【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵   作:白河童小鼠(人間)

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過労と援軍

「む、昔話をしてやろう。世界が破滅に向かっている話だ……」

「お頭が昔話しすぎてクソ首ヤローが壊れたっす!」

 

「なら別の話をするとしようか。医療教会、そう呼ばれていた血の医療者たちは……」

「クソァ!お頭も壊れたっす!ラミーさんなんとかしてほしいっす!」

「うえっぷ。騒ぐんじゃねえ、吐くぞ」

 

「ラミーさん飲み過ぎっすよ。ところでお頭の直し方知りません?もうすぐ出撃時間っすけどこんな調子だと困るっす」

「あー……?コクピットに放っとけ。コイツは身体に仕事が染み付いてるから敵の前に落とせば勝手に動きだす」

「お頭クソ重くて運べないっすけどなんか良い案無いっすか」

 

「ウッ、オボェェッ」

「うわぁ!?首野郎ラミーの吐瀉物掃除しろっす!」

 

「神は仰った。『コーラルよ、胃の内にあれ』と」

「よく勉強しているなぁレック……正しくは『コーラルよ、ルビコンと共にあれ』『コーラルよ、ルビコンに内にあれ』『その賽は投げるべからず』だから覚えとけよ……ウッ!!!」

 

「うわぁああっお頭が倒れたぁ!誰か助けてぇ!」

 

「朝早くからよくもまあこれだけ騒げるものです。定期健診に来ましたが……ああ、コーラル中毒で失神しているようですね。この阿呆らしい宇宙服の充電を怠ったせいで空気清浄機が停止しています」

 

「せ、先生ぇ!お頭は治るっすか!」

「残念ながら、通常の手段では治る見込みはありません。かくなる上は、強化人間手術を行いアレルギーを起こす肉体を取り替えるしか」

「そんな……!でも、お頭が生き残るというのであれば格安なら払います!どうか執刀してもらえないっすか!」

「良いでしょう。その覚悟に免じて治療費は分割払いにして差し上げましょう。さて、これが今度の実験体かね」

「夢破れたりっすね」

「だがこの実験で生まれ変わるさ」

 

「やらせねぇよ!?」

 

 不穏な気配に痛む頭を抑えて飛び起きる。

 クソ、充電を怠るとは自分も不覚をとった。

 

 相棒が特濃コーラルをぶちまけて嗅いですぐ気絶してしまうとは自分のことながら情けない話だ。

 

 錯乱しているレックを叩いて正気に戻し、お医者さんに頭痛薬をねだる。

 

「お医者さん、頭の鎮痛剤持ってない?」

「コーラルならありますが」

 

 そうそう、なんにでもよく効く万能物質コーラルを摂取しておけば大抵はなんとかなる。

 鎮痛作用も当然あるし、なんならドーザーしてる理由が鎮痛目的って笑いにくいやつもけっこう居るし。

 

 でも、自分がコーラルを服用したら死ぬけど。

 死にはしなくてもミッションに出撃できなくなるのは確実だ。

 昔はコーラルを風邪薬にできないせいで薬代が嵩んでたなあ懐かしい。

 

「他にないので?」

「馬鹿につける薬はコーラル以外処方していません」

「やーい、お頭のバーカ!」

「愚かなる小童よ、コーラルと共にあれい!」

「あー、スッキリしたぜ」

 

 こ、コイツら……!

 相棒の汚れたコーラルリリースの残り香でまたフワフワしだした頭を抱えてコクピットに乗りこむ。

 

 手動で各種機器を宇宙服に接続して充電しつつ、充電完了までをACの空調設備で凌ぐことにした。

 

『んで、ゲロの処理どうする?俺はACから出れないからパス』

「今下向くと吐くからな」 

 

 ACのカメラが宇宙服のカメラと同調し外の光景を映し出す。

 ついでにこの前ステルス機対策でACに増設した潜望鏡でも外を覗く。

 

 この宇宙服はパワードスーツのような姿勢補助機能が無い代わりに色々と高性能なのだ。

 なんで安売りされていたかと言うと、子供用でこんな重い装備なんて売れる訳が無いとしか言いようが無い。

 

