【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵 作:白河童小鼠(人間)
坑道破壊工作
→新型機体鹵獲阻止
→集積コーラル制圧
「いかん死ぬ! どう考えても無茶だってこれ!」
郷愁を誘う錆びたセピア色をした建物群。
半世紀以上も地下に封じ込められて色褪せたルビコン技研都市を、当時から製造されていた旧型ACが駆け回る。
「この作戦を考えた馬鹿は誰だ!? 俺だよこん畜生!」
『元気良いっすねお頭。敵性反応追加ヘリアンサスが5っす。もうじき準備が終わるんで、もう一踏ん張りっすよ』
「この状況でか!? 地形戦で遅滞させるしかないか……!」
背後から発射されたコーラル照射ビームをビルに隠れてやり過ごす。
止まることなく上空へとアサルトブーストを吹かせば足元を機械にあるまじきライダーキックがかっ飛んで行き、ついでにプラズマミサイルが飛んで来たのでビルの天辺に登ることで壁にぶつけさせる。
だが、ビルの頂点に立つということは最初にコーラルビームをぶっ放して来やがったやつと相対することになる。
死んだ珊瑚みたいな白い機影に赤色の噴射光をたなびかせて流れるように放たれる三連撃。
密度の高い攻撃に、それを狭いビルの屋上で反復横跳びすることで回避して敵を睨みつけることしかできない。
『IB-01:CEL 240』
かつてアイビスの火を熾した、コーラル集中管理システムの名を冠する特殊なC兵器群。アイビスシリーズの一機。
そのアイビスシリーズが、他のC兵器と徒党を組んで自分に襲いかかっているのが今の状況だ。
『凄い弾幕っすねー。お頭ってなんであんなに集中攻撃されて生き残っているんすか?』
『よく見ることだなコマドリ。どうにもあの珍妙な揺動運動がFCSの偏差を逸らしているのであろう』
『あー、それはタンクだと使いにくそうっすね』
『忌々しい小童め……! まだまだ隠し玉を持っているか!』
D&Jのロビンとレックの呑気な声が通信に響いているが、その内容を意識する余裕はない。
アサルトブーストで再度上空に登ろうとして嫌な予感がしたので上昇を挟んで停止、間髪入れずにクイックターンしてブースタの点火を落として急降下。
先ほどまでの休憩地点だったビル屋上を消し飛ばす連続コーラル砲撃に冷や汗をかきながら、直下に居たIA-05: WEEVILに急降下攻撃を仕掛けてなんとか仕留める。
残りAP9600、リペアキット残数一。
C兵器に包囲されつつある現状、どう考えてもこれ以上は保たない。
ここは多少無理をしてでもアイビスを仕留めて突破口を作らねば……!
『お頭さん! 撤退完了しました!』
「危っぶねえ!? ナイトシェイド帰還する、火力支援よろしく!」
大豊から出向してきた軍人として、撤退の指揮を執っていたテストから報告が届いた。
Potooooooooを直接切り捨てんと飛来するアイビスに、突如として射程限界の横穴から無数の砲撃が降り注ぐ。
ええい、撤退だ!撤退ー!
