ドラゴン娘の日常の裏ゾーン   作:イケヅキ

4 / 5
ある生徒会の夜

「ねー。かいちょー。」

「何?」

「かいちょーの唐揚げちょうだい?」

「良いわよ。ただ、チヨは私に何をくれるのかしら?」

「うーん......肉巻きアスパラでどうかな?」

「決まりね。はい、どうぞ。」

「やったー!じゃあ、ボクからもどーぞ!」

「ふふ。ありがとう。」

「これが俗に言う尊いというものなのでしょうか?」

「そうねぇ。確かにこれは尊いかも。」

「えぇ。何だか仲良し姉妹のやり取りを見ているみたいで和むわね。」

 

 日が完全に沈み、空には星が輝き始める頃、校長先生の依頼で学校に流れる「開かずの教室からの声」がクリーチャーの仕業かどうかを調査する事になった私たちは生徒会室で夕食を摂っていた。

 

「しかし、まさか学校に泊まることになるなんてねぇ......」

「校長も少しは無茶ぶりを抑えてほしいものだわ......」

「夕食代が支給されたのは良い点と言えますが、引き受けた瞬間に条件を追加してくるのは些か不公平です......」

 

 3人は少し重めのため息を吐く。

 3人の言う通り、依頼を受けたは良かったものの、私たちは校長の唐突な発案で学校に泊まることになってしまった。

 流石に学校に泊まるのは予想外であったし、何より家にどう説明すべきか思いつかなかった私たちは最初はちょっと反発したけれど、情報を聞き込むまでもないくらい事件に関して情報が集まっていたのと......

 

「失礼します。天文部です。」

「どうぞ。」

「推定ではありますが、11時くらいに流星群が来ますので、それまでには屋上に来てくださいね。」

「分かったわ。知らせてくれてありがとう。」

「いえいえ!では私は先に屋上で天体観測用の機材のセッティングをしてますね〜。」

 

 たまたま天文部が屋上で天体観測をするという事で、泊まる動機として絶好の理由を見つけたため、大人しく発案も受け入れる事にした。被害が出ている以上、これ以上被害が出ないようにできるならそれに越したことはないしね。

 

「今は夜7時だけれど、例の声が聞こえるのは8時代だそうだから、事実上のタイムリミットは3時間......その間に噂の真相を確かめなければならないわねぇ。」

「そうね。時間内に真相が分かれば良いのだけれど。」

 

 ルラとリカお姉様が少し不安そうに呟く。

 いくら調査があるからと言って、天文部と行動を共にすると言った以上、当然、天文部の活動にも参加して怪しまれないようにしなければならない。

 何より、私たちがドラゴン娘だということがバレてはいけない。

 私たちはあくまでクリーチャーに近い存在であるだけで、完全にクリーチャーというわけではない。つまり、本物のクリーチャーのように自身の姿を隠匿する力までは持っていない。故にドラゴン娘の姿を見られれば、確実に混乱を招くし、その後の活動や学校での立場にも影響を及ぼしかねない。そういった観点から、私たちはドラゴン娘としての力と活動を秘密にしており、今の状況は割とリスキーな状況でもある。不安の声が上がるのは当然だ。

 

「不確定な未来を思案するより、今ある情報を再確認するのはいかがでしょうか?」

 

 不安を払うようにエイドが提案をしてきた。もっとも、本人的には合理的な判断をしただけなのかもしれないけれど。

 

「それもそうね......エイド。校長先生が話した今回の依頼に関する情報を整理して話してもらえる?できれば板書付きで。」

「かしこまりました。」

 

 エイドは承諾の意の会釈をして、生徒会室の黒板に向かい、白いチョークを1本手に取って板書しながら情報を整理し始めた。

 

「今回の依頼は『開かずの教室から聞こえてくる謎の声』についての調査です。まず、これに起因すると断定できる実害についてですが、校長先生曰く、3件発生しているとの事です。」

