【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵 作:白河童小鼠(人間)
私は更新されるはずのランクマッチを楽しんできます。
次話更新まで最短で月単位で期間が空きますので、お気に入り外しはこのタイミングでどうぞ。
評価感想ここ好き等大変励みになりました。
いやあ、六文銭は強敵でしたね。
あの後ひとしきり忍者ごっこを楽しんだ後、夕日を背に帰還。
帰ってから諸々の調整とお医者さんへの説明で忙しかったが、どうにか5時間ほど睡眠をとることができた。
というわけで今日が一番の修羅場、最終日でござる。
ニンニン。
ーーーーー
『ご友人、ついにこの時がやって参りました
場所はグリッド086、あなたは私の代理として客人をもてなしてください
お待ちしていますよ……ご友人……』
ーーーーー
RaD脱出支援
作戦領域:ベリウス地方西部 グリッド086
依頼者:オーネスト・ブルートゥ
作戦目標:目標防衛
報酬:462,157 COAM
詳細
・敵撃破に応じて報酬を加算
・発射区画を発射シーケンス完了まで防衛
ーーーーー
酷く簡素なブリーフィングに中途半端だが莫大な報酬。
もはや言葉は要らないというご友人なりの信頼だろう。
これはオーネスト・ブルートゥが目論むオーバード・レールキャノンのダイナミック持ち逃げ計画の終端。
ゲームでは僅かに語られるばかりだった狂気の犯行がこれ。
ついに来たか、というのが正直な感想だ。
自らこれに出資し、その成功に賭けてきたのだから手伝うのが道理というものだろう。
既に資金と技術は持ち出し済みであり、後はあの超兵器を持ち出すだけ。
ここまでお膳立てされた舞台に心躍らないやつが居るだろうか?
いや、いない。
少なくとも自分はこういうのは大好きな人間だ。
なんと素晴らしい馬鹿騒ぎだろう。
もしバレたらRaDに所属する相棒は失望するだろうか?
それは嫌だが、きっと俺の蛮行に呵々大笑してくれることだろう。
「まあ、受けないんだけどね」
自分一人になった輸送ヘリの中、依頼の表示されたタブレットを伏せる。
ちなみにこの依頼、自分やD&Jのバカどもは受注しないとご友人に伝えておいた。
自分個人としてはこういうバカ騒ぎや凶行は大好きなのだが、今回はそれを上回るデメリットがある。
それはご友人も承知の上。
この依頼はそもそもただのフェイクだしね。
だってそうだろう?
冷静に考えてオーバード・レールキャノンを持ち逃げする準備の為に大量の資金を使ったオーネスト・ブルートゥにこんな報酬用意できる訳が無い。
ならなんでこんな依頼を発行させて断るなんて一連の流れを経たかと言うと、この秘匿通信を見ているであろうシンダー・カーラに対し独立傭兵集団D&Jは敵対しないと信頼を得るためだ。
RaDの頭目シンダー・カーラはルビコン最強の電子戦能力を持つハッキング技師でもある。
その能力を持ってすればこの依頼を覗き見するなんてことは容易く、事件発覚後に裏切り者を炙り出すために各方面にハッキングを仕掛けることだろう。
もしその時に自分がこの依頼を受けていたなんてバレてみろ。
その時は最低でも一年ほどインターネットを使用できなくなるに違いない。
考えただけで怖い怖い。
そんな訳でRaDとの友好とオーネスト・ブルートゥへの表向きの不干渉を態度に見せるべくこの作戦を案じたのだ。
「ある意味相棒を人質にとられてるしさ」
面従腹背も致し方ないと続けようとして辞める。
ここは自分の私室だが、どこに盗聴器が仕込まれているかわからない。
例えばそう、コンセントの延長コードの中とか。
部屋の隅にある電力供給コードにいつの間にか追加されていた配線。
工具を引っ張り出して解体すると……ほうら出てきた盗聴するためのマイク。
あまりにも配置が適当過ぎてバレバレだ。
マイクに向けて呆れながら話しかける。
「あー、レック聞いてるか?聞いているよな?お前の端末の使用状況知ってるから聞こえないふりしても無駄だ。今通信を繋げて正直に吐くなら説教で許してやる。繋げなかったら尋問な」
『チッ、勘の良い小童めが!』
ベッド横のモニターにレックの不機嫌そうな顔が映し出される。
舌打ちしたいのはこちらだよ。
これだからドーザーってのは油断ならないんだ。
金と欲望で直ぐに靡く。
今回は誰に抱き込まれやがったか?
