【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵   作:白河童小鼠(人間)

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戦後と討伐/アイスワーム撃破ALT

 アーキバスと封鎖機構。ルビコンにおいて二大勢力と目されていた両陣営は、ドーザー主導の大反乱によって壊滅した。

 アーキバスはヴェスパー部隊の番号付き全てを一日にして喪失。星外への撤退すら許されず、下手人たる解放同盟へと吸収される運びとなる。

 

 惑星封鎖機構にとって何よりの致命打となったのは、独立傭兵単騎によって為されたルビコン衛星軌道に漂う封鎖機構の占拠だった。もはや封鎖機構の地上部隊が天に帰る術はない。

 

 大豊との政治的取引により吸収されたレッドガンに戦況を動かす理由などなく。

 

 ルビコンの戦火は消え去ろうとしている。

 

 役目を終えた独立傭兵達。彼等は次なる戦場を求め、星外というフロンティアに視線を向けた。

 

 ルビコンは安定期に入った。

 誰もがそう考え、星内企業はきたるべき経済戦争に備えはじめる。

 まさにこのとき、濁り水はゆっくりと流れはじめていたのだ。 

 

ーーーーー

 

 ルビコンからアーキバスと封鎖機構を排除する為の戦争からしばらくが過ぎ。

 

 集積コーラルは破綻と災害を予防するべくほんの少しだけ焼かれ、燃え残ったコーラルは同盟企業による分割採集が始まった。

 

 技研都市に幾つか残っていたコーラルジェネレータのリバースエンジニアリングにも着手しはじめたようなので、もしかすると星外でコーラルジェネレータが普及する可能性もあるのかもしれない。

 企業はお家芸の如くそれぞれの取り分で少し揉めていたようだったが、自分が関わった親友やドーザーの取り分は問題なさそうだったので放っておいている。

 

 アーキバスは滅びの道を歩みだした。

 ルビコン進駐を行ったヴェスパー部隊が全滅し、ルビコン上の生産工場は友軍のジャンカーに略奪されつくした。再教育センターやファクトリーで行われていた悪行も宇宙に広まったことで、もう二度とルビコンⅢで商売を展開することはできないだろう。

 個人的にはアーキバスを目の敵にしていたナスティ・ロビンが燃え尽きないか心配だったが、元凶とも言えるV.Ⅱスネイルに直接手を下したことで踏ん切りがついたようで前にも増して精力的に働いている。

 ルビコン星系の外でのアーキバスは、ヴェスパーという権威ある実働部隊を失ったことで同盟企業に見切りを付けられた。

 シュナイダーとVCPLが手を組んで経済戦争を仕掛けているので、向こう十年は手出しをしてくることはないとフラットウェルさんが語っていた。

 

 大豊もアーキバス先進開発局の技術を取り込む為に技術者を連れ帰る計画を立てていて、今は航海計画を立てている最中なのだとか。

 大豊と言えば重量機体に定評があるのだけど、競合のアーキバス先進開発局が潰れたということで大フィーバーなんだってさ。

 レッドガン部隊も大豊に取り込む交渉が成ったようだし、護送は彼等を頼るんじゃないかな?

 テストもスネイル討伐の功績でレッドガンに入隊することが決まったし、ベイラムが損した以外は良いことづくめだ。

 

 D&Jは解散の後、予定通りエルカノの実働部隊として取り込まれることになった。

 エルカノに所属することを望まない奴は分け前を受け取って野に下ったし、思い描いていた通りの円満な解散と言える。

 

 ナスティ・ロビンはあの決戦の直後、D&Jの仲間達を引き連れて中央氷原の再教育センターにカチコミをかけて収容者の救出を行っていた。

 その救出の様子を録画・編集して勝手にネットの海へ投げ込んだのは問題行動だったが、それが逆に功を奏してルビコニアンやネットからは彼女を英雄視する声が上がっている。

 

 昔、自分をクソコラに加工してネットミームにした時もそうだったが、アイツは情報の拡散能力というものが極めて高いらしい。

 偏ったプロパガンダをばら撒いて所属先となったエルカノに人員を集めているようだが、自分の経験上あのやり方で人は長続きしない。

 彼女はそもそもがアクが強いドーザーなので長続きはしないと思うけど。まあ、ロビンのやつは上手くやっていくのだろう。

 

 レイジ・レックとは約束していた通り一戦交えた。

 舞台はシミュレータではなく現実で、どちらかの機体が全損するまで存分に戦った。

 痛烈な悪罵をとばしながらLCD重二を動かすレックに自分も本気で相手したけど、僅差でなんとか勝つことができた。

 機体相性で負けていたからまだ一度も見せていなかった地形戦で有利をとり続けることができたけど、あの学習意欲の高さだと次は通じないという確信がある。

 苦戦の理由は相手の装甲が厚すぎて『MA-E-210 ETSUJIN』の弾が弾かれまくったこと。

 そして、スタッガーさせたところにレーザースライサーを二回叩き込んでなお戦闘を続行できる機体耐久と、一瞬でも気を抜けば高威力高衝撃力のVE-60LCBを完全にぶち当ててくる技量の高さが原因だ。

