【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵   作:白河童小鼠(人間)

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ACVDが終わる
今日は良く晴れた一日だった


反省とアセンブル

 かかりつけ医に一週間の絶対安静を言い渡された。

 

「もう一度言います。あなたはコーラルに対して過敏に反応する体質です。あのような武器を使うなら、対コーラル用の防毒マスクと防護服を着用するか、コーラルを使った兵器など二度と使わないでください。C兵器を相手にするなら尚更です。いいですね?」

 

「はい、反省してます……」

 

「手間を増やさないでください。あのようなコーラル臭いACなど、遠回しな自殺行為です。さっさと別の機体に買い替えることを勧めます」

 

「はい、すみませんでした……」

 

 話は暫し戻る。

 独立傭兵としてのデビューを華々しく飾って帰還した後の話。

 

 意気揚々と帰還した拠点にて待ち受けていたのは、何故か拠点に居たかかりつけ医の拳骨だった。

 

「痛ったいなあ何すんだテメエ!」

「緊急治療!」

「ごッ……ぇ……」

 

 戦闘で上がったテンションのまま殴り返そうとしたが、追撃でとんできた膝蹴りがお腹へクリーンヒット。

 お腹というか胃を抉りあげるような攻撃に悶絶。

 膝にプロテクターらしきものを装着している辺り殺意が高い。

 そのままベッドに拘束され、滔々と説教をされて今に至る。

 

『クソドーザーがブッ殺してやる!!』

 

「見事にコーラル中毒で凶暴化してますね。あなたも大して変わらないジャンカーなのに、よくもまあ威勢の良い暴言を」

「やめて……ゆるして……」

 

『そんなコーラル臭い草履を履いて満足かドーザー!』

 

「コーラル臭い草履……?そうだ、あなたのACもコーラル臭いですよ。身体は清潔に保ってくださいね」

「う、ああああぁ!」

 

 戦闘記録に残っていた発言を再生されてしまい羞恥に悲鳴をあげる。

 テンションが上がっている時の自分の言動というものは見苦しいにもほどがある。

 もう十分に反省した。

 これ以上の恥辱はやめてほしい。

 

 たとえ、コーラル中毒でハイテンションになっていたせいだとしても、自分の醜態を見るのはとても辛い。

 

 こんなふうに何度か生き恥を晒してようやく冒頭に至った。

 

「あなたのCOMから通信が入った時は驚きました。すわ重傷か?と。後から送信されたレポートデータが、ただのバイタル異常とコーラル中毒で気構えるだけ損をしました」

 

「すみません。体調不良時に診察してもらえるようCOMにプログラム組んでたの忘れてました」

 

「まあ良いでしょう。その代わり診察費はたっぷりといただきます」

 

「……ちなみにお幾らで?」

 

「1000 COAMです」

 

「いくらなんでも高すぎるだろ!?」

 

 あまりの金額に思わず素の言葉が出てしまった。

 しかし、理由も無くこういった金額を請求する人ではないはずだ。

 

 ミッションの報酬のお陰で軽く出せる額ではあるが、元々COAMという通貨は高額取引用の通貨だ。

 おおまかに円換算したら1 COAM=10000円ぐらいになる。

 1000 COAMも医療費で払うとは、ACを手に入れる前ではちょっと考えられない状況だ。

 

 前使っていた探査用MTだって、諸々込みで100 COAMぐらいのジャンク品を改修して使っていたのだ。

 

 何か理由があるに違いない。

 

「いや、一回の診察でこれはないよな……?せめて理由を教えてほしい」

 

「修理費です。緊急の連絡だったので、往診用ヘリのジェネレータでブーストを使用しました。これでも不満が?」

 

「ありません。ご迷惑をおかけしました……」

「よろしい」

 

 ヘリコプターにブースターを装着しているとか正気か?

 その言葉をグッとのみこんで、治療のために急いでくれた医者の鑑にCOAMを払う。

 

 恐らくは危険地帯を離脱するための仕掛けなのだろうが、無理な仕掛けを作動させるためにジェネレータと機体を酷使したということは容易に想像できた。

 

 それに、医療器具を搭載したヘリの修理費としては、かなり安めの部類で比較的良心的でもある。

 

 壊れるまではいかなかったが負荷が気になった結果のメンテナンス費兼修理費ということなのだろう。

 

 こういう不測の事態の為にオールマインドから支度金をとして若干多めにお金を借りていて助かった。

 

 前使ってたMTを担保に借り入れたが、本当に助けられる日が来るとは思わなかった。

 

