OVERLORD:The Invisible Watchmaker 作:Stormgren
おとぎ話のような国(1)
日々あくせく働いていたら、あっという間に転移から一年くらいが経過している。はえーよ。
これ四百回ぐらい繰り返したらもう原作パート入るの? 意外と時間なくない?
まあ過ぎた時間に限って短く感じられるものだ。実際は誰もが平等に時を消費している。俺も今日の分の仕事をまた粛々とこなすだけである。
ほいっと転移してやってきたのはギルド拠点のお膝元、霧に包まれた深い森。
モンスターやトラップやフィールドエフェクトを盛りまくって改造した結果、最近は周辺国の一部で『無明樹海』なるおどろおどろしい名が呼ばれ始めているという人工ダンジョン。この深部に、女王メイラス・レッドゴールドの治める『
あっちゃこっちゃ飛び回っててあんまり戻ってなかったから、今どうなってるのかは書類上のデータで大雑把に把握しているのみ。まずは急増する人口の受け入れと生活基盤整備に全力を挙げているところとは書いてあったが、実際見てみないことには実情も課題もイメージできない。霧を透かし見る程度の種族能力なら持っているが、ドキュメント越しに現実を透視する知力チートなど俺にはないのだ。
てなわけで視察がてら、歩いて森の中へ。
霧たちこめる樹海の外周部分は、外からの侵入者を拒む
カンストプレイヤーでも、強行突破しようとすればそれなりに消耗を強いられるだろう。だからといって森の中での戦いを避けようと高く飛んでしまえば、上空の『
もちろん防衛線を形成するモンスターどもは
まともに踏破しようと思えば一日あっても足りないので、要所で転移ショートカットを挟みつつ、さらに奥へ奥へと進んでいく。
樹海深部では防衛戦力の配置に一切の容赦がなくなってくる。ここまで来た侵入者は〝追い返す〟のではなく、〝逃がさない〟よう対処することになるからだ。
このへんから木々に代わって、巨大キノコが森のように群生するエリアが点在し始める。
ヘスの配下が生やした白くて丸っこい巨大キノコは美味かつ栄養満点らしく、餌を必要とするモンスターと共生することでギルド資産から食費を割かず自給自足が可能なんだとか。本来肉食の魔獣までもっしゃもっしゃキノコ喰ってるのはシュールだが、体調に問題はないという。ほんとかよ。
他にも敵だけを選択的に害する魔法毒素をばら撒いたり、死んだ味方モンスターを『
ここはまさに補給拠点を兼ねた防御陣地。もっと戦力が充実してくれば、いずれは本物の森林型ギルド
余談ながらユグドラシルにはキノコの生成・操作に特化した
どうも日本人にはキノコびいきの気質があるように思えてならない。まあ国民的ゲームの主人公からしてキノコ食って大きくなるしなあ。実をいうと俺はたけのこ派だが、異世界に泥沼の宗教戦争を持ち込むつもりはないので、この信仰は墓まで持っていくつもりでいる。
現時点での最終関門であるキノコの森を抜けていくと、霧が晴れ、いよいよ『
森の奥に切り拓かれた、広大で起伏に富んだ土地。丘があり、谷があり、岩山がある。あえて森の一部を残して整えられた、エルフ好みの人工林も点在している。
それらの合間の平地には市街区が広がりつつあり、今も多くの家屋が建設中。建物は建築様式も素材もバラバラ。木造、石造、土蔵造り、テントに高床式にツリーハウス、岩壁をぶち抜いた集合住宅型の洞窟群なんてのもある。
上空を分厚い雲に覆われ、周囲を森と霧に囲まれているというのに、開拓地一帯は明るい。『
ちょっと遠くの空には、マジックアイテムの人工太陽がふわふわ漂っているのも見える。
あれはユグドラシルから持ってきたアーティファクトで、地下や屋内の拠点によく使われるアイテムの一つだ。田畑など農業ブロックの上に浮かべておくと、収穫量にちょっとしたボーナスが入る。もちろんただの照明として使っても良いし、外界の昼夜に合わせてタイマー設定で光量を調節することもできる。近づいても熱くはないが、日光に脆弱性を持つアンデッド等へのペナルティはしっかり発生する。
