【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵 作:白河童小鼠(人間)
これはもう投稿するしかねえ!
「お、俺のポテイトーズがぁーっ!?」
ミッションから帰還して数日、輸送ヘリにて。
俺は愛機Potooooooooの修理にかかった費用を確認して号哭していた。
リペアキットを2回使用。
両手のサブマシンガンの残弾30%。
右肩の四連ミサイル残弾10%。
なんとこのミッションにかかった経費が大体70000 COAMにものぼり、雇い主のジャンカー・コヨーテスから支払われた報酬が80000 COAM。
相棒の職場見学の為とはいえ、明確に死にかけてしまい、本当に割に合わないミッションだった。
「お金お金お金がそうだ俺の命いやお金があぅううぁわぁああああ!!!」
つい2ヶ月前は100 COAMにすら苦労していた日々を思い出し、飛んでいった費用の大きさに発狂した。
今度からヤバそうなミッションを遂行する際は、オールマインドに補給シェルパの手配を依頼しておかないいけないだろう。
ただ、補給シェルパはACに合った物資を搭載する必要があるため、ミッションごとのアセンブルに合わせた弾薬を申請したりする必要がある。
その上で弾幕飛び交う戦場で確実に届く訳ではないので、安全地帯を確保した時ではないと使用できない。
優秀なオペレーターが居ればそういう雑務を代行してくれるのだが、残念ながら自分にはそういう知り合いは居ない。
強いて言うなら自分がそれに近しい存在だったというぐらいだ。
「あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!」
ドーザーのジャンカーを相手にオペレーターをしていた時の不毛過ぎる思い出が蘇ってきて絶叫する。
申請さえすれば色々やってくれるオールマインドという頼もしい存在にはとても助けられているのだが、その申請もかなり面倒くさいのだ。
我ながらモノグサだと思うが、こればかりは性分だ。
これでも一応、物心ついたばかりのガキの頃は、コーラルが入ってこないようにした密室で、周りのドーザーどものオペレーターをして日銭を稼いでいた。
小さな子どものオペレーター。
これが意外とウケが良かった。
そもそもドーザーという生き物は、コーラルに逃げるだけあって面倒ごとが嫌いなやつが多い。
ドーザーも大抵人間なので、仲間に見栄を張りたがったり、尊敬されたいという名誉欲がある事も少なくない。
だから、都合が悪くなったらいつでも始末できるガキが日々の面倒な雑務をやるというサービスはウケが良かった。
意思疎通も困難な発声すら怪しいドーザーにミールワームと間違われて食われそうになったり、コーラル中毒による幻覚や被害妄想で拠点にしていた小さな倉庫にミサイルを撃ち込まれたこともあった。
最終的にはドーザーの寄合に合流して、あんまり大きな組織になると他の勢力から狙われそうだったので自然に離散した。
あの頃は三ヶ月に一回ぐらいは死ぬような目にあっていた気がする。
もっとボロくて小さかったものの、輸送ヘリの操縦や自動操縦の使い方もその時習得したものだ。
『テメェみたいなガキのオペレーターが輸送ヘリを運転できるわけがあるかよ』と言われたので咄嗟に『できらぁ!』と答えてしまったのだが、当然そんな高級品の運転なんて当時はやった事がなかった。
輸送ヘリの型番から製造元を突き止めて、闇市に転がってた技研製ハッキング装置で得た設計者の電話番号に泣いて教えを請い、一夜漬けで運転の仕方を習得したのだったか。
結局輸送ヘリはちゃんと飛ばせたものの、敵の戦闘ヘリからのミサイルを回避するためにカウンターマニューバをする羽目になったはず。
「なんで上手くいったんだ?」
その後、改めてカウンターマニューバを習得したが、あの時ぶっつけ本番で成功したのは運が良かったとしか言いようが無い。
あの頃は生きる為に金が必要だったからオペレーターをやったが、独立傭兵になった今では戦闘をこなした後にやるのが億劫で仕方がない。
そもそも俺は、他人の世話はできても、自分の事になると色々雑になる人間だ。
ああ。その点で言えばラミーは俺の足りない所を補ってくれて、ラミーの足りない所を俺が補う最高の相棒だった。
「ちくしょう、就職おめでとう相棒……!」
そしてその相棒はもう居ない。
今ごろ、俺が需要を増やしたRaDの警備を張り切ってこなしているところだろう。
俺には相棒が必要だった。
俺は相棒抜きで生きるべきではなかったのかもしれない。
悔しい。
どうしてドーザーの相棒が就職できて、まともな俺が独立傭兵をやっているのだろうか?