 外を覗くと確かに相棒は顰めっ面で上を向いて口を抑えている。

 これは過労で限度がわからなくなって呑みすぎたのだろう。

 しかし、23連勤も休日無しで勤めたのだからそろそろ休日が必要ということか。

 今日は休ませてあげよう。

 

『相棒は無理らしい。ロビンかレックやってくれね?』

「なんたる下劣。最近の若者には年長者を労ろうという尊敬が欠けているぞ!」

「そうっすよ!ここはラミーさんの相棒であり最年少のお頭がやるべきっす!昔のガスマスクつけてさっさと処理するっすよ!」

 

 いつもの馬鹿コンビが嫌なことを回避しようと喚き出す。

 こういう吐瀉物は何時もなら俺が処理するのだが、今日はパスだ。

 宇宙服はアウトだし、昔のガスマスクはと言うと最初の任務の後レックとの約束でくらった拳骨のせいで破損してしまった。

 

 思い出の品であり就寝用のガスマスクでもあるので目下修理中だ。

 

『あのガスマスクはレックの拳骨で壊れたから使えねえんだよな。こうなったらお医者さん頼めるか』

 

 部外者に頼るのは少し申し訳なさもあるが、こういう時に頼りになるのがお医者さんだ。

 かなりマッドではあるが、仕事ぶりは真面目だしなんとかしてくれるだろう。

 

「仕方ありませんね。吐瀉物の処理は昨日ぶりですよまったく」

「おおっ?お医者さんまた何かやったんすか」

「おいコマドリやめんか」

「実はACを騙し盗られたという間抜けな実験体が手に入りまして。本人の希望もあり強化人間手術を執り行ないました」

 

 あれ、なんか聞いたことのある話だな。

 どこかのドーザーの噂にでもなってたっけ。

 

 しかし、ACを騙し盗るなんてそんなノーザークみたいなことをできるやつがまだルビコンに居るのか。

 気骨のあるやつは嫌いじゃない。

 後で調べてみようと思いもしたが、しかしお医者さんの強化人間手術だと思い出す。

 

 このお医者さん、旧世代型強化人間手術についてはほぼ我流のヤブ医者なのだ。

 

 レックに施術した時は頭部だけということもあり奇跡的に成功しているが、この医者は一から手探りで手術術式を模索しているせいでコーラルの扱いが下手なのだ。

 一度だけコーラル集中管理デバイスから液漏れしたとかでレックが入院した時は気が遠くなった。

 

 金と機材があれば最新鋭の強化人間手術も可能と嘯いているが、どこまで本当なのやら。

 強化人間手術を受けたやつは十中八九死んでいるだろう。

 

「また失敗したっすか?」

「まだ強化人間手術を諦めていなかったかヤブ医者め!」

「失礼な。少し呼吸が止まっているだけですよ」

『それ死んでるって言わないか?』

「いいえ。生きていないだけですから失敗ではありません」

 

 だが、言い方がおかしいな。

 冷凍保存でもしているのか?

 失敗を認めたくないだけの可能性もあるが、ACからの視点では今のお医者さんの表情が見えない。

 判別がつかないな。

 

「うっひょ〜、やっぱり頭おかしいっすねこの医者。レックは死なずに済んで良かったっすね」

「コマドリぃ……それ以上は許せんぞ」

「お?おっおっ?許さなかったらどうなるっすか〜?こちとら次期お頭っすよ〜?」

「やれラミー!」

「おえっぷ、これ今日行けねえわ」

「この愚鈍な呑んだくれが!」

「アッハッハ!こりゃこっちの勝ちっすね!」

 

 少しまずいな。

 レックは強化人間手術の予算が足りなくて中途半端になってしまったことを根に持っている。

 お医者さん本人に対しては報復を済ませたが、今も強化人間手術について執拗に弄ると激昂する。

 戯れで済んでいるうちにおさめなきゃいけない。

 

 カメラを覗くとお医者さんもこっちを見ている。

 どうやら考えることは同じらしい。

 