D&Jの奴等が投射したグレネードに巻き込まれてターミナルアーマーが発動してしまったが、どうにかこうにか逃げ帰る事に成功した。
技研都市威力偵察、これにて完了だ。
ーーーーー
集積コーラルから撤退し、現在はジャンカー・コヨーテスとD&Jが合同で使用しているエンゲブレト坑道。
坑道という立地は穴熊を決め込む事に非常に向いていて、坑道の中でも比較的高所に拠点施設を設営することで高くのぼる煙や下に溜まるガスを回避している。
一般的に長く滞在する事は向かない立地だ。
しかしドーザーは先のコーラル逆流によって濃厚になったコーラル汚染の残り香で元気いっぱいである。
心なしか訓練での動きもキレを増していて、ついでに脈絡のないラリった言動も増えてきていた。
このアホどもがよ。
自室のドア前で寝転がりながらドヤ顔で中指を天に突き立てたアホを横に退け、扉を開けた瞬間部屋に突入しようとした別のアホを寝転がっていたアホに押し付けて扉を閉める。
「頼むから少し静かにしててくれアホども」
「少し経った!聞いてください、『ウ○コ鎮魂歌』」
「ぎゃははは!なんだその汚え歌は。聞くまでもなくゴミに違えねぇよ」
「久々にキレちまったよ。ACバトルで勝負だカス!」
「仕方ねぇな。テメェの粗末なナニが二度と使いものにならなくなるまで叩き潰してやんよ!」
「あァ!? やってみろよォ!」
理解に苦しむ会話、遠ざかっていく足音。
今回は割と上手く行ったな。
待たせている目的の人物との通信をセットアップを済ませ、愚痴を吐き出した。
「フラットウェルさん。死ぬかと思いました」
『ご苦労だった。報告を聞こう』
「敵性反応は今回の偵察でかなり減らせました。雑多に20ぐらいはやれたとの報告が上がってます。残りのC兵器ヘリアンサス型やウィーヴィル型なんかは、D&Jの馬鹿どもと俺が居ればなんとかなるでしょう」
ドーザーの余燼どもの愚痴ではなく、先程交戦した集積コーラルとなっていた技研都市に蔓延るC兵器についての所感。
吐き出す相手はルビコン解放戦線の実質的指導者やら中央氷原支部司令とか、色々と大層な肩書を持っている帥叔ミドル・フラットウェル。
彼は自分の協力者にして、現在は多企業の密約によって成り立つ同盟から発注されるD&Jへの依頼をとりまとめてくれているクライアントである。
要するにミドル・フラットウェルは雇い主ということ。
雇い主にしては近い距離感でやらせて貰ってるから依頼さえ果たせば気楽なものかな。
『問題は例のアイビスシリーズか……』
「IB-01:CEL 240、高機動かつ高火力で厄介な相手です。タイマンを張れれば俺でもなんとかなるんですが、他のC兵器を相手にしている時に横槍に徹されると捉えきれませんでした。再起動後は特に他の攻撃が凄まじく……すみません、追加の戦力が必要です」
あれは状況的に拙かった。
元々は自分がIB-01:CEL 240を倒して、D&Jの奴等が他のC兵器を殲滅するというだけのシンプルな作戦を立てて偵察に臨んでいた。
しかし、バスキュラープラントから飛び立ったIB-01:CEL 240が、D&Jの連中とC兵器が交戦している場所に現れたことで、偵察目的なのと混戦を嫌って早々に撤退を開始。
D&Jは安全に撤退できたものの、殿を受け持った自分は散々な目に遭った。
チーム戦ということで念の為ターミナルアーマーを装備していなかったら、味方の支援砲撃で死んでいただろう。
冗談じゃない!この作戦を立てたのが自分じゃなかったら立案者にアイアンクローしていたところだぞまったく。
機体ログを見るに最後の支援砲撃でどうにかアイビスを再起動に追い込めたようだが……まあ、深追いしていたら死んでいたし、死にそうになった自分としては確実な手段をとりたい。
だから増援を要請しているわけで。
幸いな事にフラットウェルさんは物わかりが良いので必要性を理解してくれるだろう。
『構わん、元より偵察任務。一定の戦果を上げただけ収穫になるというものだ。……まさか、こうも直接王手をかけてみせるとはな』
「と、言いますと?」
『この早期での集積コーラル到達の意義は大きいということだ。お前の提唱したコーラル災害予防論もそうだが、実際に到達しているという実績を提示すること。それで大豊やファーロンといった星外企業から莫大な資金援助を受けることが出来るのは、お前が思っている以上に意味がある。増援の為の資金も問題なく出るだろう』
「金の話ですか」
やっべ、今のところ話の内容はなんとなく理解出来るけど、これ以上難しくなると流石に無理だ。
その証拠にすっごく短い生返事しか出来ていない。不甲斐ない事に頭の出来が違いすぎる。
だが、向こうもそれを察してくれたのだろう。
『大凡そうだ。お前が幾ら熱心に弁舌を説いたとて、今までの同盟は取らぬ狸の皮算用でしかなかった。だが、今回の集積コーラル到達で棚から牡丹餅として完全に現実となったのだ』
優しげな声で慣用句で例えてくれる。
流石フラットウェルさん助かった!
