【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵   作:白河童小鼠(人間)

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初代三部作配信記念!
三部作に習いキリが良く執筆できた3話のみ隔日投稿します


七転八起の軍師達(原作開始)
汚染市街掃討


ーーーーー

 

親友印の氷菓

 

寒風吹き荒ぶ地で、親友を名乗る少年が拵えた、氷菓。

 

一定時間、集中力がゆっくり回復し、加えて僅かに空腹が紛れる。

 

少年は生きるために策を弄した。

酷使した頭は甘味を欲し、無心のまま甘い氷菓を作り上げる。

親友たちはこれを高く評価し、その実力を認めた。

甚だ不本意だったそうだ。

 

ーーーーー

 

『聞いてくださいよお頭さん!俺、ACの輸送任務にアサインされたんです!』

「教えてくれてありがとな。端的に言うとこのままだとお前死ぬから」

『えっ』

 

 いつものミッション帰りの輸送ヘリ。

 最近、よくやり取りをしている訓練生から情報漏洩されてしまった。

 

 自分としてはそれだけ身内同然に思ってくれている証のようでとても嬉しいのだが、それはそれとして外部への機密漏洩は重罪である。

 それだけなら謹慎で済むのだが、今の時期は特に不味い。

 

 自分が大豊からこのミッションを聞いていなければ粛清案件だった。

 

『あの、はい?』

「さっき傭兵支援組織の公示依頼でテスターAC撃破ってのが出されたんだ」

 

 テスターAC撃破。

 大豊核心工業集団が導入した外部アーキテクトによるACを撃破するという至極単純明快な任務。

 

 それは原作のゲームにおいて最初のAC戦となるミッションだ。

 輸送任務にアサインされた訓練生の末路は言わずもがなだろう。

 

『ど、独立傭兵か、相手にとって不足なしですね。それで俺が死ぬなんていったい何が?』

 

「あのハンドラーの猟犬が依頼を受けたんだ。お前、接敵したら20秒以内に瞬殺されるから」

『に、にじゅっ!?』

 

「文句無しの最強、現名義は独立傭兵レイヴン。監視カメラでアレの働きをみたけど、あれは俺でも勝てるかどうかだね」

 

 自分は汚染市街に設置した監視カメラによって強化人間C4-621の戦闘を撮影できてしまった。

 

 密航による強行着地で軋んでいる機体を駆って汚染市街を飛びまわり、終いには大型武装ヘリをほぼ無傷で撃墜する異様な継戦能力。

 

 ルビコン解放戦線が汚染市街に設置した移設型砲台の弾雨が降りそそぐ中、特に弾幕が濃いど真ん中を無傷で潜り抜けて的確に砲台だけを斬り伏せる無駄の無さ。

 

 そして、今現在解放戦線の輸送ヘリを最速の効率で辻斬りしていく機械染みた正確さ。

 

 あれの強さは化け物だ。

 目算でしかないが、自分がまだアセンブルできる見込みが立っていない本気機体を駆ってようやく戦いの土俵に上がることができると見た。 

 

 だが、傭兵である以上は手の打ちようがある。

 

『そんな、あの自信過剰なお頭さんがそこまで言うなんて……なんとかならないんですか!?』

 

「自信過剰じゃないが!?冷静な戦力評価の結果だってば。危機感を煽っといてすまないけど、一応既に手は打っておいた。俺からレイヴン個人を指名して任務を発注したらこちらも受注してくれたんだ」

 

 実は傭兵支援組織オールマインドは個人でもミッションを発行することもできる。

 

 個人では足りない信用を担保する必要があるので多めの仲介料を払う必要があるものの、強化人間C4-621と繋がりを持つ為にはこのテスターAC撃破を利用することが最適だと判断した。

 

 彼、あるいは彼女が、俺の依頼を選択してくれるかはわからない。

 だが、もし受注してくれるのであれば、計画に必要な最後のピースが埋まる。

 