真面目にドーザーやってきたからなんだろうなぁ。
流石は相棒だ。
インビンシブル・ラミーは無敵なのだから。
……いや、別に俺は就職したい訳ではなかった。
そもそも、独立傭兵って社会的にならずもの扱いされているだけで、一攫千金を狙える最高の職業ではないだろうか?
まあ、前のミッションでは一攫千金どころかトラウマを刻まれかけた訳だがそれはそれ。
部屋に入ってきたコーラルで死にかけるぐらいなら結構よくあったので、自分の身体にダメージが無かっただけ良しとしよう。
そうだ、思いだした。
「オールマインドにヘリの改装について聞かないといけないんだっけ」
前回の定期健診の時にかかりつけ医と会話した事を思い出した。
輸送ヘリを住居として快適にするため。
心身の健康を保つため。
公明正大な支援システムを貫く、ラブリーチャーミーなオールマインドを説得しなければならないのだ。
そうだなぁ。
文面を考えなければいけないだろう。
ぶっちゃけルビコンは教育水準が低いので、それっぽく礼儀を取り繕うだけで意外と評価されたりもする。
誤解されないよう単純明快な文章が好まれる文化の影響もあるのだが。
オールマインドもそういう情に流されてくれれば良いのだが、相手は支援システム。
効果のほどは見込めないが、礼儀は尽くすもの。
自己満足というものは大切だ。
『謹啓
山が青く彩られる季節になりました。
傭兵支援システムオールマインド様においては、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
先日は、迅速な機体の修理を行っていただきまして、誠にありがとうございました。
さて、本日は貸与していただいている輸送ヘリについてお願いがあって連絡を差し上げます。
見たことも無いぐらいの高性能な輸送ヘリで、とても便利に使用させていただいています。
独立傭兵として巨大な輸送ヘリで目的地まで東奔西走することは、かねてから夢想していたことの一つでして、私の夢の一つが叶ったとも言えるでしょう。
しかし、こちらとしても恐縮ですが、私の体質の都合上、空気清浄機能を強化した上で拠点として居住性を高めたいと思い、輸送ヘリの持ち主であるオールマインド様に相談をさせていただきました。
勿論、改装費用は私の収入から払いますし、業者については主治医からの紹介を受ける予定です。
御多用中申し訳ありませんが、可否についてご検討いただけると大変助かります。
どうぞよろしくお願いいたします。
末筆ながら、オールマインド様のいっそうのご活躍を心よりお祈りいたしております。
最近はルビコンの情勢も激動ゆえ、くれぐれもご自愛くださいませ。
恐惶謹言
登録番号Rb97独立傭兵"Bestie" Night Shade』
「勢いで送信したけど礼節大丈夫かねぇ?いや、不安だなぁ!」
オペレーター時代にこういった手紙はたくさん書いたはずなのだが、相手がドーザーの関係者だったので行儀良くするのにここまで緊張することは無かった。
ちなみにNight Shadeというのは自分の名前だ。
正式な名称はベスティー・ナイトシェイド。
相棒のインビンシブル・ラミーのような、ドーザーとしての通り名だ。
我ながらナイトシェイドはかっこいい名前だと思っている。
ちなみに元は自分でつけた名前ではない。
最初は幼少期のオペレーターをしていた時代に、夜なのに節電の為に真っ暗な部屋で仕事をしていた事で『夜の木陰』という意味で呼ばれた渾名だった。
気に入った理由は言葉の格好良さと少しの感傷に願掛け。
前世の話になるが、Night Shadeの和名であるイヌホオズキが庭によく生えていたのだ。
雑草としての生命力にあやかりたいという願掛けになっている。
ナイトシェイドと呼ばれた当時はしょっちゅう死にそうになっていたので、無事の回復を祈って雑草を名乗りだしたわけだ。
え、"Bestie"?
ドーザーの友達が多くてよく親友って呼ばれるからいつの間にか定着していた通り名だ。
昔は騙りや詐欺で呼ばれることが多かったが、最近は名前のナイトシェイドよりベスティーって名乗った方が仲間内では通じると思う。
この前のミッションでオーネスト・ブルートゥと会話した時に動揺したのは、彼が友人を名乗る不審者だったせいだ。
彼とは戦いを通じて友人関係を築いたわけだが、今まで少し気にしていた事を言われて動揺してしまったのだ。
初対面の人にも「親友のイヌホオズキ」って名乗るのは中々に恥ずかった。
なので、ブルートゥにはそれまでの図星を突かれてしまった形になる。
そこで俺は考えた。
この動揺は隙になってしまうだろうか?
