【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵 作:白河童小鼠(人間)
一段落したこの辺りで評価を貰えると励みになります。
『やり過ぎたんだ、お前たちはな』
中央氷原から出港して約1週間と少し。
ようやくベリウス地方の港に帰ってくることができた。
一ヶ月もの大遠征になったが、収穫はたっぷりあった。
これなら雇い主のBAWSにも満足してもらえるだろう。
そう思って通信して言われたのがこれだった。
通信から今のベリウス地方の現状を聞き、BAWSによって貨物の査定が行われている間に、ここまで手伝ってくれた仲間たちに説明すべく全員を集めた。
「皆、集まってくれて感謝する。今回の依頼はこのブリーフィングで最後となる。途中退室した場合は後で資料を送付しよう」
最初に自己紹介をした大部屋の壇上。
ケイト・マークソンに対しては室内のマイクを通じて聞いて貰っている。
このブリーフィングが必要とは思えないが、関係者にはちゃんと説明するのが筋というもの。
背後のスクリーンに資料を映して説明をはじめる。
「では、早々に帰っても良いかね?取り立て屋に居場所を掴まれるまえに退散したいのだが……」
「親友は聞いていった方が良い。逃亡にも関わる話だ」
「それを早く言いたまえ」
帰ろうとするノーザークを席につかせて説明を開始する。
コールドコールは壁を背にもたれかかり、オーネスト・ブルートゥは俺に拍手送ってくれた。
説明を始めようか。
「まず、このブリーフィングはベリウス地方の現状についての説明が目的だ。報酬については現在の概算では十二分な量が支払われる見込みとなっているので気にしないでほしい」
前置きを説明し、スクリーンのスライドを次に移す。
そこに映された映像は、惑星封鎖機構の大型武装ヘリが汚染市街を爆撃しているものだ。
「現在、ルビコン各地では惑星封鎖機構のサブジェクトガードの襲撃が深刻な問題となっている。企業も解放戦線もいきなり活発化したSGの対処に手間取っていて、独立傭兵は特需状態にあるらしい」
「それは、ご友人達にとって良いことではないのですか?」
「まあ、この特需自体は金を稼げて良いことではある」
微笑んでいるブルートゥが質問を投げかける。
彼は独立傭兵ではなく、ドーザー集団RaDの構成員だ。
いまいちピンと来ていないのか、もしくはわかった上で質問を投げかけているのか。
たぶんブリーフィングを円滑にするために相槌をいれてくれたのだろう。
「今回の遠征で俺達は中央氷原にある封鎖機構の基地から大量に物資を奪いとってきた。識別情報を誤魔化していたから俺達の仕業だとバレてはいないようだが、その強盗があったことは伝わってしまっているらしい」
スライドを切り替える。
表示するのは解放戦線から提供された、襲撃地点をまとめた地図だ。
襲撃を示す赤い丸がルビコン各地に広がっており、通常見向きもされない場所が攻撃されていることを示している。
「犯人がわからない封鎖機構のシステムはこう考えた。『二度とこんなふざけたことをさせないよう、全ての勢力を攻撃して警告しよう』と。圧倒的な戦力を保有する封鎖機構らしい脳筋作戦だ」
そう、惑星封鎖機構はこれまで小規模な小競り合いしてこなかったのだが、俺達の襲撃によってルビコン全土に出没するようになってしまったのだ。
「ここまで戦線を広げたらさすがの封鎖機構も人員が足りていないらしく、無人兵器を動員しての襲撃になる。だが、よりにもよって全方位にミサイルをばら撒いてくる特務無人機体バルテウスまで出動させているらしい」
特務無人機体バルテウス。
惑星封鎖機構の有する大型機動兵器の中でも屈指の殲滅力を誇る化け物。
圧倒的な空中での機動力を持ち、リング状に機体を囲む砲門から無数のミサイルを放ってくる上、常時パルスアーマーを展開しているという隙のない超兵器だ。
この世界で情報を集めてビックリしたのは、あの大量のミサイルはマルチロックによって複数の標的に対して放つことができるということ。
バルテウスはその辺のMTなら一回の掃射で10機近く撃破してくる殲滅兵器なのだ。
「このバルテウスはACを優先的に排除するよう指令されている。出会ったら最後、倒すか倒されるかの二択だと思ってほしい」
「それで終わりか」
「そう、これでブリーフィングは終わりだ。要は気をつけて帰ってくれということ。遠足は家に帰るまでが遠足だからね」
スクリーンの電源を落とす。
今回伝えるべきことはこれだけ。
そもそもブリーフィングは長々と話すものじゃない。
必要な事を知らせるだけだ。
「特にノーザークは元から封鎖機構に目をつけられているから気をつけて帰ってほしい。んじゃあ今回のミッションは解散!報酬は後日オールマインドから支払われるからまた今度ね!」
「ご友人……まだアリーナに参戦できていないのですね……不憫だ……」
「お前以外は報酬はすぐに支払われるのだがな」
「そういえば親友はランカーではなかったな」
「ちくしょう!解散だ解散!オールマインドのバーカ!」
一斉に心無い言葉を言われて少し傷つく。
報酬の即時支払いはオールマインドのアリーナに参戦することができる選りすぐりの独立傭兵の特権だ。
だから、何故かアリーナに招待されていない俺では、報酬をすぐに支払ってもらうことができない。
その悔しさから捨て台詞を吐いて逃げ出した。
ちくしょう、俺もランカーになったら覚えてろ!