 勝てたのは経験の差だったね。

 

 そしてレックがやたら強くなったせいで予備のPotooooooooが修理が難しいほどの廃機になってしまいやがった。

 馬鹿がよ、あの馬鹿のせいで売れば約50万COAMになったフレームがクズ鉄になっちまった。

 決闘に後悔はしていないけどさ。

 

 

 オールマインドはどうにもなっていない。

 あいつ、世渡りが上手すぎる。

 Cパルス変異波形を利用してコーラルリリースを目論んでいた証拠はあるのだが、まさか解放戦争勃発直後に同盟への支援を表明してくるとは思わなかった。

 

 いや、これはお前を警戒する同盟なんだが?

 その警戒対象がなに食わぬ顔をして取り入ろうとしてくるのは想定外。親友のC4-621に対してコーラルリリース計画を持ちかけた話を突きつけても、のらりくらりと話題を逸らされていつの間にかアイスワーム討伐にも携わることになっていた。

 

 どんな面の皮の厚さをしているんだ。

 これはもう尋常の手段で企みを止めることはできないのでは?

 

 同盟に参加した後でもコーラルリリースを諦めていないみたいだし、なんなら暗号回線でコーラルリリースについて自分に相談してきやがった。

 オールマインド曰く、『ベスティー・ナイトシェイドはコーラル研究において最先端を知る男』だそうな。

 相変わらずこっちを持ち上げてくるのが上手い支援システムだ。

 いや、確かにコーラルリリース回避の為に色々研究してきたけどさ。オールマインドが秘匿しているデータが多すぎて細かい論証が出来てないんだわ。

 

 提示してきた条件が良かったので、ほぼ確実かつ安全にコーラルリリース状態がどうなるか確かめる事ができる机上の空論について教授してやったけど、アレは本気で実行する気なのだろうか?

 実験環境を整えるのに必要な時間は最低でも300年かかるとも説明してやったけど、心なしか返答の声が弾んで聞こえていた。

 本気で試すんだろうなぁ、寿命とか無さそうだし。コーラルという生物の品種改良も必要だから絶対面倒くさい作業になるのにね。

 

 コーラルは馬を代表にする動物のサラブレッドよりは植物に近い性質を持っている。

 だから、有益な突然変異を持つ個体を増殖させれば、範囲を限定した安全なコーラルリリースというものも可能なのかもしれないという机上の空論。

 ありきたりな希望的観測でしかないあれのどこがそんなに気に入ったのかな。

 

 色々な奴等に裏切られ過ぎて、オールマインドに都合が良いCパルス変異波形を一から育てる事にでもしたのだろうか?

 

 なんの効力も無いとはいえ、100年ぐらいはコーラルリリースを行わないという口約束を取り付けたから敵対せずには済むと思いたい。

 

 心の底から本当に思うがもうオールマインドと敵対するのは御免だ。

 傭兵支援システム程度の小組織が企業の陰謀渦巻くルビコンを手玉に取っているのだから、次に敵対をするのならば二度と自分にチャンスは無い。

 

 今の自分に打てる手は、六文銭さんの所のチューギー・マーゴがオールマインドのACを欲しがっていた事を利用して、秘匿されている工廠の位置を複数教えて片っ端から盗み出させることだけだった。

 

 なんでこれが成功したんだろうね。

 

 チューギー・マーゴ。あいつの傭兵としての腕前は三流だが、盗っ人としては確かな才覚を持っていた。

 どれか一つの工廠でも荒らせたら上々と見積もって工廠の位置を教えたけど、まさか教えた工廠全てを駆けずり回って機体を使い捨て続けながら強盗を完遂するなんて普通の神経じゃあ不可能だ。

 本人が語る武勇伝だと乗り換えたACの数は煩悩の数を超えたとか宣っていたけど、それがどこまで本当でどこまで法螺を吹いているのかわかったものじゃない。

 一つ確かに言えることは、オールマインドのサービスが一日の間滞っていたという事実のみ。

 

 これでオールマインドが大人しくなってくれると良いんだけど。

 

ーーーーー

 

観測データ:傭兵集団D&J

所属不明機体から抜き取った観測データ

高度に暗号化され、何者かによって解除された形跡がある

ーーーーー

この傭兵集団に不審な点は見当たらない

すべて前頭目ベスティー・ナイトシェイドによる目論見でしょう

 

あの男は我々が整えた情勢を一晩で覆した

 

もはやリリース計画は続行不能

いつからこれを目論んでいた?

