【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵   作:白河童小鼠(人間)

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旧宇宙港襲撃
多重ダム防衛
 →旧宇宙港襲撃ALT

概要:独立傭兵『レイヴン』が襲撃してこない防衛ミッション。バートラム旧宇宙港に押し寄せてくる惑星封鎖機構をひたすら倒し続ける殲滅任務となっている。防衛対象があるミッションではないが、味方MT部隊の残存数がSランク評価に関わってくる。

オーネスト・ブルートゥ排除
→通信基地襲撃

概要:依頼主はジャンカー・コヨーテス。作戦内容はアーキバスが占領したハーロフ通信基地への殲滅ミッション。オーネスト・ブルートゥがある事情で強力な通信設備を必要としているため、無人になった施設をまるごと頂くという事情を聞かされる。

アイスワーム撃破
→封鎖衛星襲撃(星越え)

概要:依頼主はベスティー・ナイトシェイド。作戦内容は惑星封鎖衛星への到達並びに占拠。ミッション開始時に衛星砲の狙撃を躱しながら接近するミニゲームが挟まる。なお、オーバード・レールキャノンがオーネスト・ブルートゥの手元にあるため、アイスワーム撃破が現時点では不可能になった。

注意:今回はアンチ・ヘイト要素が強いです。


開戦と終戦/星越え

 戦争前夜。

 最近、外が大変なことになっているらしい。

 エンゲブレト坑道でひたすら裏方をやっている自分たちには関係ない話だけど。

 

 親友のC4-621は自分の思った通りの予想外というかなんというか、少々独自路線のミッションを突っ走っているようだ。

 

 まず、原作における現在の時系列はChapter3。

 ここで最初になる選択可能ミッションの内、『坑道破壊工作』と『新型機体鹵獲阻止』の代わりにD&Jで『集積コーラル制圧』のミッションを出した。

 この集積コーラル制圧はなるべく早く行わないと諸々の準備が出来ないので非常に困ることになる。

 例えば集積コーラルを適量焼くための目算を立てたりとか、起動していないアイビスシリーズの接収だとか。そもそもここを制圧出来ないと同盟の話が進まないので、ルビコン解放のためかなり急いで実行した。

 

 それで、次に親友が自分の記憶と違う行動をとったのは『旧宇宙港襲撃』でのことだった。

 そこではなんと、ブランチの『レイヴン』が襲撃に来なかったらしい。そのせいで強襲艦に乗ってHCやLCが山ほど殺到してくる事態になったと聞いた。

 

 何か事情があったのかブランチのオペレータさんに尋ねてみたところ、『あれもまたレイヴン』とのこと。なにがあったかは知らないけどいつの間にか認められてる!流石だな親友!

 でも、親友自身に聞いてみたところ、思い当たる節が全くないと返事があった。本当に何があったんだ?

 

 そんなこんなで旧宇宙の次に妙な事になったミッションは『オーネスト・ブルートゥ排除』だった。

 一応、かなり前からご友人に対してこのミッションが行われる時期について話していたのだが、これもまた変なことになっている。

 

 RaDのシンダー・カーラが発注したオーネスト・ブルートゥ排除に重ねてミッションを発行したようで、どういうことなのか親友はハーロフ通信基地を襲撃した。

 訳がわからないよ。味方陣営の動きなのにこの話はどこにも話していなかったようで、何が目的だったのかはさっぱり判りかねている。

 案外なにも考えていないかもしれないとも考えてみたが、ご友人に限ってそれはあり得ない。

 

 恐ろしいことに、シンダー・カーラもオーバード・レールキャノンを取り返し損ねたことで大層ご立腹だ。

 その怒りは自分の所にもオーネスト・ブルートゥの暗殺依頼という形で飛んでくるほど。

 それに加えてオーネスト・ブルートゥ殺害の公示依頼も出していて、現在のグリッド012は一攫千金を狙う独立傭兵とそれを迎撃するジャンカー・コヨーテスの抗争が始まっている。

 

 最初の方はD&Jも余力の範囲内で防衛に参加していたが、今はもう夥しい数の無人機によるトラップハウスと化していて侵入しようがない。

 ご友人怖っ!

 

 そして今に至る訳だが、こうして思えば随分とエンゲブレト坑道に滞在したものだ。

 坑道内に作成された拠点もここ数か月の滞在でD&Jやコヨーテスに使い込まれることで良くも悪くも独特の味や温かみが出てきている。

 

 部屋で二人、テストと一緒に決済作業をするのも慣れてきてしまった。

 

「お頭さん。あれは放っておいて本当に大丈夫なんですか?」

「まあ、暫くの間なら問題ないでしょ」

 

 テストが言及したのは、中央氷原の分厚い氷の下にある大地を掘り進む超巨大C兵器『IA-02アイスワーム』。

 あれは既に封鎖機構の制御を離れてコーラルの集合無意識に駆り立てられた番人に過ぎない。

 

 一応、その移動は見張ってはいるものの、事前の予想通りウォッチポイント・アルファの防衛以外で現れることがない。だから、既に集積コーラルを掌握している自分たちが緊急で対処すべき相手ではない。

 

 だからアイスワームは後回しだ。

 

「それでどうだ、大豊側も準備は出来てるか?」

 

「ええ。せっかくの晴れ舞台なので、一緒にルビコンへ降下してきたアイツらも専用のACに乗れるらしいですね!いやぁ、あれは格好良かったな!」

 

「そうか! 雑だけど大豊で組めるアセンブル案を提出しておいて良かったよ」

「あれ、お頭さんのアセンブルだったんですね」

 

「そうだ。いかにも大豊が好みそうで樹大枝細って感じの機体だったろ? 俺も一応広告塔なんだから、ちゃんとその辺は仕事してるよ」

 

 大豊は実働部隊がほとんどない割に、政治的にかなり上手くやってくれたようだ。

 ベリウス地方に戦力を用意した上で、こちらの要求通りレッドガン部隊が明日の作戦に手出し出来ないよう待機させる事に成功している。

 

 偶々生き残って解放戦線の捕虜として捕らえられていたG4 ヴォルタを交渉材料として提供できたのは大きかったとか。生死不明だったからワンチャン生きてないかなと思ってフラットウェルさんに問い合わせたらドンピシャだったわ。

 凄いねフラットウェルさん!

