インフィニット・ストラトス ~その拳で護る者~    作:不知火 丙

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第六話

― 織斑一夏 ―

 

(これは、想像以上にきつい)

 

 俺はクラスを見渡してそう呟いた。俺の回りには隣の空席の所意外全員女ばっかりだった。

 それは兎も角、現状を確認しよう。俺はIS学園の一年一組にいて、俺以外全員女の子で、クラス全員から凝視されている状態だ。

 はっきり言おう。どうしてこうなった?! まあ、理由は本来女性しか動かせないはずのIS、インフィニットストラトスというパワードスーツを起動させてしまったからなんだが…………。

 

「い…夏……織斑一夏君!」

 

「は、はい!」

 

 いきなり呼ばれて思わず大きな声で返事をしてしまう。

 

「あ、え~っと、急に大きな声出しちゃってごめんね? 怒ってる? 怒ってるかな? 「あ」から始まって今は「お」の人の自己紹介なんだよね? 自己紹介してくれるかな? 駄目かな?」

 

 そう言ってやたらと低姿勢で俺に謝りながら頼んでくるのは、このクラスの副担任の山田真耶先生だ。

 

「は、はい」

 

「ほ、本当ですか?! 嘘じゃないですよね!?」

 

「だ、大丈夫です。します、しますから!」

 

 しかし、この先生何故ここまで低姿勢なんだろう?

 

「織斑一夏です」

 

 立ち上がって名前を言うと、周りからの視線が一段と強くなった気がした。

 

(それでおわり?)

 

(他には?)

 

(もっと何か言って!)

 

 聞こえないはずの心の声まで聞こえてきた。教室に来たとき見つけた、幼馴染の篠ノ之箒を見るが、

 

フイ

 

 顔をそらされてしまった。どうやら味方はいないみたいだ。

 

(イカン! このまま終わりにしたら「暗い奴」のレッテルを貼られてしまう!)

 

 落ち着くために深呼吸をする。

 

「スーー……ハーーー……」

 

『ざわ……ざわ……ざわ』

 

 深呼吸しただけで何か期待されているような感じだ。そんな中俺は言い切った。

 

「以上です!」

 

『だぁ!』

 

 ガタン! と何人かが机ごとずっこけた。期待しすぎだろう。

 

「え~っと……」

 

 ずっこけた何人かを呆然と見ていると廊下から声が聞こえてきた。

 

「ちょ、……さん! マジ勘弁!…………あ!……まだ仕込みが…………イタタタタ!……!! 関節極まってるって!」

 

 どっかで聞いたことのある声で、クラスみんなも気が付いたのかそっちを見はじめている。山田先生も同じだ。それは段々と近づいてきて、

 

ガラ!

 

 ドアを開けて入ってきたのは、千冬姉と千冬姉に腕を極められている一樹さんだった。

 

「千冬さん! 離して!? 折れる! 折れる!! 折れる!!!」

 

「黙って歩け。それと織斑、お前は満足に自己紹介もできんのか?」

 

 俺は思わず立ち上がって声を上げてしまった。

 

「千冬姉?! それと一樹さん?!」

 

「学校では織斑先生だ」

 

ガン! ボゴ!

 

「アッーーーー!!!」

 

 いつも呼んでいるように言ったら鉄拳制裁を食らった。

 しかもその動きのせいで極めていた関節技が更に極まって一樹さんの腕から嫌な音がした。

 でも、千冬姉は気にした様子は無く、山田先生に声をかける。千冬姉、流石にそれはどうかと思う。腕を押さえて脂汗をだらだら流す一樹さんが不憫でならない。

 

「すまない山田君、遅くなった」

 

「いえ、大丈夫です。これでも副担任ですから! それと……斎藤さん遅刻ですよ! 初日から遅刻は感心しません」

 

 腰に手を当てて、「私怒ってます」というポーズをする。でも、あんまり迫力無いな。って言うか一樹さんの腕の心配をしなくていいのか?

 

「……いや山田先生、流石にこれは勘弁してほしいのだが。俺もう三十のおっさんだぞ? そのおっさんがこんな制服着て、何が悲しくて高校やり直さなきゃならんのだ?」

 

 ん? 高校をやり直す? どういうことだ?