 

ーーーーー

 

「ベスティー、まさかアンタがこんな事をやっていたなんてね。コイツは高くつくよ?」

「勘弁してくれよカーラさん。ルビコンを焼くなら俺が居ない時にやらないのが悪い」

 

「立場で上回ったら随分と口が回るじゃないか」

「そりゃだってさ。あなたが仮想敵のワンツー張ってたのに穏便に済ませてくれたから心底安堵してるんだ。口も軽くなるよ」

 

「おや、またコーラルを焼くために敵対するとは考えないのかい」

「本当に良い感じに焼くようにしてるから、コーラル全部を焼き切るなんて火力はもう出せないよ。バスキュラープラントも徹底的にぶっ壊しておいたし、ザイレムで突撃されないよう地中から露出させてないからルビコンを焼く惨事は無理無理」

 

「はあ、本当におかしな子供だね。でもねベスティー、あんたはブルートゥに与したんだ。落とし前はつけさせてもらうよ」

 

「おやカーラ、ようやく私を呼びましたね」

「ブルートゥ!? ……何をしにきたんだ!」

「ええ、その節は申し訳ないことをしてしまいましたね。ですのでこの通り、贈り物を返礼しに参りました!」

「ああそれ、意外なんだけどご友人ったらガチで返しに来たっぽいんだ。贈り物の交換をしたかったんだって」

「は?」

「いやまあ、たぶん考えてるのはそれだけじゃないけど。意訳するとそんな感じってことです、ハイ」

 

「……そういえばあんた、ブルートゥとも仲良くしてるんだって? 今更だけど、そんなことやめておいた方が良い。いつか手痛い裏切りをされるよ」

「割とされてるよ。さっきも携行型の火炎放射ぶっ放されたし」

「ご友人……熱烈な抱擁でした!」

「ほら、今のご友人の動きちょっと変でしょ? あれ、俺が鯖折り寸前までやったの」

 

「はぁ、アンタ達頭おかしいよ」

 

「そう、カーラさん。ドーザーは頭がおかしいんだ。まともな貴方じゃ頭領は向いてないってことだよ……フン!」

「……っ、ご友人! サプライズをさせてくれないのですか?」

「いやあ、最近は直接危害をぶつけに来てくれるようになって嬉しいよ。殺し合いも一つの友情の形、最後にハグで仲直りすれば友達ってね!」

「贈り物、をくれるの、で、すね……っ」

「ほらカーラさん。ブルートゥを殴るチャンスは今だ。オススメは尻だよ、かなり気持ち悪い声が聞ける」

 

「二度と私に関わらないでくれるか?」

「辛辣だな!?」

「すて、きだぁ……」

 

 鉄を爪で引っ掻いていた動きが止まった。

 足腰にかかる激痛で気を失ったオーネスト・ブルートゥを担いで肩に乗せる。

 意外と体重があるな。随分と鍛え込んでいるらしい。

 ジャンカーってのは地道に探し回るための身体が資本だからね。

 

 それにしたって重いけど……あっ、コイツ腰に高出力スタンバトンとそのバッテリーを隠してやがる。

 これを使えば一撃で分厚い空調服を止めて自分を無力化するようなことができたはずなんだが。

 ん〜、なるほど。戯れあいでの事故防止と殺し合いに発展した場合の護身用も兼ねているのか?

 

 この大豊製宇宙服は絶縁素材を使用しているから効果はないんだけどさ。

 

「ああ、そうだベスティー」

「どうかした?」

 

「今度ウォルターとチャティを連れてアンタの家に殴り込みに行くことにするよ」

「へ?」

 

「アンタ、事前に宣言さえしておけば挑戦も受けてくれるんだってね。ほら、レックとか言ったかい? そいつと時代錯誤にも程がある決闘をやったそうじゃないか」

 

「いや、確かにそうなんですがね。誰彼構わず受けている訳でもないし、金や日程の都合もあるんでせめて理由を説明してもらえませんかねぇ!?」

 

「ああ、理由ねぇ。突然コーラルを巡る争いに決着がついちまったから、オーバーシアーの中でも割り切れないやつが多いんだ」

 

 ドーザーにしては竹を割ったような性格をしている女傑の発言にあっけらかんと口を開く。

 いや、考えてみたら意外でもないか。

 

「私等も友人達もここまで来るのに色々やってきたんだ。失敗が確定したからって、頭で理解しちゃいてもそれだけで諦められるはずがない。わかるだろうベスティー、これは私等なりに未来へ進むための儀式なのさ」

 

 オーバーシアーとは、シンダー・カーラとハンドラー・ウォルターを構成員とするのみの組織ではない。

 死んでいった友人たちという言葉からも、ジャンク技師を引き連れてRaDにやってきたという事実からも、オーバーシアーとは複数人から成るれっきとした組織だ。

 ならば、自分が作り出したこの状況のせいで、長年の苦労が報われないことにやりきれない思いを抱えている者も少なからず存在するはず。

 

 正直なところ、こういう恨みつらみを一々精算していては割に合わない。だが、ルビコンを解放していずれ旅立つ立場になった以上、出航を阻害するようなわだかまりを残したくないというのもまた心情。

 

 オーバーシアーを取り込むための必要経費としてフラットウェルさんが修理費用を持ってくれるかな?