もしそうならば克服する必要があるだろう。
そんなわけで俺はドーザー以外にも親友を名乗る事にした。
羞恥心は命に代えられないし、何故かとてもしっくりくるのだ。
例えばこう、俺が昔から親友を騙っていたかのように。
心当たりは無いのだが、しっくりくるのは良いことだ。
これからも親友を名乗っていこうと思う。
親しき仲にも礼儀あり。
俺は礼節を弁えた親友ゆえに。
ーーーーー100%
『なあ独立傭兵
こっちは確かに『技術屋気取りの高慢ちきに目にもの見せてやれ』とは言ったが、あの安い報酬で働き過ぎではないかね?
我々ジャンカー・コヨーテスとしては助かるのだが、まさか外周の防衛設備を半壊させた挙げ句、オーネスト・ブルートゥまで撃破するとは思ってもみなかった
お蔭でRaDの攻勢を止めることができたので感謝しておるが……まあいい、本題に入ろうではないか
今回の依頼はベリウス地方北西ベイエリアのグリッド群に巣食う商売敵の排除。
アンタのカチコミでビビって逃げた奴らが、勝手に活動を始めやがったんだ。
それだけなら内輪で落とし前をつけるんだが……連中、どこからかACを手に入れやがった
お前のと同じBAWSの旧型らしいんだが、そのせいで慎重派の声が大きい
つまるところ元凶のお前がなんとかしてこいってことよ
他の戦力は大したことないらしいし、ひとっ走り頼んだぞ』
ジャンカー・コヨーテスからの依頼で、逃亡兵に落とし前をつけてこいというミッションだ。
聞いた話だと俺の暴れっぷりは想定していなかったらしく、本当はもっと少ない戦果で良かったらしい。
個人的に横槍を入れられるのが嫌いなため、視察も兼ねて片っ端から倒していっただけだが、もっと傭兵として収支を意識しないといけない。
予想戦力を見る限り、AC以外は本当に数合わせ程度のMTしかないらしい。
丁寧にも偵察が見つけたACの識別反応まであるときた。
広域レーダーによると逃亡したやつらはグリッド内部で引きこもって何かしているらしく、タレコミをした先住のドーザー曰く「頻繁に揺れてるから黙らせてくれ」とのこと。
ミッションブリーフィングの戦力予想は往々にして外れるもの。
警戒していこう。
『メインシステム 戦闘モード起動』
上空から降下し、緩やかに落下位置を調整しながら入り口に辿り着く。
「うっわ、またオンボログリッドだ」
技研ACを手に入れた崩落寸前のグリッド034ほどではないが、標的のいるグリッドは長期間補修がされておらず足を踏み入れるのに躊躇するほどだった。
これで標的のACが出入りしているのだから安全は確保されているとは思う。
思うのだが、それでも不安は湧いてくる。
「嫌だなあ」
『警戒を怠らないで下さい』
COMが弱音を咎めてくる。
偉大なるCOM先生は辛辣だが、いつだって俺の為に働いてくれる味方。
味方の期待に応えて働くのが良い人間というもの。
「油断怠慢すなわち怠惰。完璧な仕事を心掛けよう」
『警戒を怠らないで下さい』
これは手厳しい。
しかし、COMのお蔭で不安も和らいだ。
突入しよう。
「アセンチェックの時間だオラァ!」
『敵襲……うわぁ!ぽ、ポテイトーズだ!』
『逃げろ!逃げろぉ!』
『死にたくねえ!嫌だ死にたくねえよ!』
『マ゛マ゛ぁ゛ー゛!゛!゛!゛』
「うっそでしょおい」
玄関口から突撃をかましたら、こちらを視認するなりMTを捨てて脱出していってしまった。
なんだこの弱腰ドーザー。
ここに居るのは俺の襲撃で逃げ出した奴らとは聞いていたが、大の大人が泣き叫ぶぐらいトラウマになっているらしい。
この反応は解放戦線に捕らえられたトラウマで夜泣きする友人とよく似ている。
ちょっと良心が痛むがこれも仕事。
目標はあくまでも敵性ACなので、MTは壊すだけに留めておこうとした矢先のことだった。
『やい、そこの独立傭兵!こんな弱者どもを虐めるなんてふてぇ野郎だ!てめえのトンチキはこの『チューギー・マーゴ』が成敗してくれる!』
鉄塊を振りかざし二本の脚で駆けてくる妙ちきりんなACから音声が鳴り響く。
それはBAWSの旧型BASHO一式に見える。
しかし、なんだこの……なんだ?
何故ブーストを使わずに徒歩で?
どうして戦闘をするのに戦闘モードではなく作業モードで動いている?
持っている武器は鉄塊としか言いようがないし見たこともない武装だ。
異名から察するにコイツもドーザーの一員なのか?