 

「それなら安心してベリウス地方は任せられますね!」

「交易の要衝だった『壁』の奪還は後回しになるが……まあ、向こうにも戦力は配置してある。あいつらならなんとかなるさ」

 

 身も蓋もない作戦だが、ベリウス地方に居た時点で布石は打っておいた。

 ブルートゥが一枚噛んでいると言えばその碌でもなさは伝わるだろうか?

 あれはもし考えついても実行してはいけない類の作戦だと思ってたんだけどなぁ!念の為準備させていたら、まさかのフラットウェルさんからGOサインが出てしまった。あいつら人の心とかないんか?

 

 それでもあの作戦が発動したならば、絶対に無関係の陣営は足を止めざるをえないだろう。

 近隣住民の避難は済ませてあるとは聞いているけど……自分がごちゃごちゃ抜かしていても決まったことはどうしようもない。

 もはや自分の止められる範囲を超えてしまったのだ。

 

「あの、お頭さん? 大丈夫ですか?」

「悪い、そっちの箱にある胃薬とってくれ」

 

「あまり若いうちから胃薬に頼っちゃ駄目ですよ。戦いが終わったらしっかり休んでくださいね?」

 

「うん。俺、この戦いが終わったら、大豊の畜産惑星で競馬観戦しながら療養するんだ……」

「溜め息が重い」

 

 そう、競馬だ。

 移動に一年ほどをかけた大旅行になるという話だが、遂に夢の競馬星に移住する手配が出来たのだ!

 思えばたったそれだけの事の為に随分と苦労してきたものだ。

 

 これは大豊のお偉方と意気投合して聞いた話なのだが、なんと件の競馬星はベイラムグループとタキガワ・ハーモニクスの共同統治で運営されているらしい。

 それに、送って貰った馬の血統データを気が遠くなるほどひたすら遡り続けた先に、『Potoooooooo』の名前が掲載されて時なんて思わず涙が流れてしまったほどだ。

 

 繋がっている。馬の血脈の中には今も、伝説の芋が繋がっているのだ!素晴らしきかなサラブレッド!

 ちょっと地球での戦争途中で馬が絶滅して遺伝子バンクの中からクローンとして末裔が復活したとかあったけど、そこはまあ致し方ないことだろう。

 

 なにせ宇宙進出前には地球全土が汚染されつくしていて、人間以外の生き物がほぼ絶滅していたようなのだ。クローンを使用された馬をサラブレッドと称するには複雑な気分だが、それが現代のサラブレッドの定義であるのならば仕方がないというもの。

 8代以上続けてある歴史ある血統なのだから、もういっそのことサラ系を脱した馬として見るべき。

 

 そして馬が存在しているなら、自分が奮起するに足るモチベーションになってくれるのだ!

 

「細工は流々仕上げを御覧じろってね!」

「ですね! だとするとまずは書類を片付けないと」

「よし、やってやるぞー!」

 

 細工と言えばベリウス地方だけではなく、当然この中央氷原においてもちょっとした小細工を行った。

 アーキバスと封鎖機構を一網打尽にする為の策は既に張り巡らされている。

 

 それらに対して十二分な戦力も配置しているし、極秘裏に独立傭兵に対して依頼を行ってブランチや親友、D&Jで活動しているコールドコールやノーザークとか六文銭の受諾も確認している。

 

 フラットウェルさんはV.Ⅳラスティを介してV.Ⅲオキーフと連絡がとれたそうだし、味方陣営はほぼこの中央氷原に揃い踏みだ。

 

 解放戦線の最高戦力である帥父サム・ドルマヤンも洋上都市ザイレムで親友に生け捕りにされてからは元気いっぱいみたいだし、どこもかしこも絶好調としか言い表せないだろう。

 

 親友からしても殺してはいけない相手を生け捕りをする良い予行練習になったそうだ。今回の作戦では最難関にして一番重要な場所を任せているし、是非とも頑張ってほしい。

 

「そうだテスト」

「なんです?」

 

「お前もスネイルを殺せ」

「脈絡どこ行ったので」

 

「ロビンのやつが復讐でやらかしそうだ。お前が前衛をしてやれ」

 

ーーーーー

 

通信記録:ドーザーの談話3

サーバーから抜き取った通信記録

仲間との雑談がログに残っていたものと思われる

ーーーーー

なんの動画見てんだ?

 

子供のころのお嬢がクソガキに折檻されてるやつ

ほら、昔お嬢が機密漏洩したとかって時の

 

懐かしいの見てるじゃん

あの時はたしかロビンのやつ俺のクソコラネットに流しやがったんだよな

それとお前達、オープン回線で雑談するなって警告したよな?

 

うわっクソガキ驚かせんなよ

相方と勘違いしたじゃねえか

 

ーーーーー

 

 バートラム旧宇宙港の執務室。

 そこでアーキバス社が誇る強化人間部隊ヴェスパー、その実質的な指揮官であるV.Ⅱスネイルは奇妙な報告を受けていた。

 

『スネイル隊長、応答を!こちらメーテルリンク。グリッド崩落により壊滅的な被害を受けました!』

『なんだと?』

『グリッドが、崩落しました!』

『……まさか。V.Ⅵ、壁はどうなっていますか』

『観測する限りでは……完全に崩落に巻き込まれて……封……構も……な…………』

 

『通信途絶……いや、フロイト! こちらV.Ⅱスネイル、応答しろ!』

 

『こちらフロイト。何の用だスネイル』

『敵襲です。今どちらに?』

『ああ、今はロックスミスでシミュレータを……』

『今すぐ出撃を。先に出て事態を報告しなさい』

 

『──スネイル、お前も出てこい。嫌な予感がする』

『ええ、言われるまでもありません』

 

『管制室、こちらV.Ⅱスネイルです。現時刻を以て緊急事態を宣言、可能な限り最速で緊急配備を』

『了解。緊急事態を宣言、緊急配備を行いま……!?』

 

 通信すら介さない爆音が鳴り響いたことによって悲鳴も残さず共に通信が途絶する。

 廊下から響く社員たちの悲鳴から非常事態が起きているのは明白というもの。

 スネイルはすぐさま執務室を出て走り出した。

 

『こちらも通信途絶……状況は最悪に近いようですね』

 

