ドラゴン娘の日常の裏ゾーン   作:イケヅキ

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 初めまして。イケヅキと申します。
 普段は大学や大学内外の様々な活動に忙殺されながらその合間にちびちびと物書きをしています。
 さて、本作は私がよく遊んでいるカードゲーム、デュエル・マスターズ、厳密にはその派生作品である「ドラゴン娘のどこでもないゾーン」及び「ドラゴン娘になりたくない!」が題材となっております。
 昨今のデュエル・マスターズではオンラインストア限定で擬人化クリーチャーのカードセットが発売されたり、通常パックの特殊レアリティに擬人化クリーチャーのカードが割り当てられていたりします。先述した2作品は前者のカードセットの女の子たちが活躍する作品なのですが、現状通常パックの女の子たちは出番が一切ないのです......それにモヤモヤして「通常パックに収録されたドラゴン娘たちの活躍が見たいなぁ......あ、書けばいいのか」というなんとも単純な思考に至り、こうして書くに至ったというわけです。
 とまぁ、凄く軽いノリで書いています。稚拙な文ではありますが、楽しんで読んでいただければ幸いです。
 さて、長ったらしい前置きはこれくらいにして。


 それでは、本編へどうぞ。


日常の裏を生きる少女

 あなたは、自分の日常について考えたことはあるだろうか。

 ある人にとってそれは幸福なもので、またある人にとっては退屈なものなのかもしれない。どう感じるかは人それぞれだ。その感覚は誰も否定することはできない。

 しかし、これだけは覚えておいてほしい。その日常は見知らぬ誰かの献身によって築かれているものだということを。

 

 …………

 

「ハァッ......! ハァッ......!」

 

 闇に包まれた道を、息を切らしながら人影が進んでいく。まるで、猫に追いかけられているネズミのように。

 いや、ようにではない。事実、逃げているその存在は人ではなく、人間大の()()()()()()()だ。

 

「どこへ逃げようというの?」

「ヒィッ!」

 

 ネズミとは対照的に、一切息を切らさず冷静に道を歩む制服に身を包んだ少女が1人。一見どこにでもいるような普通の少女だが、よく見るとその手には彼女の身の丈ほどあろう禍々しい大鎌が握られており、頭には菫色の美しい角が生えている。

 誰もがその姿その態度を見れば気づくだろう。そう、彼女こそがこの追走劇の猫だ。

 

「火文明は闘争の世界と聞くけれど、あなたは真反対。闘争に怯え、逃げ続ける臆病者。正にネズミね。」

「ウルサイッ! 闘争ノ世界ニモ臆病者ハイル! 俺タチノヨウナ弱イ種族ハアノ世界デハ生キラレナイ!」

 

 焚き付けられたネズミは弱弱しくも怒号を吐き出す。しかし、少女は一切動じず、冷静に言葉を紡ぎ続ける。

 

「弱い種族ね......まるで被害者のような口ぶりだけど、この世界においてはあなたは加害者よ。多くの人を傷つけた極悪なね。」

「黙レッ! アノヨウナコト、アノ世界デハ些細ナコト! 寧ロヤラレル方二問題ガアル!」

「......あなた......臆病なうえにそんないじめっ子みたいなことも言うのね......臆病者から小心者に評価を改めるべきかしら......まぁ、いいわ。評価がどうあれ、あなたを捕獲するという結論に変わりはない。それに鬼ごっこにも飽きたわ。そろそろ終わりにしましょうか。」

 

 少女は獲物に狙いを定める虎のように、ネズミを注視し、大鎌を構える。

 鋭い目つきに、恐らくこれから自身に振り下ろされるであろう刃に怯えながらも、ネズミは精一杯の大声で啖呵を切る。

 

「ヘッ! オワラセルダッテ!? オマエハ俺ノスピードニツイテコレナ.....」

「『スクランブル・ブースター』」

「......へッ?」

 

 少女が呪文のような一言を発した途端、ネズミと少女の間合いが急激に縮まった。まるで少女が瞬間移動したかのように。

 あのような啖呵を切ったのだ。ネズミは自身の足の速さに自信があったのだろう。しかし、少女の間合いの詰め方はネズミの想像を絶するものだった。自身の長所をあっさりと越えられたネズミは呆然としながらも悟る。「もう、逃げられない」と。

 

「チェックメイトよ。 『魔王の傲慢(ザダン・スペルビア)』!」

 

