インフィニット・ストラトス ~その拳で護る者~    作:不知火 丙

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第八話

― 織斑一夏 ―

 

「ありがとう箒、一週間俺の稽古に付き合ってくれて。お陰で少しはマシになったと思う」

 

「うむ、始めの時はどうしてやろうか悩んだが随分上達したな一夏」

 

 今、俺と箒は第三アリーナのカタパルトデッキにいる。セシリアとの勝負のためだ。

 あれから一週間が経ち、今日がその勝負の日だ。この一週間、箒とみっちり訓練をした。

 時々一樹さんも参加したけど、からかわれただけで特に何か収穫があったわけでもなかった。

 一体何がしたかったんだろう? この一週間のことを思い返していると部屋に千冬姉と山田先生が入ってきた。

 

「織斑、準備はできているな?」

 

「大丈夫だ千冬姉「ガン!」~~~~~!!」

 

 千冬姉が聞いてきたから反射的に何時も通りに応えてしまった。

 

「何度言ったら分かる? 学校では織斑先生だ。学習できないのなら死ね」

 

 相変らず酷い姉である。こんなんだから彼氏もできないのだろう。

 

「ふん、馬鹿な弟にかかる手間が無くなれば、見合いでも結婚でも直ぐにしてやるさ」

 

「何で分かるんだよ」

 

「分かりやすい顔をしているからだ馬鹿者が」

 

ガン!

 

 とおまけに一発貰ってしまった。

 

「織斑君! そ、それでですね、来たんですよ!」

 

「来たって何がです?」

 

「織斑君の専用ISです!」

 

 やや興奮して言ってきた山田先生は手元のリモコンみたいな物を操作する。

 するとカタパルトデッキの搬入口が重たい音をさせ開いていく。そしてそこには一つのコンテナがあり、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

 

ゴゴン。

 

 と重い音を立てて目の前で止まると、千冬姉がコンテナについている操作盤を弄る。軽い電子音がした後、空気の抜ける音がして、コンテナが開く。そしてそこにあったのは白いISだった。

 飾りっ気の無い白。それは装甲を開放して、まだ見ぬ搭乗者をじっと待っていた。

 

「これが織斑君のIS「白式」です!」

 

「これが……俺のIS」

 

 かろうじてそう言う事ができた。

 俺がじっとISを見ていると、ゴゴンッと音がして再びデッキ搬入口が動き始める。今度は何が来るのかと思っているともう一体のISが出てきた。

 濃緑の色をして、どこか鎧武者を思わせるシルエットをしていた。白式と違うところは、コンテナにも入ってなくて、既に搭乗者が乗っている所だった。そしてそれに乗っているのは……

 

「お、一夏のIS届いたのか」

 

 一樹さんが乗っていた。一樹さんは俺に気付くとゆっくりこっちに近づいてきて……こけた。

 

ガッシャャャャャャン!

 

 と派手な音を立てて転ぶ。

 

「イチチチチ。ふう、駄目だなやっぱり。歩き辛くて適わん」

 

 そう言いながら起き上がってよたよたとこっちに近づいてくる。何かまた転びそうで危なっかしい歩き方だ。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 見かねた山田先生が声をかける。

 

「あ~、大丈夫といえば大丈夫ですよ」

 

 頭をガシガシとかきながら答える一樹さん。

 

「一樹、大事に扱え」

 

「もしぶっ壊したら給料から引いてくれ」

 

「分かったそうしよう。小国の国家予算ぐらいだが一樹がそういうなら大丈夫なのだろう」

 

「嘘だよ!? っていうかネタだからね?! 本気にしないで!!」

 

「だったらしっかりと乗りこなせ。ISで転ぶなんぞ見たこと無いぞ」

 

「ですよね~」

 

 そういつも通りのやり取りをする一樹さん。

 

「お~、これが一夏のISか……何て言うんだ?」

 

「白式です」

 

「百式? じゃあ、金色に塗りたくろうぜ!!」

 

「白式です! 赤白の「白」です!」

 

 前に見せてもらったロボットアニメの大尉じゃないんですから。

 

「白とな? じゃあ、頭部の角がV字に割れて装甲の下から特殊装甲出てきて赤く光るんだな?」

 

「それはそれでカッコよさそうですけど、多分そんな機能は無いですよ」

 

「「チラ」」

 

 そういいつつも期待した目で山田先生を見てみる。

 すると山田先生は白式の仕様書をペラペラとめくる。少しするとパタンと閉じて、

 

「え~っと、残念ですけどそういった機能は無いみたいですね」

 