でも、あれだな。流石にこれでもあいつらには難しいだろう。
「なるほど、それで王手と。それとフラットウェルさん」
『どうした。質問か?』
「いえ、アドバイスです。基本的にドーザーには『取らぬ狸の皮算用』や『棚から牡丹餅』といった諺は通じません。王手も将棋の用語なので通じないと思ってください」
『なるほど、精進しよう』
以前、解放戦線とジャンカー・コヨーテスの間でトラブルがあった時の話だが、フラットウェルさんはコヨーテスとの同盟についても前向きに検討してくれている。
協議も順調に進んで同盟もほぼ結ばれているようなのだが、この前エンゲブレト坑道を防衛してくれたコヨーテスの連中から仲介人をしている自分に苦情が入ったのだ。
曰く、『解放戦線のお偉いさんの話がわからん』と。一応、その時にフラットウェルさんに簡単な言葉遣いをするよう伝えていたのだが、こうやって疲労で頭の回転が鈍くなってようやく共感できた気がする。
フラットウェルさんの話は難しいと。
「精進は仏教の用語です」
『……理解した。平易な言葉遣いを心掛けよう』
「うーん、D&Jの連中ならそれでもなんとなく伝わるでしょう。コヨーテスの連中に伝えたいなら、相手を馬鹿にはせず幼児にも伝わる言葉遣いをするのがコツですよ」
『ドーザーとの融和の為とはいえ、気が遠くなるな……』
「俺の我儘で本当にご迷惑をおかけします……」
通信の向こうに向けて頭を下げ、そして今後の展望について詳しい内容を詰めていく。
長い夜になりそうだ。
ーーーーー
覆面戦場画家 「STV」 の画稿
STVは人が描くことに拘った最後のひとりとも言われ
その作品は一部の好事家に高値で取引されている
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STV メモ
・ドーザーのアジトに迷い込んでしまった
・大豊製宇宙服を着た子供に外まで案内してもらった
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フラットウェルさんとの会議翌日。
作戦行動について話し合うため、今のリーダーとしてD&Jを任せているナスティ・ロビンを自室に招いて顔を突き合わせていた。
「ものすごい額の予算降りたわ」
「どれどれー? お姉さんに見せてみるっすよ……ほげーっ!?」
「なっ、凄いだろ?」
「な、ななっ、なんっすかこの金額!
AC買う時ぐらいでしか見たことないっすけど!?」
奇遇だな、自分もだ。
というかACという機械が高すぎるとも言う。
「俺も先払いで500万COAMポンと出てくるとは思ってなかったわ」
「はえー、とんでもないっすね。それで、これはACに使って良いんすか?」
「ん〜、今の機体数って幾つだっけ?」
「持って来てるのはこっちの『
「改めてやべぇ数だなおい」
えーと、まず中央氷原には自分のPotooooooooがパイロットが一人なので一機とするだろ?
それでレイジ・レックとナスティ・ロビン、ついでにテストも戦力に計上して3機。
それでD&Jの奴等も足しておくと、中央氷原に居るのは合計44名のパイロットということになる。
それで10人もベリウス地方に残っていると。
……んあ?あれ、おかしいな。
「そもそもD&Jのパイロット数って適性ギリギリの奴含めて50人しか居ないんじゃなかったっけ?」
「ああ、そこっすか。ほら、前にお頭が連れてきた連中が居るじゃないっすか」
「居たけどさ。……お前まさか」
「AC乗れる適性持ちが何人か居たんで仕込んで傭兵やらせてるっす。お頭ぐらいの子供も居たっすけど案外やれるもんっすね」
「ロビン」
「待って!言い訳させてほしいっす!」
「なんだ。どういう理屈でカタギを戦場に連れ出した?」
「修理要員としてMTで危険地帯連れ回すよりAC乗せた方が安全っすよね?ぶっちゃけた話、仕事以外はシミュレータを延々回して遊んでた奴らなんで下手な奴らより強いんすよね」
まあ、正論っちゃ正論ではある。
「本音は?」
「後方支援してくれる砲兵が欲しかったっす!」
「ギルティ、アイアンクローの刑」
「辞めっ、離してほしいっすこっちは悪くなっ、じゃなくていやそのただあの子達が望んだのを叶えてあげただけで、ガアぁあああァぁあぁあ!? し、死ぬ! 頭割れたっすか!?」
「まだ割れてねぇんだよアホンダラぁ! そもそもカタギに戻れる奴の手を血に染めさせてどうすんだ!
