OVERLORD:The Invisible Watchmaker 作:Stormgren
ナマモノは新鮮なうちに甦らせよ
時間というやつは本当に、意識していないといつの間にか流れ去っている。
転移から一年経った頃にも似たようなことを考えていたはずだが、気付けばさらに数年が過ぎた。この間とくに大きなイベントはなく、日々の地道な研究や探索を続けながらNPCたちの報告を聞いたり指示を出したり。よく言えば平和、悪く言えば暇な期間が続いたと言える。
もちろんこれは俺の個人的な所感に過ぎず、ギルド拠点の足元で『霧の王国』は目覚ましい拡大発展を続けていた。キーレンバッハたちが周辺諸国に仕掛け始めた各種の工作によって、樹海の外の情勢もいろいろと動いている。
うちのギルドの生物部門はまた新しいモンスターを作れるようになり、製作部門は日々この世界で有用なアイテムの開発・生産に邁進中。科学技術部門はユグドラシルに存在しなかった新兵器を続々と実用化し、諜報部門は気になる情報をいくつも仕入れてきている。
場所や出来事に関する、最近の主な発見で言えば――
亜人たちの大国で、支配階級のみが立ち入りを許されるという〝
なぜか〝八欲王の
霧が出ていないし、アンデッド多発地帯にもなっていないカッツェ平野。
大陸の地下、どこまで広がっているかも不明の、迷宮めいた巨大な空洞網。
高度一万八千メートルあたりを超えて上昇する者に、どこからともなく浴びせられる謎のレーザー攻撃。
……うん、ちょっとマジで意味わからん厄ネタも混ざってるけど、とりあえず危急の案件はない。
自分の目で確認しに行った八欲王のギルド拠点が
今日は法国へ出向いて、サティアからの情報共有を受けることになっている。なんでも立ち入り許可をもらった隠匿書庫で興味深い文献が続々と発見されており、俺が捜索を依頼していた情報もある程度の整理がついたとか。
六大神の教えによるものか、周辺国じゃ文盲が当たり前の時世にも識字率が高く、几帳面に記録を残しているのは法国人のいいところだ。この教育水準の高さは今後も継承・発展させていってもらいたい。
「御身が自らここへ来ずとも、儂の方を呼び出せばよかったであろうに」
人払いが徹底された薄暗い地下書庫で、祭服を纏う金髪の少女――サティアが苦笑ぎみに俺を出迎える。
宗教部門統括NPCであるサティアはここ数年で法国中枢をすっかり掌握しており、望めばこのように国家機密だらけの書庫を貸し切りで利用できるまでになっている。彼女にとっての〝主神〟である俺が今日この場に来ていることは、法国の神官長クラスでさえ知らない。
「まー俺もここ見たかったし、持ち出しNGの資料なんかもあるだろうから多少はね?
んで、発見した情報っていうのは……」
「めぼしい書物はそこの机にトピック別で積んでおるから、のちほど確認されるがよかろう。
まずは頼まれていた件じゃな――結論からいうと、
「おお~」
思わずぽふぽふと拍手。正直けっこう無茶な条件出したと思うので、該当者ゼロでも仕方ないくらいの期待しか持っていなかったんだが。
サティアが資料の山から取り上げたのは、太い紐を通された羊皮紙の束。
「
「どの辺から見れば……おっと、そのままじゃ読めないんだった。〈
発動するのは、ユグドラシルでダンジョンの碑文なんかを解読するときに使っていた魔法。原作でセバスとかが使ってた翻訳アイテムに込められてる効果もこの系統である。
ゲームだと日本語の字幕が出てくる感じだったが、この世界では
「この量なら冒頭から順番に行ってもいいか? ええと、何々……」
〝こんにち八欲王とも称される大罪者たちは、それまで世界を支配していた
かの大戦においては、古来無敵と信じられてきた名だたる上位竜が、開戦劈頭より次々と墜とされていたことが判明している。例を挙げれば――〟