「で、誰の差し金だ?」
『オールマインドだ。愚か極まりないことに平文で接触してきよったわ』
「マジで愚かだなオイ」
『そうだ愚か極まりない愚童め。あの程度のコーラルでドーザーの記憶が飛ぶわけなかろう』
「とするとあの日の寝不足は無駄だったかぁ」
大豊からの護衛依頼前なのに来やがったから緊急措置でコーラルを大量に呑ませたが無駄だったらしい。
レックの脳が思ったよりもしっかりしてたな。
相棒ならあれだけ呑ませれば記憶がとぶのにね。
『それでどうする』
「どうするとは」
『決まっている。この身の処断よ』
「レックは慌てん坊だなぁ。まだ動機すら聞いていないのに決めるわけないよ。それで動機は?」
まあ、裏切りを毛嫌いするレックの事だから不安はないのだけど。
良くも悪くもコイツは直上径行で頑固者。
裏切りと見せかけてスパイ活動なんてやらかしても不思議ではない。
多少の融通は利くが根本からの修正は不可能であり、それならレックなりの計画に便乗した方が事は進む。
これは経験則だ。
『小童がコマドリで構想している悪巧みがあろう』
「うん、あるね」
『詳しい内容は知らんがとにかく武力が必要なのだろう?貴様は強力なMTであればRaDから、ACは大豊RaDBAWSエルカノと複数の伝手がある』
「そりゃそうさ。戦力供給を単一勢力に頼るのは馬鹿の所業だからね」
『だが、コマドリの機体はそうもいかんだろう。小童がアーキテクトとして構想したあの機体には、オールマインドが製作した武装が不可欠とされていた』
「へえ、よく知ってるじゃないか」
『故にこのレイジ・レックはこの身を第2世代強化人間として詐称することで、機体パーツの購入権限を拡張することに成功した』
「え、マジで!?」
『ファーッハハハ!対価として小童の素性を要求されたがそんなものは知らん!そもそもこのレイジ・レックはベスティー・ナイトシェイドと名乗る馬鹿の個人情報をほぼ知らん。そういえばと気になったから盗聴器を仕掛けただけのことよ』
「あれ、レックって俺の素性知らなかったっけ?まあ良いや、それで俺の何を知って報告したんだ?」
『何もわからん!調べがついたものはその珍妙な宇宙服程度よ。気味が悪いほど何もわからん故、未だオールマインドへの報告内容を決めかねているほどだ』
「アッハッハ!そりゃあハッカーとして活動する以上個人情報は念入りにアップロードされないようにしてるからね!」
『オールマインドも対応を決め兼ねていたぞ。幾つか漏らしても構わん情報を寄越せ』
「そうだなぁ。俺がコーラルアレルギーって事と、ロビンが作った俺でクソコラが昔にミーム化してる事、最近はキレキレ大豊マン辺りとかどうだ?」
『それ故に対応を決め兼ねているのだトンチキ男め!』
「前から思ってたけどレックって俺の事男だと思ってるよね」
『……なんだと?』
「そりゃあ、ドーザーの頭領として舐められる訳にはいかないから一人称を俺にしてるけどさあ、昔はロビンとおままごとでキャッキャウフフしてた時期もあったんだぜ?」
『まさか。いや、一切顔も見ていないのだしかし……』
「おいおい酷いなぁレック。この多様性溢れる社会で男がおままごとで遊ばないなんて偏見は良くないよ?俺は素面でおままごとを楽しめる男ベスティー・ナイトシェイドさ!」
『なるほど、これは良い報告にできそうだ。言いにくいことをすまなかったな、これから殴る時は下腹を避けるよう配慮しよう』
「おーい聞いてるかレック?気持ち悪いこと言うなよ謝るからさ。だから俺は男だって」
『ああ、わかっている。そういうことにしたいのだな?わかっている。今日もコーラルは赤く透き通っているが……これは現実か?』
「錯乱してんじゃねえよ!」
『自ら振った癖に冗句も見抜けない蒙昧が!この際言っておくが小童に冗談の才能は無い。貴様の存在自体胡乱極まりない上に、誤解される余地を残しているのが迷惑極まりない。わかったらその減らず口を直すことだな小童ァ!』
「減らず口でも空っぽの方が夢詰め込めるってね。他人から都合の良い偶像として思って貰えるなら集団をまとめるには都合が良いんだよ親友」
『胡乱極まりない小童め。……貴様は友を友と呼べない根性無しのただの小童に過ぎん』