 乗機オープンフェイスが待機する整備ドッグへと脚を急かしながら他への通信を試行するが、そのことごとくがノイズ混じりの不通。

 真っ先にフロイトへと連絡がついたのは不幸中の幸いだった。

 

 このタイミングで通信網が破壊されたということは計画的な何者かの襲撃だ。

 

 全ての通信が阻害されているということは、何者かと繋がっていると思しい情報局長官V.Ⅲオキーフが動いたのだろう。思えば最近のあの男は解放戦線と内通している疑惑が持ち上がっていたV.Ⅳラスティとの接触が多かった。

 

 この状況で二人が裏切っていない方が不自然というもの。

 

 しかし、メーテルリンクからのグリッド崩落の報告は状況を推察するには十分な情報だが、腑に落ちないこともある。内通先と予想した解放戦線が、まさか不特定多数の被害を呑んでまでグリッドを崩落させる暴挙に至るとは考えがたいのだ。ルビコンの土着どもが持つ戦力を考えても、まず解放戦線単独での決起はありえないと考えて良い。

 

 ならば、一体どこと繋がった?

 

 その答えは整備ドッグで待機していたオープンフェイスに乗り込み出撃することで簡単に答え合わせがされた。

 

『遅かったじゃないか、スネイル』

『目的は既に果たされてしまっている、か』

 

 バートラム旧宇宙港を象徴する巨大な管制塔、それ支える土台からフロイトが降りてくる。

 

 背後には如何なる手段を用いたのか爆炎をたなびかせて落下していくバートラム旧宇宙港の通信塔。

 遠景に見えるヨルゲン燃料基地も何者かの襲撃を受けているのだろう。燃料に引火した大炎上が見て取れる。

 

 そしてようやく、つい先日のハーロフ通信基地襲撃は今回の通信撹乱への布石だったと悟る。

 

『全ては誰かのシナリオ通り。残るは憎まれ者の幕引きだけらしい』

 

『ふざけた真似を! ……失礼、取り乱しました』

『構わない。だが連中、どうあってもお前を逃す気はないようだ。さっきからオープン回線で勧告が行われている』

『そしてあれが下手人ども、ですか』

 

 進撃してくるのは意匠が統一された大量のAC。それらを構成するパーツは多企業の混合ではあるものの、補給を考えたのか画一的なそのアセンブルは体系化された部隊であることを無言で語っている。

 

 そして、後方から悠然と戦況を睨んでいる複数のACの内、幾つかの機体には見覚えがある。

 それもアリーナに叙された独立傭兵とドーザー。協調性に欠ける独立傭兵が軍事作戦の指揮をとるとは考え難く、ならば見覚えのない二機のどちらかが指揮官なのだろう。

 

『あいつらと戦うのは自殺行為だ。逃げるか?』

『私はヴェスパー、アーキバスです。それ以上でも、それ以下でもない。……V.Ⅰ、あなたは部隊を束ねて撤退を。貴方が居れば幾らかは生きて帰る事ができるでしょう』

 

『無理だな』

『なに?』

 

『さっきから挑発してきているあのBAWSの旧型、明確に俺を潰しに動くぞ。お前が殿に残ったとしても他を抑えきれん』

『まさか! 所詮は旧型、V.Ⅰフロイトをもってしても打倒不可能とでも?』

 

『そう、不可能だ。あの布陣を見ればわかる。あれは圧倒的な実力差がある格下相手に、万が一を起こさない傲慢さの表れだ』

 

『……ならば、ならばどうする! この私が斃れるのは良いでしょう。生還不可能は明白です、ヴェスパーまで倒れては本末転倒だ。いえ、この際ヴェスパーが敗れるのは良い。だがこんな、アーキバスすら揺るがす決定的敗北が、このような形で起こるなどあってはならないのだ……!』

 

『そうか。……行くぞ、スネイル』

『……ええ、行きましょうか』

 

『V.Ⅱスネイルよりヴェスパー部隊各員に通達。上位隊長の権限により、現時刻をもってルビコン星系における全ての作戦行動を破棄。即刻撤退行動を開始しなさい。殿はV.Ⅰフロイトと、このV.Ⅱスネイルが務めます』

 

ーーーーー

 

通信記録:ドーザーの談話4

サーバーから抜き取った通信記録

仲間との雑談がログに残っていたものと思われる

ーーーーー

アイツ本当にやりやがった

封鎖衛星を襲撃するなんてイカレてる!

 

つべこべ言わず俺たちも襲撃するぞ

散々好き勝手しやがったアーキバスに痛手を与えるなら今が好機だ

 

ヴェスパーは封鎖機構の襲撃準備で分散してる

アーキバスなんて僕達がぶっ潰してやる!

 

ーーーーー

 

 中央氷原。

 不毛の地としてルビコニアンから囁かれるこの地は、既に陰謀渦巻く戦場と化して久しい。

 なればこそ自分が動乱を巻き起こしてもバチは当たるまい。

 

 火の海と化したヨルゲン燃料基地。

 『レイヴン』とブランチの陽動によって封鎖機構決戦の地となったヒアルマー採掘場。

 三度(みたび)機能を失ったハーロフ通信基地。

 そして、衛星砲によって管制塔に風穴が開いて圧し折れていくバートラム旧宇宙港。

 

 ここまでは順調に計画が進んでおり、いよいよ作戦は大詰めだ。

 

 地底の封鎖システムは爆破した。

 ウォッチポイント・アルファ深度3に存在するルビコンの封鎖システムだが、更に深部にある集積コーラルに到達していたので仕掛けることは容易だった。

 それに事前にCパルス変異波形エアに話を通しておいたので、変異波形特有のハッキングによって爆弾が設置された状態を正常として偽装することもできてしまった。

 そこまでくればあとはタイミング次第で、親友の作戦開始に併せて起爆した。

 

 そして封鎖衛星は親友が占拠した。

 発注したミッションは『星越え』。

 これは万が一、強化人間C4-621が予想できない破滅的な策をとった場合に備え、自分が強引に封鎖衛星を打破する為の単騎特攻兵器を流用したものだ。

 製作は勿論オーネスト・ブルートゥ並びにジャンカー・コヨーテス。

 以前、ブルートゥにはRaDから倉庫ごとぶっこ抜いた飛んだ時に、上空で封鎖衛星の狙撃について検証してもらっていた。

 その時の検証結果は『封鎖衛星には大気圏外狙撃用のレールキャノンと高高度狙撃用のレーザーキャノンの二武装が存在し、後者のレーザーキャノンについてはBAWS製のMA-T-223 KYORIKUを改造することで回避可能』というもの。

 

 ゲームの中ではアイボールの照射をジャミング弾のECMフォグで無効化出来るので、同じようにレーザーを無効化出来ないかなぁ、なんて思っていたらご友人ったら見事な研究結果を出してくれたのだ!