シミュレータで遊んでるなら、遊びのままにさせておかんかい! お天道様にどう弁明する気だよアァ!?」
「痛たた……いやもう、そこは弁明のしようが無いっす。でも、でもっすよ?」
「なんだ」
「D&Jに入った時点で金を儲けて恨まれてるんで遅かれ早かれ人殺しにはなるっす。それならお頭がこっちに手ほどきしてくれたように、殺しの心構えができた状態で自衛を教える方が親切っすよ?」
「はァー……カスの正論がよ。倫理的に筋道が立たねえって言ってんだよ」
「ナイスジョーク、ルビコンにお頭の言う倫理なんて無いっす。ましてや、今の世の中だと特に」
「これからは平和になるってのに、どうして巻き込んじまうかねぇ」
「そっちの平和とこっちの平和の違いっすね。そもそもお頭は何に筋を立ててるんすか?」
「そりゃお前、お天道様や世間体ってやつだよ。誰も見ていなくとも見ているなにかってのは普遍的な考えに決まってる。なにせ己が見ているんだからな」
「本当にお頭は善良っすよねぇ。どこでその常識拾ったっすか」
「きっと前世が小悪党だったのさ。ルビコンは地獄にしてはヌルい場所だが、天国と言えるほど甘くはない。せっかくだし一曲歌うか?」
「良いっすね!それじゃあ歌うっすよ。聞いてください『────』」
「……良いな!」
ーーーーー100%
『ベスティー・ナイトシェイドよりあなた宛の依頼が送られて来ました。暗号化を解除します、内容を確認してみましょう』
『久しぶり親友。ベスティー・ナイトシェイドだ。
今回はハンドラー・ウォルターさんに内緒の依頼があってね。エアさんを通して依頼を出させてもらった。
作戦領域はエンゲブレト坑道からずっと潜っていった先にあるルビコン技研都市。
ご友人の作った地下穿孔艦を駆使して集積コーラルまで辿り着いたは良いんだけど、C兵器の数があまりにも多くて相手する人手が足りないんだ。
親友に相手してほしいのは……IB-01:CEL 240、アイビスシリーズという技研のC兵器の一つだ。
偵察に行った時は横槍を入れてくるわ空を飛ぶわ再起動するわで散々だったから、ジェネレータまで木っ端微塵に壊しておいてくれ。
それと今回はウチの連中に僚機を頼める。
いずれ顔合わせするって約束だったからね。その分報酬は差し引くけど、どいつもこいつも粒ぞろいだ。
俺は他の殲滅をしないといけないから直接親友を手伝えないけど、代わりの奴等を囮にすればやりやすくなるんじゃないかな。
まあ、こんなところか。
悪い話ではないと思う。連絡を待っている』
ーーーーー
集積コーラル制圧
作戦領域:エンゲブレト坑道深奥 ルビコン技研都市
依頼者:D&J
作戦目標:敵機体撃破
報酬:400,000coam
詳細
・僚機選択可能
・選択した僚機に応じて報酬減算
ーーーーー
ナスティ・ロビン/バビエカ
《傭兵集団D&J10代目リーダー
エルカノ社の幹部を両親に持ち、出身とは正反対の高耐久かつ対AC戦に優れる武装構成のタンクを駆るドーザー
豪快磊落かつ果断な判断によって部下からの信頼も厚く、高くないパイロット適性を自機への理解とアセンブルで補う手法を体系化している
報酬分配は30%》
『D&J現リーダー、ナスティ・ロビンっす。ヘリアンサスの相手は向かないんでこっちに回されたっす。まあ、お互い気楽にやりたいものっすね』
ーーーーー
レイジ・レック/バリオス
《傭兵集団D&J教官
首から上のみに特殊な旧世代手術を施された強化人間として、第二世代強化人間を騙りオールマインドに潜入しているドーザー
単独任務を多く遂行する実力者であり、高性能かつ高火力な重量二脚を駆使したクレバーな戦術判断を得意とする
報酬分配は40%》
『レイジ・レック、機体名バリオス。類稀な強者と聞いている。余すことなく学ばせてもらおうではないか!』
ーーーーー
テスト/セキト
《大豊パイロット訓練生
汚染市街掃討でのレイヴンの活躍に刺激を受け、レッドガン部隊の次期エースとなるべく親友の元で血の滲むような努力を重ねた
中量二脚にルビコニアンのウエポンハンガーを取り入れ、火力・耐久力・機動力を高い次元で纏めた近接派兵主義の体現者である
報酬分配は20%》
『大豊核心工業集団所属、コールサイン:テストです! こうして肩を並べる機会を得て、大変光栄であります!』
ーーーーー
『集積コーラル、私の故郷……思っていたより早い帰郷になってしまいました』
ーーーーー
技研都市、両端が崩落した吊り橋。
非行手段を持たない機械では登ってこれないであろうこの巨大な橋に、これでもかと言わんばかりのACがすし詰めになっている。
行儀の悪いドーザーどもが機体を身じろぎさせると隣の機体に当たって擦れた金属音が響く。
やっぱこれ様相が悪すぎるな。
それにしてもここは景色も良い。
橋の上、下は水場……アレを言える時か?