 一樹さんが脂汗をかきながら言った言葉に首をかしげる。クラスメイトも同じだ。

 

「あきらめろ。ISを動かしたお前が悪い」

 

『!?』

 

 クラス全体が驚く。しかし何で頭の上に「!?」が出てるんだ? 効果音もあった気がするし。

 

「ち、千冬姉!? どういう「ガン!」イテェ!?」

 

「学校では織斑先生と呼べ。……諸君! 私が担任の織斑千冬だ。貴様ら新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが私の仕事だ。私の言うことはよく聞き、よく理解しろ。できない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は若干十五歳を十六歳までに鍛え上げることだ。逆らっても良いが私の言うことは聞け。いいな?」

 

 な、何と言う暴論。しかし、間違いなく俺の姉、織斑千冬だ。他人の空似ではなかったようだ。

 呆然と聞いているとクラスがざわざわし始めて、黄色い悲鳴、というか声援が響き渡る。

 

『『『キャーーーーー!!! 千冬様よ!! 本物の千冬様よ!!』』』

 

 冗談抜きで声でクラスが揺れた。心なしか窓もビリビリ震えている。

 

「ずっとファンでした!」

 

「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです! アナトリアから!!」

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて! 嬉しいです!」

 

「私、お姉さまの為なら死ねます!」

 

 きゃいのきゃいの、クラス全体が騒がしくなる。っていうかアナトリアって何処?

 

「……まったく、毎年よくこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ集中させているのか?」

 

 これが本気でうっとうしがっているのが千冬姉だ。

 しかもこれで人気が落ちるどころかあがる一方というのだから信じられない。

 まあ、本人はそんなもの気にしてはいないのだが。

 

「キャーーーー! お姉さま! もっと叱って! 罵って!」

 

「でもつけあがらないように躾けて!」

 

「我々の業界では御褒美です!」

 

「一樹、貴様までそっちに混ざるんじゃない」

 

 そう、千冬姉が言うとクラスが再びざわめきだす。改めて一樹さんの存在に気づいたようだ。

 一緒になって黄色い声(裏声)で騒いでいた一樹さんが「いや~」という感じで千冬姉の横に出る。

 一樹さん、誉めてないですよ。周りはざわざわしているだけで中々聞こうとしないので俺が聞くことにした。

 

「ちふ……織斑先生、何で一樹さんがIS学園の制服を着てるんですか?」

 

 また、千冬姉と呼びそうになって慌てて言いなおす。

 

「ああ、ちょうど良い。紹介しておこう。こいつは一樹・S・バニングス、世界で二番目の男性IS操縦者だ。織斑が動かしてから、全世界で男性のIS適正検査があったのは知っているな? こいつはそこで動かしたんだ。正式にはまだ発表されてないが、近いうちに発表されるだろう」

 

「まあ、動かしたって言っても起動指数ギリギリで適正は「G」だから、ISを身に着けると動きが鈍くなるんだけどな」

 

 ゴキゴキと腕を鳴らして治そうとしている。折れたわけではなく脱臼のようだ。

 

『G?』

 

 俺を含めて全員が「?」マークを浮かべる。「G」ってなんだ? 台所とかに出るあの黒い悪魔のことか?

 

「ああ、こいつがたたき出した新適正基準だ。今まで一番下は「F」だったが、それより下の「G」だ。起動は出来るが、動かすことは困難という適正だ。剣はもてるが使えないという状態だ」

 

「まったく、迷惑この上ない適正だよ。そのせいでこのざまだよ」

 

 一樹さんはそう言って制服をつまんで見せる。どうやら相当嫌みたいだ。

 

「まあ、とりあえず自己紹介だ。一樹・S・バニングス、三十歳だ。一樹でも、斎藤でも、バニングスでも好きなように呼んでくれ。授業にはとりあえず参加はするが、メインは食堂に新設されたカフェエリアのマスターをしている。後、用務員としても働いてるから、何か部屋の備品で壊れた物があったら言ってくれ、直すから。とりあえずはそんな所か? 何か質問はあるか?」

 

 手早く自己紹介を済ませた一樹さんが聞いてくる。すると何人かの女子が手を上げる。

 

「はい!」

 

「はい、じゃあ君!」

 

