【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵 作:白河童小鼠(人間)
「いやぁ疲れたっすね!お頭ナイスファイトっす!」
「あっはっは!ロビンもけっこうやるじゃん!」
長時間に及んだ100連戦の荒行の後、俺とロビンは肩を叩きあって互いを称賛しあっていた。
いやー、ロビンかなりの逸材だわ。
どこが凄いって100連敗した後更に追加で50戦要求してきたのが凄かった。
1日中戦えるこのガッツとタフネスは間違いなく独立傭兵としての資質だろう。
まあ自分の方が凄いがな!
当たり前だけど機体の差で150連勝してやった。
途中から向こうにアセンブルを解禁してやったのだが、よっぽど手に馴染んだのか火炎放射器は手離さなかった。
一番笑ったのは両肩にメリニット製大型グレネードキャノン『EARSHOT』を積んできた時だ。
火炎放射器でACS異常を引き起こされたところに右肩の一射でスタッガーさせられ、左肩で追撃されて危うくAPを全損させられるところだった。
途中で自分もアセンブルを変えたくなったが、俺をどう攻略しようか試行錯誤しているロビンを見ると、このポテイトーズの機体構成のまま返り討ちにし続けたくなった。
くだらない意地だが、こっちも同じ機体で150戦もしたおかげで、ずいぶんとPotooooooooの操縦に慣れることができた。
本当に楽しい一時だった。
「で、なんの話をしてたか」
「傭兵になるかどうかって話っすね」
「そうそう独立傭兵。で、なってみる?俺にも野望があるから完全に自由とはいかないけどさ」
「んー野望っすか。……あれ、もしかしてお頭もD&Jの再起狙ってるんすか?」
「どうしてそう思う?」
「D&Jが解散した理由って自衛能力の不足じゃないっすか。ACで武装すればその辺解決できると思うんすよね」
「大体正解。正確にはD&Jの奴らを独立傭兵にしてやってほしいことがある。再興はついでだ」
「ありゃ、見込みが外れたっすね。寂しがり屋なお頭のことっすから、また集まって馬鹿やりたいんじゃないかって思ってたっす」
「えっ、俺のこと寂しがり屋って思われてるの?」
「違うんすか?」
「肯定するの嫌なんだが」
「みんなお頭のこと背伸びした寂しがり屋のガキだと思ってるっすよ」
「皆思ってるのかよ」
「そうっすね」
「……まあ良いだろう。今更そんなこと気にするほど俺の器は小さくない」
「よっ、クソガキ!」
「単純に罵倒じゃん!」
いつまで経っても話が進まない。
ドーザーとの会話ってのはいつもこうだ。
律儀にツッコミしてしまう自分も自分なのだが、真面目な話なのにいつの間にか話が脱線してしまう。
もう良いだろう、そろそろ話を戻そうか。
「で、独立傭兵やる?」
「やるっす」
「良い即答だ。動機を聞いても?」
「貯金が底をつきそうっす」
「実家で引きこもるのはもう良いのか?」
「飯代払えなくて追い出されちゃったっすね!独立傭兵になったらお頭に貯金管理してもらって良いっすか?」
「それは良いけど……一応聞いておくが、今残金幾らだ?」
「今夜の飯代が無いぐらいっすね」
「既に底ついてるじゃねえか!D&J解散した時に一応就職先ちゃんと斡旋しただろ!?エルカノの傘下でフルリモートでも仕事できるちゃんとしたところをさあ!」
「やだなぁお頭。ドーザーがまともな企業でやっていける訳ないじゃないっすか。癖で営業先にコーラル勧めたら一発でクビになったっす」
「初耳だぞ馬鹿がよぉ……!」
ドーザーなら仕方ない。
むしろコイツにマトモな企業を紹介した自分が悪いかもしれない。
ということはもしや他の奴らもとっくにクビになっていたりするのか?