『お医者さーん。追加で仕事頼めます?』

「仕方ありませんね。ロビンさん」

「おっおっおっ?あ、お医者さんっすか。どうかしたっすか?」

 

「あなたは昨日今日明日と三連勤が決定いたしました。この通告に背く場合は銃殺しますが悪しからず」

「じょ、冗談じゃ……」

 

『ロビン、味方を煽るなって言ったよね?』

「っすー……うっす。レックさんナマ言ってすみませんっす冷静になりました」

 

「ハッ、囀るだけのコマドリが。驕りはいつか破滅に足る災いとなる。精々律することだ」

 

 俺とお医者さんから諌められることで反省するロビン。

 ロビンもつけ上がりやすい性格ををしているが、他人から諌められると冷静になってくれる。

 素直に反省を態度に示すのはドーザーでは珍しい習性だ。

 

 ドーザーだから頭がおかしいのは変わらない事実だが、やっぱり良い所のお嬢様だから根が素直なのだ。

 

 ドーザーは大抵貧困層だ。

 教育施設なんてほぼ皆無だし、生き延びる為に一所懸命なので何かを学ぼうとするドーザーは少ない。

 

 教育のされていない人間など獣同然だ。

 

 そういう意味ではD&Jはドーザーのエリート層にあたるやつらだった。

 地図が読める程度に識字率が高く、ほぼ全員がMTの操縦を習得しているというのはドーザーの集団だとかなり珍しい部類に入るのだ。

 

 その代わりドーザーとしては穏健派で、ほとんど戦力を持っていなかったが。

 

 それはともかく、レックは怒髪天を衝く前に溜飲を下げてくれたようだ。

 危ないところだった。

 まだ大人としての対応をしてくれたから助かったものの、コーラルをキメていたらヘリの通路から突き落とすぐらいはやらかしていただろう。

 

 ドーザーは危ない。

 一般人は絶対に近づかないようにしよう。

 親友との約束だゾ♪

 

 ヴォエッ!我ながら気持ち悪いな。

 

ーーーーー100%

 

『独立傭兵"挚友"龙葵(" チーヨウ"ロンクイ)様。

大豊核心工業集団所属、惑星ルビコンⅢ広報戦略担当も兼任することになりました峨眉山( アーメイシャン)です。

 

早速ですがミッションの説明に入りましょう。

今回大豊は訓練生部隊による大気圏突入を敢行します。

あなたがたには着陸した訓練生部隊の護衛をしていただきたい。

 

訓練生部隊は我々大豊が選抜したレッドガン候補生ではありますが、物資輸送のため最低限の武装しかできていません。

まとまった数のAC部隊に襲撃をかける愚か者が居るとは考え難いのですが……訓練生の経験不足もあり、万が一封鎖機構から襲撃されると対応できない恐れがあります。

加えて、本来護衛を行う筈のレッドガンは大豊上層部との衝突で頼りにできません。

 

"挚友"龙葵(" チーヨウ"ロンクイ)様。

難しい依頼にはなりますが、その分D&Jに利する追加報酬も用意しました。

大豊の盟友足りうる確実な遂行を期待します』

 

ーーーーー

 

訓練生部隊護衛

 

作戦領域:ベリウス地方

依頼者:大豊核心工業集団

作戦目標:護衛対象との合流、指定箇所までの護衛

報酬:240,000 coam

 

詳細

 

・僚機あり

・追加報酬あり

 

ーーーーー

 

『お頭、前に護衛や防衛はクソって言ってなかったっすか』

「言った言った。けど訓練生とはいえ大豊のAC部隊が護衛対象なら多少自衛もできるだろ」

『それもそうっすね』

「だからロビンはミサイル多めの殲滅向き武装構成になってもらったってわけ」

 

 降下先で訓練生が信号を出すまでの間、機体に乗り込んでロビンと雑談に興じる。

 訓練生部隊が大気圏突入するまであと数分。

 

 降下予定位置付近で輸送ヘリをホバリングさせているが、大気圏突入による降下は着地地点に多少誤差が出るものだ。

 

 数km程度の誤差で済めば良いのだが。

 

