噓企画2024(フォーゼ反転物)   作:大島海峡

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2.

 始業式が終わると、早速他の女子たちに質問攻めに遭った。もしくは、派閥形成の一環の取り込みか。

 曰く、前はどこの学校に居たのだとか。どういう家族構成なんだとか。部活は何していたのだとか。つけている香水がどこのブランドなのかとか。本当にそれは今知らなければならないことなのか、本当に興味があることなのかは知らない。

 

 ただ彼女たちの言葉は耳に入って来ず、ただ幻聴が鼓膜の内側で鳴り響く。

 

 ――わわ、大丈夫!?

 ――おそらくスイッチが体質に適合していなかったんだろう。調整してもう一度だ、展葉。

 ――あなた自身が言い出したことじゃない。だったら最後まで貫き通しなさい。

 ――おい、言い過ぎだぞ。あまりルーキーをいじめてやるな。

 ――次は少年同盟との戦闘訓練だ。

 

 ――大丈夫だ。展葉。

 

 ――オマエナラ、デキル……

 

 ……気がついた時には、トイレの個室に籠っていた。

 胃の中が空だというのにえづく。

 

 毒の蜜が、身体を、心にまとわりついているようだった。

 そして純善たる善意に、間違っていると承知でも、どうしようもない部分でそう感じてしまう僕は、きっと健全じゃない。

 

 そしてそんな陰気は、何か良からぬものを寄せつけてしまうらしい。

 

「テメェ、なにハヅセンに色目使ってんだよ」

「抜け駆けすんなっての、当たり前だよなぁ、あぁ!?」

「ち、違っ……そんなつもりは」

 

 締め切った戸の向こうで、派手な物音と甲高い怒号。咳き込む声。次いで漏れ聞こえるのは絶え絶えの息遣い。

 つまりは、言葉にすることさえ躊躇われる、学生生活の負の面。

 直接的に出会したことはこれが初めてだったけれど、天ノ川学園にも、少なからず何処かしらで起こっていたであろうこと。

 

 どうするか、扉の先には二つの選択肢がある。

 ごく一般の生徒なら、まず関わり合いにならない。この先にどんな悲劇が待っていようと、嵐が通り過ぎるまでやり過ごす。

 そしてもう一つ……僕が所属していたクラブなら……あの人たちなら。

 決して目の前の理不尽を許さない。断固として立ち上がるだろう。

 

 そのどちらも、選ぶことはできなかった。

 だから僕は、ドアの前で自虐の溜息を吐く。そして自然を装って開けて、その現場を目撃する。

 一目して()()と分かる女子三人組がギョロリとこちらを向く。

 そのうちの一人、茶色のソバージュのリーダー格らしいのが、メガネの女子生徒の長い黒髪を掴んでいた。

 

「あの、邪魔なんですけど」

 そして僕はそれを見て、小市民的な抗議をする。

 まぁ、幸いなことに。

 僕の身の丈は、その場にいた誰よりも上回る。ちょっと前まで鍛えていたから、体格(タッパ)もそれなりにある。

 

 アクシデントとそれによって変化したポジションと戦力。それを鑑みたのか、髪を放り出した女は、その鶴の声でもってトイレから退散した。

 

 後に残されたのは立ち尽くす僕と、その足下で啜り泣く同じ学年らしき女の子だった。

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