 

 サンキューご友人!でも、往復用の輸送機を依頼した筈なのに、片道切符の外付け特攻兵器として出してきやがったのはどうかと思ってるよ?

 だってあれほぼVOB(ヴァンガード・オーバードブースト)じゃん。素で身体が頑丈な自分だけど、流石に大気圏を推進力で無理矢理突破するレベルの加速には耐えられないと思うの。

 というか純粋な推進力による大気圏突破装置って、シュナイダーが企業のエンブレムに用いるほどの特許技術じゃなかったっけ。どうやって持ってきたか聞くのがめっちゃ怖いんだけど!?

 

 封鎖衛星さえ無ければACの性能なら大気圏突入しても減速しつつ安全に降下できるとはいえ、万が一の事を考えたら出来ないと困る訳だし。

 それでジャミングで無効化出来ない封鎖衛星のレールキャノンについては……うん。VOBに左右上下へのクイックブースト機能を搭載したことで解決としたらしい。

 当たらなければどうということはないってさ。

 

 なあ、これ絶対に空力狂いのシュナイダー社が噛んでる案件になってるよな。

 ご友人に一体なにがあったんだ?

 

 結果的にミッション完了の合図としてバートラム旧宇宙港をぶち抜けていたから問題は無かったようだが、任務完了までは危険性抜群の兵器に親友が乗せられていた事実に自分は不安で不安で仕方がなかった。

 

 それもこれも全部封鎖衛星が悪い。

 そういうことにした。

 

 それで話は戻るが、ベリウス地方の壁はそびえ立つグリッドが倒壊する大惨事に巻き込まれることによって拠点としての価値を失った。

 

 ただでさえルビコンの空を覆い尽くさんとする超巨大グリッドを僅かとはいえ地上に解き放ってしまった訳だが、実を言うとこの作戦の実行に対して自分は滅茶苦茶抗議した。

 

 だって、派手には派手なんだけど自陣の土地へのダメージがヤバすぎるじゃないか。

 

 万が一に備えてこっそりグリッド落としを出来るように、ジャンカー達に工作をしてくれと指導してたのは自分なのだからそれを言える立場でもないことは棚に上げておく。

 

 解放戦線のミドル・フラットウェルが言うには『老朽化し人がほぼ住んでいないグリッドを解体することは公共事業としての雇用創出にもなる』そうだが、自分からすると様子のおかしい作戦にしか見えなかった。

 

 恐らく自分には想像もできない高度な政治的駆引きの末にある作戦なのだろう。でも、だからってこんな解体の仕方があってたまるか!

 

 一個人のジャンカーとしての自分がそう絶叫していたが、逆にドーザーを束ねる立場としての自分はこの作戦のことを評価せざるを得ない。

 それは、ドーザーやジャンカーに対する支持を集めるのに極めて有効な手段だからだ。

 

 だってそうだろう。

 割と良識のある自分がやらないようなヤバい手段ってことは、それだけ頭のおかしいドーザーどもにとってはクリティカルに目を引く偉業として映るはず。

 発案したオーネスト・ブルートゥが狂人であることは既知の事実だが、まさかフラットウェルさんまでこの作戦を推進するとまでは思ってもみなかった完全なる予想外だった。これもドーザーとの融和政策の一つなんだろうね。

 

 それでも、大義名分の常識を超えた事象でベリウス地方にいる勢力を行動不能にするとしてもさ、こう……他にやり方があっただろうに。

 

 選んで殺すのは割と上等だと思い知った。

 

「ようやく出てきたか」

 

 散髪的に出撃してくるヴェスパーではないACを砲火が蹴散らし続け、ようやく本命がおいでになったようだ。

 

『行くぞ』

「来たぞ!」

 

 砲撃の雨を縫うように突貫してくる藍色の機体、ロックスミス。神懸かり的なほど最小限の動きによる回避で被害を抑えてみせたV.Ⅰフロイトがこちらに迫りくる。

 そろそろ自分達も動かなければ。

 

 作戦の確認として、臨時で構成されたチームに指示を出す。

 

「良いか、V.Ⅱスネイルは確実に殺せ。脱出しても逃すなよ」

 

『言われるまでもないっす。死体すら残さず殺してやる……!』

「それで良い。後始末は解放戦線の仕事だ。オキーフさん、ラスティさん。作戦への協力、感謝します。必ずスネイルを殺してください」

 

『はぁ。贅沢を通り越して豪壮な人選だな……』

『だがスネイルは伊達にヴェスパー上位じゃない。必殺を期すなら妥当な判断と言えるだろう』

 

「ありがとう。んで、次は」

 

『やってやる……! この時の為に、訓練を受けて来たんだ!』

「そんなに力み過ぎるなよ。お前は最前線でスネイルを殴りに行く係なんだからさ、あとは勝手に他の奴が合わせてくれるし」

 

 V.Ⅲオキーフ、V.Ⅳラスティ、ナスティ・ロビン、テストの四人はスネイルを確実に殺す為の別動戦力だ。

 

 ヴェスパーの二人は作戦開始時刻の直前に機体を奪取して寝返ってきてくれたが、二人とも細かい作戦は自分に聞けとフラットウェルさんから言われているらしい。

 知らない内に丸投げされた自分は気を紛らわせる為に松の葉をかじった。

 ルビコンの松の葉はエグ味が強い。ビタミン補給も兼ねてアレルギーで荒れがちな胃腸を整えるために食べていたのだが、いつの間にやらこの独特のエグ味が癖になってしまっている。

 

 話が逸れた。

 

 特にロビンは、アーキバスへの復讐心に基づくV.Ⅱスネイルへの過剰とも言えるほどの戦闘シミュレーションを熟している。

 彼女単騎でも真正面から勝てる見込みだが、念には念を入れて確実に殺害するための過剰戦力を投入した。なにが起きるのかわからないのが戦場というもの。

 相手がそれ相応に強いと予想されるならば、自分も手段は選ぶことはない。

 

「ノーザーク、コールドコール、ブルートゥは俺に続け。確実にフロイトを潰すぞ」

 

『ふむ、突撃してきたか。懸命なことだ』

『なるほどこいつがV.Ⅰか。確かに風格が滲んでいるようだが』

『私は彼と上手に踊れるでしょうか? 心配だ……けれどそれより、ずっと楽しみです』

 

 実力から考えて自分一人でフロイトを倒す事ができる筈じゃないかって?