「嬉しいなあ、こんな俺を童として扱ってくれるなんて。ただの子供にしては不純物が多いから大人として振る舞ってたけどレックには甘えて良かったり?」
『甘ったれるな。縋るならラミーに縋ることだな』
「相棒には甘え過ぎて相手してもらえないんだ」
『甘言を弄するな。そして代替物に成り下がるなぞ言語道断よ!』
「それでこそレイジ・レックだ!その頑固さでロビンを支えてやってくれ。俺はこの後別行動になるからさ」
『そうか。D&Jとは別で動くのだったか?』
「そうそう。ちょっと野暮用でね」
『ドッグタグは拾ってやろう。貴様には屑鉄の下がお似合いだ』
「ありがとう。気持ちだけ受け取っておくよ」
通信が途絶える。
画面から目を離し、外を見れば汚染市街近隣の疎らな森が見える。
さて、自分も気合いをいれなきゃいけない。
せっかく恩を返すんだ。
そのうち良いことがあるに決まってる。
そうだろう?
ーーーーー
『おはようございます、こちら「レイヴン」 オペレータです。
作戦内容を伝えます。
本作戦では封鎖機構による追撃を終了させるため、「レイヴン」の死亡偽装を行います。
あなたの仕事は「レイヴン」の乗機NIGHTFALLが撃墜された後、脱出したコクピットを回収し速やかに指定地点に輸送することです。
輸送中は封鎖機構による巡回が想定されますが、「レイヴン」に危害が及ばないよう私から迂回ルートを指示します。
戦闘は極力避けてください。
ベスティー・ナイトシェイド。
貴方の希望によりNIGHTFALL構成パーツの内ベイラム製FCS『FC-006 ABBOT』は事前に譲渡いたします。
私たちの「レイヴン」 に恩があるとの事ですが、我々はあくまで独立傭兵。
報酬を払う以上、余計な詮索はしないように。
それでは作戦行動を開始してください』
ーーーーー
「レイヴン」護送
作戦領域:ベリウス地方南部 汚染市街/グリッド137
依頼者:独立傭兵集団ブランチ
作戦目標:目標護衛
報酬:200,000 COAM
詳細
・戦闘行動に制限あり
・先払い報酬『FC-006 ABBOT』
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機体構成 Potoooooooo
右腕武器 なし
左腕武器 MA-E-210 ETSUJIN
右肩武器 MA-E-210 ETSUJIN
左肩武器 Vvc-774LS
頭部 AH-J-124 BASHO
コア AC-J-120 BASHO
腕部 AA-J-123 BASHO
脚部 AL-J-121 BASHO
ブースター AB-J-137 KIKAKU
FCS FC-006 ABBOT
ジェネレーター AG-E-013 YABA
ーーーーー
「……へへっ」
輸送ヘリから愛機ポテイトーズで降下し、汚染市街の片隅にある建物の影に潜伏中。
あまりにもおかしくて笑みが漏れる。
独立傭兵「レイヴン」の死亡偽装。
そして撃墜された「レイヴン」の機体からライセンスを盗み出しレイヴンとなった強化人間C4-621。
思っていたよりも時期が早かったが間違いない。
これはハンドラー・ウォルター並びに強化人間C4-621が密航してくる予兆だ。
実は以前から恩返しを建前に独立傭兵「レイヴン」の行方を追跡していたが、連絡がとれたのがほぼ一ヶ月前。
この一ヶ月連続出撃の一週間前となる。
そこから我ながらしつこく予定を尋ね続けてようやく、死亡を偽装して行方をくらませようとしている言質をとることができた。
そこでようやく自分は原作の到来に気づいたわけだ。
事前の計画だと、ここから一年ほどかけてナスティ・ロビン率いるD&Jを拡大させて原作に備えるつもりだった。
しかし、事情が変わったのならば仕方がないと諸々の計画を前倒しにして、帳尻を合わせる為の一ヶ月連続出撃を断行したのだ。
おかげで身体がクタクタの疲労困憊。
明日から三日ほどは汚染市街に監視カメラを仕掛けつつ休養をとろうと思っている。
休養でスッキリするためにも今日のミッションは絶対に成功させなければならない。
さて、頑張るとしようか!
