【完結】じゃんじゃかジャンカードーザー傭兵 作:白河童小鼠(人間)
10/05 23:16 規約に従って小説の形態を短編から連載に変更。連載記念にあらすじを加筆。
『新着メッセージ 5件』
『登録番号Rb97 識別名"Bestie" Night Shade。
貴方の実績情報が更新されました。
機体OSに対する強化権限が付与されます。
先日売却された技研製ACの機体OSを引き継いで使っているとの報告を受けていますが、詳細な変更についてはこちらで可能となっています。
もう一点。
輸送ヘリの改装について、業者との調整は傭兵支援システムとしてオールマインドで行います。
一度こちらで改装料金を立て替えるため、詳細が判明次第ご一報ください。
オールマインドは全ての傭兵のためにあります』
『主治医です。
設備業者ですが、最近企業の社畜どもが活気づいていてかなり忙しいようです。
そこでBAWSから依頼を取りつけておきました。
詳細はブリーフィングを確認してください。』
『よう、正気か?
いや、天然のドーザーだから正気なわけねえか!
テメェのせいで俺の歓迎会が延期になっちまったんだ。
詫びの肴に大豊のアレで踊る動画寄越せ。
バック宙はノルマだからな』
『独立傭兵!
まさかあんな方法で無力化するなど思ってもみなかったではないか!
まあいい。
あのグリッドではお前がACを撃破したあと、下の階に住んで不眠症になった先住民が突入して血祭りにあげた。
また何かあれば依頼を出そう』
『親友、金を貸してほしい
このノーザークには、ルビコンで為すべきことがある
親友、君はどうだ』
相棒からのメッセージだ!
嬉しいなあ。けど申し訳ない。
そう、歓迎会の事は考えていなかった。
延期になったのなら俺のせいだ。
ここは素直に詫びの動画を送ろう。
最近は寝食とトイレ以外ずっと大豊マンでいるせいで動くことにも慣れてきた。
ヲタ芸に加えてなにかのモノマネでもやってみるか。
何が良いだろうか?
鉄板は人力パイルバンカーだが、ここは新しいジャンルに挑戦すべきだろう。
なら護身用のノコギリ槍で演舞でもしてみようか。
ガシャガシャ変形して楽しい武器なのでコレクションとして買ったが、外出の機会が少なくそのまま隅で埃を被っていた。
引っ張り出すにはちょうど良い機会だ。
そしてオールマインドと主治医からの連絡。
オールマインドの方は、なんと改装の手続きを代行してくれるというのだ。
ありがたい。
素直に頼らせてもらおう。
かかりつけ医の方からは依頼の連絡だ。
もしかして紹介してくれる業者はBAWSの関係者なのか?
妙に企業に対して辛辣な文面だが、なにか恨みでもあったのだろうか。
何にせよBAWSとの橋渡しをしてくれるのはありがたい。
自分はランク圏外の傭兵なので、指名依頼が少なくお金を稼ぎづらいのだ。
今までは伝手で依頼が来ていたが相手は色々と不安なドーザーだった。
ここらで大口の取引先とコネをつくっておくのも傭兵活動にはプラスに働いてくれるだろう。
俺にとっても悪くない話だ。
次はジャンカー・コヨーテスの窓口の人だ。
血なまぐさい報告はやめてほしいが、また依頼を出してくれるのは助かる。
今後ともご贔屓にといった旨を返信しておいた。
最後にノーザークてめぇ!
