ドラゴン娘の日常の裏ゾーン   作:イケヅキ

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ある生徒会会長の朝

 ピピピ......ピピピ......と、無機質なアラーム音が私の部屋に繰り返し響く。

 正直、起きたくない。昨日は寝るのが遅かったから。あと2時間は寝ていたい。だって6時間しか寝ていないから。強烈な睡眠欲に屈して、ふかふかのベッドという名の海に溺れていたい。ベッドさんだって言ってるわ。「あと少しくらい寝てもいいんじゃない?」と。

 けれど。私は甘美な誘惑を押しのけて起き上がる。だって私は生徒の模範となるべき立場。二度寝して遅刻しようものならば私の威厳は底に落ちる。そんなことあってはならない。

 故に。その誘惑には屈しない。屈するわけにはいかない。悪いわね。ベッドさん。そのお誘いはまたの休日にでも。

 

「さぁ、身支度をしてしまいましょう。」

 

 ベッドから降りて、窓を開け放つ。爽やかな朝の風が部屋に入り込んでくる。

 こうして、私、細工ルアの1日が始まった。

 

 .........

 

「おぉ、細工!おはよう!今日も早いな!」

「おはようございます。先生。」

 

 校門の前にいつも立っている生徒指導の先生に簡単な挨拶をして、校門をくぐる。時刻はまだ7時半。私以外に登校している生徒はそんなにいない。いても部活動の朝練がある生徒くらいかしら。中には6時過ぎに登校している人もいると聞くけれど、よく起きられるわよね......素直に尊敬するわ。

 

 .........

 

「おはよう。......まぁ、誰もいないのだけれど。」

 

 ここは生徒会室。高確率で私が朝一番に出向く場所。大体朝はここで生徒会の仕事をしてホームルームまでを過ごしている。

 ここにきている時点で何となく察しは付くと思うけれど、私はこの学校、私立桜龍高等学園の生徒会会長をしている。

 主な仕事は生徒側の学校運営ね。部活動や委員会の予算制定とか、学校関連の催事に出席したりとか、基本は普通の高校とは変わらない。さて、今日は何をしようかしら......

 

「そういえば複数の部活動から予算に関する嘆願書が届いていたわね......大体提出組織と内容は察しがつくけれど、一応、目を通しておかないと......極稀に正当な物が混ざっていたりするし......」

 

「はぁ......」と深いため息を1つついて、書類提出用のポストを開く。

 中には予想道り5枚の嘆願書が届いていた。

 

「これは......いつものパターンね......」

 

 この学校で予算関連の嘆願書を送ってくるのは大体、空手部、水泳部、テニス部、ゲーム部、美術部の5つ。そして毎回その内容は常軌を逸している。そしておそらく今回もそう。

 正直言って読まずに破り捨てたいところだけど、これも生徒会の仕事。届いたからには読まなくてはならない。

 

「まずは空手部からね......えっと『強者になるためには厳しい環境での鍛錬が必要じゃ。故に北極へ遠征をしたい。ついてはその分の予算を追加願う。』......却下よ。」

 

 厳しい環境での鍛錬までは分かるけど何でその目的地が北極なのよ!せめて山奥とかにしなさい!それはそれで危ないけど!せめて行き先を国内に変更させる必要があるわね......次。

 

「次は水泳部ね。何々......『泳ぐ力を鍛えるにはどんな荒波にも勝る力が必要ばい!だから、荒波発生装置を導入したいのでその分の予算を追加してほしいばい!』......却下。」

 

 そんな装置どこで売ってるのよ!それに導入するにしても使い道に限りがありすぎるわ!せめて授業でも活用できそうなものなら検討したけど、こんな得体のしれないものに予算はおろせないわ!......次。

 

「気を取り直して次はテニス部ね。『テニスにはSpeedyな動きとPowerfulなShootが必要ですわ!ついては高性能テニスマシン用の予算を追加してくださいませ!』却下。」

 

 嘆願内容自体は正当な物よ。でもね!何回目よ!去年もひと月に1回はテニスマシンを壊しては、そのたびに嘆願書を送ってきてたわよね!流石に限度があるわ!物は大事になさい!次!