 手を上げた女子を指す一樹さん。

 

「さっき、織斑先生のことを名前で呼んでましたがどういった関係なんですか!!」

 

「ふ、それは大人の関係とい「ズバガァァァァン!!」『キャーーーー!?!?』『一樹大御爺様?!』」

 

 千冬姉が一樹さんの頭をつかんで黒板に叩きつける。

 すごい音がして、一樹さんの顔の部分が完全に埋まって肩もめり込んでいて、さらに隣のクラスから悲鳴が上がる。

 どうやら壁を貫通して隣のクラスに首だけ出たみたいだ。そりゃ、悲鳴も上がる。

 一樹さんは首を抜こうと黒板に手をついて必死に頭を抜こうとしているけど、引っかかっているのか中々抜けない。

 

「他に質問はあるか?」

 

 千冬姉がとてつもないオーラを放ちながら聞いてくる。って言うかそれって聞くなって言ってるようなもんだよね。

 後ろで手にくわえて足も壁につけて首を抜こうとしている一樹さん。…………カオスだな。

 

「では自己紹介を続けてくれ」

 

 そう言って千冬姉は自己紹介を続けるように促す。当然それに逆らえる人なんていなかった。

 

― 一樹・S・バニングス ―

 

 一夏がISを使えると判明してから、あっという間IS学園入学式になってしまった。

 実際襲撃などは無く、一夏の検査などに付き合う形になっただけだった。やたらと多い検査を終えて、正式に一夏がISを使えると分かると、そのとき世界が動いた。

 まず、各国は一夏と同じように男性全員にIS適正検査を行ったのである。検査自体は簡単で、ISに触らせるという物で、一夏の時のように起動させられる者がいるかどうかを調べたのである。

 もちろん俺も参加した。イレギュラーの俺ならISを動かせるかもと思い、wktk(ワクテカ)してISに触れた。

 結果、とりあえず頭の中に色んなIS用語が流れ込んできて、ISを起動は出来た。自然と装備することも出来て内心「よし!」とガッツポーズした。

 初めてリンカーコアがあると分かったときと同じくらい感動した。が、喜びもつかの間、いざ動いてみれば何も出来なかった。

 歩くことは出来る。走ることも出来る。ジャンプすることも出来る。しかし、飛行することは出来ない。各種スラスターやらブースターやらはうんともすんとも言わずに沈黙、武装を呼び出そうとしてもまったく反応しないのである。目の前に出てきたウィンドウを操作しても出てこないという徹底ぶりだ。

 つまりISを身にまとっただけだった。このぶんだとエネルギーシールドや絶対防御がしっかり起動してるかどうかも怪しくなってきた。

 始めは周りにいた人たちも二人目の発見に喜んでいたが、そのまま調べていくとなんとも微妙な結果に苦笑いだった。

 その場にいた千冬さんは「はあ」とため息をついていた。で、その後話し合いの結果IS学園に入学するという話が出た所で俺が猛反対したのだ。何が悲しくて三十のおっさんがIS学園の制服を着て学生と一緒に授業を受けねばならんのか。

 が、俺の抵抗もむなしく、結局民主主義的結果により入学する嵌めになった。しかも、今年度から新設されたカフェエリアのマスター込みで。

 で、最後の抵抗として部屋に引きこもっていたのだが、千冬さんがドアを破壊して押し入ってきたのだ。

 流石に不意に突入してきたので抵抗できずに拘束され、制服に着替えさせられ、教室に連行されたのである。で、現在、SHR(ショートホームルーム)も終わって休み時間に入った。何もする事が無く机の上でボーっとしていると一夏が話しかけてきた。

 

「一樹さん」

 

「ん~?」

 

「腕平気ですか?」

 

「この位ならな、日常茶飯事だからな」

 

(((日常なんだ)))

 

 こっそり聞き耳を立てていたクラスメイトが呆れている。まあ、黒板に穴が開く日常なんて嫌だろうしな。

 そんなのが続いたら一組と二組が一緒の教室になるのもそう遠くないだろう。

 

「俺達これからどうなるんですか?」

 

「どうって、ISのことを勉強して、ISの操縦技術を上げて、卒業していくだけだろ?」

 

「いや、そうじゃなくてですね……」

 