『お頭はいつもの構成っすか?』

「いつものpotooooooooだ。MTの殲滅には向かないけど重MTや大物が出てきたら速攻で仕留める。そっちは殲滅を担当してほしい」

 

『うーっす。ところでお頭ってめったにアセンブルを変えないっすけど他の武器って使えるんすか?』

「金が無いから変えないだけだ。一通りの機体は使えるように訓練してるがこの構成が一番安く強い」

『そこまで旧型機を動かせるのってお頭ぐらいっすよ。構成じゃなくてお頭が強いっす』

「へへ、よせやい」

 

 なんだ、急に褒めるなよ。

 照れるじゃないか。

 

「それを言うならロビンも強くなったものだろう。シミュレータの仮想戦闘とはいえ、大抵のACは倒せるようになったじゃないか」

『えへへぇ、照れるっすね』

「しかし課題も多い。一番の問題は相変わらず激しい機動ができないことだよな」

『アレはどうにもならないっす。あんな早い動きしなくても大体なんとかなるアセンブルにしてほしいっすよ』

「ならガチタンだな。とにかく装甲を盛って堅く遅くって方針だろ?」

『そうなるっすかね。良い感じにアセンブルを組んどいてほしいっす』

 

 そういえばコイツ武装は頻繁に変える癖に機体のアセンブルはほとんど手を出して無いんだよな。

 今度自分のアセンブル論を教えて機体弄りの楽しさを教えてやるとしよう。

 

 だけどタンクか……

 

「悪い。ガチタンはあまり詳しくなくて操縦を教えられない」

 

 自分は基本的に二脚の操縦しかできない。

 この世界でゲームと同じ動きができるように必死に操縦を習得したが、タンク脚部はまだ操縦できるとは言い難い練度でしかない。

 

 いくらコントローラーで戦闘時の操縦を簡略化されているとはいえ、戦闘以外で細かい機体の挙動を制御するためにものすごい手間がかかったのだ。

 

 同じ理由で四脚や逆関節もまだ習得できていない。

 中量二脚以外は強化人間で大抵の操縦ができるレックに教えを乞うているのが自分の現状だ。

 

『え、ならアセンブルの方も駄目っすか?』

「アセンブルはわかるが……如何せん他のパーツが入手しにくい」

 

『そんなに面倒なパーツ使うんすか?普通にバズーカとグレネード積むだけで良いっすよね』

「お前反動のある武器撃ち続けられないじゃん」

『あっ、忘れてたっす』

「だからミサイル主軸のタンクを考えてるけど、今買えるパーツだとどうしても難しいんだ」

 

『へぇ、例えばどんなパーツっすか?』

「機体パーツは流用するとして武器とジェネレータだな。アーキバス先進開発局の実験用ジェネレータとか技研製プラズマライフルにオールマインドのログハントプログラムで手に入るミサイルとか……」

 

 エルカノのニードルミサイルとか出来ることなら技研ACのエフェメラ腕を買い戻して頭も胴体もアーキバス製品にして装甲の弱点も埋めたい。

 あれもこれも言い出せばキリがない。

 

 だからこそ機体だけでも既に持ってるパーツを使って節約するのだ。

 イレギュラーが単騎で稼ぎまくるゲームと違って、D&Jという傭兵集団を成立させるにはとにかく節約が必要だ。

 

 D&Jの連中は数と機体の頑丈さに頼ったパイロット適性の低いやつらだ。

 不幸中の幸いとでも言うべきことに、アイツ達は適性の低さからクイックブーストなどのエネルギーを消耗するアクションはあまりとれない。

 その分ジェネレータを最も安いAG-J-098 JOSOにして節約できるからマシだが、それでもまだまだ金がかかる。

 

 ひとまずの目標はこの一ヶ月で傭兵希望のやつらの機体費用を稼ぎ出し、傭兵特需が終わる前に当分の運転資金を確保することだ。

 

 それでも10機もACを買わないといけないのは、我ながら狂った計画だと思う。

 それでもやると決めたからにはやり遂げるしかない。

 

『かなり多いっすね!?それにアーキバスのパーツっすか……』

 

「アーキバス製品は値段が張るが優秀なパーツが多い。相手のことはよく知っておくと効率よく倒せるぞ」

 