 自分の計画における1点の完全なギャンブルとは、強化人間C4-621がこの計画に乗ってくれるかどうかというものだ。

 参加してくれるのであれば最高だが、参加してもらえなければ自分は敗戦処理を行いしかる後に夜逃げするしかない。

 

 それにこの瞬間に重要なのは、通信してまで自慢してくれたこの訓練生をどう助けてやるかだ。

 

 友人を失うのは嫌だ。

 自分の計画がどちらに転んでも訓練生の彼が死なないように策を練っておくのも友情だろう。

 

「安心してくれ。仮にレイヴンが襲ってきても狙いはACだ。接敵した瞬間から5秒で離脱準備を整えればおそらくは生き残れるはずだから」

 

『でも、それは俺に下された大豊の指示に逆らうということになるんですよね?』

「それは」

 

 予想外の言葉に言い澱む。

 先程、打開策を望んできたとは思えない真っ直ぐな言葉。

 自分は思い違いをしていた。

 こいつはドーザーじゃなくて大豊の軍人だった。

 

 ドーザーならば自らを第一に置くからここで問答せずとも素直に自己中心的に動いただろう。

 だが、訓練生とはいえ大豊の軍人は立派に使命を果たそうとするわけか。

 

 ここまで真っ直ぐな奴には定番の説得が良いな。

 軍人相手なら権威もチラつかせよう。

 友人に使いたくない手札だが仕方ない。

 

「……俺と同じ情報を持っていれば大豊も同じ判断をするさ。考察するにこんな辺境の星で君を失うのは大豊としても痛手だよ。大豊本社に忠誠心が強く、程々の出世意欲もあり、そしてレッドガンの候補生となるほど腕利きのAC乗り。D&Jにも欲しいぐらいだ」

 

『高評を得て光栄です。ですが、俺も軍人です。平和を守ることで俸給を得ていますから逆らう事はできません。お頭さんにそこまでして頂けるのは助かりますが、俺はご下命に殉じましょう』

 

 子供に言い聞かせるように表情だけおどけて、しかし通信越しでも確かな意志を感じさせる芯のある声。

 

 反吐が出る。

 そんな自己欺瞞と自己満足で親友に死なれるのは御免被るというもの。

 

 だけどこいつが迂闊で助かった。

 簡単に利用できそうな言葉を吐いてくれた。

 おかげでこいつを助けられる。

 

「ほーう、ご下命に殉ずると?言質とったからな?」

『え、あ、もしかしてやらかした感じですかね?』

「ちょっと待ってろ」

 

 おどけた態度に仕返すように鬼の首をとったような態度でからかうと、慌てて自分の発言を思い返している様子の訓練生が画面に映り笑みを漏らす。

 

 ははっ、良いじゃないか。

 こういう真面目なやつは良い子ぶってるより慌てている方が好みだ。

 気分がスッキリするからね。

 

 鍵付きの棚から今時珍しい紙の指令書を物々しく取り出して画面に映す。

 やけに厳つい書式に大豊本社と支部連名での電子署名印は、偽り無き配置転換指令の証だ。

 

「これ、お前宛の辞令な。本日付けで大豊から俺直属の部下になると書いてある」

 

『俺がお頭さんの部下にですか!?』

 

「そう。お前達をミッションで護衛した時に『出向したい』って言っていたよね?」

 

『それはそうなんですが』

 

 突然の辞令にしどろもどろになっている訓練生の反論を封じるため更に畳み掛ける。

 

「知ってるぜルーキー。お前、レッドガンに憧れているんだってな。だから転属が遠回りになるんじゃないかって懸念をしてるんだろう。安心しな、俺が責任を持ってエースパイロットに育て上げてレッドガンにねじ込んでやるよ」

 

 遠隔操作で彼の部屋の照明を落とす。

 死の宣告、殉職の決意、敵対する最強。

 

 残酷な事実によって精神に強い負荷をかけ、目の前で全てを解決する救済の糸を垂らす。

 くだらない誘導だが、これが思考を固定しがちな軍人にはよく効くのだ。

 

「その為の教育プログラムも!アセンブルも!戦略戦術を個人でぶち壊すだけの操縦技術すらも!全部俺の手の内にある。俺の戦闘技能の粋をお前に受け継がせようじゃないか……」

