【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵   作:白河童小鼠(人間)

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惑星封鎖機構の強襲艦が来るまで中央氷原で略奪し放題


輸送とビーム

「いやー大漁大漁!」

 

 隊列を為して物資を輸送していくMTの群れを見守る。

 それらを護送するのはコミカルな色合いながらどこか物騒な出で立ちをしている黄色いミルクトゥース。

 

 彼等はハーロフ通信基地とバートラム旧宇宙港で得た物資を、タンカーまで運んでいるのだ。

 

「それじゃあ手筈通り頼むよご友人」

『ええ、これほどの玩具があるのならきっと必要数を満たしていることでしょう』

「そりゃあ良い!俺もジャンカー冥利に尽きるってものよ」

『……改めて確認しますが良いのですか?』

「良いってことよ。その代わり時が来たら頼んだからな」

 

 ポテイトーズの腕を振ってミルクトゥースを見送る。

 訝しげに問うてきたのは、彼との間に交わした密約について。

 

 それは、この探索で独立傭兵ベスティー・ナイトシェイドが得る利益を半分オーネスト・ブルートゥへ支払う代わりに、時が来たらとあるものを用立てるというもの。

 言ってしまうとあの衛星砲を撃ち堕とす為の布石だ。

 

 いつかブルートゥが出稼ぎに来たと言ったが、それはあながち間違いではないが、当然その裏も存在している。

 

 前世のゲームにおいてオーネスト・ブルートゥは、いずれドーザー集団『ジャンカー・コヨーテス』の頭目となる男だ。

 

 その経緯は自分にもわからないが、今のところRaDの構成員でありながらコヨーテスと接触しており、獅子身中の虫としてRaDに仇なす行為をしてきている。

 

 今思えば、RaDに襲撃する際にコヨーテスの依頼人が漏らした内通者とはブルートゥのことだったのだろう。

 

 RaDとコヨーテスの抗争の中で巻き起こる混乱を掌中で弄びつつ、襲撃によって生じたRaDの隙を突き、着々と蜘蛛の巣を噛み千切る用意を進めていたわけだ。

 

「くわばらくわばら」

 

 恐ろしい男だ。

 機体を反転させ、自分は自分の目的地に向かう。

 

 今回のブルートゥの金策はRaDの為のものではない。

 RaDの開発している超兵器を持ち逃げするための元手だということを本人から聞いている。

 

 盗み出す対象はオーバード・レールキャノン。

 何らかの手段によって大量に集められたコーラルに着火し焼き払うものと推定される文字通りの火種。

 それを区画ごとぶっこ抜く為のブースターを手に入れ、RaDの手が届かない場所へとかっ飛ばすのが目的だそうだ。

 

 グリッド012を真っ先に確認しにいったのは、逃亡後の拠点候補の下見。

 タンカーで運べないジャンクをグリッド012に隠すというのは建前の目的だ。

 

 ……これだけ聞くとオーネスト・ブルートゥの事をダークヒーローとでも勘違いしそうだが、それ以前に奴は狂人だ。

 

 オーネスト・ブルートゥは自分の世界観が強い。

 奇襲をサプライズと言うし、盗んだものを贈り物として正当化している。

 だが、その程度ドーザーだと結構居るのだ。

 

 上っ面の物腰が柔らかく紳士的なだけではシンダー・カーラを騙すことなどできはしない。

 よしんばシンダー・カーラの信頼を得ていたとして、RaDのサーバー内に張り巡らされたプログラムの監視を掻い潜ってジャンカー・コヨーテスと内通する苦労は多い。

 

 そのような真似をするより、シンダー・カーラに一服盛った方が手間も苦労も少なくカーラの計画を挫くことができる。

 

 金や名誉が目的なら、それが一番効率的だ。

 ならば何故、わざわざリスクを冒してまで、オーバード・レールキャノンを盗み出そうとしているのか。

 

 それはきっと彼なりの親愛なのだろう。

 

 自分はドーザーとの付き合いが多いからわかるのだが、アイツは普通のドーザーじゃない。

 元から異常者だ。

 経験から来る勘なのでどこが異常が何なのかまでは計りかねているが、これまでの交流でわかった事がある。

 

 オーネスト・ブルートゥの親愛は温かい。

 この大陸への航行の途中、ミルクトゥースの整備を手伝った。

 ミルクトゥースは頑丈で蛮用に耐える作業用ACだ。

 なのに内装はごく丁寧に作られ、そして愛情をもって手入れされていた。

 

 シンダー・カーラの設計が良いのもあるだろう。

 自分も最初は灰かぶりの手掛けたACを楽しみにして整備を手伝ったが、慣れた手つきで整備するブルートゥを見て気が変わった。

 