『うへー、仕方ないっすねぇ」

 

「どうしても嫌なら使わない機体にしようか?」

 

『おっ、出来るっすか?ならお願いするっす』

 

「良いぞ。そうだロビン。エルカノが今開発してるはずのニードルミサイルが欲しいんだけど、お前の伝手でなんとかならない?」

 

『そんなパーツ聞いたこと無いっすけど本当にあるんすか』

 

 ゲームだとショップに並ぶのは終盤だから今は無いかもしれないな。

 

「無かったら予約しといてくれ。たぶん開発されるから」

『帰ったらパパに聞いとくっすか』

 

 そうして雑談に興じていると、大豊の指定した回線から信号が送られてきた。

 

 さて、仕事の時間だ。

 予定時刻から大幅に遅れているが、なにかあったのだろうか?

 信号の発信された座標にヘリを向かわせつつ、訓練生との通信を行う。

 

「聞こえるか?こちら独立傭兵ベスティー・ナイトシェイド。応答せよ」

『くっ、クソ!なにがどうなって……!』

『待て、通信だ!こちら大豊AC部隊、封鎖機構の空飛ぶ無人機に襲撃を受けている!』

 

 連続する爆発音に続いて慌ただしく叫ぶ訓練生の声が鳴る。

 空を飛ぶ無人機だと……?

 

「バルテウスか!被害状況を教えろ」

『グリッドに逃げ込んだおかげで大きな被害は出ていない!だが火炎放射とグレネードで壁が破壊されるのも時間の問題だ!』

「あと5分で到着する。グリッドの奥に逃げ込んで到着まで時間を稼げ」

『だが、あれはACで対処できる敵じゃないぞ!』

『独立傭兵には無理だ!脱出方法を教えろ!』

 

 はーん、独立傭兵には無理だとぉ?

 新兵どもがふざけやがって。

 

「おいロビン、いけるな?」

『システムチェック完了、いつでもいけるっす」

「バルテウスは主にミサイラー。パルスアーマーとアサルトアーマーを搭載していて、大量のミサイル以外のダメージソースはショットガンにグレネードと火炎放射。安地はバルテウスの頭上だ。たまにガトリングを撃ってくるが無視して良い」

 

『この機体だと前線は無理っすね。遠距離から支援するっす。ミサイルはどう避ければ?』

「アサルトブーストで弾幕の薄い場所に突撃。ミサイル一つ一つの威力は大したことはないから落ち着いて対処しろ」

 

『了解っす。お頭は真正面からっすか?』

「真っ直ぐ行ってぶっ潰す。バルテウスは高く売れるぞぉ?」

『それは最高っすね!』

 

 ロビンから落ち着いた声が帰ってくる。

 この冷静さなら多少撃たれてもビビることはないだろう。

 というか、自分が鍛えまくったので初見でさえなければ一人で攻略できるんじゃないか?

 

『おい、聞いているのか!死にたくなければ逃げろと言っているんだ!』

「さっきからうるせえな!バルテウスは倒せる敵だから黙って待ってろって言わなきゃわからねえのか!慌てず騒がず穴熊決め込んで大人しく待ってろ!」

『なんだと!?』

『まあ落ち着くっすよ〜。ウチのお頭はクソ強いんで安心して待っててほしいっす』

 

 喧しく響く声へ反射的に怒鳴りかえし、ロビンに窘められる。

 いかんいかん、こういう時は深呼吸だ。

 

 ヘリの広域探査でグリッドに攻撃する熱源反応を感知。

 ここらがヘリで近づける限界だろう。

 ヘリのハッチ開放、システム再チェック問題なし。

 

「降下するぞ!Potoooooooo、出撃する!」

『機体名って良いっすよねぇ!』

 

『メインシステム 戦闘モード起動』

 

 戦場となるグリッドからたった1000m上からの降下。

 降下直後に自分に向けてグレネードが放たれるが、機体を左右に揺らしてFCSを騙して明後日の方向に放たせる。

 

『その動きキモいっす』

「酷いなオイ!」

 