と、そんな序文の下に列挙された竜王の名前は、どれも原作では見たことのなかったもの。
エトセトラ、エトセトラ――
「……この辺の連中が〝候補者〟か?」
視線を向けてみると、サティアはかぶりを振った。
「いや、そやつらは敢えて除外しておる。逸話の半分でも本当なら……いざというとき、
「今の俺たちでもヤバいの?? こわ……触らんとこ……」
サティアが付箋を付けておいてくれたので、いちおう名が挙がっている竜王たちの伝説についてもちらっと覗いてみたが、嘘か
神話級ドラゴン諸氏には何の悪感情もないが……敵に回るリスクを考えると、正直死んでてくれてよかったと思ってしまう。つーかこの化物どもを根こそぎにしていった八欲王はマジでなんなの? 〝
ときどきサティアに質問したり、注釈を挟んでもらったりながら、歴史書と回想録の中間めいた資料を読み進める。
この文書の著者は法国の神官にしては珍しく、六大神や八欲王ではなく
土神の信徒として歴史の編纂に生涯を捧げた著者の記述は、ところどころに法国人らしい神への賛美やら八欲王への悪態やらが挟まりはするものの、肝心の竜王に関しては概ね中立的な記述を心掛けていたことが窺える。おかげで作者の思想信条によるバイアスをあまり気にせず読めたのは僥倖と言えるだろう。
で、欲しい情報が載っていたのはしばらくページをめくっていった先。
人間種と竜種、法国と
「ここじゃ。人間種や六大神との交流が特に多く、のちの世界盟約にも関わったとされる、五体の竜王……」
「
いずれも、やはり俺の知識にない竜王たち。どんな連中だったのだろうか。何を愛し、何を憎んで、何のために戦い、死んでいったのか?
こうして未知に触れるたび、原作に書かれていたのはこの世界の一部分に過ぎなかったのだと思い知らされる。
「後ろの二体は除外してよい。こやつらは対プレイヤー強硬派に転向しておるし、世界盟約の承認に絡んだのも、法国を封じ込めておくための方便といった面が強かったようじゃ。
残りの二体は……うむ。〝候補者〟として適当であろう。どちらかといえば穏健派に属し、〝
どうする、あるじ殿。相手が相手ゆえ、リスクをゼロにはできんが……
見上げてくるサティアに不安の色はない。少しでも翻意を促されるようならやめようと思っていたが、これは〝何かあっても対応可能〟という自信の表れと見ていいだろう。
転移直後に比べれば、ギルドの戦力的充実度は目を見張るほど向上している。竜王に対して有効な駒も増えた。サティアが大事を取って除外したような神話級の相手でなければ、不足はないはずだ。
ただ純粋に意思決定だけを求めてくる少女の瞳に勇気づけられ、俺は承認の頷きを返した。
「なるほど。じゃあ……やってみようか、〝
蘇生研究の進展により、百年以上前に死んだ者であっても、一定の条件を満たせば――そしてもちろん、当人の魂が同意すれば――この世に呼び戻すことは可能であると判明している。
だが無期限ではない。たとえば原作の年代になってから五百年前の人物を遡って蘇らせようとしても、いまの理論的予測だとそれは難しいということになる。魔法やスキルの性能的限界とは別に、魂が応答可能な個我を保っていられる期間もどうやら有限らしいからだ。
そういうわけで三年ほど前、今のうちに蘇らせておくべき人物はいるかという検討と、蘇生可否の予備的調査をNPCたちと共に始めた。
まずは六大神。スルシャーナ以外の五人は人間であり、死亡時すでに高齢だったため蘇生不可。スルシャーナはアンデッドなので寿命の問題はないが、リーギリウムの確率予測によると蘇生成功率は0%固定。追加調査と検証の結果、どうやら
余談ながらスルシャーナは直筆の〝手記〟が発見されていて、リアルでは学校教師だったとか、後世に伝わっている名前はプレイヤーネームではないらしいとか、いろいろ面白い情報が出てきている。