 報酬の振り込みは基本的にミッション完了後に行われるが、ミッション達成の確認が必要なのですぐ支払われることは稀らしい。

 

 そういう即時の支払いは、Fランク未満でもいいからアリーナランキング圏内に入ってようやくしてくれるようになる。

 

 大抵はその日の夜か、翌日になるとオールマインドから聞いている。

 

 ミッションも無事終わったことだし、ちゃんと返済しなければなるまい。

 

 持ってて良かった支度金。

 

「振り込みを確認しました。では、お大事に」

「ありがとうございました」

 

 やや煤けて見えるヘリコプターを見送る。

 せっかくの依頼完了に水を差された気分だが、コーラル酔いのまま祝勝しても碌な事にならなかったはず。

 

 あの技研AC『エフェメラ』は手放すことが惜しくなるほどの高性能だが、乗り換えることに対する相応しい理由もできたと思うことにしよう。

 

 しかし、まさかコーラルジェネレータの残り香で酔うとは思ってもいなかった。

 

 そう言われてみると、ドーザーの相方と会ったときはテンションが高まっていた気がする。

 

 これからはより一層の対策を講じていかねばならないだろう。

 

 

 

「聞いてくれ相棒」

「おう」

 

「俺、まじでコーラルが駄目らしいわ。コックピットのコーラルの残り香でコーラル酔いしちまった」

 

「テメェはガキか?ガキだったな。お〜よちよちコーラルしゃぶるか?」

 

「ガキだよバーカ!20歳未満は未成年だ!コーラルはマジで駄目だから要らねえんだよ!だいたいそのコーラル俺が奢ったやつじゃねえか!」

 

「うるせえ!だいたい成人なんて古くさい概念ルビコンで持ち出すのテメェぐらいなんだよ!」

 

「はぁ!?ぷるすこふァー!!!!!」

 

「あああああァ!!!!!」

 

 拠点にしているヘリの一室、大声で相棒と威嚇しあう。

 こんなでも軽口の叩き合いだ。

 

 ミッションの報告を相棒にしていたのだが、いつのまにやら煽りあいに発展してしまった。

 相棒を訪ねるにあたり対コーラル用の防毒マスクを着けてきたのだが、それでもこの会話の盛り上がり様。

 

 成人が古い概念なんてとんでもない惑星だと思うだろうか?

 

 実のところ、成人という概念はしっかりこのルビコン星系では存在するらしいものの、一部のドーザーの間では年齢でコーラルの購入制限がかかるのを嫌って成人という概念を導入していないらしい。

 

 概念を導入していないってなに?

 

 社会規範を守る余裕なんか無いし、仕方ないことではあるが馬鹿みたいな話だ。

 

「しかしよお、その馬鹿みたいな恰好どうにかならねえのか?」

「馬鹿みたいな恰好だから安くて買えたんだ」

 

 シュコーと背部換気が作動する。

 背負うような形で配置された発電機が唸りを上げ、防毒マスク内の配線に電力を供給。

 供給された電気によって全身の空調が駆動し、清浄で快適な空気を送り届けてくれるのだ。

 

 さながら今の自分は天槍マン。

 宇宙服のようなキグルミは快適な生活を送る必需品だったのかもしれない。

 うおん。背中に積んだクソデカ発電機、モデル三台が雄叫びを上げているぜ。

 

「重くねえの?」

「120kgあるけど不思議と平気」

 

「動作補助機能なかったよな?」

「うん。ついてたら高いだろ?」

 

「お前身長と体重幾つだ?」

「140cmの40kgぐらい」

 

「なんで動けてんだ?」

「直立してると身体に重さがかからない構造だから意外と楽なんだよ」

 

「なあ、なんで動けてんだ?」

「……慣れと気合?」

 

 相方が瞼と口をかっ開いて注目してくる。

 おっと、その反応は良くないな。

 信じられないものを見るかのような反応だ。

 

「相棒。ちょっと見ねえ間に強化人間になったみたいだが、いったいどこで手術を受けたんだ?まさかAC売った金に手をつけちゃいねえだろうな……?」

 

「うんにゃ、正真正銘の真人間だし金には手出ししてない。本当だからな?」

 

「うんにゃってなんだ」

 

「うんにゃはうんにゃだ」

 

「うんこか?」

 

「うんこじゃあない」

 

 眉間を揉んで天を仰ぐ相方。

 まあ、気持ちはわからなくもない。

 自分のことでさえなければこっちも信じなかっただろうし。

 それでも、この成長期ボディがとんでもないパワーを秘めているのは事実だ。

 ルビコニアン謎パワー。

 コーラルへの耐性を除けば、非常にこの身体は頑丈なのだ。

 