どれだけの相手に詫びれば良いんだろうか。
少し頭が痛くなってきた。
「元気出してほしいっす」
「クソぉ!」
「はいはいクソっすね」
茹で上がった頭を深呼吸で落ち着かせる。
落ち着け、ドーザーがこうなのは今にはじまったことじゃない。
想像を絶する馬鹿どもなのだから、ちゃんとクビにされているだけマシだ。
そう考えよう。
「……話を戻すが独立傭兵は危険な職業だ。飾らず言えば殺し合いの他にも胸糞悪い仕事も多い。それでもお前は独立傭兵をやれるか?」
「今更っすね。そもそもまともに死ねるとは思ってません。ですが、こっちにもちゃんと目的があるっす」
手元の端末を操作し、録音可能な電子機器の電源を落とす。
「それは?」
「再教育センターを潰したい」
再教育センター。
星外企業勢力アーキバス・コーポレーションによって設置された捕虜の大規模収容施設。
捕らえられた人間で人体実験が行われていると噂されており、ルビコニアンの間では星外企業勢力への憎悪の象徴となっている。
それをナスティ・ロビンが潰したいと言う。
目が据わり嫌悪を露わにした彼女は、並々ならぬ憎悪を吐き捨てた。
「これは可能っすか」
「潰すだけならほぼ確定で可能だろう。お前が何もしなくても勝手に潰れるだろうさ」
自分の知っている未来において、再教育センターが正式に設置されるのはアーキバスが中央氷原に到着した後だ。
そして、いずれの未来においても、ルビコンの再教育センターは潰れていると思しい。
「こっちで潰したい。可能っすか」
「お前単騎では無理だ。まずはD&Jのやつらを独立傭兵に仕立てて……」
「難しいことはわからないっすよ。とりあえずお頭の野望の内で可能っすか?お頭とは敵対はしたくないっす。可能か不可能で教えてほしいっす」
「たぶん可能」
「たぶんっすか」
「未来は不確定だからな」
もとより自分の計画は結果的にルビコニアンが有利になるもの。
衛星砲をなんとかするために色々やるとしか決めていないので、その後の動乱に乗じてアーキバスを潰すことは可能……かなぁ?
それにこういう時の自分の役目は自信有りげに味方を鼓舞することだ。
誰かがやらかしても笑って泣いて死ねる馬鹿どものためにも、自分は希望を示し続けねばならない。
具体的には一攫千金という即物的な浪漫をブチ上げれば、D&Jのやつらはノッてくるだろうと思っていた。
だが、違う目的を言い出すとすれば、ドーザーの中でも多少学があって志に感化されやすいロビンだ。
だから最初に味方に引き込むためにもこうして会える機会を設けた訳だが、何があった?
「そんなことを言い出すとは何かあったのか?」
「知り合いがアーキバスに再教育されてエルカノに特攻させられまして。アーキバスを潰すのは無理でもせめて再教育センターは潰したいっす」
なるほど、因縁があるというわけか。
因縁……たしか仏教の用語だったか?
こういう時の前世の用語は伝わるときと伝わらない時がある。
ロビンに伝わるように訳するならば、仇討ちか?
「仇討ちって訳だな。わかった、計画に加えよう」
「ただの八つ当たりっすから無理なら無理でも良いっすよ」
「そんな怖い顔しといて復讐を諦めきれる訳ないだろ。どこかで暴走されても困るからちゃんと策は練っておくよ」
「さすがお頭っす!よっ、馬鹿の考え休むに似たり!」
「それ褒め言葉じゃないからな?」
「バレたっすか?」
「ははは、こやつめ」
なんてことだコイツ理解した上で使ってやがった。
膝カックンでロビンの頭の高さを調節し、前にまわりこんでアイアンクローを決める。
「痛い!痛いっす!ってか重っ!あっ頭の骨がクソメキメキ言ってがああああ!死ぬうううう!」
「ちっ、身長が足りなくて持ち上げられないか」
このデカ女め。
なんでコイツ身長高いんだよ。
俺より頭二つ分ぐらい高いからアイアンクローで持ち上げることができなかった。
まあ良い、やたら重い空調服を着てるおかげでコイツに持ち上げられなかっただけマシと考えよう。
そのまま雑に冷たい床へと投げ捨てる。
「馬鹿がよ。難しいことは考えず俺に任せとけ」
「痛てて……それでこそお頭っす!」
「と言いたいところだが」
「はい?」