またしても金の無心かよ。
借金王ノーザーク。
口先八寸でACを騙し盗り、借金取りとの逃走劇の末に惑星ルビコンIIIに逃げてきた独立傭兵。
この男と自分は奇妙な縁がある。
最初の接触は通信越しだった。
オペレーターとして名を馳せたあと、店じまいをしている最中に依頼してきたのが腐れ縁のはじまりだった。
その依頼内容はルビコン密入国の手引き。
着陸場所の選定と現地の傭兵支援機構への紹介。
その他諸々を後払いで依頼してきたので、機嫌が良かった自分は3000 COAMという格安の前払いで引き受けた。
封鎖衛星の狙撃タイミングの特定からはじまり、ルビコンIIIに接近する宇宙船の進路誘導や比較的安全な突入ルート計算。
当時最新式だったACで強行着地することを前提した荒っぽい作戦だったが、なんと運良く成功した。
その際に競馬布教の為に3 COAM貸してやったのだが、こうして定期的にたかられるようになってしまったのだ。
ちなみに競馬布教は失敗した。
ノーザークの興味はあくまで信用の拡大にしかないらしい。
残念だ。
競馬は自分の趣味だ。
この宇宙航行が可能な時代に競馬なんてやってる惑星は希少。
ルビコン星系では馬すら居ないので、辛うじてレース映像を見ることができる程度だ。
しかし、かなり遠方に競馬を含めた畜産の為に開拓された惑星があるらしく、年に数度ある大会では数億では利かないCOAMが動いているところまでは確認している。
自分の夢は、その遥か遠くの競馬星で実際に競馬観戦をすることだ。
その為にはとにかくCOAMが要る。
そして、邪魔でしかない封鎖衛星をなんとかしなければならない。
忌々しきは惑星封鎖機構。
いずれ封鎖衛星叩き落としてこんなコーラル塗れの惑星出ていってやるからな……!
「まあ、生きている内に馬を拝めれば御の字なんだけどね」
なんとも威勢の良い夢だが現実は非情だ。
ゲームの記憶が正しければ、このルビコンは三分の二ぐらいの確率で人類が滅ぶ。
一つは星が全焼して。
もう一つはコーラルが宇宙に拡散して。
ファッキンコーラル。
相棒の好物だから嫌いというわけではないが、体質のせいで自分とは根本的に相容れない物質だ。
残りの一つの選択肢はと言うと、コーラルを守る為に恒星間入植船を撃墜することになる。
本当に勿体ない。
恒星間入植船ザイレムを売ればいったいどれほどのCOAMになるというのか。
あの船を使えばきっとルビコン星系の外に出られるのだろう。
それを捨てるなんてとんでもない。
そうだ、良いこと思いついた。
先に中央氷原に到達してしまえば、封鎖システムの完成で放棄された施設もザイレムも好きにできるのでは?
中央氷原とは、ベリウス地方からアーレア海を挟んだ対岸に位置する地域のことだ。
アイビスの火によって人の住みえない極寒の地と化したそこは、まあ本当にとにかく色々ある。
スポンサーでもつけてあちらに渡ることができればジャンカーとして活動し放題なのだが……
まあ、また今度考えよう。
今は依頼が来ているし。
ーーーーー100%
『ミッションを説明しましょう
依頼主はベリウス・アプライド・ウェポン・システムズ社、通称BAWS
目的はベリウス南部グリッド135に展開するシュナイダー社MT部隊の排除となります
敵主戦力は二脚MTと自律ドローンです
物量次第にはなりますが、あなたの腕前ならそう手こずる相手ではありません
グリッドへのシステム干渉による隔壁閉鎖も予想されていますが、これも大きな障害にはならないでしょう
説明は以上です
これはBAWSとの繋がりを強くする好機です
そちらにとっても、悪い話ではないと思いますが』
ーーーーー
「妙だな」
BAWSがシュナイダーと敵対する?