「無人機ども……ガーディアン気取りも今日までだな。貴様らには水底が似合いだ」
『あの、こんな時になにやってるっすか?』
「いけるな? フラジール」
『フラジールって誰っすか!?』
「フン、それは良かった。じゃ、行こうか」
『小童め、ついに狂ったか』
「なあお前ら、少しふざけただけなのに辛辣過ぎないか?」
『お頭、これから戦闘なのでふざけないでほしいっす』
『時と場所と場合をわきまえんかこの愚図め!』
「ごめんなさい。でもロビンがあんな歌を歌うからフリだと思うじゃん!」
そんなわけで、親友のC4-621に選ばれたのはテストでした。あいつは汚染市街で親友の活躍を見て以来、レイヴンを目標に頑張ってきていたので、選ばれたとわかった時は凄く嬉しそうだった。
ここに居るのは選ばれなかったカスども二人。機体が鈍重なナスティ・ロビンとレイジ・レックだ。
でもまあ、なんだかんだで傭兵組織になったD&Jで指揮を執っている二人が残ってくれて助かったかもしれない。
『なにがフリになったんすかねぇ。まあ良いや、では全員傾注するっす』
『橋の下に大挙して居るのがヘリアンサス型とウィーヴィル型。弱点は両者ともに爆発属性っす。……余燼ども!構え!』
これはもはやACがとる戦術ではない。
混戦による同士討ちを避けるために、そして制圧後の占領の為に戦力を温存しておくための運用でしかない。
原始的な砲兵の如く立ち並び、意匠の統一されたACがその肩に背負ったグレネードキャノンの標準を合わせる。
『撃ち方はじめ!』
ACに搭乗して耳栓を装備してなお、耳を劈く爆音が鳴り響いた。それも一つや二つではなく、40機という通常では見られない大量のACが一斉にグレネードを放ったという非常事態。
メリニット社が誇る大型グレネードキャノンEARSHOTの一斉掃射。
釣瓶打ちと言うにはど迫力。本来は機動して戦闘を行うはずのACをこのように使うなんてとんでもない贅沢だ。
一定箇所にとどまっていたC兵器なんて2発食らえば確実に倒れるだろうに、執念を感じる一斉砲撃によって木っ端微塵だった。
怖っわ。自分はなんてものを考案してしまったのだろうか。
『ら……! か…ら……! お頭ー! 後は頼んだっすよ!』
「了解、行くぞレック!」
『遅れるなよ小童ァ!』
砲撃の雨が止み、残存しているC兵器に向けて身を躍らせる。
ーーーーー
右腕武器 HML-G2/P19MLT-04
左腕武器 HML-G2/P19MLT-04
右肩武器 BML-G1/P20MLT-04
左肩武器 EARSHOT
ーーーーー
砲撃の嵐で消し飛ばした次は、ミサイルの雨を降らせる時間だ。
今日のPotooooooooは対C兵器に特化した特別仕様だ。せっかくアイビスを相手せずに済むのだから割り切った装備にしてみたが、それが中々に良い。
ミサイルを撃ってC兵器を追い回し、射程内に止まった敵にグレネードを撃っていけば、D&J砲撃を残った少数の残党なんか草を刈るが如く数を減らしていく。
「ガハハ、勝ったな!」
『警戒を怠らないでください』
COM先生の警告が鳴り響くが、この状況は大体勝ちと言っても良いだろう!