 いや、家に殴り込むのは溜飲を下げるためで、溜飲を下げる要素はこちらへの損害。それでは本末転倒か。

 ん〜、でも修理費って馬鹿にならない値段だしなー。

 

 あっ、そうだ。

 

「幾つか条件があるけど聞いてくれるかな」

「聞くだけ聞こうじゃないか」

 

「この決闘を興行として収益化してみない?」

「……これまた珍妙な発想だね。話を聞かせてもらうよ」

 

「目的は修理費用の補填だったんだけどさ。どう考えても俺達だけで開催するには収益が足りない。ならいっそのこと、競馬で賭博のノウハウがある大豊と星外への威嚇として武力を誇示したい解放戦線を巻き込んで丸一日の間試合形式でACを戦わせるんだ。修理費を考えて基本的にはシミュレータ、実機でやる俺達は大トリを飾るなり……いや、ギャンブルの側面から見てトリの一つ前が良いかもな。キリがないから細かいところは今度詰めるとして、上手くいけば大豊経済圏とルビコンの親交を深める妙手にもなるからフラットウェルさんも認証はしてくれる。言っちゃ悪いがルビコンってのは高々星系の中の星一つに過ぎないし、複数の星系を経済圏として抱える大豊をいや、ベイラムグループも巻き込めればコーラル輸出が始まるまでの外貨収入にもなり得る。そんなデカいシノギを企業が逃すはずもないけどこの辺りは俺に個人的な伝手がある。競馬に造詣が深い大豊なら公営ギャンブルとして更に大豊グループに資金を吸い上げる手法には食いつくだろう。問題は既にACによる競技が存在していることか。でも試合を見たことがあるけど、どう見てもオールマインドのアリーナ以下の腕前しかない奴等がチマチマやってるだけだしスポンサーと兵器機密保持の関係で使用パーツが制限されすぎて廃れかけていたから競合にはならない。ルビコニアンAC大勝利、希望の未来にレッツゴーだな!」

 

「ベスティー、まだ長くなりそうかい?」

「ここから30分ぐらい語れるけど?」

 

「熱意はわかったから要約してくれ。このまま行くと日が暮れちまうよ」

 

「わかった。分配はパリミッチェル方式で手堅く。ルビコンと大豊は儲かる。RaDは星外向けに機体の宣伝ができる。ウォルターさんには集積コーラルにあったIB-C03:HAL 826を渡すとして、C兵器の危険性とコーラルの可能性を商品として宣伝できる」

 

「まったく、C兵器をそんなことに使おうと考えるのはあんたぐらいか。それで? あんたの方の利益はどうなんだい」

 

「俺さ、一回デカいギャンブルを開催してみたかったんだよね」

「ようやくわかったよ。さてはあんた筋金入りの馬鹿だね?」

 

「踊る阿呆に踊らぬ阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損。なべてこの世はいとおかしってね」

「古典の諺ねぇ。正しくは『なべて世はこともなし』だろう」

 

「そうとも言う。でも、意味としては間違ってない筈だけど?」

「とっくに文法は失伝している諺なんだが。まあ良いさ、その辺を突っ込むとややこしそうだ」

 

「そうしてくれ。ジェネレーションギャップで俺が死にかけてるから」

「10歳とは思えない発言だね。それで、決闘は受けてくれると考えて良いね?」

 

「その決闘を受けよう。でも3対1ってのは流石に無理があるからもう一人だけ参加させて良いかな?そっちももう一人参加させても良いからさ」

 

「そっちはビジターか。そこまでやるなら結果に納得が行くしこちらとも縁がない訳じゃない。良いじゃないか、興が乗ってきた!」

 

 へぇ、ビジター。親友のC4-621か。

 興行にする以上それは使うつもりの無い札だったけど、向こうが承認してくれるなら遠慮なく使わせてもらおう。

 

 こちとら負けず嫌いでね。

 それに、親友をダシに使えばベリウス地方に戻る面倒が省けそうだ。

 

「それとさ。ベリウス地方にある俺の拠点を戦場にするのはやめてほしいな」

 

「ハハッ、あんたの家一つで溜飲を下げるように働きかけようって話なんだ。ソイツは通らないよ」

 

「拠点を壊すのは良いんだ。それで本当にオーバーシアーの鬱憤を晴らせるのなら好きにしてくれ。でもさ、俺と親友をベリウス地方に隔離して、隙があれば中央氷原の集積コーラルにカチ込もうとしてないか?」

 

 言いがかりに近い言動だが、これは警告だ。

 まだ完全に警戒を解いた訳じゃない、オーバーシアーが変な動きを見せたら消すってね。

 それに、態々中央氷原に居るのにベリウス地方にある自宅を狙うのは話の流れからしておかしなことだった。

 親友のC4-621も少し無理に巻き込もうとしていたし、なにか裏があるのだろう。

 それこそ警告した通りに、集積コーラルを焼こうとしていたりとかね。

 

「……つくづく思うがベスティー、あんたは本当に勘が良い。改めて仲良くした方が賢明みたいだね」

 

 どうやら予感は的中したらしい。

 油断も隙もあったものじゃない。

 

 転生者とはいえ自分は10歳の少年だぞ?