「まあ、一夏の言いたい事は分かるがお前と同じで俺が分かるわけ無いだろ? 俺だって同じなんだから」

 

「そうですね……」

 

 はあ、とため息をつく一夏。とそこへ、

 

「少し良いだろうか?」

 

 と、長い髪をポニーテールの女子が話しかけてきた。皆さんご存知、一夏の幼馴染の篠ノ之箒だった。

 

「何だ?」

 

「少し一夏を借りて良いだろうか?」

 

「……箒?」

 

 一夏が呼ぶが返答は無い。

 

「どうぞどうぞ、何処へでも連れてってくれ。体育館裏に行くもよし、人気の無い体育倉庫でもよし、保健室でもよし、空き教室でもよし、音楽室でもよし、保健室でもよし、屋上でもよし、後は……まあ、こんだけ挙げればいいか。そんなわけで何処でも好きな所へ連れて行くと良い」

 

 俺の言ったことに聞き耳を立てる教室+廊下のにいる女子。

 何人かが顔を赤くしている。おっさんの言ったことで何を想像しているのか。

 

「?……分かった。付いて来い」

 

「あ、待てよ箒!」

 

 一夏はスタスタと先に行ってしまう箒を追って教室を出て行く。箒の反応を見る限りだとさっき言ったのは無意味みたいだった。

 顔を赤くして慌ててくれれば面白味があるというのに。で、教室に残った俺は、周囲からじ~っと見られていた。

 

(慣れたと思ったがこれはまた別の意味でなれないもんだな)

 

 約一年ほど前からIS学園で働き始め、周りの視線になれたつもりだったが、流石に入学したとなると話は別だ。

 教室と廊下からの視線と、ヒソヒソと小声で話すのが気になって仕方が無い。

 はあ~、今頃一夏は箒とイチャこらして……無いんだろうな~。屋上で話しているであろう一夏を思い浮かべながらそう思った。

 

「一樹大御爺様?」

 

 そんなことを思っていると廊下からマリアが教室をのぞいていた。

 

「おう、マリアか。どうした?」

 

「いえ、先ほどの件で何があったのかと……」

 

「ん~、いつも通りだよ。千冬さんをからかったらああなった」

 

 そう言って黒板にできた穴を指す。すると二組から覗いていた数人が顔を引っ込める。

 …………後で塞いどかないとだな。

 

「またですか」

 

 はあ~、とマリアがため息をつく。

 そしてその会話を聞いて気になったのか袖が長く手が隠れて、ダボダボの制服を着た女子が声をかけてきた。

 確か、布仏本音ことのほほんさんだ。

 

「ねえねえバーニー」

 

「む? 俺はNEXT能力の使えるヒーローでもサイク○プス隊の一員でもないのだが?」

 

「よくわかんないけどバーニーはその子とどういう関係なの~?」

 

「ん? 俺の玄孫だけど?」

 

「ふぇ?」

 

 流石に予想外だったのか目を丸くしている。

 

「あ~、ちょっと前に、タイムスリップした男とその恋人が結婚したってニュース見たことないか?」

 

 アリサと結婚が決まったとき、テレビでちょっとの間騒がれた時があった。

 

「あ、あるある。確か~百年越しに結婚したんだよね? でも遺産目当てとか色々言われてたよね~」

 

「それが俺だ」

 

『えぇぇぇぇ!?』

 

 聞き耳を立てていた他のクラスメイトも驚いている。以外に気づかないものなんだな。

 

「まあ、色々と言われたけど血の繋がりが無いわけじゃないんだ。俺がタイムスリップする前にアリサ……俺の嫁さんなんだけどな? お腹に子供がいたんだ」

 

『え!?』

 

 また聞いていた全員が驚いて、今度はマリアに確認を取るように全員がマリアを見る。

 

「はい、本当ですよ。私の祖母のアスカ御婆様が一樹大御爺様の孫なんですよ」

 

『えぇぇぇぇ!!』

 

 全員が驚いている。

 

「おれ自身息子が出来てた事は知らなかったからな。もっと時間を取られるかと思ったんだけどあっさりいってよかったよ。流石に血の繋がりが無かったら、アリサとの結婚はもうちょっとかかってたと思うぞ」

 