『メインシステム 戦闘モード起動』
『こちらオペレーター』
「こちらベスティー・ナイトシェイド。準備は整ってます」
疎らな木々を見て懐かしさを感じつつ返答を返す。
ここは対戦マップで言う汚染市街Bだろうか。
少し谷間になっているところに小さな建物があって、対戦ではあそこで地形戦をしていたっけ。
この世界であの建物に隠れたら、SGの大型武装ヘリが爆撃するだけで丸々木っ端微塵になってしまいそうだ。
『現在、大型武装ヘリは予定通りのルートを運行中。このままいけばレイヴンを乗せた輸送ヘリが約3分後に撃墜されます。移動を開始してください』
「了解、既に撃墜予想地点付近に居ますがどうすれば?」
『座標を確認します。……確認しました。指示を変更、そのまましばらく待機してください。それにしてもどのように経路特定を?』
「一ヶ月前にサブジェクトガードの基地から直接抜き取りました。俺も元オペレーターですから、これだけ時間があれば如何様にも」
『「レイヴン」の通行ルートは伝えてはいませんが』
「この辺は解放戦線が占拠している区域から少し外れて通行にも脱出に適していますから」
大型武装ヘリがプロペラから轟音を立てて目の前を通り過ぎていく。
基地襲撃の際に偶然手に入れた情報だけど、惑星封鎖機構SGの大型武装ヘリは高速飛行中のレーダー探知が甘いらしい。
スキャン結果を処理する前に通り過ぎてしまうから当たり前と言えば当たり前なのだが、機銃掃射とミサイル爆撃の攻撃力があれば適当に地上を蹂躙するだけで相手が死ぬからあまり必要ないようだ。
だからこうして自分が潜伏していても気付くことは無い。
多少リスクはあったが過ぎれば楽なものだ。
『なるほど。それなりの心得はあるようですね』
「それはどうも。再度の確認になりますがこの後コクピットを回収し、すぐそこのグリッドまで護送すれば良いんですよね?」
『ええ、その通りです。何か問題でも?』
「あのグリッドに武装したドーザーが住み着いていたので今朝片付けたのですが、その……」
『それは助かりますが……問題が発生しましたか?』
「隠してあった脱出用ナイトフォール2号、ドギツい色にペイントされちゃっていました」
アレは酷かった。
最初見た時はショッキングピンクのペンキをぶち撒けた斬新な前衛アートかと思ったほどだ。
使用されていたのが色が落ちないことで悪名高いカラースプレーだったし、あの機体の色を塗り直すのは中々難しいはずだ。
『……見た感想で構いません。機体自体の動作に支障は無さそうでしたか?』
「特に問題無いかと。左腕の肘関節に特にペイントが多く付着していたので、慣らしの動作で支障が無いか確認した方が良いかと思います」
『わかりました。「レイヴン」にはこちらから伝えておきます。今朝の掃討分の弾薬費及び修理費は補填しますので請求書に纏めておいてください』
「助かります。ちなみに追加報酬はいただけないので?」
『……良いでしょう。何がお望みで?』
「普通にCOAMですけど。まあ、今回は良い基礎報酬の上にパーツも貰うんで追加報酬は無くて構いませんよ」
『そうですか。……「レイヴン」搭乗ヘリの撃墜を確認。現場に急行してください』
「了解、30秒で到着します」
アサルトブーストを起動し、隣の大きな広場へと進む。
その中央にあったのが爆散した輸送ヘリと、至る所に損傷を負って一部がもげている探査用ACの姿。
「おーおー、派手にやられたもんですね」
『信号はそこから見て建物群右手前からです」
「これか」
昨今主流の雫のような流線で細長い形のコクピット。
それが建物の陰に刺さるように……いや、地面に普通にぶっ刺さっている。
これは軽量機によく見られるタイプだ。
ちなみにBAWSの作るBASHOや大豊の作るTIAN-QIANGのコクピットは角々していて、脱出時の飛距離よりも搭乗者の安全を重視しているタイプだ。
その分中のスペースに余裕があって、特にTIAN-QIANGなんかは巨漢の相棒でもかなり楽に過ごすことができる。
BASHOはと言うと、大人が身体を限界まで身体を丸めれば後部の荷物入れに座って2人乗りできるスペースがある。
事故が怖いし今回の依頼では使わないけどな!