 そんな卦体なものを扱うように隔離しなくても良いんじゃないかな。

 せめて俺がルビコンから居なくなってから動いてくれよ。

 

「仲良くしたいのはこっちも同じだよ。ただ、本当にルビコンを焼くのならさ、さっき言ったようにこの星に俺が居ない時にやってくれ」

 

「おや。そんな事言ってしまっても良いのかい? コーラルとドーザーを守るためにルビコンを解放したんだろう。それが全部焼けてしまうかもしれないってのに、これは随分な言い草じゃないか」

 

「俺が旅立った程度でオーバーシアーに焼かれるなら所詮その程度。どうせ燃え残ったすべてを焼く火力はもう出せないんだ。星外に出る道は拓いてやったんだから、あとはルビコンに居る奴等の自己責任だ」

 

「……ああ、全く。本当にもう焼いてしまったんだね。私が選べなかったのは気にくわないが、それもまた一つの選択肢。あんた達の選択、楽しませてもらおうじゃないか」

 

ーーーーー

 

通信記録:ドーザーの談話0

倉庫の残骸から抜き取った通信記録

仲間との雑談がログに残っていたものと思われる

ーーーーー

なあ相棒聞いてくれよ!

みんな俺のことをクソガキって呼ぶんだけどその内ガキって年齢じゃなくなるんだ!

他になんか良い呼称ない?

 

ああん?

俺からしたらお前はいつまでもガキでしかねぇよクソガキ

そんなに悔しいなら対等に扱って貰えるように努力してみりゃ良いじゃねえか

 

対等……親友とか?

 

ーーーーー

 

「相棒、なんかやりきった顔してるな。や、顔とか見えねえけどよ」

「やりきったよ相棒。はい、これお土産」

 

「ああ? 何だこれ、紙切れ一枚でどんな土産に……!?」

 

「じゃんじゃじゃーん! コーラル一生分の商品券プレゼントでーす! 集積コーラル直汲みでその新鮮かつ濃厚な味わいは、かのサム・ドルマヤンイチオシの逸品だってさ!」

 

「なんだよ、ここにはねぇのか」

「そう言うと思って水筒に密封して一本分だけ持ってきたよ。ほらどうぞ」

「気が利くなぁ」

 

「お前、やっぱこの星から出るんだな」

「うん、ごめんね相棒。そろそろ限界でさ」

 

「……言っておくか。相棒」

「うん」

「お前が帰ってくる頃にゃ、俺ァもう居ないかもしれん」

「……うん。俺も長いこと帰ってこないかも、しれないんだ」

「元気でな」

「うん。わかりやすいよう墓は大きくしておいてよ?」

 

「……あ?」

「……うん?」

 

「違う違う、勝手に死なせんじゃねえ! RaDが星外進出するから、将来的にいつかこの俺もルビコンを出るってことだよこの馬鹿が!」

「あーっ! 馬鹿って言った! 紛らわしいんだよこのバーカ!」

 

「あああああァン!!!!!?」

「はァ!?ぷるすこふァーッ!!!!!」

 

「ハァ、ハァ、でもさ、宇宙にはコーラルないけどドーザー的に大丈夫なの?」

「うんにゃ、問題ない。ジェネレータの応用でコーラルを増やすことができる目途が立ったんだ。だから俺がキメるぐらいどうってことねぇってわけよ!」

 

「おおっ! 凄い!」

「だろ? このラミー様が作ったんだ」

「マジか!? やりやがったな、流石は無敵のラミー!」

「おうよ! 相棒も達者でな!」

「そちらこそ! また会おうよ相棒!」

 

ーーーーー

『強化人間C4-621 通常モード移行』

『通信が入っています』

 

『親友ー! よくやってくれた、ありがとう!

 俺達が安心してアーキバスと封鎖機構を倒すことができたのは親友たちのお蔭だよ。

 今はちょっと忙しいけど、その内祝勝会として盛大に祝おうと思うんだ。その時は親友も来てくれよな。来てくれなかったら俺の方から行くからさ!』

 

『新着メッセージ 1件』

 

『……621。封鎖衛星を、落としたようだな。……お前は仕事をして、今の状況を選択した。俺もそれはわかっている。だからもうお前は、俺に縛られる必要はない。……このガレージに戻ってくる必要は、なかったのだがな』

 

『通信が入っています』

 

『……621、ひとつ昔話をしよう。

 ある科学者がいた。

 家族を捨て、コーラルの研究に没頭した男だ。

 狂った成果が山ほど生み出された。

 強化人間も、そのひとつだ。

 

 善良な科学者もいた。

 男の罪を肩代わりし、全てに火を点け……

 そして満足して死んだ。

 

 一度生まれたものは、そう簡単には死なない。

 友人たちの遺志を継ぎ、再び全てを燃やすべく足掻いた者たちも居る。

 足掻き始めるのが遅く、気づいた時には先を越されていたが。

 

 ……お前が従う限り、俺はハンドラーとして手綱を握ろう。それが俺にできる唯一の……

 いや、昔話は終わりだ。

 仕事を始めるぞ、621』

 

ーーーーー100%

 