 と律儀に答えてくれた。

 

「何だつまらん。せっかく織斑一角と呼んでやろうと思ったのに」

 

 チッと舌打ちする一樹さん。

 

「そういえば一樹さん。それ、一樹さんの専用機なんですか?」

 

「ん? ああ、違う違う。これは量産機の「打鉄」第二世代型のISだ。今じゃ練習機扱いだけどな」

 

「え? 専用機貰ってないんですか?」

 

「あのな一夏、そうホイホイ専用機が与えられると思ってんのか? たった467機しかねーんだぞ? 二人目の男性操縦者っていったって、やっとこさISを動かせるだけの操縦者と、普通に動かせて、なおかつ世界最強の操縦者の弟を比べたらどっちを優先させるか子供でも分かることだぞ?」

 

「……」

 

「ん? 何だよ黙っちまって?」

 

 急に黙った俺を不思議に思ったのか一樹さんが聞いてきた。

 

「もしかして、千冬さんの七光りが気にいらねーのか?」

 

「うっ……」

 

 図星を突かれてしまった。

 

「な~にいっちょまえに不貞腐れてんだよ!」

 

 そう言って一樹さんは笑いながら俺の背中をバンバンと叩いてくる。

 

「ちょ! 痛いですよ! IS装備した状態で叩かないで下さいよ!!」

 

 抗議すると叩くのをやめてくれた。

 

「おお、すまんすまん。まあ、仕方ねーべさ、そういうのを全く考えないで選考できるもんでもねーんだ。あわよくば千冬さんを取り込もうって考えが出ないはずがない。千冬さんの弟である限りそれは嫌でも付いてまわるんだよ。それが嫌だってんなら千冬さんより強くなるしかないな。それが世の中ってもんだ」

 

「でも、そしたら俺より強い一樹さんが持ったほうが……」

 

 なんたって千冬姉にも勝ってるんだ。俺なんかよりずっと強いはずなんだ。

 そう言うと一樹さんはやれやれといった感じで話し始めた。

 

「ん~、ここだけの話だけどな、まあ始めは二人にって話もあったんだよ。二人しかいない男の操縦者だからどんなデータでも欲しかったんだろうな。でも俺がそれを断ったんだよ。専用機なんか必要ないってな。量産機があるんだからそれを使えばデータぐらい取れるんだからな。……それにそうしないと相棒が拗ねるんでな(ボソ)」

 

「相棒?」

 

「いや、こっちの話だ。まあ、そんなわけでめんどくさ……もといデータ取りは一夏をメインにってしたわけだ」

 

「今めんどくさいって言いましたよね?!」

 

「因みに、その会議をしていた連中に一夏の事を千冬さんの弟ですよ~ってそそのかしたのは俺だ」

 

「最低だアンタ!!」

 

 近くに置いてあった工具を一樹さんに向かって投げつける。

 まあ、無駄だと分かってはいるんだけど。案の定ひょいという感じにキャッチされてしまった。

 

「悔しかったら千冬さんより、俺より強くなれ。それが出来なきゃ始まんねーよ」

 

「分かってますよ! 絶対強くなって見せますからね!!」

 

「おう、楽しみに待っててやるよ」

 

 ニカッと笑う一樹さん。それと同時に、

 

『一体いつまで待たせるんですの!?』

 

 とセシリアからの通信がはいった。

 

「「あ……」」

 

 俺と一樹さんはすっかり忘れていた。

 

「オルコット、後五分待て。直ぐに戦わせてやる。織斑、さっさと準備しろ」

 

「は、はい!」

 

 そう言って俺は白式に触れる。そうすると一瞬で装着が完了する。そしてカタパルトに脚部を固定する。

 

「一夏、棒立ちだと勢いあまって後頭部を打つかも知れんから、若干前かがみ、イメージ的には、ジュニアが元気になったとき、好きな女の子が目の前にいるときの姿勢だ」

 

「何を言っているんだ貴様は!!」

 

ドゴン! 