道理でユグドラシル時代にどこのサーバー探しても〝スルシャーナ〟ってプレイヤーネームが見つからなかったわけだ。原作読んでるときは名前の元ネタが
この〝手記〟に関しては文書そのものが聖遺物であり、すっかり法国首脳部の信仰を獲得しているサティアであっても、手続きを踏まずには持ち出せない。加えてろくに整理されておらず、単純な量が膨大(なにしろ百年分近い!)なので、俺はNPCたちが整理・抜粋してくれたごく一部しか読めていなかったりする。そのうち時間を取ってゆっくり確認しておきたい史料ではあるんだけどな。
六大神本人が駄目なら、現存するはずの
文献によると、スルシャーナが〝放逐〟されてほどなく
俺はてっきり法都中央の大神殿か、その地下あたりに六大神のギルド拠点があるものと思っていたのだが、サティアが確認した〝扉〟は不活性化された〈
もしかしてダンジョンそのものは全然別のところにあって、ポータルで出入りするタイプか? だとすると別の出入り口か、拠点本体を見つけないことには、従属神たちとも接触できないということになる。
二百年後、魔神戦争の勃発を止めようとかは今のところ考えていないので、見つからないなら見つからないでもいいんだけど……六大神のNPCが法都に
スルシャーナの第一従者とやらはどうした? そいつがこの時点で法国を離れているのは〝正史〟も同様だったのだろうか。それとも過去時点で俺の知らない何らかの分岐が発生して、第一従者(仮)が既に滅んでいたり自分探しの旅に出ていたりするのだろうか。わからん。原作でも十六巻までに本人の登場シーンなかったしな……。
で、次に蘇生を検討されたのが八欲王。
こいつらはなにしろ確実な情報が少ない上に、視点も評価も錯綜していて調べるほど混乱が深まる有様。ツアーはたまに鎧と会ったとき訊いてみても
じゃあいっそ
死体なしの蘇生にはまず
訳あって
まあ初遭遇時ツアーのブチ切れっぷりを考えると、八欲王を一人でも現世に帰還させるのは、いくらなんでも残存する竜王との対立リスクが高すぎる。蘇った当人が俺たちの敵に回る可能性だって小さいとは言えない。
仮に諸条件をクリアして蘇生が可能になったとしても、やっぱり実際にはやらないだろう、というのが俺の結論。……本人たちの意図や人格がどうであれ、流石にあそこまでやらかしスコアが積み上がってるとねえ。
しかし実見したギルド拠点が
チート竜王の大軍と相討ちになったとかならともかく、プレイヤー同士の内輪揉めごときで、本当に死んだのか? ――あの〝リアルワールドチャンピオン〟が?
いちおう拠点NPCが健在っぽいので、うまくすればそのうち内情を聞きに行けるかもしれない。どっちみち蘇生させない方針なら急ぐ必要もなし、これは生き残りの竜王たちを刺激せずに出入りする目途が立ってからでもよさそうだ。
プレイヤー以外にも、六大神や八欲王の時代を生きた現地人を蘇らせて当時の話を聞く、という案が諜報部門から出た。
これは比較的低リスクなのでサクッと承認出して、生前の立場や人物像を厳正に審査したうえで候補者を選び出し、既に何名かの蘇生実験・事情聴取に成功している。
まあ現地人はメイラスの両親とかで実績あるしね。法国みたいにしっかり戸籍や死亡記録残しといてくれる行政機関があると、死体が残ってなくても蘇生しやすいのでたいへん助かる。
この「蘇った現地人たち」から得た情報が、またいろいろと胡乱な伝説やらプレイヤーたちの意外な側面やらを明らかにしつつあるのだが……とはいえこれも、結局は巨大な力に翻弄されるしかなかった民草側の視点。俺たちが知りたいと思っている情報の核心部分には手が届かない。
六大神は実際どういう連中だったのか?
八欲王は本当にただの凶悪DQNプレイヤー集団だったのか?
竜王たちはどんな風に生きて、何を求めているのか?
八欲王と竜たちの大戦はどういった経緯で始まり、どのように終わったのか?