わからん。
これも一種の攪乱戦術なのかもしれない。
『我が秘剣、MT砕きをくらうがいい!てやぁーっ!』
鈍い作動音を響かせながら振り下ろしてくる鉄塊を、後方へのバックステップで避ける。
そして、振り下ろした鉄塊を逆袈裟で斬り上げようとしているのが見えたので、反射的にブーストキックで蹴り飛ばす。
蹴り飛ばせてしまった。
蹴ったら相手は仰向けにひっくり返ってしまったのだ。
ええ……
『おのれ……!ええい、起き上がれん!もはやこれまで!煮るなり焼くなり好きにしろぃ!』
「あの、戦闘モードに切り替えたらオートバランサーが稼動して立ち上がれますよ」
『む、戦闘モードとはなんだ?』
思わず助言してしまった。
しかも、相手も素直に聞き返してきた。
まさか戦闘モードすら知らないとは思わず、少しの間言葉に詰まる。
「……BASHOのコアなら右手モニター近くに操作盤があるはずです。一番簡単な起動方法ですが、それの右端にある青色のボタンを押すとCOMの音声入力が出来るようになりますので、戦闘モード起動と叫んでください」
『この青いのを押し込んで……戦闘モード起動ッッッ!!!』
とんでもない稼働音が鳴り響き、直後にACに力が満ちて機敏な動きで立ち上がった。
持っている秘剣とやらを手放して。
それに、急な動きのせいで身体の何処かを打ちつけたらしい。
とても痛そうな音声が鳴っていた。
……これはもしかして使えるか?
『ぐげっ!?ぬおおお、ん?おお、立ち上がったぞ!』
「次は戦闘モードで動かすためにエンジンの出力を上げる必要があります。出力を上げるとコクピットがかなり揺れますので、まずは耐ショック体勢をとってください」
『ふうむ、耐ショック体勢とはどうすれば良い』
「まずはお腹と太ももがくっつくよう前傾姿勢をとりましょう。クッションのようなものに頭がつくようにしてください」
『とったぞ』
「顎を引いて、両手で股下のレバーをしっかり握ってください。それが手すり代わりです」
『……よし、握ったぞ!出力を上げるにはどうすれば良いんだ!』
「けっこう衝撃がキツイので覚悟してくださいね。耐ショック体勢をとって衝撃に備えたまま、その手すりを引っ張り上げれば完了となります」
『べらんめえ!鍛えてるから余裕で耐えてやらぁ!ホワァ!??』
「だまして悪いが、仕事なんでな。……なんで騙されるんだか」
後方へと射出されていくコクピット。
こんな雑な嘘に騙されてくれるとは思わなかった。
股下のレバーは緊張脱出装置であることを知らなかったらしい。
今ごろチューギー・マーゴ氏はもこもこのエアバッグで満たされたコクピットの中で藻掻いている事だろう。
主を失った機体が平地駐機のために片膝をつき電源が落ちていく。
「COM、目の前のACにアクセスしてくれ。ハッキングに使うプログラムは『Alca』で頼む」
『プログラム『Alca』によるアクセスを開始します』
プログラム『Alca』。
愛用していた技研製ハッキング装置がミサイルによって壊れた際、生き残っていた記憶装置から抜き出したプログラムをMTのCOM用に改悪したものだ。
通信傍受と暗号復号にバックドア作成などやたら多機能なのが特徴だが、自分がMT用に改造したせいで既存データの改竄や破壊は不得手としている。
元々の装置はなんでもできるヤバすぎる代物だったけど大元は既にドーザーのせいで破損済。
他にもジャンク市で手に入れたハッキングコードをいくつか持っているが、この『Alca』を一番便利に使っている。
デチューンしただけとはいえ、自分の手が入ったものに愛着が湧いてしまったのもあるのだが。
『バックドア作成完了』
「オートパイロットを使ってポテイトーズに追従するようにしてくれ」
『対象機体のオートパイロットを起動。追従を開始します』
ミッション完了。
思わぬ臨時収入が入ったが複雑な気分だった。
RANK -/-
搭乗者名 "Bestie" Night Shade
AC名 POTOOOOOOOO
INFO
ジャンカー上がりの独立傭兵。
彼は孤児だった。
無敵のラミーに拾われた彼は、ある時はジャンカー一派の頭目、ある時はオペレーター、ある時は独立傭兵として、その他にも類稀な転身をみせた。
コーラル過敏体質によりドーザー成り得ない彼は、しかしドーザー達の親友を自称する狂人である。
RANK -/-
搭乗者名 "Cheugy" Margo
AC名 -
INFO
忍に救われ、そして憧れたルビコニアン。
ある日マーゴは駐機しているACを見つけた。
持ち主は不在、天運に恵まれた彼女は拾い物の機体で傭兵となる。
しかし、記念すべき初任務にて機体を詐取され、あわやドーザーの慰み者になる寸前に彼女は通りすがりの忍者に救われた。