「積み込みを開始。右肩のハンガーに固定する為、最初はかなり揺れますよ」
「レイヴン」の搭乗するコクピットを右手に接続し、ゆっくりとハンガーに固定しているバーストマシンガンMA-E-210 ETSUJINと入れ替える。
肩部のハンガー部品は、緊急時のコクピット等運搬用にかなり頑丈な素材が使われている。
一気に自分のコクピット画面に表示される機体重量が跳ね上がったが、愛機ポテイトーズは重量級のパーツを積んでいないので少し余裕を持って「レイヴン」のコクピットを積載することができた。
これは完全に戦闘特化ではないからこその利点だ。
戦闘特化なら脚部の積載ギリギリまで高性能なパーツを積むことも多いらしいからね。
「積載完了」
『「レイヴン」、通信は聞こえてる?……そう、なら良かった。こちらオペレーター、コクピットの積載を双方から確認しました。それでは移動を開始してください』
「了解、移動開始。何かあれば教えてください」
この広い砂地は助走をつけるのに丁度良い。
いつもと比べて緩やかに歩き出す。
最初はゆっくり一歩ずつ、数歩歩いて加速したところで走り出し、スピードがノったところで通常のブーストを点火。
ブーストの出力を手動で調節し、走りの80kmから徐々にスピードを上げて機体の通常推力に到達させればいつも通りのスピードだ。
『広域レーダーに反応ありません。眼前に位置するグリッド137に直進してください』
「直進、了解」
真面目な任務中だ。
無駄口は一切叩かないことにした。
しかし、ここまで生真面目な人間がオペレーターについてくれるなんて初めてだから、久方ぶりに背筋がピンと伸びる思いがする。
いや、空調服兼パイロットスーツでもある大豊マン一式を着用しているから背を伸ばすもクソも無いんだけどこれは比喩というものだ。
中央氷原に遠征した際にケイト・マークソンがオペレーターをしてくれた時はなんというか、同好の士でもあるオタク友達と楽しみながら遊んでいたようなものだった。
打てば響くような掛け合いも良いが、こういったきっちり型に嵌まったオペレーションも偶には悪くない。
うちのドーザーどもにこのオペレーターさんの生真面目さを100分の1でも分けてくれたら、日々の生活がどんなに楽になることやら。
うちの馬鹿どもと言えば、今日は六文銭さんに組手をしてもらっている筈だ。
対単体の奇襲・暗殺に特化したAC:シノビとの対戦は、D&Jのドクトリンとして集団戦を教え込んで個々の力を疎かになりつつある馬鹿どもの地力を鍛え直してくれることだろう。
その分、うちの虎の子でもある豆の種子と増やし方の教本を渡したんだ。
企業どもの破壊工作のせいで食糧事情をミールワームに頼り切るしかないルビコニアンの飢え死にを減らしてくれることだろう。
ルビコニアンの体力をつけるということは、即ちルビコン解放への原動力になる。
食糧生産の秘術を大々的に宣伝するように言っておいたので、その内ルビコン解放戦線総司令のミドル・フラットウェルが政治的に上手くやってくれるだろうさ。
空腹とは人類共通の敵だ。
自分も相棒のラミーに拾われるまでは半死半生の餓鬼の如き姿だったからその辛さはよくわかる。
……あの頃は辛かったな。
立てるようになってすぐに見世物小屋に口笛のレパートリーで売り込みをかけて日銭を得ていたっけ。
つくづくこのルビコンでインビンシブル・ラミーに拾われたのは幸運だったと痛感する。
美味しい食べ物は正義。
かのヒーローもそう言っている。
相棒もバカどももコーラルのせいでけっこう味覚がバカになっているのに喜んでくれるから料理する甲斐があったってものよ。
感傷に浸りながら移動していると、物理的に肉眼で目視するために設けた潜望鏡のモニターが、コクピット画面と違う遠景を映し出した。
「報告!」
反射的に叫び声を出す。
よく見ればメイン画面の端にMDD干渉を受けた時特有の細かな画質低下が起こっている。
素早くスキャンによる探査で外部を確認し、機体情報を脳内で参照する。
あれは、オールマインドのステルス機か?