「そうですね、確かに反対する人の方が多かったですからね。DNA鑑定で繋がりが無かったら厳しかったと思います」

 

「あと、遺産に関しては俺は放棄してるからな。それも早く済んだ要因かもしれないな。BSSとかバニングスインダストリーズはアスカとテレサがしっかり運営してるから、今更俺がしゃしゃり出てもな~。だから俺が貰ったのはこれだけだよ」

 

 そう言って俺は胸元からスサノオを取り出す。そこにはチェーンに二枚の認識票(ドッグタグ)と一つの指輪が付いていた。アリサの結婚指輪である。

 アリサが亡くなる前にお互いの指輪を交換したのだ。流石に指にすることは出来なかったのでスサノオと一緒にしてあるのだ。

 それを見ると少し胸が痛くなる。この半年片時も離れなかったし、アリサと一緒に過ごせて幸せだった。

 でもやっぱり半年しか一緒にいられなかったことが悔しかった。そんな俺を見てのほほんさんが、

 

「元気だしなよバーニー」

 

「む、そこは嘘だといってよバーニーの方が良かった」

 

「嘘なの?」

 

「いや、嘘じゃねーけど」

 

 ネタが伝わらないのは寂しいものである。

 

「では大御爺様、私はこれで」

 

「おう、授業しっかりな」

 

「はい」

 

 そう言ってマリアは二組に戻っていった。そうすると入れ違いに一夏と箒が戻ってきた。

 

「ん? 一樹さんどうしたんですか?」

 

 俺の周りに人だかりが出来ていたのが気になったのか聞いてきた。

 

「ん~、マリアが来たから紹介をちょっとな」

 

「あ~、なるほど」

 

 事情を知っている一夏は納得した。

 

「一夏そっちの箒だったか? とはどういう「キ~ンコ~ンカ~ン……」……ありゃ?」

 

 箒とは初対面なので一夏に紹介してもらおうと思ったがチャイムが鳴ってしまった。

 

「次の休み時間に説明するよ」

 

「ん、頼む」

 

 そう言って一夏は席に戻っていく。程なくして山田先生が教室に入ってきた。

 

「はい、みんな席についてください。授業を始めますよ~」

 

 山田先生がそう言って授業が始まった。

 

 一時間目の授業が終わると一夏が頭からプシュ~と煙を上げ机に突っ伏していた。

 千冬さんから出席簿アタックをくらい、授業の内容がまったく分からなかったためこうなっている。

 

「よかったじゃねーか一夏、これから一週間、放課後、二人っきりで、山田先生が手取り足取り教えてくれるんだ。こう聞くとなにやら厭らしいかほりが漂ってくるな」

 

 そう言ってチラッと箒のほうを見るとなにやらそわそわしていた。

 

「いや、あの厚さを一週間は無理ですよ!?」

 

 一夏がそう反論してくる。

 

「まあ、そうだろうな。俺はほぼ一年掛かったからな」

 

「そんなに?!」

 

「仕事しながら片手間にだったてのもあるけどな。集中して一週間はちときついだろうな」

 

「だったら!」

 

「あ~無理無理、千冬さんに逆らえるわけね~べさ。俺だって半強制的に覚えさせられたんだぞ?」

 

 IS学園に勤務することになってから何故か覚えさせられた。

 

「……なんだかすいません」

 

「気にすんな」

 

 そんな話をしていると、

 

「ちょっとよろしくて?」

 

 と聞かれたので、

 

「そぉい!」

 

 と振り向きざまに手袋を片方だけその人物に投げつける。ペシと軽い音を立て手袋が顔に当たって床に落ちる。

 

「な、何なんですのいきなり?!」

 

 手袋をぶつけられた人物は突然の事に怒る。まあ、こうなるよな。

 

「いや~、一夏が投げろって言うからつい」

 

 俺がそういうとその人物は「キッ!」と一夏を睨みつける。

 

「言ってねぇ!? 何勝手なこと言ってんですか!!」

 

「良いじゃんどうせ決闘するんだから」

 

「しないっすよ!? 何ですかそれ!!」

 

「あ、貴方達! 私を誰だと思っておりますの!!」

 

 と言われ一夏が、少し考え、

 

「誰だ?」

 

 と聞き返す。

 