 後方へと降下していくロビンから罵倒が届く。

 やめてほしいなぁ、仲間から言われるとちょっと傷つくじゃん。

 

 700m、500m、300m。

 ACのターゲットロックが作動し、円環のような特徴的なミサイルポットを纏う敵機を視認する。

 無人特務機体バルテウス。

 

 紛れもない大物だ。

 

 迫りくる大量のミサイルをアサルトブーストからのクイックブーストで加速降下して躱す。

 

 挨拶代わりに4連ミサイルと蹴りを入れてエツジンによる銃撃を開始する。

 

「こちら独立傭兵、バルテウスと接敵した。援護不要、自衛に専念しろ」

『くっ、頼んだぞ独立傭兵!』

「任された。さあいくぜ!」

 

 後退して放たれたショットガンをABによる突撃で躱す。

 下が空いていたので真下に潜り込み銃撃、間髪いれず火炎放射により地上が焼かれたのでバルテウスの頭上に退避。

 

 2丁のバーストマシンガンによる銃撃はその衝撃力でパルスアーマーを減衰させていく。

 

 堪らず大きくブーストを噴いて退避するバルテウスだが、それを逃す自分達ではない。

 

『遠くから見ると思ったより早くないっすね』

「良い援護だ!」

 

 バーストマシンガンをリロード。

 ロビンの放つ18発のミサイルがパルスアーマーを打ち消し、バルテウスをスタッガーに陥らせる。

 

 レーザスライサーの連撃からの追撃でキック。

 距離が空いたところを突撃し、スタッガーから回復したところに更に攻撃を叩き込み衝撃値を蓄積させる。

 

 バルテウスはパルスアーマーが破られてしばらくはパルスアーマーを再展開できない。

 ここが好機だ。

 

『これ嵌め殺せるっすかね』

「油断するなロビン、そろそろ来るぞ」

 

 ロビンと自分のミサイルが突き刺さり、バルテウスは再度スタッガーに陥る。

 さっきの焼き直しのように追撃を行い蹴り飛ばすと高エネルギー反応。

 

 連続クイックブーストによる後退でアサルトアーマーから距離をとった。

 

『うっひょ~、パルス爆発ってやばいっすね』

「ヤバいのはお前だ!ロック外して突撃交差しろ!」

『うえっ?こっち来たぁ!?』

 

 バルテウスが火炎の剣を振りかぶると同時、すんでのところでアサルトブーストを起動したロビンの機体がすっ飛んでいく。

 

 機体の後ろから何発かミサイルが突き刺さっているが問題ない程度だろう。

 ジェネレータの性能が劣悪なので長くは飛べない機体だが、その分頑丈さに重きを置いた機体だ。

 バルテウスの牽制程度ではびくともしない。

 

「よし、ロビンはそのまま500m離れろ!一度ロックオンを外させてから戻ってこい」

『うわああぁああぁい!』

「話せてねえぞバーカ!」

 

 アサルトブーストの加速のせいで悲鳴混じりの返事を返してくるロビン。

 マウスピースがあるから舌は噛まないだろうが、アサルトブースト中に喋るとはかなり慌てているな。

 

「さて、続けようか」

 

 気を取り直してバルテウスに向き直る。

 

 ガトリング掃射からの火炎剣を砲門をかすめるよう突撃して躱す。

 そのままパルスアーマーを削り、警告アラームに従って機体を左右に反復横跳び。

 

 ショットガンの僅かな被弾と後方にすっ飛んでいくグレネードをすり抜けて射撃。

 

 バルテウスがこっちを向くまでの間に半分ほどまでパルスアーマーを減衰させることができた。

 

「そろそろ来い!」

『人使いがクソ荒いっすね!』

 

 バルテウスの横っ面にミサイルが突き刺さる。

 ロビンの援護射撃、ついでにロビンのゆっくりと前進してきている。

 パルスアーマー消失まで僅か。

 

「そおら、こいつで割れろ!」

 

 4連ミサイルを発射。

 バルテウス最後の足掻きとして放たれた火炎放射を躱し、銃撃とミサイルの十字砲火でパルスアーマーが消失。

 ここで決める!