「所属不明機体、推定一機。型式はIA-27: GHOST。モニター欺瞞式ステルスを用いる無人C兵器だ」
『こちらでも確認しました。一機で間違い無いでしょう。迂回ルートをマーカーに反映します』
表示されたマーカーに進路を変更し、向こうのステルス機に感知されないよう迂回する。
幸い、先んじてこちらが避けることによって、向こうに動きの変化は無かった。
グリッド到着までの誤差は五分程度。
支障無い範囲だろう。
それにしてもびっくりした。
ステルス機体は本当に心臓に悪い。
報告時の第一声は震えていなかっただろうか?
リーダーが震えていたら格好良くない。
格好良く無いということは面子に関わるからとても重要なことだ。
見栄と言えばそれまでだけど、自分はその見栄と意地で生き抜いてきた人間。
これを疎かにしては信念が揺らいでしまう。
こうして振り返ってみると、自分のアイデンティティはD&Jのリーダーということにかなり依存しているのかもしれない。
……良くない傾向だな。
一ヶ月もリーダーとして振る舞ったせいで、性根までドーザーになっていたりしないだろうか。
親友かつ仲間とはいえ、あいつらと同類になってしまってはこのルビコンを生き抜くことはできない。
賢く元気に愛想良くってのが理想的だ。
愛想の良さってのは思わぬところで効果を発揮するものだからね。
自分は顔を晒さないから声だけ明るくしていれば取り繕えるんだから楽なもの。
格好良くてコミカルな動きで目指すは人気者!
いよっ、皆のベスティー!
そんな妄言を脳内で諳んじつつ道なき道を進む。
静かなものだ。
ステルス機ゴーストを避けてから本当に敵性反応が検出されない。
よっぽどあのオペレーターさんの腕が良いのだろう。
正直、憧れる。
自分はジャンカーのオペレーターだったので、探し物や敵対反応の検知が主な仕事だった。
だから敵対反応を検知したら避けるよう警告するのだが、あのオペレーターさんはそれすら皆無だ。
よっぽどルート選定に優れているということか。
どんな手法を使えばそのような事を実現できるのだろう。
興味が湧いてきたが、余計な詮索はしないという契約だ。
口を閉じても思考を回し続ける内にグリッド137へ到着。
これは楽な任務だったな。
奥地に駐機しているショッキングピンクのナイトフォールに近付いてコクピットを降ろす。
『これでミッション完了です。独立傭兵ベスティー・ナイトシェイド。非常に的確な仕事ぶりでした』
「お褒めに預かり光栄です。これで恩返しは出来ましたかね?」
『ええ。こちらも有意義な知見を得ることができました。いずれまた「レイヴン」も羽ばたく時が来ます。その時は、あなたが期待した通りの羽ばたきを見せられることでしょう』
「そりゃあ楽しみだ。また何かあれば依頼してください。ああそうだ。そちらの羽休めが終わった後、ブランチに依頼をしても良いですかね?選ぶのはそちらの自由ですが、選択肢の一つにはなれるかと」
『構いませんよ。「レイヴン」とは意思の表象。相応しい依頼を選び、戦う者です。彼が望むのであれば、喜び勇んでブランチは力を貸すでしょう』
「いよっしゃあ!……あっ、すみません。つい嬉しくって。それでは俺は帰ります。またいつか、輝ける星に狙いをつけた頃に連絡します」
通信を途絶させる。
これ以上の言葉は不要だろう。
柄にもなく格好をつけて愛機の踵を翻す。
出口で上空巡航用のブーストを起動する寸前、切れた筈の通信が聞こえたような気がした。
『……ふふっ。ええ、私も楽しみよ「レイヴン」。あの苗木が、何を実らせるのか』
それがとても幻聴とは思えなくて、空の上で頬を緩ませる。
さて、気合いを入れてもう一仕事、いや一日がかりの大仕事と行くかねえ!