 実力を散々豪語した所悪いけど戦いは基本的に数がものを言うんだよね。もちろん純粋な技量比べも大好きなんだが、これはそもそも我儘が許されない集団での作戦行動。

 

 この戦乱を統括するベスティー・ナイトシェイドの役割には、既に突出した単騎戦力を求められていないというだけの話さ。

 

 思えばこの変な奴らを味方につけることができるなんて、妙な縁があったものだ。

 

 詐欺師、殺し屋、人格破綻者。

 ドーザーとはまた別種のおかしい奴等だが、どうしてかわからないけど不思議とウマが合うというかなんというか。

 まさかこういった決戦で僚機をしてもらうことになるなんて過去の自分に言った所で信じて貰えないだろう。

 

「D&J、道を開け。お客様のお通りだ」

 

 砲撃を潜り抜け、うちの馬鹿どもに喰らいつかんとするロックスミス。

 そうされては困るので、D&Jの機体群の陣形を左右に割らせてこっちにフロイトを迎え入れる。

 

『お前だな?』

「作戦開始」

『素敵な貴方! さあ、楽しみましょう!』

 

 初撃はブルートゥだった。

 分裂ミサイルと拡散バズーカによる回避が少し面倒な弾幕を吐き出して、火炎放射器を撒きながら後退していく。

 

 対するフロイトは至極冷静に、火炎放射器の被弾を最小限に抑えつつオーネスト・ブルートゥの愛機ミルクトゥースへと迫る。

 

 無駄のない、わかりやすい動きだ。

 基底にあるのはまるで対戦のような、ヒットアンドアウェイだろう。

 その歩様を乱すべくブルートゥの上をとってバーストマシンガン2丁による牽制を加える。

 

『随分と退屈そうだ。思った以上に上手くいき過ぎた、そう思ってるんだろう』

「降参するなら今のうちだ。お前を必ずしも殺す必要はない」

 

『選んで殺すのはそんなに上等か?』

「上等さ。秩序無くして自由はありえない」

『ドーザーとは思えない言動だな』

 

 敵機のアサルトブーストによる突撃に合わせ、ブーストキックでブルートゥへの接近を阻止。

 間髪入れずに横やりが入り、ビタープロミスの多連レーザーとデッドスレッドのチャージENライフルが入る。

 スタッガーなど関係なく威力が高いエネルギー属性の攻撃だ、これで既にロックスミスのAPは5割削れて一つ目のリペアキットを使用した。

 

「なあフロイト、なんで逃げずに来たんだ?」

『つまらないだろ、そんなこと』

 

『これは傑作だな。企業陣営の最強がつまらないとぬかすとは』

 

 好機と見たノーザーク太陽を覆うように横入りし、両手に持つレーザーハンドガンとバーストライフルを乱射しながら拡散バズーカを放つ。

 幾つかの被弾、しかし決定打となる拡散バズーカはクイックブーストによる回避挙動のせいで外れた。 

 

『引け、借金王』

『ノーザークだ。間違えるな殺し屋』

 

 フロイトのレーザーブレードを盾で受けながら後退するビタープロミスと、逆関節特有の跳躍性能で入れ替わり飛び出すデッドスレッド。

 

 魔法陣のように描かれるレーザーライフルとレーザーショットガンによる弾幕は完全な回避が困難であり、更に加えて派手な青色に紛れて二種のミサイルが陰から襲い来る。

 

『嗚呼、貴方は決断したのですね。友が信じる真心を、その刃に込めて!』

『中々わかるやつもいるじゃないか』

 

 それに対応できるのは流石アリーナNo.1というべきか、しかしそれでも多方向から多くの機体から襲い来る弾幕は致命的な綻びを生む。

 スタッガーという強制停止。

 

 再起のためロックスミスが張ったパルスアーマーを、ミルクトゥースのアサルトアーマーが膨らみ消し飛ばす。

 AP残り7割。

 再度スタッガーに陥ったところにポテイトーズが青い連刃を振りかざして喰らいつけば、あっさりとロックスミスは致命的な損傷を受けて沈黙した。

 

「ブルートゥ」

『花を手向けるのですね?』

「いや、足をやってくれ」

『不憫だ……』

 

 油断なくミルクトゥースの鎖鋸がその両足を切断する。こうまですれば再起動もないだろう。

 イレギュラーって呼ばれるようなやつは、往々にして異常な現象を引き起こす。

 ジェネレータの破損を確認して、念の為通信を行う。

 

「おい、生きてるか?」

『死んださ』

 

 予感は的中した。

 

『つくづく悪運が強いのか。それとも生き汚いのか』

『V.Iフロイトは死んだ。それで良いだろう?』

 

 珍しく呆れかえった声でコールドコールが愚痴のような皮肉を返す。それに対するフロイトの答えも実にふてぶてしいもの。

 普通、脱出もせずにジェネレータが爆発して生き残るか?

 

「まさか心身共に機械化してたりは」

『アリーナの通りだ。お前もわかってるんだろう? それよりハッチが歪んで開かない。助けてくれ』

 

「お前天然のドーザーか?」

 

 状況わかってんのか?こちとら決戦中なんだが?

 ACの手元をチャカつかせながら問うが、自分とフロイトの間にノーザークが割って入る。

 

『親友、ここは私に任せて先に征け』

『なるほどな。お前とコレは相性が悪いということか』

 

 コールドコールの言葉がストンと腑に落ちる。

 いつものように激昂するでもなく、会話の始まりからひたすら募るこの不愉快な感覚。

 爆発することはないだろうが、なるほど。

 

「OKわかった、俺は手薄なヨルゲン燃料基地に行く。それとフロイト」

『なんだ?』

「今度シミュレータ100連戦な」

『望むところだ』

 

「じゃあな! くたばれバカヤロー!」

 

 こういうのは直接口にして吐き出しておくに限る。

 どうにも自分、真っ当な立場の自分勝手なやつが嫌いらしい。同族嫌悪かな?