 

『はっ、はい』

 

 囁くように、纏わりつくような甘言を嘯く。

 

 さながらミルクトゥースとの蜜月に陶酔するオーネスト・ブルートゥの真摯さに、しかし弄言をもって意図を遂行させるノーザークの如き弁舌を意識して。

 

 彼は、舌の根が震えているのか、返事が揺れていた。

 

「それは『全てを焼き尽くす暴力』。大層な武器じゃあなくとも、それを体現してしまえば平和の為の抑止力になる。……ああ、別に兵器に成り果てなくても良いんだから簡単さ。お前はただ、強くなれば良い。強く、より強く。ルビコンという苦境に立つレッドガンを、強いお前が救うんだ。お前が救うんだよ」

 

『レッドガンを、強い俺が……』

 

 刷り込んだ暗示を自ずと反復し始めた彼に、再び方向を提示する。

 

「そうだ。レッドガンを、強いお前が救うんだ。強くなるためには俺に師事して学ぶ必要がある。お前への期待を込めて大豊快く送り出してくれたんだ、お前が心配することはなにもない。強くなって、お前がレッドガンを救うんだ……」

 

『俺がレッドガンを、救う……!』

 

「そうだ、その為の道筋は俺が用意した。まずは生き残って俺の元に来るんだ。良いな?」

 

『ああ、理解した!』

 

「良いだろう。では、生存策を送ろう。大豊はお前に期待している。しくじるなよ」

 

 通信を切断し彼の部屋の照明を灯しておく。

 あれだけ元気良く返事をしたなら彼はきっと大丈夫だろう。

 

 疲れを感じて椅子にもたれかかってため息を吐くと、親友にあくどい手段を使ってしまった後悔でお腹が重くなった気がした。

 

「さあて、どうなるかねぇ」

 

 強化人間C4-621に発注した依頼に大豊パイロット訓練生を生き残らせる為の方策。

 ギャンブルのような不安定な将来に思考が空回りし、心身の疲弊が緩やかに瞼を重くする。

 

「相棒、あと少しだからね……」

 

 微睡みの中で決意を新たに、理想の未来を思い描きながら眠りに落ちた。

 

ーーーーー

 

「621、仕事だ。

ナイトシェイドという傭兵から、お前個人に依頼が来ている。……ブリーフィングを確認しろ」

 

『はじめまして、強化人間C4-621さん。

俺の名前はベスティー・ナイトシェイド。

あなたには極めて個人的な依頼を頼みたいと思い、ハンドラー・ウォルターさんに仲介してもらった。

 

依頼内容は大豊のテスターACを襲撃しそうな敵の殲滅だ。

護衛は俺がするから強化人間C4-621さんは指定ポイントを巡って撃破に集中してほしい。

 

……実は友人があのテスターACに乗る予定でね。

独立傭兵レイヴンが撃破依頼を受けると聞いて慌てて依頼を出したんだ。

俺も傭兵としては自信があるが、あなた相手に護衛として相対するほど自惚れてはいない。

だから味方に抱き込みたいってわけなのさ。

 

ちなみに報酬は俺の個人的な資産と前に大豊を強請って出させた金があるからけっこう高めのはずだ。

撃破報酬も出るから羨ましいぐらい稼げる。

 

ああそうだ、ついでにこのベスティー・ナイトシェイドに貸しを作れることも報酬かな。

損はさせないよ。

 

まあ、こんなところか。

悪い話ではないと思う。連絡を待っている』

 

「企業より先に個人から依頼が来るとはな。……個人的な依頼にしては報酬が高額だ。621、この依頼を選ぶなら相応の準備をしておけ」

 

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汚染市街掃討

 

作戦領域:ベリウス地方南部 汚染市街

依頼者:ベスティー・ナイトシェイド

作戦目標:敵部隊殲滅

報酬:280,000 COAM

 

詳細

 

・敵撃破に応じて報酬を加算

・途中合流する僚機あり

 