ーーーーー
『やい独立傭兵久しぶりだな!
ジャンカー・コヨーテスからの依頼だ。
我々は今からいけ好かないRaDに対して陽動作戦……ではなくていつも通りの襲撃を仕掛ける予定である。
あの気に入らねえババアは小癪な事に、お前を襲撃させた後すぐにケツに火をつけて防備を強化しやがった。
だから、グリッド086に簡単に攻め入る事はできないが……その代わり他のグリッドが手薄になっていてなあ?
隣近所のグリッド088を攻め落とせばあの鼻垂れボケどもの鼻っ面に直接デカいミサイルを撃ちこめるって訳だ!
そこでお前の出番よ。
一番ヤバいお前とかなりヤバい我々が組めば技術屋気取りの高慢ちきに目にもの見せてやれる。
立ちはだかる奴らをぶっとばせ!
期待しているぞ!』
ーーーーー
ジャンカー・コヨーテス突入支援
作戦領域:ベリウス地方西部 グリッド088
依頼者:ジャンカー・コヨーテス
作戦目標:目標殲滅
報酬:140,000 COAM
詳細
・護衛は必要無し
ーーーーー
この依頼を受けた理由は単純、報酬が良くて場所がブルートゥの逃避行を見物できる近所だからだ。
「ようし頑張るぞい!」
上空を流星の如く超長距離巡航で飛ぶこと約30分。
最短距離でなるべく急いだつもりだったが、お祭りはもう始まっていた。
『ふははははは!ミサイルで撃ち落とせーい!』
『ぶっ放せー!ぶっ殺せー!』
『ミサイルカーニバルです。派手にいきましょう』
ACが近づく事すら困難なほど発射され続ける無秩序な弾幕の数々。
眼下を埋め尽くすミサイルの数に頬を引き攣らせる。
「これほぼ全てがミサイルなのか?」
突入ルートを頭の中で弾き出して諦める。
この弾幕はそう長く続くものではない。
リロードのタイミングで突入することにした。
『ぎゃあー!俺達孤立無援ー!助けてくれー!』
『味方からミサイルが逆流する……!ぐわーっ!?』
「いや、同士討ちしちゃってるじゃん」
機を見てこちらにロックされていないミサイルを避けつつ、慎重に降下しつつ援護に向かう。
なんだよこいつら統率ってものが無いのか?
仕方ない、やるだけやってみるか。
「遠からん者は音に聞け!近くば寄って目にも見よ!俺とPotooooooooが見参したぞ!さあ、ぶっ潰してやる!」
『なんだアイツ!』
『コヨーテスの奴らが雇った傭兵かぁ?』
『ブッパでズガン!ブッパでズガン!』
『あんた、邪魔するなら容赦しないよ!』
敵もドーザーだ。
まともな言葉が聞こえない。
グリッドに降下してようやく敵性反応を補足。
近場の奴らを手当たり次第に蹴り飛ばしていく。
時折フレンドリーファイアで被弾するが、構うものか。
こんな戦場の依頼を出しやがったんだ後で文句言ってやる。
鬱憤も全部敵にぶつけてやるよ!
「オラオラどうしたそんなものか!」
この弾幕の多さだ。
APが減っている敵が多く、1回蹴り飛ばせばほぼ吹っ飛んでいく。
見たところBAWSの化け物四脚MTも居ないようだし、ひたすらヒットアンドアウェイを繰り返すことしばらく。
なんとそれだけで相手の駆逐が完了してしまった。
数の弾幕って正義だね。
『うぃーひひひっ!勝利勝利大勝利!』
「おーい、大丈夫か?」
『ああ?なんだ聞こえないぞ!』
いつもの依頼者が駆る馬鹿みたいにミサイルを積載した重MTを発見したので話しかけると反応がおかしい。
どうやらミサイルの発射音を間近で聞き続けたせいで聴覚が麻痺しているらしい。
それならばと通信回線を開いて文字による文通を試みる。
『独立傭兵ベスティー・ナイトシェイドだ。体調は大丈夫か?』
『おおっ、来てくれていたのか親友よ!見ていてくれたか我々魂のミサイル弾幕を!』
こちらが文を書くと向こうが喋って返してくれた。
これなら意思疎通はできるな。
『素晴らしい斉射だった。上空から撮影した写真があるので報酬金が入ったら贈るよ』
『そうだろうそうだろう!うむ、ならば今すぐ支払おう!ではその写真をくれたまえ!』
『即金に感謝。これは対価』
「じゃあ、そういうことで」
ブーストキックで蹴っ飛ばす。
脱出装置が働いているのを確認してから次に移る。
酔っ払ったように勝ち誇っている馬鹿どもを敵と同様に蹴っ飛ばすが、余程ミサイルを撃って聴覚が麻痺しているのだろう。
こちらに反応すらしないし、もしかして蹴られたことも気づかずやられているんじゃないか?