『……評価を修正する必要はなさそうですね』
「あっ、ケイトさん違うんですこれは言葉の綾というか捨て台詞みたいなもので、そのあのえーと、そうちょっと言い訳が思いつかない!ごめんなさい!」
ランカーの連中から逃げ出す途中、IA-27: GHOSTから無慈悲な言葉が聞こえたので慌てて土下座をする。
なんともしまらないミッション達成だった。
迎えにきてくれた輸送ヘリに帰投。
ACの背部に固定アームを接続し、改装の済んだヘリの中を見回す。
オールマインドには遠征の間に輸送ヘリの改装を依頼していたのだが、パッと見た限りでは特に変化は無いようだ。
「あったあった」
説明書片手に分電盤からスイッチを入れる。
離陸中の輸送ヘリではわからないが、きっと空調の音がしているんだろう。
しばらくすれば自分が生身で過ごしても問題ないぐらいに空気中の残留コーラルが排気されるはずた。
それまでに仕事は終わらせておこう。
『新着メッセージ5件』
『登録番号Rb97 識別名"Bestie" Night Shade。
輸送ヘリの空調工事の明細と成果は確認していただけたでしょうか。
費用については事前の打ち合わせの通り、今回の依頼による報酬から引かせていただきます。
報酬の支払いまでもうしばらくお待ちください』
こちらは傭兵支援システムオールマインドからのメッセージだ。
添付された明細書を確認してみると、当初の見積もりより5%近く値段が安く空調工事ができたようだ。
流石オールマインド、後は空調を確認すればパーフェクトだ。
迅速な仕事ぶりに感謝感激雨あられと思いつく限りの褒め言葉を綴ってメールを送っておいた。
『独立傭兵
独立傭兵コールドコール様から紹介していただきました、大豊核心工業集団所属、ルビコン星系広報担当者の
以後お見知りおきを。
我が社のACの広報をしていただけるとのことですが、詳細については通信で打ち合わせをさせていただきたい。
お手数をおかけしますが、一週間以内にご連絡くださいますようお願いします。』
こちらは大豊からの連絡だ。
コールドコールはすぐに連絡を入れていてくれたようだ。
どうやら翻訳機を通しているらしく、自分の名前が大豊経済圏っぽい感じで呼ばれていた。
翻訳機を使う気持ちはよくわかる。
この世界のネットワークを漁って気づいたけど、ルビコンってけっこう方便が多いのだ。
自分はこのルビコンで育ったから標準語のように聞こえるのだが、他の星の人からすると知らない慣用句が多くてかなり難解に聞こえてしまうらしい。
1週間以内の連絡とのことなので、空調が効いてきたらすぐに通信を行うことにする。
自分は不活性コーラルで半ば酔っぱらっている状態なので、そこそこ物忘れをすることがある。
こういうことはすぐにやるに限る。
『やあ親友、君の良き友ノーザークだ。
先日の遠征ではよく稼ぐことができた。
また同じような儲け話があれば私を頼って良い。
今後とも、良い関係でいようじゃないか』
いつものノーザークからのメッセージだ。
こうしてメッセージを行う仲になってから気づいたが、ノーザークはいつも律儀に礼を送ってくる。
こういった地道な積み重ねが借金王と呼ばれるまでの信用の拡大となったのだろう。
流石は親友、こういった手法はよく参考になる。
『ビジター!私だよ、カーラだ。
あんたのおかげでブルートゥもかなり儲かったようで嬉しそうにしてたよ
さて、今回はACパーツの注文をしてもらったわけだが、同じパーツを複数注文しているのはどういう理屈だい?