そんなこと知らなくたって今後の事業に支障はない、と言えばそれまで。でも知っていれば避けられる地雷や落とし穴は前途にあるかもしれず、それを避けるための情報を得るチャンスが今にしかないとしたら、やっぱり知っておきたいと俺は思ってしまう。
あとまあ単純に気になるっていうのもあるけど。歴史研究の原動力って案外こんなもんなんじゃないかと思う。
なぜ知りたいのか? ――そこに謎があるからだ。山があるから登る、という登山家の気持ちが少し解る……と言ったら怒られるだろうか。
かくして歴史のメインイベント周りの情報を補完するため、最後に蘇生を検討されたのがここ百年くらいのうちに死んだ
ほとんどが八欲王との戦争で殺されているはずだから、仮にユグドラシル式の蘇生を受け入れたとしても、おそらくプレイヤーに対し敵対的な態度を取る者が大半だろう。こちらとしても〝ただの敵〟を蘇らせたところでメリットが薄いので、こういうのは調査の段階で候補から弾いていく。慈善事業じゃあないからね。仕方ないね。
狙いどころは、それらの〝大半〟に入らない可能性のある例外。
すなわちプレイヤー・人間種・ほか現地の『人類』候補種に対して――少なくとも戦前の時点では――特に友好的だった、などの記録が残っているような
ツアーがぽつぽつ漏らす昔話と、法国をはじめとする大陸諸国に残された断片的な記録から、竜種のライフスタイルについては意外なほど多様性に富んでいたことが分かりつつある。
となれば、人間の世界にときどき変人・変態・数寄者・傾奇者が生まれてくるように、竜族にも弱小種族と積極的に交流を持つ変わり者がいたかもしれない。そういう特異個体なら現地文明から見ても目立つだろうし、記録や伝承にだって残るはずだ。
ここから更に「敵に回ったとき対処不能なほど強力ではないこと」や「ツアーとの関係が特筆するほど劣悪でないこと」などの付帯条件を加えて絞り込み、当然ながら蘇生に必要な情報(体組織の一部でも残っていれば条件はだいぶ緩和される)が手に入るかどうかも調べてみて、なお該当者が残るようだったら蘇生を検討する……という、わりと無茶な前提で調査を始めている。
駄目で元々。「やっぱりそんな竜いなかったよ」で終わって当然の条件設定。いたとしても「汚れた魔法の世話になるのは御免でござい」と蘇生を拒否られる可能性は大いにある。
そうして徒労に終わるかもしれないことを全て承知の上で、諜報部門はじめ
それが最後に残った二体の蘇生対象候補者――〝
とはいえ今回は即日決行というわけにもいかない。事前に準備が整っていて危険も少なかった、メイラスの両親の時とは違う。
より詳細なターゲットの情報や、巨大なドラゴンを蘇らせても(場合によっては暴れられても)問題ない場所の確保、いざというとき鎮圧できる戦力の配置、交渉が成立した場合の段取りなど……やると決めてから実行までに必要な準備は、まだまだある。竜王二体の蘇生を執り行うのは、早くても数日後とかになるだろう。
その後もサティアが法国の記録から見つけたいくつかの情報について共有を受け、その場で方針を決定したり追加調査を指示したりすること小一時間。今日ここで済ませておくべき用事は、凡そ片付いた。
なぜか途中から俺の膝の上に座っていたサティアが、重さを感じさせない動きでふわりと飛び降りる。
「では、儂はそろそろ行くとしよう。竜王の蘇生に際して、諸々の準備をせねばならぬしの。
……あるじ殿はどうする? まだここの書物を見てゆくかや」
「そうだね。せっかく分類してくれてるわけだし、もうちょっとこの辺の資料を読み込んでおこうか……」
竜王復活計画に関しても、実務的なことはNPCに丸投げしておけばよろしくやってくれるので、俺が蘇生実行日までに忙しく駆け回る必要はない。
いまは他の仕事もそんなに溜め込んでいないことだし、この機に法国秘蔵の文書類を読み漁って、元オバロ読者としての探求心を満たすのもいいだろう。
そんなわけで、俺と違って暇ではないサティアが出て行ったあと。
