仮面ライダーフォール。そう名乗った慈白展葉に、その背で満足げに零星天火は頷いた。
「やっちゃいなよ、つくしちゃん」
と本人に聴こえるか聴こえないかの声量で指嗾する。
「使い方はC4回路を開けば分かる。じゃ、良い旅を」
それを受けてか知れないが、展葉こと仮面ライダーフォールは声勇ましく駆け出した。
そして飛び上がった。
また脚部から生じた風に乗り、一度は畳んだ背の翼が展開され、旋回する。
空中戦だった。
『やっぱり貴方も飛びたいのね!』
いの一番に組みついた彼女に、結奈は浮かされたような調子で笑う。
「あぁ……けど、僕は、僕自身の意思で飛びもするし、落ちもする!」
肉体と言葉の応酬。その諍いは、両手の自由を確保しているフォールにこそ軍配が上がる。
その形勢有利の合間に、連れ去られていた不良の身柄を確保する。
「天火!」
そしておそらく初めて、彼女の名を呼んでその方向に向けて投げ下ろす。
「おっと」
つい助けるつもりも義理もないのに、反射的にキャッチする。
ただ、そのあとはぞんざいにその『ゴミ』を捨てる。展葉にしても親しむつもりはないはずだ。最低限の命さえあれば文句はないだろう。
しかし……と、天火は空の戦いを見上げる。
「あんな堂々と悪堕ち宣言しといて、まずやることが人助けとはねぇ。やっぱ、つくしちゃんは面白い!」
だから、と声音を変えて背後の給水塔を顧みる。
「今いいとこなんだから、邪魔するなよ」
そのタンクの上から、その影が降り立った。
着地と同時に、その足裏から電光が迸る。
それもまた、異形の鉄人だった。
危険色を表す毒蛇のごとく、くすんだ黄色に黒い亀裂の入った重装甲。
頭の左右双極にアンテナが立つ。腰にはメカニカルなバックル。剥き出しの配線に繋がれた黄色のスイッチが、他のユーナイトとは一線を画す特異性を示している。
物々しい武装の割に、その顔立ちは簡素で、目とも鼻ともつかない長細い孔が三つ。プラグを差し込むもののように開いている。
「ただその分かりやすさはイイね! 『エレキ』」
肯定的な意見を無視して、推定エレキユーナイトは手にした無骨な棒を天火の鼻先に突きつけた。
その無骨なスタンロッドを。
『邪魔なのは貴様らだ……財団Xの、そのまた搾りカスども如きが、我々の実験場に立ち入るな』
だいぶハウリングで輪郭をぼやかしてはいるが、声は男のものだった。
この女子校で、男。
「へぇ、誰だか知らないけど……ココがあんたらのエリア51ってワケ?
と、ことさらに煽るような物言いに、それ以上の問答は受け付けず、彼は電流渦巻くその鈍器を振りかざした。
初撃を体幹をずらしてかわし、二撃目に対して飛び退く、三撃目が来る前に無造作に変身のためのアイテム一式、中空へ放り出す。
自らの頭上を通過していくそれらに気を取られているうちに、自身も跳躍してエクステンドライバーをセットする。
〈Step1:Lighting Orion〉
〈Step2:Projecting Scorpion〉
宙返りをしながらスイッチを拾い集め、そして天地逆さまの状態で、指先で星をなぞりあげてそのキーワードを告げる。
「変身」
言うと同時に着地。そして装着。ローゼのアーマー、その肩口に、ロッドが叩き込まれる。
「さぁ、星に願いを」
それを受け止めながら、指先を電光の化身へ向けて突きつけた。