 雑に整備しても問題なく動くだろうし、なんなら整備をせず点検だけでも問題ない具合にも関わらず、ブルートゥは丹念にミルクトゥースを磨きあげていた。

 

 これはブルートゥの、ミルクトゥースへの愛情を感じさせるものだ。

 それは偏執にも見えたが、故にそれは、わずかに温かく感じた。

 

 だから俺はご友人を信頼している。

 そのうち裏切られるかもしれないが、根拠も無いのに信じてみようと思った。

 裏切りには慣れてるし、死ななきゃ安いの精神で行こう。

 うん、面白そうだ。

 

「おっ、見えてきたな」

 

 今回の目的地はバートラム旧宇宙港から入り江を挟んでやや北、ヨルゲン燃料基地。

 ゲームでは最奥に位置するエネルギー精製プラントを破壊するのがミッションだったが、今回の目的もこのエネルギー精製プラントだ。

 

 てっきりベイラムの進駐以降にエネルギープラントが設置されたと思っていたのだが、ハーロフ通信基地のログを漁ったところ、旧型のエネルギー精製設備が備え付けられていることがわかった。

 

 その他にも色々売れそうな情報を手に入れることができたので、ハーロフ通信基地を占領した意義は大きかった。

 

 エンフォーサーを手に入れたので黒字はほぼ確定しているし、今は完全にボーナスタイムと言っても過言ではない。

 

 利益の半分はブルートゥに流すので儲けは少ないのだが、それでも情報というものは懐に入れやすい。

 特に今回の情報追加で完全に特定できた惑星封鎖衛星の運行スケジュールは、オールマインドに売れば莫大な利益とショップパーツの充実が叶うことだろう。

 

 それにハーロフ通信基地を通じてウォッチポイントアルファにウイルスも流し込むことができた。

 これをネタに惑星封鎖機構を強請れば面白いこと……はちょっと思いつかないけど何かしらできそうではある。

 ぱっと思いついた面白くないことだと、惑星封鎖機構の内部リークを装ってあることないことバラまくとか。

 うーん、趣味じゃない。

 

 あっそうだ。

 結構上位のアクセス権限が手に入ったことだし、憧れの競馬星のことでも調べてみるか。

 

 そう思ってまだ見ぬ夢に期待を膨らませているとヨルゲン燃料基地に到着。

 仕事の時間だ。

 

『メインシステム 戦闘モード起動』

「こちら親友。ヨルゲン燃料基地に到着した」

『こちらオペレーター。高エネルギー反応を検出、対処してください』

「はい?」

 

 尋常ではない警告音がコクピットに鳴り響く。

 反射的に複数回クイックブーストを行って横っ跳びすると、雪を焼き溶かしながら通りすぎていくレーザー照射。

 イレギュラー、予想していなかった攻撃だ。

 

「攻撃?エネルギープラントからか!」

 

 ジェネレーターのエネルギーを回復させ、アサルトブーストで前進する。

 時折照射されるレーザーは建物の物陰に隠れて回避。

 どうやら相当遠距離から照射しているので障害物も焼き切れないらしい。

 

 そうして前進していると視界がひらけ、橋のかかった渓谷に出た。

 正面を見据えると、遠目に異様なほどエネルギーをチャージしている砲台が見える。

 

「なんてことだ……あんなものまで……」

『高エネルギー反応を感知、想定通りのルートを進行中。先程と同じ。楽勝です』

「話が……違うっすよ……」

 

 砲台らしき光の塊が一瞬輝きを止め、そして放出する。

 その止まった瞬間を撮影して、回避しながらケイト・マークソンに送信する。

 

「オペレーター、あれはアイボールなのか?」

『写真からデータ照合を開始、惑星封鎖機構の無人兵器アイボールのようです』

「これは、面倒なことになった」

『あなたが飛べる馬である事を祈ります』

 

 馬ときたか。

 ……なるほど、機体名にかけた洒落とはよくわかってるじゃないか。

 ケイトにお祈りをされたところで橋に沿って前進を再開。

 

 谷底に降りて遠回りしてアイボールに攻撃されない射角から叩こうともしたのだが、渓谷の底には大きな戦車のような物陰が見えた。

 

 予感の通りなら、あれは封鎖機構の有人兵器カタフラクト。

 封鎖機構最強の地上兵器の異名を持つ陸上戦艦がなぜあんなところに配置されているのかわからないが、まずアレは戦いたくない。

 

 カタフラクトの相手をした後にアイボールの照射を掻い潜るなんて、主人公でもないと無理だ。

 カタフラクトは後回しにしよう。

 