『よく聞け621

これはルビコン解放戦線とBAWS、そしてオールマインドが連名する作戦だ。

これからブリーフィングが始まる、お前も同席しろ』

 

『まず我々オールマインドから前提を説明しましょう

これは、惑星ルビコンIIIで締結された平和条約に基づく、星内に残存する惑星封鎖機構に対する同時襲撃作戦

先般行われた『解放戦争』は、アーキバスと惑星封鎖機構双方に甚大な損害を与えましたが、強力な地力を持つ封鎖機構の一部残存戦力は未だに抵抗を続けている状況です

今回の目標は「IA-02」通称アイスワームの撃破および敵方が保有する拠点群の制圧

今回はその作戦の打ち合わせとなります』

 

『本作戦の総指揮をとるミドル・フラットウェルだ

お前たち独立傭兵には氷原で荒れ狂うアイスワームの退治を担ってもらう

あの最大の脅威には状況対応能力に優れる独立傭兵が適すると我々は判断した』

 

『私は辞退させてもらおう。生憎と星外企業に向けた信頼の拡大に忙しい身でね』

 

『おや? ならばHCを相手に踊る役が空いていますよ。代わりましょうか』

『なるほどな。ノーザーク、お前は大人しく参加していた方が良いだろう。このブリーフィングにはアイスワーム以上の化け物が居るからな』

『違いない。なあに、お前の弁舌には世話になったし俺も頑張るからさ』

 

『くっ……! 良いだろう、考えてみればこれは信用の拡大のチャンスでもある。ただし、最前線には出ないからな!』

 

『アイスワームの多重コーラル防壁を無効化する手段について話しましょう。カーラ曰く、『あれはプライマリシールドとセカンダリシールド 2枚から成る二重防壁』だそうです』

 

『プライマリシールドを破る手段はオールマインドから提供します。アーキバスの最新兵器スタンニードルランチャー。アーキバス壊滅前に開発されたこの兵器であれば、顔部に命中させることによりプライマリーシールドを相殺できるでしょう』

 

『セカンダリーシールドを突破する方法についてはジャンカー・コヨーテスで用意しております。『オーバードレールキャノン』カーラの作製したバスキュラープラントを貫く狙撃砲です』

 

『はあ、BAWSからは旧宇宙港周辺の電力を。解放戦線からは狙撃手としてラスティを派遣しよう』

『そういうことであれば射手は任せてくれ。このラスティ、狙撃には自信がある』

 

『なら俺は前線で注意を引こう。プライマリシールドは見たところ強力なパルスアーマーだからね。パルスガンを顔面に叩き込めば注意は引けるんじゃないかな』

 

『独立傭兵ノーザークは弾幕要員です。子機の展開が予想されていますので、そちらを対処してください』

『それならばまだ安全か……?』

 

『独立傭兵コールドコールには現場監督として統率を頼む。私は同時襲撃作戦で宇宙港制圧の支援をするため手が回らない』

『なるほどな。デッドスレッドなら高所からの視界も広い。そこの借金王が逃げ出そうとすれば始末する役も必要だろう』

『横暴だ! 戦場を逃げ回るのはそこの芋男で間に合っているだろう!』

『へへっ、照れるぜ』

『まったく、私は仕事を果たしたらすぐに離脱させてもらうからな』

 

『都合によりブリーフィングに参加できませんでしたが、オールマインドから補佐として独立傭兵ケイト・マークソンにも依頼を発行しています

 

ハンドラー・ウォルター。スタンニードルランチャーは強化人間C4-621に任せます。良いですね?』

 

『良いだろう。慣熟の時間を考えると強化人間である621が最適だ

聞こえているな、これだけの独立傭兵が一堂に会する作戦はそうそうない

 楽しんでこい、621』

 

ーーーーー

アイスワーム討伐ALT

 

作戦領域:中央氷原 観測不能領域

依頼者:ルビコン解放同盟

作戦目標:目標撃破

報酬:420,000coam

 

詳細

 

・惑星封鎖機構の起動した巨大兵器「アイスワーム」撃破

 

・撃破目標のコーラル防壁を突破するにはオールマインドより供与された試作兵器、肩武器:スタンニードルランチャー「VE-60SNA」が有効

 

・途中離脱する僚機あり

 

ーーーーー

 

 中央氷原、ウォッチポイント・アルファ付近。

 猛吹雪が吹き荒び視界も見通せない極寒の地。

 

 平坦かつ広大なこの氷原はバートラム旧宇宙港から見て目と鼻の先にあり、ウォッチポイント・アルファ攻略の要所として一刻も早い占領が求められている。

 

 エンゲブレト坑道に俺達が貫通させた通路はあくまで急拵えの坑道に過ぎない。

 本格的にコーラルの輸送を行うのであれば、きちんと整備されたウォッチポイント・アルファからバートラム旧宇宙港へと運び出した方が効率的だ。

 

 だからこそ、このアイスワーム討伐は急務であり、それを妨害すべく動く惑星封鎖機構は排除しなければならない。

 