「今回のD&Jはお前がまとめ役をやれ」
「いや、無理っす」
床に転がって悶えていたロビンが真顔になる。
「無理じゃない、やれ」
「嫌っすけど?あんな馬鹿どもをまとめ上げるなんてお頭ぐらいしかできないっすよ!」
「大丈夫、ロビンは俺なんかよりよっぽど求心力……カリスマがある。お前はここ数年D&Jのやつらと連絡を取り続けていたから信頼を勝ち取れている。自信を持てロビン」
「たしかに信頼は得てるっすけど!こちとらその馬鹿の一員っすよ!?お頭みたいに実務で黙らせるなんてできないっす」
「安心しろ。面倒くさい事務仕事は傭兵支援組織のオールマインドが大体やってくれる。お前に求めたいのは独立傭兵集団としてのD&Jの顔役だ」
「女は嘗められやすいのに顔役が務まるわけ無いじゃないっすか!」
「そもそも嘗められることが必要でもある」
「は?」
「まあ座って聞いてくれ」
手を握って立ち上がらせると、ロビンは渋々手すりに腰かけた。
納得いかない顔だな。
少し煙に巻いてしまうか。
こいつらは馬鹿だし多少話せば元の細かい話は忘れる。
納得したって結果があれば誤魔化せるだろう。
「お前たちの適性では頑張っても雑兵なのは自覚しているよな」
「まあ、それははい」
実際の話、この世界だとACでの戦闘経験はかなり積み難い。
理由はACは兵器なので戦術が秘されるものだからだ。
雑兵から腕利きに成長するには、膨大な戦闘経験による操縦技術や自らに最適化した機体のアセンブルなどが必要なのだが、それを体得するにはあまりにもノウハウが欠如してしまっている。
オールマインドが提供する傭兵教育プログラムなどはこの世界だと極上の戦闘訓練に該当するぐらいだ。
何故か自分には解禁されてないのでハッキングですっぱ抜いて教習を受けてみたが、独立傭兵の自由を尊重した上で知識を提示するやり方には舌を巻くことになった。
あれは上手い。
反骨心が強い傾向のある独立傭兵を無理に押さえつけない点は自分も見習いたい手腕だ。
「その雑兵でも独立傭兵が可能な戦法を俺は今考えついたが、それでも雑兵故に無茶な仕事は断らねばならん。それを俺はむしろ好材料と捉える」
「なんか難しい話がはじまったっすね」
さっそくロビンの注意が逸れそうになったので、手すりを指で弾いて注目させよう。
金属パイプの高い音が輸送ヘリ内に反響する。
「普通は目立てば目立つほどに依頼が舞い込んでくる。その分危険な仕事も回されるわけだが、それ相応に見合った働きを行えるなら問題はない」
「でもそれはできないっすよね」
おっと、ドーザーにしてはネガティブな意見。
ここは話をそらして無力感は感じさせないようにしておこう。
あんまり陰鬱な心情になるとコーラル摂取量が上がるのがドーザーという生き物。
ちゃんと意思疎通ができる状態じゃないと困る。
「だがしかし、お前の言った目的はなんだ?」
「再教育センターを潰すって言ったっすけど……」
「だからこそ、目立ってはいけないんだ。特にアーキバスは諜報が強いし、情報部門がオールマインドと内通しているからあまり注目度が上がると困る。当然、再教育センターを潰すという計画は実行直前まで秘さねばならない」
「結局、どういうことっすか?」
ロビンが怪訝な顔つきで結論を急かしてくる。
話が長いのでその気持ちはわかるが、もうしばらく辛抱してほしい。
「もし他のやつをリーダーに立てて、計画を明かした時にソイツが日和ったら困るという話だ」
「なるほど?でもオールマインドが内通してるってクソヤバいんじゃないっすか」
クソほどヤバい。
オールマインドはヤバい。
自分はハッキング対策として物理的媒体に記録する方法をとっているが、そうでもしていなければオールマインドにはとっくのとうに自分の計画がバレていることだろう。
遠征の打ち合わせの時にノーザークとの通信には秘匿回線の暗号通信を用いていたが、あれは自分に可能な限りの隠蔽工作を施したつもりだったにも関わらずオールマインドは自らの使役する機体を乗船させていた。
後から通信に干渉された形跡がないか調べてみたのだが、自分では発見できなかったことから秘匿回線とは別口から情報を仕入れたのだろうと思われる。
だが、いったいどこから?