間違っちゃいないかって連絡させてもらったってわけさ』
珍しい。
RaDの女頭目、シンダー・カーラから直接のメッセージだ。
普段は相棒を窓口にして注文を行っているので、こうしてやりとりをするのはRaDに殴り込んだ時以来となる。
ACパーツについては間違いじゃない。
この独立傭兵需要の拡大を知って、少し戦力と手駒を拡充しようと思って注文したのだ。
遠征による莫大な臨時収入と今までの貯金のおかげで、AC3、4機買えるお金が貯まった。
なので、この投機に乗らない手はない。
ついでにノーザークに譲った火炎放射器の分も追加注文しておこう。
RaDの製品はジャンカーの技術者集団だけあって、自分の知っている技術体系でメンテナンスが可能だ。
値段が安く、戦闘向けじゃないのに戦力としての性能は十分。
だから、後述のメールに繋がってくるというわけだ。
『お頭、ナスティ・ロビンっす。
言われたとおりD&Jの元メンバーでパイロット適性のあるやつにクソほど声かけときました。
ACを操作できる体験会ってだけでクソすごい食いつきだったっす。
いやぁ、今夜はきっとコーラルがクソ美味いっすよ〜』
ナスティ・ロビンは古巣のジャンカー集団D&Jでの広報兼営業担当だった妹分だ。
このクソを強調しているやつは俺より年齢は上だが、年功序列で俺みたいなクソガキの妹分になったクソ女だ。
別名、おしゃべりクソコラ女。
当時は世間知らずのお嬢様でよく面倒をみてやってたのに、アイツ勝手にオレでコラ画像つくってネットワークに放流してやがった。
当然、なんで駄目なのか懇切丁寧に説明した上で、他のやつらから敵意が向かないように見せしめで叩きまくった。
なにが酷いってエルカノの幹部でめちゃくちゃ人格者なアイツの親からよろしく頼まれたせいで、他に何かやらかしても殺して始末をつけることができないんだ。
アレは消しても微塵も、いやちょっとしか心は動かないだろうに、あの善良そうな両親の悲しそうな顔を思うと無体にできない。
自分はクソだから多少の事は許すが、それが他のやつに向くとそれは殺しの種となるので見せしめは行う。
当時、D&Jでリーダーをやってた自分のスタンスはそんな感じだった。
そんなナスティ・ロビンになんで連絡をとったかというと、彼女はD&Jを解散したあとの残党の行方を大体知っているからだ。
クソどもと今も頻繁に連絡をとりあっている彼女は、同窓会をやるときの窓口をしている。
解散後は実家で引きこもっているらしいので、きっと暇なんだろう。
パイロット適性があるやつ向けにアーマード・コアの体験会をやるって言ったらすぐに食いついてきた。
わかる。自分もAC動かせるなんて楽しそうなイベント即参戦するし。
そんな訳でゴミどもに連絡をとってもらった訳だが、案の定コーラル以外の娯楽に飢えてるドーザーどもはクソすごく食いついてきたらしい。
それは重畳、優秀なやつにはACを貸し出して金稼ぎにこき使おうと思っているのだ。
むしろ食いついて貰わなければ困っていたところだ。
「これを機に大儲けしてやらぁ!」
高笑いが室内に鳴り響く。
目標は遠征で得た資金を更に増やすことによって、万が一ルビコンがヤバそうな時に星外へ脱出するための亡命資金を稼ぐこと。
あとついでに封鎖機構もなんとかすること。
ゴミカスどもの中からマシそうなパイロットを選別する作業は面倒だが、それも自分の野望のためと思えば多少は気が楽になる。
ついでに親友のバカどもに俺のポテイトーズを自慢できるから一石二鳥だ。
ふっふっふ、楽しみになってきた。
『新着メッセージ 1件』
おっ、なんだ?
新しいメッセージに心躍らせて筆者を確認する。
おおっ、相棒からのメッセージだ!
もしかして大儲けしたことを褒めてくれるんじゃないか?
ジャンカー時代はあれだけ資金繰りに喘いでたからなあ。
今回ブルートゥが遠征に来れたのはRaDを守ってくれる相棒がいたからこそである。
後々感謝のメッセージを送らなければいけないだろう。
期待を抱いてメッセージを再生する。
『惑星封鎖機構に喧嘩売らないって言ってなかったか?』
あっ。
その、ごめんなさい。
ナスティ・ロビン:クソ(が口癖の)女。ルビコン土着の鍛造企業エルカノで働いている裕福な両親の元で育った。ある事故の後、ジャンカー集団D&Jに預けられて教育を兼ね療養していた過去を持つ。育ちが良いのでドーザーにしては教養があるが、教養を傘に賢しらぶっていた時期にナイトシェイドのクソコラをネットミームにした罪で強めの折檻を受けた。頭が馬鹿。
D&J:元農耕集団のドーザー&ジャンカーの略称。
ベスティー・ナイトシェイドとインビンシブル・ラミーの古巣にあたる。
元はアイビスの火以前に食糧生産プラントで農耕をしていた互助組合であり、大地と作物が不活性コーラルで汚染されたことで自然とドーザー集団に変貌。
戦力は弱小で農機具とプラントの修理を行うため細々とジャンカー活動を続けていた。
近年は勢力を拡げていたものの、周辺勢力との軋轢を懸念し少し前に解散したという。
ベスティー・ナイトシェイド:古巣D&Jに所属していた奴らを利用し傭兵集団として一旗揚げようとしている。息をするかのように綱渡り染みた危険行為に手を染めていたので通信越しにインビンシブル・ラミーから説教された。
なお、古巣の奴らを集めた体験会の結果は散々だった模様。頭が馬鹿。