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「この依頼を選んだか。……お前の仕事だ。好きに選ぶと良い」

 

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『メインシステム 戦闘モード起動』

 

 輸送ヘリから汚染市街の隅に投下されて本日何度目かのガッツポーズをする。

 空調服のせいで狭苦しいが、この気持ちを表すためなら何度でも自分は喜ぼう。

 

「勝ったな」

 

 後続する輸送ヘリから鈍色のACが降下して力強く立ち上がる様子を見守る。

 

 間違いない。

 武装こそ違うが紛れもなく『LOADER 4』。

 

 ブランチの『レイヴン』とほぼ同じRaD製の探査用フレームだが、ベイラムの開発した長射程ショットガン「SG-027 ZIMMERMAN」を2丁両手に装備している。

 左肩のハンガーにはタキガワ・ハーモニクスが誇る傑作近接武器であるパルスブレード「HI-32: BU-TT/A」を懸架しており、右肩にはバランスが良いファーロン・ダイナミクスの六連ミサイル「BML-G2/P03MLT-06」。

 

 一対一の性能を高めつつ対多数の殲滅も熟せるヒット&アウェイ機体だ。

 控えめに言ってアセンブルの殺意が高すぎる。

 

 それが探査用頭部パーツHC-2000 FINDER EYEを無機質に自分へと視点を合わせた瞬間、背筋が粟立つような悪寒が走る。

 

 殺意?いや、恐らくは自分を値踏みしただけ。

 

 いや待て。

 自分、C4-621のことを物扱いしていなかったか?

 例え一般的に(It)扱いされる強化人間が相手だとしても、態々自分の依頼を受けてくれた相手に(It)扱いは誠意に欠けているのでは?

 

 これではベスティー・ナイトシェイドの名が廃る。

 決めたぞ、自分は意地でも強化人間C4-621を(They)として扱う。

 

 それにC4-621は脳深部コーラル管理デバイスを装着した旧世代型強化人間だ。

 頭にコーラルがあるならドーザーと言っても過言ではないだろう。

 

 ドーザーと考えれば怖くなくなってきたな!

 自分の味方をしてくれるドーザーなら親友だ。

 瞬きの間に思考を済ませ、極力朗らかに話しかけた。

 

「会えて光栄だ親友。早速だけどマーカー情報を送信した。好きな順番で潰していってくれ」

 

 LOADER 4の頭部カメラがこちらに注目し、まじまじと凝視してくる。

 面白いものでもあったか?

 

 ああ、わかったぞ。

 自分のACであるPotooooooooが良いアセンブルをしていて見惚れているんだろう。

 

 見られて減るものじゃないし、思いっきり見せつけてやろう。

 

「おいおい、そんなに見つめられると照れちまうよ親友。俺のPotooooooooは良い機体だろう?作戦時間にも余裕があるし、親睦を深めるためにもじっくり見ていっても良いぜ」

 

 見つめあったまま硬直すること暫し。

 あれ、おかしいな。

 

 いつまで経っても行ってくれる気配がない。

 見当違いなことを言ってしまっただろうか。

 

 もしかして、体調不良か?

 体調不良なら大変だ。

 ミッションどころなんかじゃない、早くお医者さんに見せなければ!

 

「親友、大丈夫か?調子が悪いならお医者さんに診てもらう?」

『621、おまえの仕事は目標の殲滅だ。マーカー地点に向かえ』

 

 老いつつも確かな意志を持った声。

 強化人間C4-621の飼い主であるハンドラー・ウォルターの通信だ。

 

 ハンドラー・ウォルターとはC4-621に依頼を出す時にやり取りさせてもらった。

 風評から人を道具のように扱っているだけの冷血漢に見えるものの、懐が深く強化人間とはビジネスパートナーのように丁寧に接していたことを覚えている。

 

 そこでようやくLOADER 4が動き出した。

 なるほど、ハンドラーの号令を待っていたのか。

 ハンドラーの猟犬とはよく言ったもので、よく躾けられた猟犬ということなのだろう。

 