それがわからない。
今だって船内にはECMフォグ装置を用いて通信を秘匿しているのだが、それも苦肉の策でしかない。
とにかくオールマインドの諜報はヤバい。
伊達に暗躍でルビコン全勢力を手玉にとっているわけではないのだ。
「派手にヤバい。ぶっちゃけ諜報に関してはこのルビコンにおいてオールマインドが最強だ。電子機器にメモしたら内容はすべてオールマインドにバレると思え」
「なにそれ怖いんすけど」
「さすがに誇張したけど、最終的にはなんとかなるから安心しろ。だからお前たちはただのドーザー上がりの普通の傭兵じゃないと駄目なんだ。活躍してくれても良いが、それは傭兵としての動きにとどめてくれ。計画を勘付かれてオールマインドからの監視が強くなると困る」
「あっ、わかったっす。要するにD&Jのやつらが普通に独立傭兵するように見張っとけば良いってことっすよね?」
「そういうことだ。見張りと号令に便利だからまとめ役やれってこと」
自分から言い出してくれるとは助かる。
そうそう、ちょっと自分には面倒くさいから頑張ってリーダーを代行してほしいんだよね。
真面目な理由は自分が統率するとオールマインドからD&Jが愚連隊に見えなくなってしまうのではないかという警戒からだ。
こう見えて自分はけっこう色々やらかしている側だし、ふとした拍子に怪しまれてもおかしくない立場だと自負している。
だから、あくまでD&Jには自分の管轄ではない別組織であってもらわないと困る。
馬鹿なやつが微妙に制御が効いてない古巣を誘って金稼ぎしはじめた、ぐらいの認識でいてほしい。
だからそこそこ頭が良いドーザーであるロビンを頭目に据えるわけで、ぶっちゃけ多少失敗しても良い。
計画が成功したら別動隊として動いてもらうだろうし、今のうちにロビンをリーダーとして育てておきたいのだ。
「でも、お頭からアーキバスのこと聞く度に再教育センターを潰すのって無理じゃないかって思うんすけど……」
「そこは大丈夫。俺の準備が整って全て上手くいったら凄いことになるから、アーキバスも再教育センターに構っていられなくなる。アーキバスを潰すなら難しいが再教育センターだけならまだなんとかなるんだよ」
「まったく想像がつかないっすねぇ」
「まあ、とある一点が完全にギャンブルなんだけど」
「それ本当に大丈夫っすか?」
「きっと大丈夫だろ。大丈夫、上手くいかなかったら希望者連れてルビコンから脱出するだけだし死にはしないって」
「それ夜逃げじゃないっすか!?」
「いつものことだろ」
「そりゃそうっすね」
馬鹿みたいな笑い声をあげて肩を叩き合う。
めちゃくちゃな妄言はドーザーの名物。
無謀な夢を語るのだってドーザーからすれば世間話みたいなものだ。
それをどれだけ現実にできるかは俺達次第。
まずは目先の利益を追い求めようか。
ベスティー・ナイトシェイド:初心者相手に大人気なく全勝したアホ。シミュレーションとはいえ濃密なAC戦を大量に行ったので前世並みの戦闘力を取り戻した。仲間の要望を聞いてアーキバスに対し方針転換。実は計画自体も大幅に修正することになり、辻褄合わせの概算を見て自室で悲鳴をあげた。頭が馬鹿。
ナスティ・ロビン:何度負けても落ち込まないガッツのあるドーザー。いつでも連絡を取れることからニートの噂が立っていたが、本人は斡旋された職場では周りから可愛がられながら楽しく営業をしていた。ある日、再教育センターに誘拐された上司が無残な姿でエルカノに特攻させられた事で退職を決意。ケジメとして元締めのエルカノに資産全てを譲り渡し、着の身着のまま古巣D&Jに合流している。経緯を語りたくなかったので嘘をついた。頭が馬鹿。
AC6のNESTで対戦したことはありますか?
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ある
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ない
-
そもそもAC6未プレイ