そんなアイテムデータを思い出しながら待ち合わせ場所へ。
タイトなスケジュールで働いている二人がわざわざ出迎えてくれるというので、待たせちゃ悪いと少し早めに来たのだが、なんと二人とも既に俺を待ち構えていた。
「ようこそカレルレン様。我らが王国へ」
「お……お待ちしておりました!」
美貌の宰相にして謎めいた賢者、エルスワイズ。
未熟ながら懸命に国を導く若き女王、メイラス。
国民の間ではそんなふうに並べて語られているという二人が、今日は直々に俺を案内してくれる。贅沢な話だ。
「忙しいとこありがとね~。別に俺ひとりで勝手に見て回るんでもよかったのに」
「フ……ご勘弁を。未だ形成途上の国、見るべきものはさほど多くありません。至高の御方に無駄足を踏ませては、臣下の名折れとなります」
国の運営サイドで厳選した見どころを、スポット的に紹介してくれるということらしい。それはそれで能率的だが、俺としては目的なくブラブラうろつくのも好きなので、後日またお忍びで来てみるとしよう。
今日は素直にこいつらのガイドに任せる。ということで、二人に続いて歩き出しながら、まずは国の概況から聞いていく。
「人間種を中心に、現在も周辺地域から、解放を望む奴隷などを集めております。
総人口は既に二百万人を超え、今後もさらに増える見込みです。目下の課題は、何よりもまず彼らの生活基盤の整備となります」
事前に聞いていた通りで、まあそりゃそうだろうな、という感想。建国事業は始まってから一年も経っていない。この短期間でいきなり〝高度な発展を遂げた国〟なんぞ見せられたら卒倒する。王様優秀度ランキング一位の売国プリンセスでも無理だろう。
むしろ種族も民族も違う連中を雑多に集めておきながら、主な課題が〝生活基盤の整備〟
「えっと……住居も食料も、まだ一部は国の補助ありきで成立しています。といっても、自立に向けて働いてもらう代わりの報酬なので、その、名目上は無償の施しというわけではありません」
「いいと思うよ~。ちゃんとベーシックインカムとして計画的にやるならともかく、場当たり的に生活保護ばら撒くだけだとみんな堕落しそうだし」
エルスワイズほどすらすらとは説明できていないが、メイラスもしっかり政策の趣旨や問題点を把握しながら話してくれる。もはやお飾りの君主なんて失礼なことは言ってられない。ていうか俺が一番お飾りなんじゃねえかな。
奴隷やら難民やらの人数が集まりすぎて、正直あっという間に食糧難が起きるんじゃないかと俺は危惧していたが、どうもそこはヘスと配下の生物部門がひと頑張りしたらしい。
まあヘス自身がバフなしの飲水と食料を無限に生み出す(ユグドラシル的には微妙な)職業スキル持ってるし、同じ能力が使える自分の
そのへんの生産力をフル動員すれば、力業のマジカル☆炊き出しでスタートアップはなんとかできてしまうのかもしれない。
ちなみにヘスは凄腕信仰系ボランティア術者という
少し歩くと、畑のようなものが見えてくる。
〝のような〟と言ったのは、妙に細かく区分けされていて、畑にしては効率が悪そうだからだ。家一軒分くらいのスペースで麦が育てられているかと思えば、その横では異様にデカいカボチャがゴロゴロしている。
さらに隣では、何人かの人間が地面から何やら丸っこいものを掘り出していた。馬鈴薯だろうか? おいおい危ないぜ
「あれは農業実験区画ですね。生産サイクルや品質の確認用に、土地を小分けにして条件を変えながら作物を育てています。味や生産性において良好な結果を出したパターンは、より大規模な作付面積を使える場所へ順次投入されてゆくわけです」
俺の疑問を先回りして読み取ったようなエルスワイズの解説。察しが良すぎて怖い。
その後も農業的なアレコレの話がしばらく続く。
「食料自給の体制を作っていくため、農業に関しては特に力を入れて推進しています。
「ふむふむ」
「懸念されていた耕地面積の不足については、連結させたエルフツリーに土を汲みあげた樹上農園で、空間を立体的に活用し……」
「ほうほう」