なんでこいつらも撃墜しているかって?
これも依頼だからだよ。
ーーーーー
『ビジター……いや、ベスティーとか言ったかい?
RaDのカーラだ。
その節は世話になったねぇ。
今回はラミーの相棒なアンタに一つ掃除を頼みたいんだ。
場所はグリッド088、そこに馬鹿なコヨーテ共が集まってくる。
アイツらはあそこを攻め落としてRaD侵略の橋頭堡にしたいらしいが、そうはアタシが通さない。
わかるね、ソイツらを倒すのがアンタの仕事さ。
ああ、まさか断ろうとは思っちゃいないだろうねぇ?
独立傭兵ってのは敵に回さないよう雇うものだと示したのはアンタじゃないか。
さあ、キリキリ働いて貰うよ!』
ーーーーー
ジャンカー・コヨーテス殲滅
作戦領域:ベリウス地方西部 グリッド088
依頼者:シンダー・カーラ
作戦目標:目標殲滅
報酬:180,000 COAM
詳細
・敵撃破に応じて報酬を加算
ーーーーー
「よいさっと」
さっきの敵MTと同様に、撃ち合いでAPが減っているコヨーテス共はブーストキック一発で吹っ飛んでいく。
馬鹿なことにさっき蹴っ飛ばした連中よりもAPが少なく感じる。
馬鹿な奴らだよなぁ。
こういう馬鹿な奴らは嫌いじゃないが、仕事は仕事だ。
脱出装置もしっかり働いているようだし、死にはしないだろう。
『ん、あ?敵襲ー!』
『ああん?なんだってえ?』
『うんち!』
『聞こえねえよおー』
一機だけ気がついたやつが居たようだ。
「コールドコールじゃないけど、可哀想に。今ごろ失態に気づいて憤懣やる方ないといったところかな」
総勢40機ほどを蹴り飛ばして誰も居なくなったグリッド088。
待つことやや暫し、轟音が聞こえてくる上空を眺める。
「凄っげー……」
端々を崩壊させて地上に部品をばら撒きながら飛んでいる金属で編まれた船。
コーラルで灼けた赤い空を、グリッド086の倉庫が爆炎をたなびかせて飛んでいた。
なんと非現実な光景だろう。
しばらく言葉を失い、立ち尽くして見えなくなるまで見送り続ける。
嗚呼、今日はいい夢が見られそうだ。
ベスティー・ナイトシェイド:口は災いのもと。頑張ればロリ声が出せるタイプのクソガキ。頑張らなくても変声機で様々な声を出せる。胡乱過ぎて女性説が広まってしまったが、収拾を諦めて情報撹乱に利用することにした。頭が馬鹿。
レイジ・レック:この後酔って女性説をぶちまけた。人間として駄目なドーザーだが大人として若いリーダーの身を案じており、通信越しだと手が出ない分多少まともな事を言う。オールマインドの暗号解読の顛末は覚えているものの、その日何をして過ごしたかは忘れてしまった。頭が馬鹿。
オーネスト・ブルートゥ:ついに単独で持ち逃げ計画を完遂した怪人。グリッドの一部ごとアーレア海上空をかっ飛んで中央氷原のグリッド012に着弾。オリ主の依頼でとある技術実証を行い非常に有益な成果を出している。愚痴ってきた親友の女性説をジャンカー・コヨーテスの間で広めた。