 

 と、とんでもない音がして一樹さんの顔が床に叩きつけられる。千冬姉が一樹さんの頭を掴んで床にたたきつけた音だった。

 山田先生は顔を真っ赤にしている。千冬姉も心なしか顔が赤いような気がする。

 

「何ってナニですが?」

 

 平然とした顔で言ってのける一樹さん。あんたスゲーよ。

 

「織斑! さっさと行け!」

 

「イ、イエッサー!!」

 

 若干キレ気味に言ってくる千冬姉に、反射的に背筋を伸ばして答えてしまった。

 

「お、おおおお織斑君! じゃ、じゃあ、発進しますね! 目の前のシグナルがグリーンになったら発進しますからね! 気をつけてくださいね! 姿勢は……もう何でもいいですから!!」

 

 一樹さんが言ったことをまた思い出してしまったのか顔を真っ赤にして湯気を出しながらヤケクソ気味に言ってくる山田先生。

 

「はい、分かりました!」

 

「じゃあ、いきます!白式、発進どうぞ!」

 

ビービービービィー!

 

 と、シグナルがグリーンになる。その瞬間、カタパルトが猛烈な勢いで前進し始める。一瞬で外に射出され、目の前に広がるのは雲の一切無い青空だった。

 その景色を見て感動したが、一つ残念だったのは、千冬姉にお灸をすえられる一樹さんの悲鳴を聞きながら発進したことだった。

 

― 一樹・S・バニングス ―

 

 IS装備してても千冬さんの折檻は俺に直接ダメージを与える。シールドダメージは減ってないのにね。何でだ?

 っと、それはさておき、セシリアと一夏の試合が始まった。開始直後セシリアの攻撃が一夏の左肩に当たってダメージを与える。不意打ちとしてはやや浅い気もする。

 

「お、先制はオルコットか」

 

 まあ、このあたりは原作通りである。まあ、まだフィッティングもファーストシフトも完了していないのだ。その状態で代表候補生の攻撃を避けきるのは無理だろう。

 

「でも、なのちゃんあたりはあっさり避けてカウンターでも決めちまいそうだよな」

 

 俺から見れば二人ともどっこいどっこいである。いかんせん長年白い悪……もといエースと一緒にいたのだ。

 二人ともひよっこに見えてしまうのは仕方が無いだろう。オルコットはまだマシというだけでそんなに酷く差があるとも思えない。

 

「何をぶつぶつ言っている?」

 

「うんにゃ、二人ともひよっこだと再認識しただけだ」

 

「ひ、ひよっこですか? でも、オルコットさんは代表候補生ですよ? そんなに悪くないと思いますが……」

 

「まあね、でも山田先生でも勝てるでしょ? 俺としてはその程度なんですよ。正直あれ以上に強い奴らはごまんといる。俺の知り合いはほぼ間違いなく勝てるぞ?」

 

 多分、今の恭也さんなら間違いなく倒せるだろう。戦闘民族高町家に吸血鬼の身体能力ってどんだけチートなんだよ。

 

「そ、そうなんですか!?」

 

「そうなんですよ」

 

 なんせガキの頃から毎日空戦をやってたんだ。たかだか空を飛び始めて数年の連中に負けるなんてありえない。

 ヴォルケンズなんか数百年ってレベルだぞ? 負けたら焼き土下座ってレベルだ。千冬さんレベルであれば話は別だが。

 

「そこまで違うのか?」

 

「まあ、俺の常識の範疇ですけどね。あの程度は下から数えたほうが早い」

 

「ど、どんな常識なんですか……」

 

「え~っと、高速移動しつつ、十発以上の誘導弾(アクセルシューター)を同時に途切れる事無く撃ってきて、隙を見せると砲撃(ディバインバスター)が飛んでくる相手と比べる常識?」

 

「それは非常識だ馬鹿者」

 

「ですよね~」

 

 しかもそれはウォームアップなのだから質が悪い。本気を出されると止めるのも一苦労だ。

 

「しかし、相性の問題もあるけど、近接対遠距離じゃあやっぱり分が悪いよね」

 

 じりじりとエネルギーを削られていく一夏。

 

「そうですね、でも開始直後と比べると段々避けられるようになってますよ?」

 

「お、本当だ。一夏の奴、オルコットの弱点に気付いたか?」

 

「そのようだな」

 

 セシリアは、ビットとライフルを同時に使えない。一斉射撃なら問題ないだろうが制御しつつ射撃となるとそうはいかない。

 俺達みたいにマルチタスクが使えるなら問題ないだろうけどな。

 

「あ、ビットを叩き斬った。やるな~」

 

 四機あったビットが二つになった。これで一夏が近接に持ち込みやすくなったが……。

 

「……あの馬鹿者が、浮かれているな」

 

 千冬さんが呟く。

 

「浮かれてるってーと?」

 

「さっきっから左手を開いたり閉じたりしているだろう? 昔からの癖でな、あの癖が出ると大抵簡単なミスをする」

 

「へ~、弟さんのこと良くご存知なんですね!」

 