 アサルトブーストで元気に汚染市街へ突撃していったACを見て胸を撫で下ろす。

 良かった、体調が悪いとかでは無かったらしい。

 

 考えてみればあのハンドラー・ウォルターが、体調の悪い猟犬を送り出すはずがない。

 流石はハンドラーだ。

 

 こちらも動かなくては。

 

「テスト、作戦行動を開始しろ」

『了解、作戦を開始』

 

 Potooooooooの方向を反転し、巡航用のブーストを起動する。

 

 現在、依頼でレイヴンに襲撃させているのは、汚染市街の片隅に展開したアーキバスとシュナイダーの混成MT部隊だ。

 大豊のテスターACを撃破するために相応の規模を揃えたようで、ベイラムが占拠した汚染市街の片隅を縫うように部隊が散在している。

 

 事前に調べた情報ではヴェスパー部隊のACはそこに存在しないはずだが、万が一ヴェスパーが援軍に来ると逃げ帰られて自分たちの情報が漏洩する恐れがある。

 情報部門の長官であるV.Ⅲオキーフは敵対しない事を約束してくれたものの、それは彼個人との取り決めでありアーキバスへの情報伝達を防ぐものではない。

 

 殲滅の下手人がレイヴンである以上下手人を情報伝達されても自分達に害は無いが、それは親友であるC4-621やハンドラー・ウォルターが企業を利用する妨げとなる。

 

 故に、自分たちは情報伝達を防ぐために動く必要がある。

 通信途絶によって物理的に走り出した伝令を始末し後片付けをするのが今回の自分たちのミッションだ。

 

 それに、今回の後片付けには心強い援軍が居る。

 

『ゲッヘヘへ。コイツはたんまり儲けられそうだ』

『おい!本当に残骸は全部貰って良いんだな!?』

 

「おう、ガラクタ一つ残さず持っていけ!その代わり喧嘩するなよ」

 

『応とも!しっかしこんな儲け話を持って来てくれるなんざさっすがベスティーだ!』

『おーおー見たことない速度で敵が倒れていくなあ。マジの一騎当千ってのは初めて見たぜ』

『すっげえ、あれ全部回収すれば俺達全員黒字だ』

 

 来てくれたのはジャンカー時代の友人たくさん名。

 いずれも金にガメつく、通った後に機械一つ残さない蝗のようなジャンカー達だ。

 

 彼等はD&Jとは別口のジャンク漁りであり、本日は自分の伝手で特別に出動してもらった。

 個人主義が強く、独立傭兵ならぬ独立ジャンカーみたいな奴等だが、彼等のその強欲さだけは何物にも引けを取らないはず。

 

 残骸漁りならRaDでもジャンカー・コヨーテスでも良かったのだが、今のアイツらは勢力争いの抗争に忙しく変な詮索をしてきそうだったのでフリーのジャンカー達にお越しいただいた。

 

 これで自分達は伝令の始末に集中できるという算段だ。

 

「こちらベスティー。テスト、そちらはどうだ?」

『こちらテスト。三機ほど散開していましたがいずれも撃破しました。あの、この機体本当に良かったんですか?』

「大豊からの貰い物だ。好きに使いな」

『いえその、これほとんどベイラムでは?』

 

 自分の機体でも逃亡兵がいないか哨戒しつつ、彼の機体構成を再確認する。

 

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右腕武器 HG-003 COQUILLETT

左腕武器 MG-014 LUDLOW

右肩武器 BML-G1/P20MLT-04

左肩武器 HI-32: BU-TT/A

 

頭部 HD-011 MELANDER

コア DF-BD-08 TIAN-QIANG

腕部 AR-011 MELANDER

脚部 LG-011 MELANDER

 

ブースタ BST-G2/P06SPD

FCS FC-006 ABBOT

ジェネレータ DF-GN-06 MING-TANG

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「レッドガンに入るならベイラムのACに慣れておくことも重要さ!」

 

 発言を修正して言いくるめにかかる。

 人を騙すコツはまず自信満々に言うことだ。

 胡散臭さなどかなぐり捨てて、自らを爽やかな好青年だと思い込んで発言すると良い。

 あのノーザークが言ってたしきっと間違いない!