 

「やるぞロビン!」

『やっちゃえお頭!』

 

 レーザースライサーの連撃中にバルテウスへ着弾する火炎放射とミサイル。

 

 きっちりとレーザースライサーの10連撃をフルヒットさせるまでもなく、過剰火力を叩き込まれたバルテウスは撃沈した。

 

ーーーーー

 

『いえーい!ナイスっすお頭!』

「ナイス援護だロビン。アサルトブーストで上手く避けれていたな!」

 

 大物喰らいの喜びを束の間のひとときで分かち合う。

 うへへへ、コイツは高く売れそうだ。

 輸送ヘリのお医者さんにバルテウスを撃墜した座標を送信しておけば、後でBAWSが回収に来て買い取ってくれるんだ。

 

 偶にジャンカーが掠め盗ろうと湧いてくるが、そういう時のためにジャンカー・コヨーテスの旗を突き刺しておくとケツをまくって逃げ出してくれるのだ。

 

 ジャンカー・コヨーテスは烏合の衆とはいえドーザーの最大派閥。

 獲物に手を出すと粛清されるので、物の区別がつかなくなった重篤なコーラル中毒者でもないと手を出されることはない。

 

 威光ってのは便利なもんだ。

 

『終わった、のか?』

「さっきは怒鳴って申し訳ない。もう出てきてもらって良いぞ」

 

 ぞろぞろと大豊製ACの部隊がグリッドから姿を見せる。

 総勢6機、中々の大所帯じゃないか!

 

 企業凄え!

 新兵にこんなちゃんとしたACを与えて作戦を遂行させられるなんて……

 素敵だぁ……!

 

『いや、こちらもすまなかった。情けない話、襲撃で気が動転していたからむしろ助けられた』

『凄え、あの化け物をACでスクラップにできるなんて!どんな高性能機なんだよ』

『ちょっと待て、あのACたしか旧型機じゃなかったか』

 

『おっと、お頭は愛機を旧型機って馬鹿にするとたまにキレるっす。口には気をつけるっすよ』

「ミッション中の味方には怒らないって。さて、大豊の客人達。大事な荷物は無事か?」

 

 Potooooooooのカメラを大豊AC部隊に向け、破損を確認する。

 良かった、目立つ被弾はなさそうだ。

 よっぽど避難の判断が早かったらしい。

 

 判断の早さはそれだけ真面目に訓練に取り組んできた証拠。

 大豊も良い人材を持ってるじゃないか。

 

『ああ、荷物は無事だ。それにしてもまさか本当に傭兵に助けられるなんてな』

「いやいや、そちらも災難だったな。それにしてもバルテウスに襲われるなんていったい何があったんだ?」

『わからない。降下先のグリッドから出たらいきなり攻撃されたんだ』

 

「巡回中のバルテウスに遭遇したのか。それは不運だったな」

『まったくだ』

 

 背部を見ると両肩に接続された大型バックパックが見える。

 それが総勢6機もいて、武装は右手の大豊製マシンガンDF-MG-02 CHANG-CHENのみ。

 本当に武装が最低限とは驚いたな。

 

「さて、行き先は大豊の支部だったな?ACの巡航速度だとここから大体1時間ぐらいだ。先を急ごう」

『それなんだが、少し問題があってな』

「なにかあったのか?」

 

 えっ、問題があるのか。

 もしかして騙して悪いが案件だったりするのか?

 

『ブースタがBST-G1/P10なんだ』

 

 BST-G1/P10、軽量機向け旧型ブースタにして第一世代の格安ブースタ。

 ああ、なるほど。

 ACを六機も揃えられたカラクリはそういうことなのか。

 

 駄目だろ金満な企業がそんなケチな真似したら。

 とんでもない暴挙に思わず目眩がする。

 

「……ファーロン製の、第一世代だったよな?」

『ああ』

「軽量機向けブースタを、大豊ACに?」

『……ああ』

「ジェネレータは?」

『…………DF-GN-02 LING-TAI』

「ならEN負荷を考えてFCSはFCS-G1/P01か。巡航速度ベイラムのタンクより遅くねえか?」

『……ああ』

 

 絞り出すような肯定の声に絶望する。

 この大豊ACを評するなら、超鈍足並耐久のノーコン産廃機体。

 

 控えめに言って動く的だ。

 

 これが少しの問題だって?