 山田先生に言われてハッとする千冬さん。

 

「ま、まあなんだ。あれでも私の弟だからな」

 

「またまた~、この弟大好きっ子が照れちゃってまあぁぁぁぁ!?イタタタタタ!?」

 

「私は身内のことでからかわれるのは好きじゃない」

 

 俺がそう言ったら千冬さんがアイアンクローをかまして来た。

 

「イダダダダダ!! 出ちゃう! 脳みそ出ちゃうから!!」

 

 尋常じゃない握力にあっさりと屈する。

 

「ふん、次からは気をつけろ」

 

「了解……」

 

 顔をさすりながら再びモニターを見ると、ちょうど一夏がセシリアの罠に気付かずに突っ込んでミサイルを食らった所だった。

 

「やったか!?」

 

「どちらの応援をしている?」

 

「あ、いや、反射的にフラグを立ててみただけですので」

 

 ギロ! と千冬さんに睨まれる。超怖い。

 

「ふん、まあ今回は機体に救われたな」

 

 まあ、フラグを立てなくても一夏はここでは落ちないのだけどね。

 

「白式じゃなかったら即死だった」

 

「白式じゃなくてもISだったら死にませんよ!?」

 

 突っ込みありがとうございます。

 まあ、それは兎も角これでやっとファーストシフトが完了したわけだ。ここからが本領発揮って訳なんだけど…………。

 

『試合終了、勝者セシリア・オルコット』

 

 残存エネルギーを考えずに突っ込んだ一夏が、これまた残存エネルギーを考えずに雪片弐型とぶんぶん振り回すからあっという間にゼロになる。

 ゼロになるタイミングがセシリアを斬る直前というのがなんともお約束である。二人がゆっくりとピットに戻ってくる。

 

「お疲れさん、一夏……あそこまで大見得切っといて負けるとか、ねえねえ今どんな気持ち?」

 

「うぐっ!」

 

「途中からオルコットを圧倒し始めて、後一歩のところでエネルギー切れで負ける。どんな気持ち?」

 

「すごく……悔しいです」

 

「……ネタで返した訳じゃなさそうだし本心だな」

 

「よくもまあ、あそこまで持ち上げておいて結果がこれか。大馬鹿者が」

 

「ぐっ……」

 

「武器の特性も把握しないまま使うからああいう事になるんだ。身をもって分かっただろう。これからは暇があったらISを起動し、訓練に励め。次に負けたくないのならな」

 

「はい……」

 

 一夏はため息をついて黙り込んでしまった。

 

「織斑君、今織斑君のISは待機状態になってますけど、呼び出せば直ぐに展開できますからね。あ、後これISの仕様書ですからしっかり目を通して覚えてくださいね?守らないといけない法律とかも書いてありますから」

 

「こ、これを覚えるんですか?」

 

「はい、そうですよ」

 

「……頑張ります」

 

 一夏がそう言って肩を落す。

 まあ、いきなり某電話帳くらいある本を渡されて覚えておいてくださいって言われてもなあ。

 

「一樹さんは良いんですか?」

 

「あ~、俺は専用機じゃねーからな。仕様書は必要ねーんだよ」

 

「そうですか……次、一樹さんの番ですよね? 頑張ってください」

 

「あ~、そのことなんだけど、オルコット」

 

「は、はい?」

 

 一夏をぼ~っと見ていたセシリアに声をかける。

 

「模擬戦できるのか? ビットはほとんど一夏がぶっ壊しちまったみたいだけど?」

 

「だ、大丈夫ですわ。予備のビットもありますから」

 

「そうか、じゃあ俺は外で待ってるからな。出てきたら試合開始だ」

 

「分かりましたわ」

 

 俺はカタパルトに近づいて、足をセットする。

 

「山田先生、準備OKです」

 

「分かりました、打鉄発進、どうぞ!」

 

「一樹・S・バニングス! 打鉄! 出ます!」

 

ビービービービィー!