 たぶん!めいびー!

 

『本当のところはどうなんです?」

「エースに育て上げるなら機体は高機動高耐久に仕上げたかった。余剰積載高めのMELANDER脚と堅牢樹大なTIAN-QIANG胴の組み合わせはベイラムグループ黄金コンボ。武装は資金が無くて安くて強い組み合わせを選んだ」

 

 疑われたらあっさり白状しておくのは長生きのコツ。

 人間というのは一旦抱いた疑念を忘れにくい生き物だ。

 その場で疑問を解消したという感覚を与えておけば、後々疑われにくいというもの。

 信頼関係を築くには日頃の地道な積み重ねが必要だってレックが言ってたしね。

 自分は反省を活かす男なのさ。

 

『まあ、専用のACを組んでくれたので文句を言う気はありませんが、もっと大豊のパーツを採用できなかったんですか?』

「マシンガンはDF-MG-02 CHANG-CHENに変更できるけど他は無理。大豊パーツはお前の近接戦闘スタイルに適してない。大豊はD&Jの馬鹿どもみたいな集団戦向けなんだよ」

 

 実のところ、大豊核心工業集団の武装は武器カテゴリ別で見た性能としては、専門家に一歩譲るものが多い。

 

 グレネードとバズーカはメリニットに。

 マシンガンはベイラムとRaDとBAWSに。

 

 これらは継戦能力に長けて戦線を維持しやすいという利点があるものの、基本的に単独で戦闘を行う独立傭兵だと長期戦でもなければ他社の製品が勝っている。

 誤解しないで欲しいのは、他にも良い製品があるというだけで大豊の製品も素晴らしい長所はあるのだ。

 値段の安さとか弾薬代の安さとか装弾数による信頼性の高さとか普及率による補給のしやすさとか、普通の独立傭兵は大豊の製品を愛用しているはず。

 だって、一企業の製品で揃えられると補給面でめちゃくちゃ便利だし、ガトリングや炸裂弾投射機なんか大豊しか開発していない武装なのに強力だから結構愛用者が多いみたいだし。

 

 それはそれとして、レッドガンのパイロットを志望したテスト君の近接戦闘適性を活かした機体を組んだら、大豊のパーツが少なくなったというだけの話。

 

 ただの適材適所でしかない。

 

「それにルビコニアン伝統技術のウェポンハンガーも便利だろ?そこまで使いこなせる奴はルビコニアンでもそう多くはないから自信を持てって!」

『実際なんでこれがルビコン以外だと普及してないのか不思議なくらい便利ですよね』

 

 テストの機体左肩に懸架されているHI-32: BU-TT/Aは、ルビコン星外ではかなりマイナーな『ウェポンハンガー』というOS機能チューニングによるもの。

 ウェポンハンガーは肩武器の代わりに手武器を追加で装備することが可能となる機能だ。

 

「ルビコン解放戦線総司令の帥父サム・ドルマヤンが数少ない伝承から復活させた技術だからな。人が地球から進出する辺りに失われたロストテクノロジーなんだってさ」

 

『これそんなに凄いものだったのか!?』

 

「知らないのか?ヴァーディクトウォーってヤバい戦争の中で開発されたらしいぜ」

 

『知りませんって!大体、その辺りの歴史って大昔過ぎて不明なこと多いじゃないですか!……そういえばお頭さんは何故知っているので』

 

「出典は都市伝説だ」

 

『ロビンさんがクソガキって言っていた意味わかりましたよちくしょう!』

 

「そうカリカリするなって。ミッション終わったらアイス食わせてやるから」

 

『アイスでご機嫌取りって子供じゃないんですから』

 

「テメェ俺がガキだって言いてえのか?」

 

『子供ですよね?』

 

「あってるけど本当にいらないの?親友印のアイス」

 

『欲しいですけど、そもそもなんですかその胡散臭いアイス』

 