これ俺が聞いても仕方ない話では? と思いつつ相槌マシーンに徹していると、いかにも農民ですって感じの鎌を持った老人が畑から上がってくる。種族はおそらく人間。
今日の俺はモブ顔エルフの男に化けているので、ここの住民に怪しまれることもない。老人は俺の方をちらりと一瞥したが、一〇〇レベルのモブ
けっこう敬われてんじゃん、と思った俺の前で、顔を上げた老人はメイラスに温かな笑みを向ける。これは国王に対する敬意というよりは、むしろ――
「やあ女王様。またこんな国の端まで駆け回っておるのですか? 駄目ですよ、忙しいからといって休みもとらないのは。
「もおおおお! ユシフさん、わたしのことは心配しなくていいですから! ほらまたそんなに腰曲げて、せっかく治してもらったのにすぐ悪くしちゃいますよ。刈り取りなんて若い人に任せればいいんです、どうせ元気があり余ってるんだから――」
女王陛下直々に腰をさすってもらって、老農夫ユシフは畏れ多いそぶりも見せずほっこり顔。あっうん大体わかった。これ完全に〝頑張る孫娘を見守るおじいちゃん〟の視線だわ。
畑の方を見れば、似たような笑顔でメイラスに手を振っている農民たち。お前らも保護者目線かよ。そりゃ人間からすれば二十代前半のエルフなんて十歳ちょいの子供にしか見えないだろうけどさ。
一行が畑の先へ進んでも、すれ違う国民たちの反応は似たり寄ったり。
果樹園で果物を育てていたエルフたちは、同族の子供が重責を担う姿に痛ましさでも覚えているのか、潤んだ目で幼い女王を見守っていた。たまに話しかけてくるのはだいたい女で、「この子は私たちが守ってやらなければ……」みたいな母性的連帯感を共有しているように思える。氏族も違うだろうに、その温度と距離は一つの大きな家族に近い。
家畜小屋らしきものを建てていたドワーフたちは、メイラスを見つけると遠くからでも大声で呼びかけてきた。「おうヒヨッコ女王! 元気でやっとるか!」とかそんな具合。嫌われている風ではまったくない。細い体で懸命に大声を出し返すメイラスも、王が民を労うというよりは、外見相応の子供が知り合いのおっさんたちに挨拶しているようにしか見えない。
「もう少し威厳というものを持て、とは常日頃から教えているのですがね」
エルスワイズは帝王学の教師として大いに不満らしく、冷めた視線で生徒に落第点を付けた。実際メイラスと国民たちが、ずっと今の関係性でやっていくのは無理だろう。
でも俺は、あの光景をちょっと眩しく感じる。
まだ若いメイラスには、人生経験も実績も権威も実力も、ついでに体格も伴っていない。民に頼られ導く王というより、ファンに支えられて立つアイドルといった方が近い。
今は、それでいいんじゃなかろうか。彼女はどうやら人々に
「そんな深く考えて選んだわけじゃないけどさ。いい王様になるんじゃないかな、あいつ」
推定ラナー級のチート参謀であるエルスワイズが実務面を差配している以上、まずどうやったってこの国は発展する。メイラスの実績は勝手に積み上がっていく。そこへ本人の人柄による人望が合わさったらどうなるか? 将来が少し楽しみになってきた。
女王様が国民に親しまれているのはいいとして、あれじゃあ舐められちゃって治安維持とかに支障出るんじゃないの? と懸念事項を伝えてみれば、エルスワイズは市街区の入口に並んでいた
「問題ございません。女王本人に武威がなくとも、彼女に指揮権を預けた兵たちが、充分に暴力装置として機能しています」
字面が物騒なので日本でも散々誤解を招いていたが、〝暴力装置〟というのは国家の物理的強制機能――警察とか軍隊とか――全般を指す社会学用語であって、本来なんらネガティブな主義主張を含む言葉ではない。ただ実際露悪的に聞こえないこともないので、そういう専門用語を会話の中でごく自然にパスしてくるエルスワイズのコミュニケーション能力がちょっと心配になる。
まさか現地人に対しても同じような言葉遣いしてねーだろうな? 確かにこの暴力あふれる異世界なら、ウェーバー流の政治力学は
で、呼ばれて寄ってきた
身長だいたい二・三メートル。右手には赤黒いオーラの漂うフランベルジュ、左手には身体の半分以上を覆えそうなタワーシールド。