「見てろよアーキバス! 絶対にぶっ潰してやるぜぇ!」
『警戒を怠らないでください』
『あのガキまた調子乗ってやがる』
『おーおー、気分良さそうに飛び回りやがって』
『こちとら狭苦しい橋の上で待機してるのによぉ』
『なんかムカつかねぇか?』
『一発までなら誤射だよ誤射』
『やめろって! やべぇよ!』
『……まずい! 避けろ小童!』
「なんだって? 耳が響いて聞こえ……」
エネルギーを回復しようと着地したその時、背後に着弾した爆風が機体を大きく吹き飛ばす。
一体なんだ敵襲か!?いや、でもアレはイヤーショットの爆風じゃないか?
ということは味方の誤射だが……まあ、そういう事も想定してきっちりターミナルアーマーを装備してきてる訳でしてね。
撃ちやがった奴は追々説教するとして、まずは目の前の敵を……!?
『機体が深刻なダメージを受けています』
「メインブースタがイカれただと!?」
コクピット画面が赤く染まり警告音が鳴り響く。
表示されたエラーは背部メインブースタ接続ロスト、まずいまずいまずい!
上昇が無理、アサルトブーストも無理、巡航の機体ブーストも無理。
迫りくるヘリアンサス一機にミサイル全砲門掃射で対処しつつ叫ぶ。
「よりによって水上で……! クッ、ダメだ、飛べない!」
『マジっすか!? ……総員聞け! そこの盾持ち二人、降りて橋の近くまでお頭の護衛を頼むっす。火炎放射2丁持ちも降りて迎撃を担当してほしいっす。それで残りの馬鹿どもはミサイル準備! グレネードは誤射しないようセーフティロックをつけるっすよ!』
浸水は大丈夫か。ACからするとかなり浅い浅瀬だったおかげで機体の膝まで浸かるだけで済んでいる。撃墜されない限り水没は避けられるか。
生きているのはサイドブースタのみ。ならば、横方向へのクイックブーストならなんとか使用可能か?
いや、駄目だな。セーフティロックがかかっていて迂闊な真似が出来ない。無理にクイックブーストを発動しても、最悪もんどり打って倒れるのが目に見えるようだ。
『おい大丈夫か親友!』
『あのヘリアンサスとかいうの、盾じゃ受けれないんじゃないか?』
『あちゃー、ブースタが完全に破損しているよ。ほれ写真』
「サンキュー。うわっ、こりゃ酷いな」
前進のために背を向けたらヘリアンサスが襲ってきてしまうので、ロビンの指示に従って橋の近くに向けて全力で背走する。
普段の1/4ほどの速度なので、体感からそれはもう遅いこと遅いこと。
降りてきた奴らがあっという間に脇を固めて護衛してくれなければ湖の愉快なオブジェとなっていたかもしれない。
小ジャンプで角度をつけ、マニュアルエイムで放ったグレネードが遠くで爆ぜる。おー、当たってる当たってる。EN切れで止まってたから放ってみたけど当たるもんだな。
イヤーショットは久しぶりに使うから当たるか不安だったが流石はメリニット製、あんな爆風に巻き込まれたらそりゃメインブースタもイカれるわ。むしろ壊れない普段が凄いのか?
『あの』
「どうした?」
『俺たち要る?』
「もちろん要る」
当然要る。流石にメインブースタが壊れたこの状況だとやれる事が少ないからな。せめて守りは任せたい。
『なあおい、めっちゃ遠くで当ててんぞ』
『距離600ぐらいあるんじゃねえか』
『いつ照準したんだ?』
『当て方がキモい。そもそも動きもキモい』
『前から思ってたけどさ。アレの機体って頻繁に崩壊寸前のジャンクみたいな揺れ方してなかった?』
『ロビンのやつが言ってたけどそういう技術らしいぞ』
『ブースタイカれたのあんなことしてるからだろ』
『違ぇねえや!』
「聞こえてるぞバーカ!」
『想定外の使い方してんじゃねえ!』
『メンテナンスを見習いの奴らに習って来やがれ!』
『最近サーバーの爆破多すぎるぞ!』
『今月博打打つ金がねぇぞ!』
『ぶっ壊れた人形みてえな動きすんな!』
「うるせぇぞ黙れ! 仕事しろ!」
オープン回線でグダグダ抜かしてやがる余燼どもにむけて吠えたてる。カスどもがよ、傭兵になっても性根が変わってないじゃんか!それでこそドーザーだ!