「ご存知無いのですか?! 彼女こそBFF候補生にして超時空シンデレラのリリウム・ウォルコットちゃんです!!」

 

「全然違いますわよ!? イギリス代表候補生で入試主席のセシリア・オルコットですわ!!」

 

 とやっと自己紹介ができたセシリア。それを聞いて俺と一夏は、

 

「「へぇ~」」

 

 と関心が有るのか無いのか分からない答えだった。

 

「……馬鹿にしていますの?」

 

「いや、そんなつもりは無いんだが……一つ良いか?」

 

「ふん、下々の者の要求にこたえるのも貴族の務めですわ。よろしくってよ」

 

 胸をはり、偉そうに答えるセシリア。

 

「代表候補生って何?」

 

『だあぁ!?』

 

 ガタンと机ごと何人かが倒れる。結構ノリがいいなこのクラス。

 

「あ、あ、あ、貴方! 本気でおっしゃってますの?!」

 

「おう、知らん」

 

 一夏よ、原作通りとはいえ胸を張って答えるようなもんじゃねーぞ?

 

「あのなぁ、一夏聞く前にちっとは考えろ。まず、国を代表するIS操縦者が国家代表、その代表を決めるために選出されるのが代表候補生ってことだ」

 

「ああ、なるほど」

 

「信じられません! 信じられませんわ!! 極東の島国は未開の地なのかしら? 常識ですわよ?!」

 

 セシリアがそう言ってくるが、

 

「そうか? オリンピック選手とその補欠みたいなもんだろ? オリンピック選手は知ってるけど補欠までは知らねーぞ」

 

 と異を唱える。実際補欠まで把握してる奴なんかそんなにいないだろ。

 

「補欠じゃありませんわ! エリートなのですわ!! 本来であれば私のように選ばれた人間と一緒にいられるだけでも光栄なのよ。その現実を理解していただける?」

 

「そうか、それはラッキーだ」

 

「……馬鹿にしていますの? 馬鹿にしていますのね? そうなんですのね!?」

 

 セシリアが怒るのも無理はない。あんな言い方されれば誰だってそう思う。

 

「二人しかいない男性のIS操縦者というから少しは知的かと思えば……とんだ期待はずれですわ」

 

「俺に何か期待されても困るんだが……」

 

「ふん。まあでも、私は優秀ですから、貴方のような人間にも優しくしてあげますわよ。ISの事でわからない事があれば、まあ、泣いて頼むなら教えて差し上げてもよくってよ。何せ私は入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから!」

 

 女子ではそうなんだよな。マリアは教官が何故か千冬さんだったので、様子を見られその後瞬殺されてしまった。

 その後凹んだマリアを慰めるのに結構時間がかかったんだよな~。

 

「ん? 入試ってアレか? ISを動かして戦う奴か?」

 

「それ以外にありませんわ」

 

「俺も倒したぞ? 教官」

 

「はい?」

 

 セシリアが首をかしげキョトンとする。

 

「いや、アレは倒したって言うのかな? いきなり突っ込んできたから、避けたら壁に当たって動かなくなったんだが……」

 

「私だけと聞きましたが?」

 

「女子ではって落ちじゃないのか?」

 

 まあ、教官を倒しただけでも十分すごいと思うが。

 

「あ、貴方も教官を倒したのですか!?」

 

「いや、まあ、たぶん?」

 

「何ですかそれは!」

 

「お、落ち着けよ。な?」

 

「これが落ち着いていられ「キ~ンコ~ン……」っ! 後でまた来ます! 逃げないことね! よくって!?」

 

 そう言ってセシリアは席に戻ってしまった。一夏は呆然としている。そんな状況の中千冬さんが教室に入って来て授業を始める前に言ってきた。

 

「この時間はISの基礎理論についてだが、その前に再来週に行われるクラス対抗戦にでる代表者を決める。クラス代表者とはまあ、そのままの意味だな。生徒会の会議や委員会への出席、平たく言えば委員長だ。後、クラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。競争は向上心を生む。お前達にはいい刺激になるだろう。代表になったら一年間は変更はないからそのつもりでいろ」

 

 ざわ……ざわざわ…………。クラスが福本作品のようになる。

 

「自薦他薦は問わない誰かいないか?」

 

