切らしてきた。
「おい、いい加減にしろ。さっさとしろ」
「おう、がっかりさせんなよ?」
「一応これで叩かれたら負けって事で」
そう言って俺達は適度な距離を開け対峙する。それを見て俺はヴィータに念話をつなぐ。
(ヴィータ、一応補足しておくと一見すると普通のピコハンだが一応デバイスになってる。強度は俺の知ってるアイゼンより若干劣る程度だから、アイゼンで出来る事は大体出来ると思ってもらって構わない)
(ふ~ん)
(でも攻撃力は皆無だからな。叩いた強さによって出る音と星の大きさが大きくなるだけだ)
(……意味あんのか? これ?)
(言っただろ? 無駄に洗礼された無駄のない無駄なピコハンだと)
(……まあ、今に始まったことじゃねーからいいけどよ。それにしても……)
((懐かしいな))
俺とヴィータはそう思う。
俺にとっては一年とちょっと、ヴィータにして見れば百年になるのだ。一時期、相棒として数々の現場で修羅場を潜り抜けてきて、お互い右腕とも呼べる存在にまでなった事もある。
それがまたこうして再会できて共に並ぶことが出来るとは思っても見なかった。
「ま、なんにせよラウラ! 手加減するとあっさりと負けるぞ!」
俺は最後にラウラにアドバイスをする。
「それではいいな、このコインが落ちたら開始だ」
そう言って千冬さんが親指でコインをはじく。
キィン
と音がして空中でコインがくるくる回る。そしてそれは上がりきったところでゆっくりと落ちてくる。その瞬間一夏達が身構える。くるくるとコインが落ちて行き、
キィン
と音を立てて地面に落ちる。
「…………一樹さん? 動いてくれなきゃ始まんないですよ?」
一夏が動かない俺とヴィータを見てそう言うが、
「んじゃお言葉に甘えて」
俺は後ろがら一夏に振り下ろした。
ピコ☆
可愛い音がして星のエフェクトが一夏の頭の周りに飛び散る。
「へ?!」
『!?』
それと同時に全員が一夏の後ろにいた俺を見る。さらに、
「おいおい、私もいるんだぞ?」
「っ!?」
それを聞いたラウラは素早く反応するが、
ピコ☆
見事に叩かれてしまった。
「いや、え?! あれ?! だって……あれ?!」
一夏がしきりに俺とヴィータがいた場所と今いる場所を交互に見ている。
『…………え?』
モッピー達も呆然としている。
「全然見えなかった」
一人ある程度覚悟していたマリアもorz状態だ。
「ラウラ~、ど~する~? 今叩かれたみたいだけどぉ~?」
ニヤニヤしながらラウラに聞く。
「くっ! もう一回! もう一回だ! 今のは一樹の動きに気をとられただけだ!」
相当悔しかったのか、声を荒げて言ってくる。
「いいぜ、時間いっぱいまで付き合ってやんよ」
ヴィータがそう言ってピコハンを構える。今度は油断無くヴィータにだけ集中するラウラだったが、
ピコ☆ ピコ☆ ピコ☆ ピコ☆ ピコ☆
終了のチャイムが鳴るまでピコハンのがアリーナに響いていたのだった。
― シャルル・デュノア ―
今日の授業が終わって女子から追いかけられながらやっとの思いで部屋について、お茶を入れて一息ついたところで僕は一夏に聞いた。
「一夏、バニングスさんって何者なの?」
「ん~、百年前からタイムスリップしてきて、千冬姉に助けられて、百年前の恋人と結婚して、玄孫にマリアがいる三十代で世界で二番目のIS操縦者?」
「……それだけ聞くとさっぱりだよね。ん~、そういう事もそうなんだけどそもそもあの身体能力はどうなのって話だよ」
ISのロックを外したり、ロックが追いつかないなんて普通じゃないどころの騒ぎじゃない。これが世界最強といわれた織斑先生が専用機に乗ればありえるかもしれないけど、バニングスさんはISにすら乗っていなかった。
「一樹さんが言うには何でも「氣」で身体能力を強化してるらしいけど」
「氣?」
「あ~、ドラ○ンボールって知ってるか?」
「うん、フランスでもリメイク版放送してたし」
「ようはあんな感じなんだってさ。まあ、強化しないでも人外ってレベルだけどな。でも俺としてはもう一人のヴィータさんだっけ? あの人の方がびっくりしたけどな。一樹さん以外にあんなこと平然とやってのける人がいるとは思わなかった」
そうだった。ISをおもちゃだって言い切って専用機持ちを手玉に取る。実際に見てなければ頭がおかしいと思われるレベルだよ。
「何て言ったっけ? や、八神ヴィータさんだっけ?」
「そうそう、マリアのお母さんが経営している会社から派遣された護衛らしい」
「何て会社?」