『……あの、俺もしかしてなにかやっちゃいました?』
そしてそこで自分を撃って機体制御をロックされていたやつが正気に戻ったらしい。
ははぁ、さてはコーラルキメて乗ってたな?
『主犯が正気に戻ったぞ囲め囲めー!』
『よくもチビを殺ってくれたな!』
『くたばれ!』『死ね!』『アホ!』
「俺死んでないから! 適当な落とし前をつけてくれたらそれで良いから!」
縁起悪いな!?自分死んでないから、ここ大事!
『……やってやろうじゃねえか! ルビコン史に残る集積コーラル、ここで一発ケジメをつけなきゃ男が廃るってもんよ!』
『言質とったぞ!』『ケジメだー!』『派手にやれー!』『号砲をブチ上げろ!』
下手人のケジメ宣言に余燼どものテンションが一気に最高潮に達する。はあ、ボケがよ。気持ちはわかるが今は仕事中だろうが。
そんなこと言ってると来るぞ?
『こらー! そこの馬鹿たち何やってるっすか! 今は作戦行動中っすよ!』
『やべぇぞロビンだ!』『おらさっさとケジメつけんかい!』『ちくしょう、またケジメショー見られねぇのかよ!』
ほら来た。ロビンは公私をしっかり分けるのでこういうことは口うるさく注意してくれるのだ。
だからリーダーを任せたんだよ。
『ケジメやるなら終わった後にするっすよ! 今は仕事、あのガラクタどもの腹が爆発するぐらいミサイルを食わせる作業に戻るっす!』
『さっすがロビン!』『ロビンちゃーん!』『さっさと終わらせてケジメ見るぞ!』『おうよ!』
そしてこうである。
あっれぇー?お前、そこで後回しに出来るやつだっけ……?まあ良いや、ロビンもD&Jの余燼どもと接する内にこういった事に慣れたんだろう。
『この青二才どもめ。喧しく囀る暇があるならこちらを手伝わんかァ!』
『やべぇレックがキレた』『いつものことだな』『教官っていつもブチ切れてるよな』『やーい首だけ!』
『聞こえているぞ……! 作戦が終わったら貴様の首から下を埋めてくれよう! 首を洗って待っておくが良い!』
そして橋から遠方に居る敵を単身釣り出して来ているレイジ・レックのやつはこんな調子だ。
いやあ、本当に申し訳ない。
まさかこんな風にメインブースタが破壊されるなんて思ってもいなかったからさ。
上昇推力が高い高耐久機で殲滅しながら敵を引き付けられるレックが居なかったらどうなっていたことやら。
レックは本当に操縦が上手くなったよな。
この我が終生の相棒であるインビンシブル・ラミーが、見所があると言っただけのポテンシャルはあるということか。
流石は相棒!そのキマった眼は万物を見通しているんだな!たぶん血走っているだけだろうけど。
「気合い入れ直せドーザーども! さあ、親友が帰ってくる前に殲滅するぞ!」
『『『応ッ!』』』
これはもう、手間取ることは無さそうかな。
威勢よく放たれた返事に違わず獅子奮迅の働きを見せるD&Jのパイロットたち。
勢いのまま橋を飛び降りて参戦する馬鹿も現れたがそこはご愛嬌。無事に親友が帰ってくるまでの間にケジメパーティを開くことが出来ましたとさ。
D&J:過 剰 戦 力。後先考えずに稼いだお金をほぼ全て傭兵活動に注ぎ込んだ結果、パイロット適性持ちメンバーが全員ACを所有するに至った。フル武装した重量機体が敵を囲んでグレネードを叩き込む様子はこの世の終わり染みている。実はほぼ全員が節約のためジェネレータがMTと大差ないことで有名なAG-J-098 JOSO。馬鹿の群れ。
BAWS:機体の発注先1、頭部・ジェネレータを担当。安価かつ大量生産の効くパーツを生産しているだけあり、武器も含めて余裕を持って乗り切った。
RaD:機体の発注先2、腕部・脚部・ブースタを担当。インビンシブル・ラミーを介したイカれた数の大量発注に笑っていたシンダー・カーラだったが、30機分の納入を終えた辺りで 例の持ち逃げ事件が発生。残り20機分の発注が生命線になり全力で遂行した。インビンシブル・ラミーからは「封鎖機構が消えるまで荒稼ぎして、封鎖が解除されたら売っぱらってCOAMを山分けする」という頭の悪い儲け話を聞かされている。