「言い方は良くないけれど、噂になっている割には少ないのね。」

「噂の主体はあくまで声です。声が聞こえるだけであれば実害とは言えません。また、噂の広まった原因は被害にはあわず、声が聞こえただけという生徒が大勢いるからです。噂の広がり具合と被害者の数が比例しなくてもおかしくはありません。」

「確かにそうね......ごめんなさい。話の腰を折ってしまったわ。」

「いえ。お気になさらず。続けますが、怪我の程度や内容に関しては振れ幅がありますが、一方で、状況については複数の共通点が見られます。」

「それはどんな?」

「まずは時間。先程ルラ様も仰っていましたが、被害者が声が聞こえ、被害にあった時間は夜の8時代です。」

「話によれば、被害者のみならず、声が聞こえただけという生徒も皆8時代と言っているみたいね。」

「次に場所。これは既知であるとは思いますが、3階の中央階段近くに位置する使用用途不明の教室、通称開かずの教室です。」

「扉は固く閉ざされていて、かつ、学校側も対応する鍵を紛失してしまったせいで開かないらしいわねぇ。」

「そして最後は事象。被害者全員は口を揃えて「貴様ぁっ!宿題を忘れたなぁっ!」という謎の声と共に足音がし、目に見えない何かに追いかけられ、その結果壁に衝突したり、階段のステップを踏み外し、転落してしまったと証言したそうです。」

「謎の声と目に見えないのはクリーチャーの姿を隠匿する力を使っていたと仮定すれば辻褄が合うわ。当然、これだけでは断定できないけれどね。」

 

 実害自体はあまり多くはないけれど、共通点は多く見られる。噂が流れているという背景があるものの、全員の証言が一致している点は流石に偶然とは言いきれない。だからこその調査というわけね。

 

「次に対応についてです。まず、声の原因がクリーチャーであった場合はいつも通り捕獲・封印の対応を行います。しかし、先程リカ様が仰られたように、必ずしも原因がクリーチャーのものであると断定はできず、何らかの要因で声のようなものが聞こえたという可能性や、噂を起因とした共通認識による幻聴の可能性も考えられます。」

「可能性ではあるけれど、人間の感覚は不思議だからねー。まさかも当然有り得るよねー。」

「はい。故に、原因がクリーチャー以外のものであった場合、その原因を特定できる限り特定し、報告書にまとめる対応を取ります。」

 

 今回はあくまで調査。故に、どちらに転ぼうとも結果を示す必要がある。その結果がクリーチャーならば封印したカード、そうでなければ原因に関する報告書になる。

 

「そして最後にクリーチャーと戦闘になった場合についてですが、今回は学校という普段は多くの生徒が使用する公共施設での戦闘になります。故に、安全の観点から建物自体や物品に傷をつけるのは望ましくなく、可能な限り傷をつけないように細心の注意を払いながら戦闘を行わなければなりません。」

 

 当たり前ではあるけれど、ある意味一番重要ね。小さな傷ならまだしも、大きな傷を残したり、派手な破損をしたりしようものなら、生徒を危険に晒しかねないし、何より私たちや天文部が容疑者として疑われかねない。どちらにせよそれは避けなければいけないわ。

 

「以上で情報の整理を終えます。質問はありますか?」

 

 板書を終え、くるりとこちら側を向き、エイドは質問の有無を問うてくる。

 

「私は特にないわ。」

「ボクもないかなー。」

「私もないわぁ。」

「同じく。」

 

 説明が非常に分かりやすかったこともあって、質問は特になかった。

 

「かしこまりました。では、これにて情報の整理を終えます。ご清聴ありがとうございました。」

 

 エイドは軽く会釈をし、スタスタと自分の席へと戻った。

 情報の整理は済んだ。あとは8時代になるのを待つのみ。さぁ、鬼が出るか蛇が出るか。真相解明といきましょう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。