OVERLORD:The Invisible Watchmaker 作:Stormgren
「――見誤っていた。わが
カレルレンが去った後の
ゆらり、と立ち上がる。振り向く。
同じ衝撃を共有する仲間たちと、向き合う。
「我らは……栄光あるギルド『
カレルレン様はこのギルドも、御自身の存在さえも、大いなる目的のための道具に過ぎないと考えておられる。然るに我らも、その次元で思考できるよう追従せねばならない……」
未だ涙が止まらぬ者も多い。それだけの痛みと熱を、彼らの主は刻んでいった。
「よもや、至高の御方々が亡くなられていたとは……」
「けれど、多くの疑問が氷解しました。我らの使命も……託された願いの重さも」
「……いつまでも、泣いてる場合じゃないわ。
想いに応えられなければ、あたしたちは今度こそ、存在価値を失う……!」
ギルドマスター・カレルレンは、
そうと知っているから、彼らは常日頃より控えめな態度で仕えるよう心掛けている。あるいは、そうあれと設定された者なら、友や家族のように気安い態度を取ることも辞さない。
だが一人として、本心からカレルレンを侮ったり、軽んじたりする者はなかった。
ギルド拠点『
そんな彼らに、カレルレンは口癖のように言う。
――俺は知的労働はからっきしだからな? お前たちが頼りだぞ?
誰が信じるというのか?
ユグドラシルの終わりに何の前触れもなく発生した
なるほど単に賢いとか、頭の回転が速いとかいった次元には留まらないかもしれぬ。そういう意味では、彼の指導ぶりは
カレルレンというプレイヤーは、知者を超越した
カレルレン本人が聞けば、なまじ実績があるだけに否定できない勘違いを、正す言葉もなく嘆いただろう。
「オレもさ、そうあるべく望まれたからには、もちろん『人類』を守るつもりはあったけど……でも、
銀髪の少年、リーギリウムが自らの細い肩を抱く。使命と共に鍛え直された己の新たな輪郭を、確かめるように。
「……違ったんだな。ボスも、他の御方々も、みんな『人類』だったんだ。そりゃあ、この世で最も尊い種族ってことになるよな……」
「
異議を唱えたのは、金糸の刺繍も煌びやかな祭服の少女。
「どういう意味だよ、サティア? 〝りある〟では『人類』イコール人間だったんだろ。だったら、この不安定な世界で弱者の立場にある人間を救うのが、オレたちの仕事じゃないのか?」
首を傾げるリーギリウム。彼とサティアの間に知力の差はさほどない。にもかかわらず見解が相違するのは、〝多様なる知の集群〟としてデザインされたNPCたちの個性によるところが大きい。
だからこそ、彼らは議論をする。
亡き創造主たちと、最後の主たるカレルレンの願いを、より深く理解するために。
「思い返してみよ。あるじ殿は一度として、〝
そもそも『人類』とは何であろうか。〝りある〟であれば、それは人間と同義であると言うこともできた……じゃが、この世界ではそうもゆかぬ。
人間以外の種族も文明を築き、言語を疎通し、知性を有する。ならば儂らは、存続せしめるべき『人類』の定義を、この世界に適した形で捉えなおす必要があるのではないか」
「……少し前に、私も同じ疑問を抱いた」
サティアの提言に続くのは、主席参謀にしてNPCのまとめ役たるエルスワイズ。
「カレルレン様は人間種を『人類』の主な構成要素に含めておられる。それは間違いない。
だが、人間種にとっては大いなる脅威である亜人や異形を、この世界から排除しようともされていない。ならば目的は、単一種の繁栄ではなく……」
「『人類』の
黄衣の男、ヘスの呟きは、決して大きな声ではなかった。しかしその言葉は、誰もが聞き逃せない響きを帯びていた。
「重要なのが
「いちいち表現が冒涜的なんじゃよなあ、おぬしは」
サティアの揶揄に、ヘスはただ温かな、陰のある微笑で応えた。
呆れたような顔をしているサティアに、エルスワイズは現在進行中の作戦についての懸念を問いただす。
「しかし……我々にとっての『人類』が、超種族的な多様性を志向するならば。サティア、お前の任務は困難なものとなるのではないか? お前が派遣されたスレイン法国は、たしか
サティアは天を仰いで黙考し、数秒で一国の運命に関する再検討を終えた。
「ん~、まあ何とかなるじゃろ。有望な
一代で主義者どもを一掃せよと言われれば血の革命は避けられぬが、
「……あの。なぜ〝四百年後〟なのでしょうか」
律義に手を挙げて質問するのは、お下げ髪と眼鏡で真面目な気質を表現された魔女、ミハネ。
いくぶんか声を落として、サティアは答えた。
「あるじ殿の権能……断片的な未来視の限界が、おおよそ四百年後までだそうじゃ。そこから先の未来は見えぬ、と聞く。
加えて、そのころ大陸北西のある場所に、プレイヤーの
なにしろ、御友人の種族はアンデッド――
[memo]
■ギルド
『
・メンバー数三十六名の小規模ギルド。カレルレンがギルドマスターとなって立ち上げた。
・ランキング上位の某大手ギルドと提携し、マップやイベントに関する情報を融通してもらう代わり、外付けの武力部門として護衛・装備開発・戦技研究などを請け負っていた。
・ギルメン全員が
・カレルレンは当初、サービス終了まで力を隠したまま目立たずやっていくつもりだった。しかしフリーダムすぎるギルメンの暴走を制御し切れず、様々な奇行による伝説を残してしまう。有名なものとしては『雷公鞭レシピ特許事件』、『ジャバウォック最速地形ハメ裁判』、『アヴァター・オブ・アザトース野生化事件』、『人類には早すぎたワールドエネミー討伐マラソン』、『Perfect†Human公開暗殺事件』などがある。
・ギルドの紋章は、水槽の中に浮かぶ三つの歯車をモチーフとする。歯車の歯の数はそれぞれ五、六、七であり、これらは人間種(四肢+頭)、亜人種(四肢+頭+尾)、異形種(四肢+頭+翼など不定数)を示している。
■拠点
『
・ギルド『
・外観は浮遊する巨大な岩塊。実態としては、外殻表面に張り付けた擬態装甲で一枚岩にカモフラージュしており、真の姿は別にある。
・拠点構造物の周囲を覆い隠す雲の繭『
・NPC作成レベルは初期値2000、ここに初見攻略ボーナスと最高グレードの課金アイテムによる拡張が加わっている。