 

ーーーーー

 

 ヨルゲン燃料基地。

 前に訪れた時とは様相が様変わりして所々未だに炎を燻らせている。

 いつぞやのカタフラクトと見間違えた岩がある渓谷を覗き見るが、付近にはMTの残骸が散乱している。

 渓谷を飛び越えて暫く行けばまた谷場。足場から落ちない程度に覗き見るが、相変わらず動いているMTは皆無。そこには燃料タンクすら残らない徹底的な破壊の痕跡が残されていた。

 

「酷い燃え方してるな。こりゃ燃料も残らなさそうだ」

『友よ』

 

 気配なく表れる軽量二脚。

 機体に刻まれた鏡文字の『忍』は、正しく解放戦線の忍者であるAC『シノビ』によるもの。

 待って、今どこに居た?怖いんだけど??

 努めて冷静を装って六文銭さんに話しかける。

 

「六文銭さん。加勢に来たけど遅かった?」

『然り。我善く吾が浩然の気を養う』

 

「凄い、こんなに早く勝ったんだ! じゃあヒアルマー採掘場の加勢に行くね?」

 

 本当にこの短時間で勝ったのか。

 幾ら数的有利で先に攻め込んでいたとはいえ、手際が良すぎじゃないか?

 

 そして戦場でなくなったのなら、この場に居る意味もない。踵を返して長距離巡航ブーストを起動しようとエネルギーをチャージしていると、物陰から現れたACから声をかけられた。

 

『待て。そこのお前、ベスティー・ナイトシェイドだな?』

 

 仄暗い青みがかかったエルカノ機が姿を現す。

 一際目を引くのは車椅子のようなその脚部『EL-TL-11 FORTALEZA』と、4連ハンドミサイルと二連グレネードキャノンを両手両肩に背負った武装。

 そして会った覚えのない、どこか闇のありそうな声。

 

「リング・フレディさん?」

 

 解放戦線所属パイロット、リング・フレディ。アリーナランクはDランク21位、サム・ドルマヤンに近侍する……いや、それは今は関係ないだろう。

 

 確か事前のブリーフィングではルビコン解放戦線が誇る伝説の戦士にして軍事指導者サム・ドルマヤンと共にV.Ⅴホーキンスを相手する手筈だったはず。

 これでは本当に、ヨルゲン燃料基地での戦闘は終わっていたらしい。

 

 不確定要素が多い戦場だったが、アーキバスの占領下にあったので封鎖機構ほどの脅威ではなかったということか。

 

『帥父がお前と会いたいと仰っている。心配は無用だ、加勢には我々が行こう』

「えっ、あのサム・ドルマヤンが?」

 

 マジで?

 

『あちらだ、早く行け。帥父がそうお望みだ』

『已むべからざるにおいて已むる者は、已まざる所なし! 厚くする所の者において薄くするは、薄くせざる所なし。その進むこと鋭き者は、その退くこと速やかなり』

 

『……行くぞ、六文銭』

『鞍上人なく鞍下馬なし。人機一体の猛攻を見よ!』

 

 恐らく励ましのような言葉を残して去っていく二人。

 えっ、マジなのか。

 あの伝説のドーザー、サム・ドルマヤンに会えるのか。

 

 フレディさんが示した方向は、かつて空飛ぶアイボール砲台が存在したヨルゲン燃料基地の基地部分。

 

「仕方ない。行くしかないな」

 

 腹を括って機体を前進させる。

 こんな戦争中に会いたいって、戦争前にもこれからも会えただろうに一体どうしてなんだ?

 思いつくのは戦乱に乗じてこのナイトシェイドを抹殺したいとかだが、それならばリング・フレディと共に殺しに来れば良い。

 

 わからん。

 まるでドーザーのような脈絡のなさだ。

 

 基地の道を登るとそこには、両断されたアーキバスの4脚ACらしき残骸の上に腰掛けた赤いACの姿がある。

 

 自分のPotooooooooと同じ、全身をBAWSの旧型パーツであるBASHOで纏めた無骨な機影。

 間違いない。サム・ドルマヤンの乗機、AC『アストヒク』。古代地球において豊穣の女神であった名を冠するそれは、アーカイブで見た機体と寸分違わない。

 アイビスの火に見舞われたルビコニアンを導いた、かつての伝説がそこにはあった。

 

「こんにちは。サム・ドルマヤン」

『灰被りて我らあり。警句を知り、そしてその真意を伝えたお前に問いたい』

 

 厳かに、年老いてなお衰えぬ声。

 かつて誤った形で広まった警句を彼は唱えた。

 

『ルビコニアンにしてルビコニアンならざる者よ、答えるが良い』

「なんなりと」

『お前はこの先、どうするのだ』

 

 ああ、なるほど。

 理解したわ。

 

「戦乱が収まったらルビコンを出ます。あまり長居すると命に関わる体質なので」

『そう、なのか』

 

『人とコーラルの共存。一方的に人の都合に合わせるものとはいえ、それを現実としてみせたのだろう。なにか、個人としてルビコニアンに望むことはないのか』

 

「いや、俺としてはジャンカーやドーザーがいきなり排除されなければ良いんですよ。ここで言ってしまうのはなんですが、破落戸を社会に取り込めってのは中々に我儘だと思ってるんですがね」

『違う、そうではないのだ若人よ』

 

 親切、いや老婆心か。

 サム・ドルマヤンが言いたいのは報奨の話。過分な評価をいただいて恐縮だが、どうやら自分はこの人に高く評価されているらしい。

 

『私はお前に、ルビコニアンの可能性を見たのだ。これであればこの星の未来を託せると』

 

 それでこうやって勧誘をかけられていると。

 

 どうしたものか。相手が滅茶苦茶パワフルな人とはいえ、お年寄り相手はやりにくいんだよな。

 人生経験の豊富さと老人の頑固さのせいで、優しく諭そうとしたらいつの間にか丸め込まれる。

 

 正直に白状すると、この提案は自分にとって魅力的な提案ではある。

 自分も人間だ。人並みに名誉欲はあり、歴史に名を残したいという願望は存在している。

 