「はい! 一夏を推薦します!」

 

「なっ! 一樹さん!?」

 

 一夏は思わぬ裏切りにあったという顔をしている。

 

「はい! 私も織斑君が良いと思います」

 

「お、俺!?」

 

「うるさいぞ織斑。自薦他薦は問わないといったはずだ。選ばれた者に拒否権は無い。邪魔をするな」

 

 ピシャ! と言い切って一夏を黙らせる。

 

「ぐぬぬ……じゃあ俺は一樹さんを推薦します!」

 

「あ、私もバニングスさんが良いです」

 

 一夏がそういうと援護が飛ぶ。しかし異を唱える声が上がった。

 

「待ってください! 納得がいきませんわ!!」

 

 セシリアが机を強く叩き、勢いよく立ち上がる。

 

「そのような選出認められませんわ! 大体男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! 私にそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか?!」

 

 いい感じにヒートアップしてきたセシリアがまくし立てる。

 

「大体実力から言えばわたくしがクラス代表になるのは必然! それを物珍しいからといって極東の猿にされては困ります!」

 

 クラス内でも何人かがうんうんと頷いている。

 う~ん、まあ、そういう意見の奴は少なからずいるか……。

 

「わたくしはIS技術の修練に来たのであってサーカスをするつもりは毛頭ありませんわ!」

 

 チラッと一夏を見てみると段々顔の表情が曇っていく。

 まあ、これだけ言われればカチンと来るよな。

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさないといけないという事自体、わたくしにとって耐え難い苦痛で「イギリスだって大したお国自慢無いだろ? 世界一まずい料理で何年覇者だよ」なっ! 貴方! 私の祖国を侮辱しますの!?」

 

「先に侮辱したのはそっちだろ?」

 

「~~~! 決闘ですわ!!」

 

「良いぜ、四の五の言うより分かりやすい」

 

「言っておきますけど、わざと負けたりしたら、わたくしの小間使い……いえ奴隷にしますわよ?」

 

「真剣勝負で手を抜くほどくさっちゃいない」

 

 ギャーギャー二人で更にヒートアップしていく。俺はそれをニヤニヤしながら見るだけだったのだが……。

 

「話は付いたな、勝負は一週間後の月曜日、第三アリーナで行う。セシリアと織斑と一樹は各自準備をしておけ」

 

 と千冬さんが宣言す……ってあれ?

 

「ちょ、千冬さん俺も?!」

 

「当たり前だ。お前も推薦されただろう」

 

「だからって!」

 

「良いじゃないか。極東の猿の実力を見せてやれ」

 

 ん?……あれ? 千冬さんちょっと怒ってる? 若干イライラしているような?

 

「でもな~、正直相手になんねーぞ?」

 

 ISを装備してとなると微妙だがそれでも負けることは無いだろう。でもまあ、いっか。ハンデも無いみたいだし。

 

「ふむ、そうだな。じゃあハンデでもつけるか」

 

 うぉい! 何言っちゃてんですか千冬さん!?

 

「あら、情けないですわね。こっちのお猿さんはハンデが必要なのかしら?」

 

 それを聞いていて勘違いしたセシリアが口を挟んできた。上から見下ろす感じで言ってくる。

 

「勘違いするなよオルコット。ハンデをつけるのは一樹のほうだ」

 

「何ですって?」

 

 ピクリと反応するセシリア。

 

「貴様と一樹では勝負にすらならん。そうだな……腕一本だ。一樹は右腕だけの使用を許可する」

 

「倍プッシュだ」

 

「却下だ。それ以上だとオルコットの勝てる要因がなくなる」

 

『!?』

 

 クラス全員が驚いている。まあ、そうだろうな。

 

「お、織斑先生流石にそれは……」

 

「安心しろ、今のお前達が束になったとしても一樹には勝てん」

 

 その一言で教室が静まりかえる。そんな中、

 

「良いですわ! その実力しっかり見せてもらいますわ!!」

 

 セシリアが怒りながら俺に向かって宣言する。

 

「よし、以上だ。各自しっかり準備しておけ。では授業を始める」

 

 千冬さんがそう言って授業が再開される。しかし、中々クラスのざわめきは収まらなかった。

 

 

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