エルカノと親しいBAWSが、似たようなスピード狂のシュナイダーと事を構えるとは考えがたい。
……なるほど理解した。
ここからは俺の推理になってしまうのだが、おそらくグリッド135に展開したシュナイダー部隊は図体ばかりデカい四脚MTを使っている。
『空力至上主義』という理念に合致しない裏切り者に、頭空力疑惑のあるルビコン解放戦線総司令がコーラルと共にあれと指令を下したのだろう。
今日もルビコンはコーラルで澄みきっている。
与太話はさておき依頼の時間だ。
『メインシステム 戦闘モード起動』
ミッション開始。
シュナイダーMT部隊を排除する。
所詮はMT程度が関の山。
苦戦すら論外である。
しかし、相手は速度狂いのシュナイダー。
つまりはアレだ。
「斬らせずして斬る。撃たせずして撃つ。シュナイダーにとっては、誇りある強さにこそ価値があるということか?」
『警戒を怠らないで下さい』
「そうだな。仕事に集中しようか」
通路を塞ぐ隔壁を解錠して、中を確認する間もなくアサルトブーストで突入する。
『てきしゅ……!』
『なんだ?……まずいコイツヤバッ!?』
蹴り、銃撃、アサルトブーストの直後にリロード。
これを繰り返す際はかなり慎重に操縦している。
操作機器の都合上、俺の機体はアサルトブーストと同時にリロードを行うと、コア拡張機能であるパルスアーマーが暴発してしまう。
リロードを多用する自分のスタイルは、引っ越し以前にシミュレータで対戦した相棒から直した方が良い手癖だと評されてしまった。
AC同士で戦う時の頻繁なリロードは隙に繋がってしまう。
事実、機体の性能差で圧勝するつもりだった相棒との対戦では、リロードの隙を突かれて2回もスタッガーさせられてしまった。
さすが相棒。
情報導体特性を持つコーラルを常飲しているだけあってその行動には示唆に富んでいる。
俺も隙には気を付けなければ。
「前衛部隊の撃破を目視確認。COM、後方突入後にスキャンして敵数読み上げ」
『スキャン開始。敵残数6』
本隊をアサルトブーストで飛び越えて後方部隊を襲撃する。
アサルトブーストは良い機能だ。
前方へ高速移動するこの機動は、襲撃への備えが完了していない後方への強襲にとても役に立つ。
『奇襲だと!?』
『FCS捉えきれません!』
『信じられん、BAWSの旧型がこんな!』
目にも留まらぬ速さというのは比喩表現だ。
しかし、ACでMTを相手にするならば比喩ではなくなる。
アサルトブーストとクイックブーストの連続切り返しは、基本的にMTのFCSでは捉えきれないのだ。
当然、操縦しているコクピットには凄まじい慣性がかかっている。
無人用ACではないのでパイロットに負担は少ないのが幸いだが、旧型ACのBASHOですらこの負担の少なさ。
最新式ACの乗り味はいったいどういったものなのだろうか?
「後方撃破を目視確認」
『残数1。右後方を下』
「下に落ちていたか」
橋下に潜り込んでいたMTを片付け、グリッド内の中心に陣どる本隊を蹴散らしていく。
鎧袖一触とはこのことか。
それでも油断は禁物。
足元を掬われるのは勘弁してほしい。
『敵襲、旧型ACの独立傭兵!』
『よくもふざけた真似を……!』
「COM、四脚MTは居ないのか?」
『四脚MT、反応ありません』
「いないのか……」
どうやらクソデカい4脚MTが原因で仲違いしたという自分の予想は外れたらしい。
ブリーフィングの通り、敵戦力はBAWS二脚MTとドローンのみ。
さてはお医者様って有能オペレーターなのでは?
ドローンのような離れて攻撃してくる相手に反撃するために近接用ではないFCS-G2/P05を搭載しているのだ。
けっして、ベイラムの近接FCSが売っていなかったからなんて理由じゃあない。
そんな理由ではないんだ。
「Please me 中等傭兵支援プログラムぅ!」
『警戒を怠らないで下さい』
迸る激情のままに、シュナイダーMT部隊の殲滅を完了した。
オリ主:"Bestie" Night Shade。英語で書くと少しかっこいいが、カタカナにすると名前が長くて呼びにくい。趣味は競馬で機体名も馬の名前からとっている。しょぼい動機で大事件を画策している阿呆。頭が馬鹿。
主治医:口が悪いお医者さん。ルビコニアン側に人脈があり、今回はBAWSから依頼を引っ張ってきた。公示予定の依頼を掠めてきたのは内緒。当人は名前を名乗るつもりが無く、誰も名前を詮索しないので患者の好きに仇名をつけられている。