どう見ても
「単純な警備機能だけでなく、種族間の摩擦を抑える役にも立っているようです。
持ち場に就いている別の歩哨――アンデッドだったり悪魔だったり、見た目の威圧的な奴が多い――を見れば、そいつらの身体にもそれぞれ看板が提げられていた。「
「ダッッッッセェ! ていうか
「試験的に国営の学校を開設し、
あーそういう。わざわざ平易な漢字にまでルビがついてるのも、読み方を覚えさせるためか? 意外と合理的に考えられてる施策なのは解ったけど、とにかく見た目がシュールすぎる。プレイヤーが見たら笑うぞコレは。
何度目かになる国民とのふれあいタイムを終えて戻ってきたメイラスに、エルスワイズは雹のように冷たく硬い声をぶつけた。
「王が国民の機嫌を取って走り回るだけでも醜態だというのに、そんなことにかまけて我らが
不意討ちを喰らってメイラスがフリーズしている。いきなりだったので俺もびっくり。
「あっ、も……申し訳ございません、お師匠様!」
「愚か者。私にではなく、まずカレルレン様に心底から詫びよ」
即座にその場で土下座しようとするメイラスを、俺は咄嗟に〈
「いやオイ待て待て。公衆の面前で女王がモブ顔エルフに土下座はマズいだろ」
「あぅ……その、ごめんなさい神様……わたし、いつまで経ってもお師匠様の言う通りにできなくて……」
謝罪の声に泣きが入っている。しかもなんかいつの間にか神様にされてて草。確かに俺も神格レベル持ってるっちゃ持ってるけど、そんなもんカンストプレイヤーなら珍しくもないし、ドラゴンボールも作れねえ無能神だからそこまで畏まらなくていいよ。
エルスワイズは弟子の度重なる失態に額を押さえているが、逆にこいつの教育計画がスパルタ過ぎたりはしていないだろうか? と俺は心配になる。現地の人間種を
冷徹な政治的判断とかそういうのはエルスワイズ自身がやればいいのであって、メイラスには当面マスコット的存在でいてもらったら? ……という話をしたところ、案の定われらが名参謀どのは「ふむ……王はあくまで象徴……なるほど、御身はそこまで先を見据えて……」とか抜かし始める。
だいたいメイラスには国主としての役目以外もいろいろ仕事をさせてしまっている。主に各種実験の現地人協力者枠として。そっちでは興味深い成果を出していたりもするのだから、ちゃんと褒めてやらないのはアンフェアではなかろうか。
そのための前フリとして、少々強引だが俺は話題転換を図る。
「そういや、
神様扱いしている相手からの不器用なフォローに、申し訳なさそうな顔でメイラスが答える。
「は、はい。〝ぎるど〟の皆様のご協力で、自分の力について深く知ることができました。
度重なる検証で突き止められた、メイラス・レッドゴールドの
名づけるとすれば、それは『量器の魔眼』。視界に納めたあらゆる種族のクリーチャーに対し、二色の
黄色のオーラは魂の器の大きさを表し、その内側に見える緑のオーラは器がどれだけ経験で満たされているかを表す――本人の解釈だとそんな感じになるらしい。だから成長限界に達した人物や、最初からレベル固定で生み出される召喚モンスターなんかは、緑のオーラしか見えない。器が完全に満たされてしまっているから。
最初に概要を聞いた時点でステータス計測系の力じゃないかとは予想していたが、まさかレベルキャップまで覗けるとは思いもしなかった。将来大成する人物を見抜けるってだけでも人材確保の観点からすると大概チートだし、野に埋もれてるプレイヤーの子孫とか見つけるのにもめちゃくちゃ有用な気がする。たとえば国民が集まる式典の場で上限レベル七十超のデカい黄色オーラ出してるような奴がいたら、「神人やんけワレェ!」ってことで即スカウトできるわけだ。厳密には六大神の子孫以外〝神人〟って呼ばないらしいけど。
現在レベルも一緒に視えるというのがまた強力で、高レベル帯のやべーやつを一発で判別できるため、プレイヤーや
有能キャラ発掘OK。危険分子の察知もOK。いや普通にこれ王の力でしょ。何なん? ギアス契約者か?