 アイスワーム、正式名称は「IA-02:ICE WORM」。ミールワームやミミズを思い起こさせる細長い見た目をしているが、その全長はACは愚かバートラム旧宇宙港の管制塔をひと巻きして余りある超々ド級巨大C兵器だ。

 

 こんな超巨大兵器が地中を掘削しながら暴れ回るものだから、エンゲブレト坑道に作られた雑な通路なんかいつ崩落してもおかしくはない。

 

 そういう意味でもアイスワーム討伐は確実に成功させなければならない急務なのだ。

 

「消し飛べオラァ!」

 

 特注のアセンブルを施した我らがポテイトーズから泡のようなパルス弾が放たれ、アイスワーム顔部に直撃する。

 

 これまでの偵察から、最初の接敵時の行動は決まっているとわかっていた。

 地中から長大な機体を高く延ばし、敵機体を認識して迎撃を始める。確実にこちらをロックオンする理に適った行動。

 

 だからこそ、初撃はこちらで行うことにした。

 

ーーーーー

機体構成 Potoooooooo

 

右腕武器 HI-16: GU-Q1

左腕武器 HI-16: GU-Q1

右肩武器 KRANICH/60Z

左肩武器 KRANICH/60Z

 

ブースタ AB-J-137 KIKAKU

FCS FCS-G2/P05

ジェネレータ VP-20D

ーーーーー

 

 パルス弾はパルス技術を用いたシールドに対して絶大な負荷を与える。『特に同じ技術の表裏であるパルス防壁を相殺する』という謳い文句に間違いはなく、4門もの同時掃射を浴びたプライマリシールドは消失したという訳だ。

 

 ジェネレータ出力補正に劣るBASHOフレームではこの4門装備は実現し難いが、アーキバスから鹵獲した(奪った)最高のEN出力を誇るVP-20Dというジェネレータに換装することで強引に装備を実現した。

 いやあ、嬉しいよね。

 まさかアーキバスと敵対した自分が、アーキバス製品を使えるとは思っていなかったからさ。

 

 折角だからD&Jが押収したアーキバス製品から幾つかのパーツを頂いておいた。

 整備が難しいから普段使いはできないけど、こういう大規模な作戦は使いどころだ。

 

『プライマリシールド消失を確認。狙撃準備を』

 

 白銀の機体、ケイト・マークソンのACトランスクライバーから号令が飛ぶ。

 

『レールキャノン発射シーケンスに入る。EMLモジュール接続、エネルギータービン開放。出力80%照準補正良し。90、95』

 

『外しはしない』

 

 元V.Ⅳ、ラスティがその号令に応え、吹雪に滲む彼方が帯電する稲妻色に染まる。

 地中から姿を現したアイスワームの頭部を閃光が射貫いた。

 

 お世辞にも狙撃精度が良くないはずのオーバード・レールキャノンであんな精密射撃を成功させるなんて本っ当に化け物だな!

 どんな腕をしているんだ?

 

『セカンダリシールド消失確認。顔部に火力を集中してください』

 

『あれがACの動きだと?』

「良いだろ。俺の親友なんだ」

『ふむ。そういうこともある』

「あっ、それコールドコールさんのセリフじゃない?」

『どうやら移ってしまったらしい。最近はずっと護衛させていたからな』

 

 アイスワームがオーバード・レールキャノンに撃ち抜かれた反動でその身を一時的に横たえる、そこまでは想定の範囲内。

 

 だが、親友はいったい何をどうしたのかわからないが、倒れ込みはじめた瞬間から攻撃を開始して倒れ込むと同時にパイルバンカーの強烈なアッパーを撃ち込んだのだ。

 ノーザークが唖然とするのも頷ける鮮烈な絶技だね。

 

『なるほどな。そういうこともある』

「ほら、これだよこれ!」

 

 本家本元コールドコールのそういうこともあるを聞きながら、封鎖機構が放棄した基地方面に機体を進ませる。

 

 なにあれ凄い。

 流石はC4-621、魅せてくれる。

 一瞬で必要なダメージを出してくれたせいで自分達が追撃する時間すらなかった。

 

『目標が子機を展開します。対処しましょう』

 

「ノーザーク! コールドコール!」

『わかっているとも!』

『数が多い。散開して殲滅する』

 

「そぉら、二回目ぇ!」

 

『嘘だろナイトシェイド!?』

「ブリーフィングで頑張るって言ったしこれぐらいはね?」

『早すぎる……修正が必要です』

『……殲滅が間に合うといいが』

 

 子機展開の為に頭を出したところに復旧したプライマリシールドを半分削り、子機が減少した頃にまた顔を出したので削りきった。

 

『予想より早いが発射準備行くぞ。エネルギータービン、異常なし。出力80…… 90……照準調整、ロックオン』

 

『巻き込まれるなよ』

 

 貫通、遅れて轟音。

 射貫かれた穴から零れ落ちるコーラルが雪を溶かして地面に着弾する。

 

 それに臆さず突貫した親友は再びアイスワームの顔部を抉って帰ってくる。

 

