――後日になって。
「ほら、御所望の品物よ」
例の改造バンの中、ミッテル・イカルガは出来合いのテーブルの上、相棒の手前にその鉄塊を置いた。
それは、奇妙な形状の機具だった。
戦闘機か、軍用アパッチの前身だけを切り取ったような、鈍く光る素体に赤いランプの点滅する装置。中央上に二基、スイッチを嵌めるためのソケット。左右にはその操縦桿を想起させるレバー。何かに上から取り付ける機構になっている。
「我望から提供されたフォーゼの戦闘データをもとに作ったヤツ。使い方は」
「んなもんフィーリングでなんとかなるってば……ってあり?」
素直に受け取ろうとした天火だったが、その代物は、ミッテルによって引き戻された。
手をさらに伸ばさんとする彼女に対し、ますます退いていく。身を乗り出し、奥の奥まで手を突っ込んでようやく掴むことは出来たものの、意外な腕力でそれを自由にすることをミッテルは許さない。
「戦力として取り込むために渡すのは良いけど」
と、彼もしくは彼女は言った。
「これを短時間で仕上げるまでに組織内のコネをフル活用して方々に頭下げて回ったんだけど? あの小娘に、きちんと首輪つけられるんでしょうね?」
睨みはキツくも、言いぶりはまるでペットを娘にねだられた母親のようで、天火は思わず笑ってしまった。
「さぁ?」
と小首を傾げる。
「でも分かんないから、面白い」
とふてぶてしく宣いながら、そのデバイスを掴んで自身の手元に強引に持っていこうとする。
当然そんな曖昧な返答をされたミッテルとしては、明け渡すことを良しとしない。抵抗する。
「アンタねぇ、アタシの立場をなんだと考えてんの、よ!」
「立場って、この任務やり遂げても、もう出世街道からドロップアウトしちゃってんでしょーが。だったら楽しくお仕事やろーよ、ミチルちゃん」
引っ張り合っていた両者だったが、ふいに天火の力が抜けた。力んでいた分、ミッテルのバランスが大きく崩れた。
「そう。どのみち、私ら先なんて無いんだからさ。好きにさせてよ」
その頭の上に、声が落ちてくる。
儚さ、淡さ。それらを滲ませる彼女の願いに、
「……ふん」
と吐息と共に顔をあげたミッテルは、目線を合わせないように手を離し、そのままそっぽを向いた。
「ありがとねー」
呑気に礼など言う彼女に、顔を背けたまま、わざとらしく嘆いて見せる。
「あーあ、ほんっと、ハズレつかまされたわ」
そのうえで、声を低めて
「……アンタなんて、育てなきゃ良かった」
と呟くのだった。
天火はそれ以上は何も言わず、笑って首をすぼめるばかりだった。