 大きすぎる問題だろう!

 

「こんなのアーマード・コアに対する冒涜じゃねえか!大豊ってこんな頭大豊なのか!?」

 

『ご、誤解を招く発言は辞めてくれ!これは輸送専用機に無理して武装させてもらったんだ!そもそも戦闘用じゃない!』

 

「非戦闘用の機体でお前らよく生きて降下できたなぁ!?ルビコンはC兵器や企業陣営、武装ゲリラにならず者の跋扈する頭のおかしい終わってる惑星だぞ!」

『いやあ、改めて言われるとこんなのが故郷なんてヤバいっすねぇ』

 

『た、隊長ぉ?ルビコンは企業以外に弱小勢力しか居ないって話じゃ……』

『……騙して悪いが任務なんでな。遂行するぞ』

『隊長ぉ!?』

 

 おぉ……もう、うん……

 こんなのを護衛しなきゃならないのか。

 

 出撃前のコーラル酔いの残り香なのか少し頭が痛くなってきた。

 帰りたい、切実に帰って休みたい。

 

 しかし、これは依頼であり、遂行しなければただ働きだ。

 もうひと踏ん張りといこう。

 

『じゃあルビコン観光ツアーはじめるっすよー。まずはあっちから来てるのがC兵器ヘリアンサス型っす。バルテウスってあれ追って来てたんじゃないっすか?』

 

『は?』

 

「は?……ロビィン!敵は一機ミサイル掃射しろォ!」

『あいあいさーっす』

 

 ふざけた態度のロビンの機体から放たれるミサイルがグリッドの壁を食い破って飛び出してきたヘリアンサス型に着弾。

 

 ミサイル掃射は過剰火力だが、C兵器ヘリアンサス型は洒落にならない機体だ。

 あれは爆発属性の攻撃手段が無いのなら絶望的な強敵となる。

 

 もしカスみたいな性能しか持たない大豊ACと接敵した場合、おそらくほとんど抵抗できず殲滅されてしまうだろう。

 

『なんだ、この機体は』

 

 ミサイルでボロカスになったヘリアンサス型を確認する大豊の訓練生達。

 その気持ちはわかる。

 見た目からしてマジでヤバいもん。

 

「コーラルを動力に動くルビコン調査技研の遺した超兵器、それが『C兵器』だ。このヘリアンサス型は自走式の破砕機で爆発属性以外の攻撃に対してはAC以上の耐久を持っている」

『ベリウス地方で見かけるなんて珍しいっすね』

 

『これが、ルビコンの兵器なのか……!?』

「さすがにこの大陸だと野生のC兵器はほぼ駆逐されてるよ。改めて先を急ごう、ルビコンはヤバいからな」

 

 




バルテウス:空飛ぶ火薬庫。巡回コースで発見したヘリアンサス型を掃討すべく追跡していたら大豊訓練生部隊と鉢合わせてしまいターゲットを変更した。

C兵器ヘリアンサス型:物騒な車輪向日葵。バルテウスのミサイルとグレネードを華麗な進路取りで躱し続けていた。逃走しようとグリッドから飛び出したらミサイルの群れに襲われた。

ナスティ・ロビン:ガチタンに興味が出てきた一般ドーザー。実はとても要領が良くACの操縦も爆速で習熟している。パイロットとしての腕は並だが、機体の頑丈さを信じて攻撃し続けられる肝の太さが強さの秘訣。頭が馬鹿。

レイジ・レック:翌日が休日であることを理由に大量にコーラルを呑んでいた一般ドーザー。そのせいで昨日の記憶が消えてしまっている。パイロットとしての腕はそこそこ高め。相手の突撃を誘発させて迎撃気味に戦うクレバーさが強さの秘訣。頭が馬鹿。

お医者さん:闇医者にしてマッドサイエンティスト。旧世代強化人間の手術術式を研究しているが研究途上であり成功率はいまいち。
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