 

「今度はゲーム部ね。どれどれ......『ゲームに使用する端末が壊れた。ついては新しいものに買い替えるので予算の追加を求める。』微妙なラインだけど......さすがに却下ね。」

 

 昨今ではeスポーツに力を入れる学校も増えたというけれど......ゲーム部としての実績が現状ない以上は予算を下ろすのは無理ね。ただ、エースの実力はかなりのものとも聞くし、学外での実績は非常に多いそうだから、先行投資も必要なのかしら......これは少し話し合いをする必要があるわね。

 というか、珍しくまともな嘆願書だったわね......なんか少し肩透かしを食らった気分だわ......まぁいい。次が最後よ。

 

「最後は美術部ね......えーっと......『備品用の予算が尽きたから予算の追加よろしくでし。』却下!」

 

 内容はシンプル!けれど書いてあることは自業自得!私立だからって財源は無限にあるわけじゃないのよ!芸術に対する情熱は素晴らしいけれど節約くらいはしなさい!

 

「これで全てね......はぁ......まだ朝なのにもう疲れたわ......」

 

 常軌を逸した嘆願書の内容に私はぐったりと机に突っ伏す。一体どう過ごしたらこんな嘆願書が書けるのかしら......いや、ギリギリまともよりのモノもあったけど。

 

「とりあえず読み終わったし、ファイリングしなきゃね......」

 

 大きなため息をつきながら嘆願書をファイリングするため体を起こすと、不意に生徒会室の扉が開いた。

 

「そのため息......さては嘆願書を読んでいたのかな?」

 

 そう言いながら1人の女子生徒が生徒会室に入ってくる。

 まるで曙の空のような美しい瞳に、ツインテールにまとめた桜色の髪をなびかせている彼女は流譜 ルラ(ルフ ルラ)。私の幼馴染にして、生徒会メンバーの1人。

 

「正解よ。まったく......予算を何だと思っているのかしら......!」

「まぁまぁ。気持ちはわかるけどそんなにカリカリしすぎないで?怒りすぎるとせっかくのかわいい顔が台無しになっちゃう。」

「わかってるわよ......」

 

 私は怒りを鎮め、机の引き出しから嘆願書用のファイルを取り出し、その中に新しい嘆願書をしまった。

 これで少なくとも1カ月は嘆願書を見ることは無いでしょう......あぁ、でも後で返答はしておかないとね。......でないと殴りこまれかねないし......

 

「そういえばルアちゃん。」

「何?ルラ。」

「校長先生が放課後、校長室に生徒会メンバーで来るようにって言ってたよ。」

()()()?」

「だね。」

「わかった。放課後に出向くとしましょう。それに、このカードも渡さなきゃいけないし。」

 

 私は胸ポケットから1枚のカードを取り出す。

 一見トレーディングカードゲームのカードにも見えるこれは、その見かけとは裏腹にとんでもない代物だ。

 そしてこれは私たちの秘密にも関係するものでもある。

 え?その秘密は何か、ですって?それは......

 

 私たちが()()()()()()()宿()()()()()()()()ということよ。




登場人物紹介

細工 ルア
本作主人公にして私立桜龍高等学園2年生の少女。普段は生徒会会長としてその業務に忙殺されながらも、自他ともに厳しく、威厳のある振る舞いをしている。しかし、実際は非常に優しい性格であり、そういった点から生徒達からは慕われている。

流譜 ルラ
私立桜龍高等学園2年生の少女。ルアとは幼馴染であり、同じく生徒会所属。非常に穏やかかつ、世話を焼くのが上手いため、生徒からはよくお母さんと形容されている。本人的にはそこまでではないと思いつつも、嬉しさを感じている模様。


用語解説

私立桜龍高等学校
ルアやルラが通う私立の高校。名前にも桜が入っているように、桜が非常に綺麗なことで有名であり、地域ではちょっとした観光スポットになっている。

生徒会
ルアを生徒会会長とした学校運営組織。学内における予算の配分や催事への生徒代表としての出席、学校生活の向上など、様々な仕事を行っている。
一見普通の生徒会に見えるが、実は......?
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