 

 シグナルがグリーンになり、カタパルトが動き出す。ゼロから一気にマックスへ、俺はその勢いを殺さず飛び出していく。

 俺はISを使用していると飛べない事になっているのでそのまま、アリーナの中央に着地する。

 

《どうするのですか?》

 

 スサノオが聞いてきた。

 

「どうするっつってもな右手一本しか使えないからな。もうここから動けないし」

 

《……それはあくまでも攻撃に使うなという意味では?》

 

「いや、分からんぞ? 一歩歩いた瞬間に負け確定かもしれん」

 

《流石にそれは……》

 

「まあ、無いと思うけどとりあえず今回は縛りプレイだ。右腕一本のみで勝つ。というわけで例の武装を使うぞ」

 

 例の武装とは、一週間前にマリアから引き継いだ大型の荷電粒子砲だ。

 

《よろしいのですか?》

 

「大丈夫じゃねーか? ちゃんと出てきたら試合開始って言ってあるし」

 

《了解しました。では試作機を出します》

 

 スサノオがそう言うと、俺の両肩にとんでもない大きさのランチャーが現れる。

土管程の大きさがあり、人がゆうに二~三人は入れてしまうほどだ。それが両肩に現れる。

 背中の部分でそれは繋がっていて一つになっている。

 

《ジュエルシードを装着して下さい》

 

 スサノオがそう言うと俺の手元に菱形のくぼみが出てきたのでそこにジュエルシードをはめ込む。

 

《ジュエルシードの装着を確認》

 

 スサノオが確認してジュエルシードが光りだす。

 

《エネルギーライン、全段直結》

 

 荷電粒子砲に青いラインが走り、その数はどんどん増えていく。

 

《ランディングギア、アイゼン、ロック》

 

 荷電粒子砲の背面から、地面に固定するための杭が勢いよく飛び出し、地面に深々と突き刺さる。これで機体は何があっても動かないだろう。

 

《チャンバー内、正常加圧中》

 

 ジュエルシードから取り込んだ魔力がチャンバー内にどんどん溜まっていく。その様子はSLBに似ている。

 

《ライフリング回転開始》

 

 砲身が変形し、ビットのような物が六つ出てきて、荷電粒子砲の前でゆっくりと円を描くように回転を始める。

 

《30……40……50……》

 

 どんどんエネルギーが充填されていく。

 

《60……70……80……90……》

 

 気配を探る。セシリアは今やっとカタパルトに接続したようだ。さてそろそろ出てくるな。

 

《96……97……98……99……》

 

 セシリアの気配が勢いよく出てくる。予想通り、空中で静止してこちらを見て驚愕する。がもう既に遅い。

 

《撃てます》

 

 スサノオの合図に俺はトリガーを引き絞る。

 

「狙い撃つぜ!!!」

 

 どっかのマイスターのように叫びトリガーを絞る。試作大型荷電粒子砲「ベクターキャノン」から、青い光の奔流がセシリアをのみこんだ。

 光の奔流はそのままアリーナのシールドをそれこそ無かったかのように貫通し、その先に出ている月に向かっていった。セシリアのエネルギーは一瞬でゼロになり、そのまま地面に向かって落ちていく。

 

ド~ン

 

 と、音を立てて墜落するセシリア。

 ISも装着されたままだし、このベクターキャノン自体非殺傷設定なので問題はない。

 

『しょ、勝者……一樹・S・バニングス…………で良いんですか?!』

 

 アナウンスした山田先生も混乱している。

 それもそうだよね。まあ、俺としては勝敗はどうでもいいんだけどね。良いデータも取れたし。

 

『ルール上は問題ない。出たら試合開始と一樹は言ってオルコットはそれを了解した。が、……やりすぎだ馬鹿者』

 

「ですよね~」

 

 威力をセーブしたにもかかわらずこの威力。自分で発案しといてアレだがとんでもねー威力であった。

 

― ??? ―

 

 そこはどこかの戦艦のブリッジような場所だった。正面には大きなウィンドウ式のモニターが開いていて、そこには様々な情報が映し出されていた。そしてその左右に座って、画面を見ていた一人の青年が声を上げた。

 

「レーダーに感! 小規模次元震の発生を確認!……あ、いえ消滅しました」

 

 それは明らかに異常な数値を示していた。自然に発生したものではない。

 

「何処からだ?」

 

 声を上げた青年に、赤毛の女性が声をかける。身長は女性にしては高く170はありそうだ。

 腰まである長い髪を三つ編みにして、制服の上に男物のジャケットを着ている。

 

「方向は……第97管理外世界の方からです」

 

「地球から? まだあそこはそんな技術は無かったよな?」

 

「はい、しかし次元震は確かにそこから発生しています」

 

「う~ん、分かった。後で調べておく。あそこには知ってる連中もいるし」

 

「分かりました。艦長には?」

 

「あたしから伝えておく。とりあえず警戒しておいてくれ」

 

「了解しました。ヴィータ三佐」

 

「おう、宜しくな」

 

 そう言ってヴィータと呼ばれた女性はブリッジから出て行った。

 

 

 

 

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