大豊:機体の発注先3、胴体を担当。胴体のみと侮ることなかれ。中立であるメリニットやファーロンのルビコン支社と組み武装を大量供給している。
オールマインド:高性能主義なのでD&J標準機は性に合わないが、武装面での自由度の高さに目をつけて検証し『非強化人間向けAC』という根本を見破った。
D&J標準機体「
右腕武器 MA-E-210 ETSUJIN
左腕武器 HML-G2/P19MLT-04
右肩武器 EARSHOT
左肩武器 SI-24: SU-Q5
頭部 AH-J-124 BASHO
コア DF-BD-08 TIAN-QIANG
腕部 AC-2000 TOOL ARM
脚部 2C-3000 WRECKER
ブースタ BC-0600 12345
FCS FCS-G2/P05
ジェネレータ AG-J-098 JOSO
機体解説:安くて頑丈をテーマにした機体。重量機のくせにかなりCOAMをケチって製作されており、低適性者が装甲と数の暴力でごり押すことが前提になっている。武装は各々が好き勝手変更しているため、あくまでも見本でしかない。
誤射した奴:出撃前に服用したコーラルで酔っていた。誤射の直後正気に戻って事態を理解し、あの場に居た全員の前で、ケジメとして素手での去勢を自ら敢行した。復帰まで一ヶ月。頭が馬鹿。
621とエア:ミッション完了の報告をしようと戻ってきたらケジメ去勢を目撃してしまった。
テスト:餅つきのようにアイビスをスタッガーさせては追撃してを繰り返していた。憧れの人と肩を並べることができて満面の笑顔で帰ったら、ドーザー達のケジメ去勢を目撃してしまった。
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RANK -/-
搭乗者名 "Nasty" Robin
AC名 Babieca
INFO
ジャンカー上がりの独立傭兵集団、D&Jの10代目リーダー。
エルカノ幹部の令嬢である彼女は、幼少期にミールワーム養育用コーラルタンクに転落したことで治療方法を求めてD&Jに預けられた。
独立傭兵となった少年に誘われた彼女は現在、解散した農耕集団だったD&Jを再集結させて金稼ぎに邁進している。
ドーザーらしい豪快な舵取りが部下に人気の秘訣なのだとか。
機体構成 バビエカ
右腕武器 DF-BA-06 XUAN-GE
左腕武器 HML-G2/P19MLT-04
右肩武器 EL-PW-01 TRUENO
左肩武器 45-091 JVLN BETA
頭部 EL-PH-00 ALBA
コア DF-BD-08 TIAN-QIANG
腕部 IA-C01A: EPHEMERA
脚部 LG-022T BORNEMISSZA
ブースタ (NOT EQUIPPED)
FCS FCS-G2/P10SLT
ジェネレータ DF-GN-06 MING-TANG
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RANK -/-
搭乗者名 "Rage" Wreck
AC名 Balios
INFO
ジャンカー上がりの独立傭兵集団、D&Jの教官。
頭部だけの第二世代強化人間とされる彼は、失敗作として廃棄されるはずだった。
偶然、体質の定期検診を受けにきた少年と殴り合いになったことでその激しい気性を気に入られ、前D&Jから今に至るまで機体操縦の教官を務めている。
なお、強化人間になった動機は「脳から直接コーラルを摂取したい」という常人には理解し難いものである。
機体構成 バリオス
右腕武器 HML-G2/P19MLT-04
左腕武器 HML-G2/P19MLT-04
右肩武器 VP-60LCD
左肩武器 VP-60LCD
頭部 HD-033M VERRILL
コア CS-5000 MAIN DISH
腕部 04-101 MIND ALPHA
脚部 DF-LG-08 TIAN-QIANG
ブースタ BC-0600 12345
FCS FC-008 TALBOT
ジェネレータ VP-20D