「そろそろ本題に入ろう。ACを売った資金の分配はどうする?」

「買いたいやつ買って余ったら分ければ良いんじゃねえの」

「高いやつを買う余裕もないしな」

 

 同意見とは好都合。

 技研AC『エフェメラ』の査定額はかなり高い。

 

 その売却額は安いACと安い武装を2機分買って余りあるほど。

 ちょっとぐらい機体に金をかけても許されることだろう。

 自らの機体構成に夢を膨らませる過程で、一つ思いついた事があった。

 

「相棒、一つ提案がある」

 

「ウヘヘヘヘ……お、なんだ?」

 

「相棒が使うFCSだが、あの技研ACのFCSをそのまま使ったらどうだ?」

 

「オイオイ。あんな骨董品のFCSなんかよりもっと良いFCSがあるんじゃねえか?」

 

「そんなものは無い……と思う。あの技研製FCSのOCELLUSは、こと130mまでの近距離なら最強の特化FCSと言って差し支えないはず」

 

「それ本当か?嘘言ってたりしねえだろうな」

 

「嘘じゃない。なんならこっちが欲しいくらいだが……近接戦はチェーンソーを使う相棒の方が得意だろ?」

 

「おうよ!」

 

「なら相棒が使った方が良い。人間の処理限界を全く考慮に入れてないとか書いてあるが、俺が使えたんだから無敵な相棒はもっと使いこなせる」

 

「ったり前よォ!」

 

「決まりだな。もし相棒が扱いに困ったら売ってベイラム製FCSのABBOTと交換したら良い。ABBOTは低負荷下位互換だから問題無いだろう」

 

 よし、これでいい。

 どうせ相棒は真っ直ぐ突っ込んでぶっ飛ばすタイプだろう。

 それなら、多少扱いづらくても高性能なFCSの方が良い。

 

 問題はこちらの方だが、まあなんとかなるだろう。

 なにせ、技研ACが非常に高値で売れたので、二人で分配してもかなりの余裕がある。

 その上、オールマインドのパーツショップもゲームで見た記憶よりも充実したラインナップをしていたのだ。

 

 例えば、『BAWS』製品。

 ルビコン土着企業であるBAWSの正式名称は、「BELIUS APPLIED WEAPON SYSTEMS」と言うらしい。

 このBAWSは惑星ルビコン3において最大手のMT製造メーカーだ。

 

 その得意とするMTから発展させたACの兵器群は量産に向くらしく、顧客を選ばず兵器を販売するBAWSの方針もあってか、傭兵支援システム『オールマインド』のパーツショップに多様な兵器群を卸している。

 

 その他にも、プラズマ研究所の『VCPL』やミサイルとFCSの『ファーロン・ダイナミクス』、バズーカやグレネードの花火職人『メリニット』にパルス技術の何でも屋『タキガワ・ハーモニクス』といった、ルビコン進駐を行っていない中立の惑星外企業の製品も取り揃えられている。

 

 一方で、アーキバス、シュナイダー、ベイラム・インダストリー、大豊核心工業集団といったルビコン進駐を行っている企業の製品は品薄のようだ。

 

 品薄の影響で購入は実績による許可制になっていた。

 

 武器のラインナップが心許ない上に、量産に向く基本的なパーツしか取り扱いをしていない。

 最近のルビコン進駐企業は自社戦力の拡充を重点的にしているとか。

 なので、秘匿技術の多いアーキバス辺りは特に品薄状態だ。

 

 その他、ルビコン土着の職人企業のエルカノだが、こちらはACのフレームだけだった。

 武器は開発していないらしい。

 

 ドーザーの技術屋RaDに関しては最近情勢がゴタゴタしていた影響で、土建用と探査用のACフレームのみ取り扱いとなっている。

 

 相棒のチェーンソーは最近開発されたばかりの製品なので、ショップに置くかどうかは審査中だとか。

 

 しかし、オールマインドのショップにこれだけの品揃えがあれば、予算内でも十二分に機体を組む事ができる。

 

「色々物足りない所もあるが、そこはアセンブルの腕の見せ所だ。さあ、張り切っていこうか!」

「おう、なるべく安く済ませとかねえとな!」

 




医者:ルビコン星系の外からやってきた男。極悪非道な闇医者。慇懃無礼な態度で人に接するため、患者から謂れのない噂を流されている。全方位に皮肉をまき散らすスタイル。膝蹴りでオリ主が止まらなかった場合、射殺して強盗を視野に入れていた。頭アウトロー。
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