「俺が元祖の自家製アイスだよ。1個1 COAMでオールマインドショップとエルカノで販売中」

 

『そんな高値で買う人いるので?』

 

「居るよ。君のACが握ってるハンドガン代はアイスの売上で賄った」

 

『そんなに売れてるんですか!?』

 

「引くほど売れてる」

 

 発見したMTを撃破しつつ回顧する。

 

 ルビコンでは甘味がとても貴重だ。

 砂糖とか皆無だし、甘味の出し方は人工甘味料によるフレーバー調整しかない。

 そんな環境だと最早甘味を知る者すら希少で、フレーバーの甘いという概念すらわからない深刻な食料危機が起こっていた。何故そこまで酷い状況になったかというと、ルビコンの火による食文化失伝と食料危機による影響らしい。

 明日食べるものすら選べない状況だと食に対する興味も育たないし、灰被り以降のルビコニアンは当然味覚が崩壊していた。

 

 そんな地に自分は転生してきた訳だが、日本人としてのパーソナリティを持つ自分は当然その環境に耐えられなかった。

 当時の自分は食糧生産プラントを持つD&Jに拾われたことを利用して、災害以前の生産データをサルベージし環境改善に勤しんだ。

 

 その結果、豆を利用した醤油擬きの再生産に成功したり、味の狂った人工甘味料の味見役をしたりとD&Jは食糧事情を大きく発展させたってわけ。

 

 その際はレシピの権利関連をD&Jからの友好の証としてエルカノに管理を任せていた。

 理由は色々あるが、一番は俺に特許を管理する能力が無かったことが原因になる。

 この世界の特許は力で権利を主張する企業によって保証されるものなので、当時の零細ジャンカー集団D&Jでは特許料を徴収できるほどの力が無かったのだ。

 

 しかし、自分が思い違いをしていたと知ったのはつい最近のこと。D&Jの馬鹿どもが退職した職場への謝罪行脚を休日に行ったついこの前のことだった。

 意外なことに、エルカノは必要な手数料だけ徴収して、特許料を資金運用という形で保管していてくれたのだ。

 

 自分が思っていた以上にD&Jによる食文化再興の恩恵がデカかったようで、エルカノは副業となる食品業でAC部門の不振を帳消しにするとんでもない利益を出していた。

 聞いた限りではエルカノに委託してすぐに人工甘味料に関する革新的なブレイクスルーを起こせたらしく、その切欠となった俺に多少の恩返しのつもりで特許料の資金運用をしていてくれたらしい。

 

 アイスだけでACという兵器のハンドガン代を余裕で賄えるのだから恐ろしい金額だ。

 ルビコンIIIの食糧価格がインフレしていることも原因の一つだと考えているのだが、正直な話自分でもよく理解できていない。

 

 部下の尻拭いで土下座する気で訪ねたら、逆に感謝されたのだから本当に困惑した。

 いつの間にか更に昇進していたナスティ・ロビンの親御さんが上手く取り計らってくれていたそうなので、自分はもうあの人に頭が上がらないと思う。

 

 因みに主な取引先はルビコンの味覚に我慢ならない星外企業の嗜好品としてだ。

 舌の肥えた星外企業からの評判も悪くはないらしい。

 

 最初は適当な甘味料を水に溶かして凍らせただけだってのに、どうしてこうなったんだか。

 

『警戒を怠らないでください』

 

 長考していたら機体のCOM先生に叱られてしまった。

 ミッション中に思考を逸らすのは良くない。

 警戒を厳とせねば。

 上空へとpotooooooooを上昇させ、空撮写真からCOMに残敵を割り出させる。

 残数6、4、1……BAWS製重四脚MTが粘っているが、それもすぐ潰えた。

 これでC4-621のミッションは完了だな。

 

「結果は見えてはいたが、急がないといけないな」

 

 古馴染みのジャンカー達に回収開始の信号を放ち、C4-621の大量生産したスクラップから略奪の限りを尽くすハイエナどもを解き放つ。

 ベイラムに占領されている汚染市街中心部を避けての回収作業だが、自分たちジャンカーは危険な縄張りだとかを避けることには慣れている。

 