正直メイラスが女王としてダメダメだったとしても、この能力のためだけに保護しておく価値は充分ある。エルスワイズ先生はこの子が代えの利かない人材だということをもっと理解すべきだと思います。……もちろん俺よりよっぽど解っているに違いないのだが。
「他にもさー、ケイトにスキルいじらせたり、ヘスに生体組織提供してもらったり、『壺』でレベル下げたりもしてるわけじゃん? 女王を引き受けてもらった報酬もまだ払ってないのに、働かせてばっかりでこっちが申し訳なくなってくるんよ」
農民のじいさんと似たようなことを言ってしまったが、俺から見てもメイラスはいつ休んでいるのか分からないくらい精力的に働いている。どう考えても装備かなんかで飲食睡眠不要+疲労無効にされてねーかこれ。エルスワイズに聞いたら「あれは人間種としての運用をしておりませんので……」とか言われそう。
いちおう前にも本人を訪ねて、正直キツいんじゃないかと訊いてみたことがある。
結果、すべて自分が望んでやっていることだから……と慇懃に謝絶されてしまった。
こうなると、メイラス自身が病んだり助けを求めたりしている様子もないのに、俺がその高すぎる勤労意欲に水を差すわけにもいかない。今のところ彼女は元気で、充実した日々を送っているように見えるのだ。
そんならせめて報酬はきっちり与えようね、ということで欲しいものやしてもらいたいことがないか折に触れて訊いているのだが、こっちも固辞されているのが現状。「わたしの命を救い、氏族に未来を与えていただいた恩も返せていないのに、褒美など受け取るわけには……」の一点張り。なんかうちの連中と似たようなこと言ってるんだけど、きみNPCでしたっけ?
しかしメイラスがNPCめいた狂信者になってしまっているなら、対NPC用の行動制御ノウハウが応用できるのではないか――そんな発想の転換が、俺の「こっちが申し訳なくなってくる」発言に繋がっている。押して駄目なら引いてみる、要は原作アインズもやってた「無欲も過ぎれば不快である」メソッド。
社員が給料もボーナスも受け取ってくれませんって? う~ん、じゃあ受け取るまでパワハラで圧迫するしかないね! ご覧の通り我が社はアットホームな暗黒秘密結社であり、社員どもの自我は研修されています。ごあんしんください。
「ねーねー女王様~、お願いおねが~~い☆ ――このままだと俺、申し訳なさのあまり頭がおかしくなって、国民に例のアレを投げつけ始めるかもしれない」
「例のアレって何です!?? ……うぅ、もう、わかりました! わかりましたから!
その、無理なお願いでも怒らず、聞くだけは聞いていただけますか……?」
早速ろくでなし社長のパワハラに屈する新入社員メイラスちゃん。もちろん聞くだけならお安い御用なので俺は頷く。もし叶えられない願いだったら「その願いは私の力を超えている……」ってテンプレエラーメッセージ吐いとけばええんやろ。知ってる知ってる。
――そんなジャンクPC以下のポンコツ思考を、二秒後には後悔した。
「……ミハネ様から聞きました。神様たちの使う高位魔法には、死者を蘇らせることさえ可能なものがあるって。
わたしの、父と母を……生き返らせていただくことは、できませんか?」
わーお。