OVERLORD:The Invisible Watchmaker 作:Stormgren
本当は
目の前には多種多様な宝石がゴロゴロ。この世界で手に入れたごく普通のルビーやらダイヤモンドやらもあれば、ユグドラシルから持ち込んだ
これらを媒体とした、
「うえさまなにしてるですー?」
「なんか作ってるですー」
「石ころなのですー」
「きれーな石もあるです」
幼女型スライムのシズク&
と言いつつ俺も幼女をあんまり冷たくあしらうのは気が引けて、ついつい話し相手になってしまう。まあ単調な作業だから暇つぶしに会話を挟んでもいいけどさ。
「ん~、これはね~
消費したMP量に応じたレベルで作成され、一定時間経過で消滅する、手のひらサイズの小さな結晶体。単体では戦闘能力を持たないが、運用次第で恐るべき万能兵器に化ける。
この
だから最高レベルじゃなくていい。とりあえず最低限、全機能がアンロックされる程度のレベルでは永続個体を作れるようにしておきたい。そのため俺は日々こうして内職に精を出しているわけだ。
草木でも金属でも死体でもなく、宝石や結晶系鉱物素材が
あとはひたすら石の種類と質量、生成クリスタルのレベルを変えながら、実験アンド実験そして実験あるのみ。
俺は淡々と次回確認分の
本来の持続時間が過ぎても生成物が消えていないパターンは成功。消えていれば失敗。媒体の種類、質量、生成レベル――組み合わせで試すべきパターンは無数にあり、先は長い。気が遠くなりそうなほどに。
しかし時間は腐るほどある。気長にやっていけばいいだろう。
「いまんとこ現地素材の中ではサファイアとオニキスが好成績か。どこまで行けるか……最低五十五レベルは作れないと実用性がな~~」
「このリスト全部埋めるです?」
「うえさまひとりで試してるです?」
「まだ埋まってないパターンがいっぱいあるのです」
未検証パターンのページをめくり、うへー、と幼女フェイスでうんざり顔を作るシズク三号。
分担して人海戦術で検証できたら楽だったのは確かだが、
という話を愚痴まじりにこぼしたら。
「
HAHAHA甘く見るんじゃないよシズクや。たとえ
いや結構な検証パターン埋まるな????
そもそも今やってる
ドッペル部隊に俺の姿を模写させ、低レベル帯クリスタルの膨大な検証パターンを分担してもらえば、ほんとうに有望な素材を絞り込むまでの大幅な工期短縮が見込めるだろう。
加えて思い出したが――俺の代わりに高レベル帯の
現在は製作部門や諜報部門で万能サポーターとして活躍しているが、一時的に俺のところで借りても業務が滞るほどの影響はないはずだ。
なんで俺はこんな基本的な業務効率化を幼女に指摘されるまで思いつかなかったんだ? 転移前にもさんざん
「分担して素材の絞り込みをやる前提の検証計画に組み直すか……はぁぁ~~……」
俺が今までコツコツやっていた実験は無駄だらけの手遊びでした。衝撃の真実に休憩代わりの内職すらやる気が消し飛んでしまい、俺は大の字になってばったり倒れる。
飲食睡眠呼吸不要かつ疲労無効であろうと、意志力の欠乏はどうにもならない。いや魔法で活力をぶち込む方法がないわけでもないが、それをやろうという気すら起きない。我はゼロ。タトゥーが光る八本指のハゲマッチョではなく気力ゼロ。もう人間に変身してでも不貞寝してくれようか。
などと考えていたらマジで久々に眠りたくなってきたので、俺は〈
こっちの世界に来てからは生理機能もきっちり再現してくれるので、俺は人間に化ければ前々世と同じように飯を食えるし睡眠も取れるし多分やろうと思えばセックスもできる。
なにより他種族や自分自身についての感じ方が、発動中だけとはいえはっきり人間寄りに戻る自覚がある。
悲しいことに
「おっ……お、おぉ~。そうそう、これだよこれ。ん~
全身の知覚チャンネルが一斉に切り替わり、その鮮烈な刺激の飽和に圧倒された俺はいつものように語彙を喪失。これには何度やっても独特の感動がある。
懐かしい肉体の感覚を取り戻してしみじみ浸るのも束の間、やはり精神の疲労が負担になっていたのか、強烈な眠気が襲い来る。脆弱な人の肉体に化けたとはいえ俺も一〇〇レベル。このままゴロ寝しても風邪をひくようなことはあるまい。
「うえさまがおねむなのです」
「人間さんの姿は珍しいですー」
「シズクがおそばで護衛するのです」
「うえさまの安眠を死守なのです」
目を閉じて微睡んでいると、何やら柔らかいものが腹の上に寝そべり、両腕に抱きつき、頭の下に潜り込んでくる。
もちもち。
もちもちしている。
たまらぬもちもちであった。
幼女スライム四姉妹を枕と布団にして就寝。贅沢なんだか安上がりなんだかわからんが寝心地はたいへんよい。おまけにこいつら攻撃力こそ自衛程度でしかないものの、防御と回復にかけては専業プレイヤーと同等以上の水準で練り上げてあるため、性能的にはこの世界で最も安全に眠れる寝具と言える。ユグドラシルだったらR18規制違反(接触過多)でアカBAN喰らいそうだけど。
ああ――それにしても今日はよく働いてしまった。
俺らしからぬ勤勉さだ。いつになったら怠けられるのか。なんかヤン・ウェンリーみたいなこと言ってる自覚はあるが、残念ながら俺にあんなチートじみた将才はない。せいぜい原作知識持ってるだけのアンドリュー・フォークがいいとこ。高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処せねば。
ともあれ、おやすみ異世界。明日もよい日を。
スヤァ。