 この対アーキバス戦乱で表舞台に立った以上、このまま指導者に近い地位につけば、後は流れに身を任せて歴史に名を残す偉業に携わることができるかもしれない。

 もしかすると、更なるドーザーの地位向上も実現できるかもしれない。

 

 でも、それだと駄目なんだ。

 

『この星はお前にとって、不足なのか……?』

「……出てこい。フラットウェルさん」

 

 上手い手を使うものだ。

 尊敬している相手からの懇願。

 この先の未来を嘱望される若者特有の全能感と、伝説の人物を上回っているという状況にあるという優越感。

 これが普通の人物なら、ルビコンの為になにかをしてやりたいと思うかキッパリと断るかをしていただろう。

 

 だけど、ここに居るのはドーザーだ。

 

 エルカノの軽量二脚、ミドル・フラットウェルの乗機ツバサが姿をあらわす。

 

『先に言っておこう、こちらも同じ考えだ。お前の能力を手放すには惜しい。今すぐ指導者の立場を与えようとしている帥父ほど性急ではないものの、私の下で政務を学ぶことでゆくゆくは次代を担う一翼となって貰いたい。だがそもそも……』

 

『巧遅にすぎる。迫るコーラルの破綻を防いだように、この戦いで叙しておかねば機を逃す』

 

『コイツはあまりに行動を急ぐ悪癖がある。裁量を与えればそれで事足りる。しかし……』

 

 どこまでもこっちを持ち上げてくる甘い言葉。これでこの二人に弁舌で敵うことはないと理解できた。

 コイツら、クリティカルに自分の弱いところを攻めてきやがる。褒められることに弱いと知っての所業か?

 

 でもさ、これアレだよな。

 コイツ自分をナメてるよな?

 フラットウェルさんが時々軌道修正を入れようとしてるってことはそういうことを求められてるんだな?

 

「張り倒すぞ。人が優しい顔してまともな奴のフリをしてやってんのになんで不意にするんだ」

 

『と、こうなる。諦めろサム、この男は根本から乱世の奸雄だ。彼が大人しく身を引くだけマシと思え』

『ミドルよ。謀ったな』

『最も通用する策を教授した上で、そして断られただけのこと。そもそも納得して作戦に乗ったのはあなただろう』

 

「フラットウェルさん。誰が話したかは秘密にすることって条件にしたよね」

『秘密にしていたのだがな。お前が派手に動いたおかげで状況証拠から推定されてしまった』

「うーん、これは仕方ないかな」

 

 一応、自分という人物の特定がし難いよう条件付けをしておいたが、興味を持って調べてきたサム・ドルマヤンさんには効かなかった様子。

 

 誰が話したかは秘密にすること。この条件は不特定多数の人間に自分の名前が知れ渡らないようにする為の措置だったので、さしものフラットウェルさんとはいえ上司にあたる帥父にバレるのは仕方といえば仕方ないのかもしれない。

 

 秘匿回線にフラットウェルさんからメッセージが送られてくる。

 

『すまない。帥父は随分とお前を気に入っているようだ。お前が何度か思いきり突き離してやれば頭も冷えるだろう』

 

 なるほどなぁ。

 突き離す、ねえ。

 

『……まだだ』

「殺すぞ」

 

 なおも食い下がろうとする老爺を率直に脅迫する。

 勘弁してくれ、なんで自分がこんなことをしなくちゃいけないんだ。尊敬してたんだけどなぁ。

 こういう時に無駄なことするの大嫌いなんだよ。

 それに憎まれ役なんてさ。

 

『すまないベスティー・ナイトシェイド。戦争中に突然茶番に付き合わせたこと、解放戦線を代表して謝罪しよう。だがこれでこの老人を説き伏せることができる』

 

 求められた役割の為に、普段は癇癪として漠然とさせているそれを集めて言葉に集約させて解き放つ。

 悪いフラットウェルさん。こんなこと俺なんかに求めてきたアンタが悪いけど、それでもちょっと同情するぐらい酷い事を言うわ。

 秘匿回線に一言、謝罪を表現する単語を送信しておいた。

 もう遠慮はなしだ。

 

「あのさぁ、フラットウェルさん。確かに俺はサム・ドルマヤンさんを尊敬していたし、フラットウェルさんも頑固そうなこの人を説得できるなら俺だと思って呼んだんでしょ? 勘違いしないでほしいんだけど、このこと自体を責めるつもりはないよ。フラットウェルさんが苦労していることは理解しているし、普段から迷惑をかけあっているわけだしね。でも、俺はちゃんと筋を通しあって良好な関係を築けるように努力していたけど、あんたも事前に一言断りを入れることぐらいできたはずだよ。この辺に通信妨害を入れていてもそれぐらいの配慮はあって当然だ。いくらそこの英雄がドーザーだったと言っても所詮他人であることには変わりないし、こっちにだって親友を選ぶ権利ぐらいある。それにそもそも俺はルビコンの外で競馬観戦するのが夢だってちゃんと言ってたよね。なのに幻滅させる醜態を晒す英雄に会わせる事に筋も通さず夢を妨害する事態を助長するなんて、互いの尊重ってものが欠けてるし自分なら大丈夫って甘えがあるんじゃないかなぁ。それで邪魔するなら俺と敵対するってことと同義で信頼関係を棄損する悍ましい行為に他ならない。それは俺という個人への宣戦布告だ。もしその気が無いというなら選んでくれフラットウェル。自己満足で二人して殺されて解放戦線は愚か同盟も瓦解させるか、俺という個人を尊重して一切の妨害行為をしないと誓うか。ビジネスパートナーとしての縁で警告しておくけど、俺は俺達を必要最低限すら尊重する気の無い奴に対して一切の人権を認めない。その一片でも金になれば上々、ならないなら肥料にすら使いにくい土以下の土人とすら呼ぶとも烏滸がましい廃棄物なんてなんの価値もない。でもお前らはそうじゃないよな? ちーがーうーよーなぁ!? 大体なんでこんなことを俺がし続けなくちゃいけないんだ。独立傭兵なんて人殺しだけどそれなら俺みたいな子供まで人殺しをする世の中なんて間違ってる。子供が率いる虐殺を助長し続けることでルビコンを解放した分際で、後始末まで押し付けるなよこのアホどもが。俺はなぁ、こんなことでしか解決策を思いつかなかった自分のことが一番嫌いなんだよ。だからもし俺がなにかの弾みで為政者になったらこう言うしかないんだ。今まで通り、『俺の我儘の為に死んでくれ!』ってさぁ。誰が一番に死ぬべきかはわかりきってるのになんでそれをやり続けなければいけないわけこのボケが。殺す殺してやろうか解放戦線テメェらが不甲斐ないせいで親は俺を捨てざるを得なかったし、俺も一歳から死ぬような思いをして生きてきた。拾ってくれた周りも似たようなものだからせめて解放までの希望になれるようドーザーの為に戦ってきたってのにそれでなんでお前らの尻拭いまでしなきゃならない。お前はまだ人を殺さないといけない、これからも人を殺し続けろとなんて言っていて、それをなんとか飲み下して八つ当たりを堪えていたってのによ。俺ちょっと怒っちゃったよ」