 こっちは心配する必要も無いだろう。

 

「それにしても想像以上の腕前だな」

『独立傭兵レイヴン、でしたっけ』

 

 空撮と広域レーダーで割り出した潜んでいるMTを追討に向かっていると、独り言にテストが答えてしまった。

 ならこれも好都合だ。

 この際聞いておこう。

 

「あれどう思う?」

『どう、とは』

 

「あれを制御できると思うか?」

『うーん、そういう範疇を超えてませんかね?』

「同感。でもなんとかしなきゃなあ」

 

 強化人間C4-621。

 遠目で見た限りだが彼の戦闘能力は極めて高い。

 その圧倒的な戦闘能力は天性の才覚、ドミナントやイレギュラーと形容しても過言ではない。

 

 イレギュラーとは得てして管理者や雇用主に歯向かうものだが、自分はなんとかして彼に協力してもらわなければならない立場だ。

 

 どうやって誘ったものだか。

 

『ははっ、ナイトシェイドさんは責任感強いですよね』

「俺がか?できる事を無理のない範囲でやっているだけだよ」

 

 テストに笑われて行動を省みる。

 自分は本当に、やっていることは可能な程度で無理のない範囲でしかない。

 通せる無理は無理ではないとか、そういう根性論ですらない、本当に楽しいことしかしていないんだ。

 

 買い被って貰っては困ると続けようとして、口を噤む。

 さっさと話を進めないと脱線するのはドーザーの悪い癖だから。

 

「それにテスト、お前は俺についてきて良かったのか?」

 

『それあなたが言います?辞令をだしたのはナイトシェイドさんじゃないですか』

「お前が微塵でも嫌がったら冗談ってことにして引っ込めるつもりだった。だって俺の元で修行するのって結構な修羅の道だし」

 

『シュラの道……ブッディズム?』

 

 ああそうか、修羅って仏教の言葉だったか。

 ルビコンではBAWSの文化的影響によって通じることがあるから忘れていた。

 

「すまん、例えが悪かった。辛く厳しい進路になるってことさ」

『なんだ、そんなことですか』

「そんなことって」

 

『軍人になると決めた時から、そんなこと覚悟はしてます。その上で自分で道を決めるんですから、決断に後悔はしない。俺は選んでこその人生だと思うんです』

 

 真っ直ぐな言葉、ひたむきな姿勢。

 参ったな、コイツは逸材だ。

 臆面もなくこんなことを言えるとは。

 これ以上覚悟を問うのは無粋だな。

 

「……良い言葉だ!教訓として俺も日記につけておく!」

『ナイトシェイドさん日記つけてるんですか!?』

 

「かのミシガン総長曰く、『貴様らは教訓を得る必要がある。日記を付けておけ!』だそうだ」

『えっ、あのミシガン総長の言葉!?……俺も。俺も日記つけます!』

 

「日記は良いぞ。もし大成したら伝記を書くときの参考資料になる。頑張って大成するぞテスト!」

『はい!』

 

 素直に慕ってくれるコイツのためにも、ルビコンに蔓延る親友達のためにも、なにより自分の野望のためにも、自分はこの計画を完遂しなければならない。

 よし、頑張ろうじゃないか!

 

ーーーーー

 

『新着メッセージ 1件』

『ベスティー・ナイトシェイドだ。思っていた通りかなりやるな、頼もしい。親友が味方で良かったよ。こんな時代だ。生き残れよ、お前たちも』

 

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ベスティー・ナイトシェイド:親友に洗脳紛いの説得を行う外道。D&Jとは別にまともな性格の部下を手に入れてホクホクしている。なお、洗脳失敗に気がついてない。頭が馬鹿。

大豊パイロット訓練生/テスト:大豊から出向してきたテスター君。真面目だけどノリが良いので洗脳ごっこに付き合った。それはそれとして大豊のコールサインとは別にレッドガン式のコールサインを与えられて喜んでいる。由来はイングランド南部を流れるテスト川より。良い奴だが頭が単純。

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