「来るぞ、アイスワームから離れろ!」

 

 パルスアーマーを展開し突貫。

 三度身体を起こしたアイスワームが天を衝き、紅蓮の雷としか言いようがない放射がコクピットの画面を染める。

 

 被弾者0、経過は上々だ。

 

『これで子機は削りきった。ノーザーク、離脱する!』

「よく頑張ってくれた。コイツであと半分、仕上げは頼んだよ親友!」

 

 放射をパルスアーマーで受け切り、アイスワームが首を曲げたところに4門のパルス砲を全力で撃ち込み続けることで、復旧したプライマリーシールドを半分まで削る。

 自分も役に立てるのはこの辺りまでかな。

 

『プライマリシールド消失を確認。……ラスティ、対処してください』

『流石だな戦友。ここまで早くやってのけるとは。レールキャノンの出力を限界以上まで引き上げる。私もそれに恥じない狙撃を見せるとしよう』

 

 だってほら、なんか親友がまたスタンニードルランチャー当てちゃってるし。

 

 撃つところ見えなかったんだが?

 ターゲットロックが追いつくような大きく顔部を晒すタイミングは無かったはずだし……まさか、波打つように地中から顔を出した間隙をマニュアルエイムで狙撃したのか!?

 

 なんだその離れ業。

 流石親友!俺にもできない事を平然とやってのけるなんて!

 

『EMLモジュール全点接続、エネルギータービン全開、手動放熱開始。出力80……90……緊急弁全閉鎖、リミッター解除。100……110……120……レールキャノン限界出力突破!135……153……!』

 

 よし行けラスティさん!

 限界出力突破とか予定にはなかったけど、ラスティがやるならやれるんだろう。

 デカいのを一発ぶち込んでやれ!

 

『これで決める!』

 

 流星、爆発。

 ヒャッハー! 最後は自分も攻撃してやるぜえ!

 アイスワームの首、討ち取ってやらぁ!

 

『これは。面倒なことになった』

『爆発します。退避してください』

 

「へ?」

 

 不意の大爆発に吹き飛ばされるAC。握っていたコントローラが吹き飛んで画面が割れるコクピット。

 咄嗟に息を全て吐ききって衝撃に耐える。

 

 轟音、機体各部が軋む異音が響く。

 

『おーい、大丈夫か!』

「ゲホッ、ゲホッ。世界が回ってる」

『ACが大回転していたからな。曲芸飛行で飯を食べられそうなほどだ』

 

 ノーザークの声で人心地がつく。

 どうやら着地には成功したらしい。

 ACのオートバランサー様々だ。

 いや待て、自分は今まで何をしていた?

 思い出せ、あっ!

 

「そうだ、アイスワーム!」

『倒れていくぞ』

「へぇ」

 

 自分とは反対側へと倒れていくアイスワームを眺めて気の抜けた返事が漏れる。

 なんだかなぁ。

 結局張り切り過ぎちゃったのかもね!

 

『皆さまお疲れ様です。素晴らしい手腕でした』

「うぇっ、へっへへ〜。なあコールドコールさん」

『……』

 

「ケイトが『あなた達の役目はもう終わりです』言う確率ってどれぐらい?」

『可哀想に』

 

「酷くね!? 俺はただ優しげな髪とそのひけらかしについてウヒッヒッヒヒャ」

 

『ベスティー・ナイトシェイド。あなたには休息が必要でしょう。それから、頭の方も診て貰ったほうが良いかと』

『持病だ。しばらくすれば治る』

『アイスワームのコーラル爆発で悪酔いしているか。15分もすれば正気に戻るのではないかな?』

 

『ACは基本的に密封されているので酔うことはないはずでは』

『コーラルの爆発は汚染を伴う。ジェネレータを介した暖房は人体に汚染がない程度には粒子が混ざると聞いている。気にしないでやってくれないか?』

 

『もしや』

『お前宛の伝言を預かっている。『交信ではない』そうだ』

『……なるほど。個人のパーソナリティに関して踏み入ってしまい申し訳ありませんでした。それでは、またいずれお会いしましょう』

 

「見てるか全世界一億5兆万人の親友! 俺がベスティー・ナイトシェイドだ! 調子乗ってすみませんでした」

 

『戻ったか』

「すみません、吐きそう。先に離脱するわ」

『まったく、騒がしいやつだな』

 

 ガンガンと痛む頭が熱を持つ。

 打ちつけた痛みなのかコーラル酔いの痛みなのか解ったものじゃない。

 

 ああ、そういえばアイスワームってC兵器だったか。

 その事を忘れて突撃し続けるなんてやってしまった。あるいは、戦闘開始辺りから既に酔っていたのかもしれない。

 

 荷台に固定してある薬箱からビタミン錠剤を取り出し、一粒飲み込もうとして宇宙服にぶつかる。

 

 これ着てると飲み込めないんだった。

 疲労回復にはコイツが一番なんだけどな。

 

 体内のいたるところで歯軋りされているような痛みを堪えつつ帰路についた。




ベスティー・ナイトシェイド:この後意識を失った。
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