 

 場に痛いほどの沈黙が降りる。

 

 はぁ、言ってしまったなぁ。

 こういう勧誘に対する返答なんか『知るかバカ!』で済むことなんだけど、向こうがその詳細を要求してくるものだからなるべく頑張って言語化してみた。怒りが伝わればそれで良いはずなので捲し立ててみたが、ノーザークならもっと端的かつ格好良く決めたのだろうか。

 

 実のところ、はえー自分ってこんなこと考えてたのかってのが個人的な感想だ。

 補足しておくと、自分は語気ほど怒っている訳ではない。ちゃんと自分が行動した結果は自己責任だと理解しているし、解放戦線もちゃんと頑張ってくれてると評価している。

 人を殺すのは当然嫌だけど、それが一番嫌ならこんな戦争は起こさずに一人で自決するなり山奥で引きこもるなりしていたしね。

 

 だって、生きているのだから好き勝手しなきゃ損じゃないか。好きに生きて好きに死ぬとか言うだろう?理不尽に死ぬ世の中だし尚更好き勝手したくなるってもの。

 つまり自分の思考ロジックは、好き勝手したいというだけってことだ。

 

 でも、思ってもいない事を言ったからちょっと気分が悪いや。

 

「あの、もう行って良いですか? まだやり残した仕事が残ってるから、こんなところで休んでられないんですよね」

 

『……いや、ここで待っていてほしい。後始末は私達が行おう。やれるな、サム』

『……そうだなミドル、やってみせよう。こんな事を言えた身ではないが、せめてお前は安全な場所から我らの証明を見ていてほしい』

 

 あれ、なんか思ってた反応と違うんだけど。

 フラットウェルさん、アンタ自分で求めておいて流されちゃってませんかね?

 ドルマヤンさんもそんな決意に満ちた声でかっこいいこと言わないでくれませんか!?

 

 ん〜、まあ良し。

 可哀想だけど真面目にやればなるようになるだろ、今までもなんとかなってきたし!

 

「封鎖機構との決着がついたってレックから報告来てます。ロビンの方もスネイルを殺ったみたいなんで作戦はほぼ終了です」

 

『なんだと』

『馬鹿な、早すぎる』

 

 唖然とするルビコン解放戦線のトップ2。

 意気込んでいるところ悪いけど、自分が長々と話してる最中に報告来ちゃったんだ。

 だからそのなんか、ごめんなさい?

 

「すみませんでした。封鎖衛星の方も親友から降下成功の報告が来てますし、集積コーラルも良い感じに焼く準備が出来たと報告が上がってます。ほら、呆けてないでコーラル焼きに行きますよ」

 

『ミドルよ。この男はいつもこうなのか』

『先程にも言った、あまりに行動を急ぐ悪癖があるとはこういうことだ。まさか私もここまでとは思ってはいなかったが……』

 

「コーラルを焼けば今回の仕事は終わるんでね。長距離巡航の準備をしてください。俺達にも見届ける義務があるんで、先方を待たせると悪いです。さあ、ルビコンが安全になる証明をするぞ!」

 

 灼けた空にルビコンを導く者たちの噴射炎がたなびく。

 天上天下の狭間は広大で、しかし目的地は地底の底。

 

 そうだ。相棒にコーラルをお土産にしようと考えてたけど、どうせならドルマヤンさんに選んでもらおうかな。

 そんな益体のない計画に笑いながら目的地を目指した。




V.Iフロイト:バートラム旧宇宙にて捕縛。V.Ⅱスネイルが殿軍を編成する時間稼ぎとして交戦。単騎で戦場を7分強抑えた後に、ジェネレータが暴発しながらも奇跡的に生き残る。解放戦線に引き渡された。

V.Ⅱスネイル:バートラム旧宇宙港にて死亡確認。複数の『無人機』を伴っての遅延戦闘を展開。その最期は乗機オープンフェイスが跡形も残らないほどの激しい砲撃を受けたとされている。

V.Ⅲオキーフ:複数名のアーキバス情報局員を連れて解放同盟に離反。離反する際に、これまで密かに仕込んでおいた通信撹乱を行った。

V.Ⅳラスティ:ルビコン解放戦線に帰還。強化人間C4-621が占領した封鎖衛星によるバートラム旧宇宙港狙撃について、遠隔でスポッターとして誘導を行ってから参戦した。

V.Ⅴホーキンス:ヨルゲン燃料基地にて死亡確認。解放戦線の電撃的な奇襲を受け、V.Ⅷペイターとヴェスパー部隊をヒアルマー採掘場に逃がすべく足止めを敢行。その最期は背後から機体を両断されたことによるジェネレータの暴発だった。

V.Ⅵメーテルリンク:ベリウス地方「壁」跡地付近にて死亡と推定。グリッド大規模落下によって潜伏していた部隊が壊滅。崩壊した「壁」から逃げ延びたHC型執行機二機を撃退後、度重なる現地民からの襲撃を受け乗機インフェクションが擱座して以降行方不明。後日、闇市で遺体が競売にかけられたことによって死亡と認定された。

V.Ⅶスウィンバーン:故人のため省略。

V.Ⅷペイター:ヒアルマー採掘場にて死亡確認。V.Ⅴホーキンスより託された非戦闘員を率い、惑星封鎖機構に保護を求めようとしていたという機体ログが残っている。最期は封鎖機構と独立傭兵の交戦に巻き込まれ戦死した。
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