「確か、B・S・Sだったかな?」
「ぶぅぅぅぅーーーーーー!!」
「うわ!?」
それを聞いて僕は飲んでいたお茶を噴出した。一夏はそれをもろにかぶってしまった。
「ゴホッ、ゴホッ! ご、ごめん! な、何か拭く物は……」
ベッドの上においてあったタオルを取り一夏にわたす。
「あ、ああ悪い。でも、どうしてそんなに驚いたんだ?」
「え? え~っと、い、一夏は知らないの? B・S・Sってその手の会社じゃ世界No1なんだよ? すごい有名なんだよ? 各国の要人を護っていてその影響力も計り知れないし、でも単にお金を出せば護衛を引き受けてくれるわけでもないんだよ。何でもB・S・S独自の基準があるみたいでそれに合格した人だけが護ってもらえるって……ん? 一夏、一樹さんってフルネームってなんだっけ?」
説明をしててひとつ気になる事が出てきた。
「確か今は一樹・S・バニングスだったはずだけど?」
「今はって事は昔は何て名乗ってたの?」
「昔は斎藤一樹って言ってたぞ。Sは「斎藤」のSなんだってさ」
あれ? 斎藤一樹って確か……。それを聞いて机のPCを立ち上げて検索する。見るのはB・S・Sのホームページ。そこで気になった事を調べると、
「……うわ、あの話って本当だったんだ」
「ん? あの話って?」
「一樹さんがタイムスリップしたって話」
僕の開いているページにはB・S・Sの歴史が紹介されているページだ。そこに一樹さんが写真つきで創設時の一人として紹介されていた。
それを一夏も覗き込んでくる。
「お、本当だ。しっかり載ってるんだな。でもシャルは信じてなかったのか?」
「ねえ、一夏。たとえば僕が自己紹介のときに五十年後の未来から来ましたって言ったら信じられる?」
「……一樹さんの前例が無かったら無理だな」
「つまりそういう事だよ。実際に会ってみないと分からないものだと思うよ」
普通ならそんな事信じられる訳が無いからね。
「そうだよな~」
「でもすごいよね一樹さん。逆を返せばそれだけ重要なポジションにいるから八神さんみたいな護衛がついたんだと思うよ」
「あ、そうとも取れるのか」
「まあ、経営者の親族なんだから当然といえば当然だと思うんだけどね」
会社の経営をしているかどうかは別としても、一樹さんが声をかければ間違いなくB・S・Sは動くと思うし。
「すごい会社だったんだな~」
「すごいで済むような会社じゃないんだけどね」
現役軍人であるボーデヴィッヒさんがISに乗って手も足も出ない人材を確保できる時点でおかしいしね。
「それにしても今日はいろいろ教えてくれてありがとう。おかげで学園の事が良くわかったよ」
「それは何よりだ。明日も分からないことがあったら聞いてくれ」
「うん、みんなで食べるお昼も美味しかったし、明日が楽しみだよ!」
「あ~、そ、そうだな」
答え方がちょっと変な一夏、そういえばセシリアのサンドイッチを食べたとき顔色が悪かったような?
「それにISの訓練もかなり濃い内容だったしね」
「あ~、そうなのか? 俺はあの訓練しか受けてないから良くわからないんだけど」
「すごい理にかなっているよ。正直こっちに来てこんな訓練が出来るとは思っても見なかったから」
これは本当の事だ。IS学園の授業では基礎的な訓練内容だったけど、一樹さんと八神さんの訓練はとても為になる。そして何より八神さんだ。彼女はとても教えるのがうまい。それこそ自分が経験してきたかの様だった。
その証拠にあれだけ突っかかってきたボーデヴィッヒさんが訓練になったら黙って一樹さんの指示に従ってたし。
「そ、そうなのか?」
「うん、ちゃんと基礎を教えるのは勿論だけど専用機持っている人にはちゃんとそのレベルにあった教え方をしてたよ。正直この訓練を受けられる人はラッキーだよ」
「…………全然分からなかった」
「それは仕方ないんじゃないかな、他に教わっていたんなら違いに気づくかも知れないけどこれがはじめてなんでしょ? それで気づけって方が無茶だよ」
「そ、それもそうだよな」
話が一息ついたのでそろそろ寝る準備をする事にしよう。
「じゃあ、僕先にお風呂入るね」
「ああ、いいぜ。ゆっくり浸かって来いよ」
そう言って僕は部屋についているお風呂場に向かう。思えば今日一日で色々と予想外の事があって、精神的にもいつもより疲れていたのかも知れない。まあ、簡単に言うと……。
「お~いシャル、シャンプー切れてたからこ……れ……」
「へ?」
僕が女だって事がばれたって事なんだ。