いつも護衛兼秘書として装備の一部に偽装させているシズク二号を、ときに即席司書として・ときに資料読解の御伴に使いながら、俺は心ゆくまで石造りの地下書庫に籠った。
知らないことばで綴られた、数多の物語が。
歴史が。記録が。
伝承が怪談が与太話が。
魔法の力で理解可能な情報に変換されて、辿り読む視線の先から流れ込んでくる。
六大神の降臨。
亜人豪族との戦い。新天地への脱出行。
ユグドラシルの力の異質さ。
希望と絶望の地。
竜王との衝突、そして対話。
神人。天の理に祝福されし子供たち。
神々の昇天。
八欲王、その忌まわしき名と称号。
消された王。世界を歪める力。竜との盟約。
闇神の放逐。大戦。竜の時代の終焉。
弱き人の子の罪。従属神の隠遁。
御供に捧げられし乙女。
八欲王の滅び。
神亡き世界。法国の再出発。
人類の守護者であれ。それこそ神の遺命にして、我らが贖罪――
人間への変身も解除し、疲労なく飲食睡眠呼吸不要の異形種ボディで、ひたすらテクストの海に潜り続ける。庫内は光源が〈
飯も食わずトイレにも行かず眠りもせず、ただ古文書を貪り読みながら図書館に入り浸る。文系学生の夢みたいな時間。前々世で大学通ってるときにやりたかったなコレ。
おかげでいろいろと新しい知識や興味深い気付きも得られたが、そんな営みに没頭し切っていた俺はまったく時間感覚を喪失してしまい、サティアが戻って来たときには読書タイム開始から実に
「んで、呼びに来たってことは……もう準備できたの? 意外と早かったな」
トップが三日間本の虫になってても組織の業務が滞りなく回るのって素晴らしいね!
ある意味理想のギルド運営体制が出来上がっていることに現実逃避気味の感動を覚えつつ、俺は(まったく実感がないものの)数日ぶりらしいサティアからの報告を聞く。
「まさか本当に、あれからずっとここへ籠ったままとは……あるじ殿も存外に書痴じゃなあ。
疲れず眠らず、飲まず食わずで働けるのはおぬしだけではない。三日あれば、我らにとっては充分な作業時間を確保できる。
儀式場の設営も、すでに完了しておる。いつでも始められよう」
そういやこいつらブラック労働を至上の喜びとするド有能ワーカホリック集団だったわ。一日八時間労働の前提でNPCどもの生産性を測ってはいけない(戒め)
ともあれ引き延ばす理由もないし、この書庫にはまた時間が空いたとき来ればいい。いまは未知なる竜王との対面を優先するとしよう。
「おーけー、すぐ行こう。文書類の片付け方がわかんないけど、このままでいい?」
来たときよりだいぶ散らかってしまった机の上の紙資料たちを指すと、サティアは微苦笑と共に小さな手を振った。
「よいよい、それくらいは司書に任せようぞ。儂から申し付けておくゆえ、あるじ殿は先に
あ、どこでやんのかと思ってたら
後片付けは頼んでしまっていいとのことなので、俺はさっそく『
うちのギルド拠点も外からの転移は原則遮断しているが、セキュリティ管理者のリーギリウムが優秀なので、彼の許可を得た人物だけは直接転移も通すという運用ができているのだ。
余談ながらこの選択転移フィルタ、ユグドラシルの頃には拠点システムや設置型ワールドアイテムと連動したクソ複雑な自家製NPC用AIで制御していた部分であり、どこのギルドにでも真似できるもんではなかった。独自技術ありきの裏技ってやつだな。
転移後は自我を得たリーギリウムによるマニュアル制御へ移行したようだが、問題ないどころか以前と同等以上の繊細な交通整理を実現してくれており、おかげで俺やNPCたちの出入りはたいへんスムーズかつセキュアなものとなっている。
ちなみに
閑話休題。
「サティアはどうする? 後から来る?」
「ここを片付けさせたら向かうとしよう。じゃが、わざわざ儂を待つことはないぞ。先に始めてしまうがよい。正直なところ、あまり心配もしておらぬしな。
法国に残っておる記録から、儂が受けた印象の通りなら……あの二体の竜王は、やさぐれ小僧の〝
ホントかなあ、これ変なフラグとか立ててないよなあ……と思いつつも声には出さず、頷き一つだけを返し、俺は〈
気持ちは期待と緊張が半々。サティアの勘を信じるなら、〝