 自分は回避が得意と言ったことがあるが、それは細かく言うと被弾を減らすことが得意という方面での回避が得意だ。

 

 あんな絶対殺すと言わんばかりのレーザー兵器、エネルギー防御の苦手なBASHOだと一発で蒸発させられかねない。

 これから先、アイボールに近づくにつれてレーザーが収束して威力が高まることが予想されるので、少しでも余力を残しておかないと俺のポテイトーズが爆散してしまう。

 

 おお、恐怖に震えそうだ。

 

「COM先生、勝利の呪文を頼む」

『警戒を怠らないでください』

「よっしゃあ!消えろ、イレギュラー!」

 

 いつもの警告を受け気合を入れて突貫開始。

 橋の向こうの建物を越え、ようやくアイボールの全容を確認できた。

 

 半球状のエネルギープラントからドーザーの違法増設でも受けたかのようにせり出しているアイボール砲台。

 

 おそらく砲台を高くすることで広い射角を維持しているのだろう。

 ……なんか頭ドーザーっぽくてヤバい攻撃でもしてきそうだ。

 砲台がエネルギープラントから若干離されて固定されている辺り特にヤバそうだ。

 警戒を厳としていこう。

 

 大地を焼き削る超出力レーザーをギリギリまで引きつけてクイックブーストで切り返す。

 恐ろしいことに少し掠っただけでACSのスタッガーゲージが半分まで溜まってしまった。

 衝撃値の少ないレーザーのくせして出力が異常に高いせいで、直撃してしまうとスタッガーから即死だろう。

 

 アサルトブーストで崖を駆け上がり、アイボールのチャージ終わりに回避機動をとれるだけの足場に飛び移る。

 急峻のせいで足場が不安だが、もう少しで直接壊せる所までくる。

 

 せっかくここまで来たんだ。

 絶対に潰す。

 

 圧力を増す高威力砲台を躱し、なんとか無傷でエネルギープラント基地の敷地内に侵入。

 そこで信じがたいものを見た。

 

「は、ははは……面妖な、変態技術者どもめ」

『馬鹿な、こんなことは……』

 

 飛んでいる。

 アイボール砲台が空に飛んでいる。

 各部からブースターを吹かして、アイボールが空に浮かんでいる。

 まさかの光景に乾いた笑いが漏れた。

 

 予想通りに予想以上のものを出してきやがった。

 駄目だ、ヤバい。

 アレは危険だ。

 だが、俺達の相手ではない。

 

『とでも言うと思いましたか?』

「ははッ、ははは!」

『この程度、想定の範囲内です』

「ははは!見てたよオペレーター!」

 

 爆発し機能を停止するエネルギープラント。

 援軍だ。

 

 援軍はケイト・マークソン操るIA-27:GHOST。

 一仕事終えて跳ねて離脱していくのが見えた。

 

 実はヨルゲン燃料基地に侵入する前に、いつでも救出してもらえるよう攻め入る方向とは反対側へと待機してもらっていたのだ。

 

 まさかアイボール砲台があるとは思っていなかったが、自分が囮として正面から注意を引きつけることによって、ケイトがエネルギープラントへと侵入してパイプを爆破していったのだ。

 

 これでアイボールへの遠隔電力供給は断たれた。

 あの手の砲台の浮遊はとんでもないエネルギーを使うので、これで大した攻撃はできないだろう。

 

「なかなかやるじゃない?ちょーっと、時間かかったけどね。でも、さよならだ」

 

 アサルトブーストでアイボールに接近する。

 過剰なパルス爆発が発されて一度アサルトアーマーで吹き飛ばされるも、再度接近してレーザースライサーの連撃を加えてアイボールを撃沈させる。

 

 思っていたよりも頭おかしいわ惑星封鎖機構。

 俺は封鎖機構への評価を改めた。




アイボール:正式名称不明。そこそこの速度で空を飛ぶし、超高出力レーザーを遠距離から照射するし、アサルトアーマーまで使う変態兵器。元ネタはACfAのソルディオス・オービット。

ベスティー・ナイトシェイド:動きが固定されている無人兵器に対しては無敵に近い技量を持っている独立傭兵。ハーロフ通信基地を占領したことで大量に機密情報を抜き取っていったがほぼ宝の持ち腐れ。頭が馬鹿。

ケイト・マークソン:なんでもできるラスボス系傭兵。今回はオペレーターとして活躍しつつ破壊工作まで行う大活躍を見せた。身元の怪しい密航者なのに重役を任され、律儀にも職務に恥じない働きを熟している。ドーザーの頭のおかしい妄言と共鳴してしまった。
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