 刹那、少女は手に持っていた大鎌をネズミに向けて振りかざす。

 月の光に照らされ、より禍々しさを増した大鎌の刃は、いとも容易くネズミの身体を切り裂いた。

 

「ク......ソ......」

 

 致命傷を受けたネズミは、地に伏し、弱弱しくも恨めしそうな声を漏らし、少女を睨みつける。しかし、所詮はネズミの威嚇。猫である彼女を恐怖させることはできない。少女は気にせず、ネズミに近づき語り掛ける。

 

「あなたは小心者よ。でも、賢くはあったわ。あなたは自分を弱いとは言ったけれど、戦いはなにも力だけじゃない。知恵を絞り、賢く立ち回るのも1つの戦い方だわ。人間もそうやってこの星の頂点に君臨したのよ。」

「......オマエタチモ......同ジダッタノカ.....」

「えぇ」

「ドウリデ......勝テナカッタワケダ.....」

「でも、案外わからなかったかもしれないわよ? 事実あなたは私たちから10回も逃げることに成功したのだから。」

「フン......オ世辞ハイイ......本題二入レ.....」

「あら、そう? なら本題に入るわ。」

 

 少女はそう言うと、胸のポケットから何かを取り出す。それは1枚のカードのようで、裏面は青の背景に黄色い卵のようなイラストが描かれており、表面はただ灰色の枠のようなものしか描かれていない不思議なものだった。

 

「今からこれにあなたを封印する。そしてあなたを元の世界に帰すわ。傷は封印すればすぐ癒えるから安心してちょうだい。」

「ワカッタ......ソレガ......()()()ダモンナ.....」

「えぇ。それが()()()よ。じゃあ、封印するわね。」

 

 ネズミにカードをかざすと、カードが輝きだし、ネズミの身体が光の粒子となって吸い取られ始める。

 

「ナァ」

「なにかしら?」

「オレ......ツヨクナレルカナ.....」

「えぇ。なれるわ。きっとね。」

「ソウカ......ナラ......頑張ルカ.....」

 

 弱弱しくも覚悟を決めたような、そんな呟きを残し、ネズミはカードに封印された。

 

「『お騒がせチューザ』、封印完了」

 

 少女はカードを確認しそう呟くと、カードを胸ポケットにしまい、別のポケットからスマホを取り出して、通話アプリを起動した。

 

「もしもし? ルアよ。例のネズミ、捕まえたわ。」

『お疲れ様です。ルアさん。全体報告は私の方からしておきますので、今日はゆっくり休んでくださいね。カードは明日の活動の際に持ってきてください。』

「えぇ。わかったわ。ありがとう。それじゃあまたね。」

『はい。それでは。』

 

 簡単な会話を済ませ通話を切ると、少女はその場で背伸びをして疲れた筋肉をほぐし、スマホで時間を確認する。

 時刻は午後11時。大体の家庭は寝静まった頃だ。

 

「今日もこんな時間になってしまったわね。さっさと帰って寝なきゃ」

 

 少女はそう言うと手に持っていた大鎌と、頭の角を消滅させ、身なりと周辺をを軽く見まわし、異常が無いことを確認してから帰路についた。

 この出来事を知る者は、彼女とその関係者しかいない。ただ日々を生きる無垢な市民は、自身の日常の裏でこのような出来事が起こっているとは知らず、各々の日常を謳歌するのみだ。

 しかし、彼女たちは確かに存在する。日常の裏ともいえる領域(ゾーン)に。

 そんな裏の領域で生きる彼女の名は『細工 ルア(サイク ルア)』。常日頃、日常の裏側でこの世界を守っている存在、『ドラゴン娘』の1人だ。

 

 

 この物語は、そんな彼女たちの日常と戦いの物語である。




用語解説

ドラゴン娘
 日常の裏で世界を守っている龍の力を宿した少女たちの総称。その仕事は日常を脅かす超常的な存在、クリーチャーを捕獲・封印し、元の世界へ送還させること。
 普段は彼女たちも、各々の日常を生きている。

クリーチャー
 突如として日常に現れ始めた超常的な存在。彼らにはそれぞれ能力があり、それを用いて日常を脅かす者もいれば、それを活かして人間社会に溶け込む者もいる。ドラゴン娘が捕獲対象にしているのは後者の方。
 また、ドラゴン娘たちに宿っている龍の力も龍型のクリーチャーに由来するものである。

呪文
 クリーチャーやドラゴン娘のような存在に備わっている力の源、マナを使用することで発動できる魔法のようなもの。様々な種類があり、組み合わせることで強力な力を発揮することもある。
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