口に包帯を巻き、左右違う色の瞳を持つ男……蛇柱・伊黒小芭内は夜の閑散とした町の通りを歩いていた。
最近この町では、人が消えるだとか、異形の化け物を見ただとかいう通報が相次いでいるらしい。
鬼殺隊の隊士を何人も送り込んだが、そのほとんどが消息不明、生き残ったものは四肢をもがれ、死んでいないのがおかしいような状態にされていたのを発見された。
そのため、柱である俺が派遣されたというわけだ。
「まったく気持ち悪いな……」
小芭内は、蛇行刀を引き抜くと、後ろへ振りかぶる。
何かが悲鳴を上げると、前方に転がった。
「なんだ? これ」
脚だ。脚だけがそこにはあった。口のようなものも、もものあたりに生えている。
「異形にしても珍しいな」
間髪入れず、次の一撃を叩き込んだ。頸と思われる部分が見当たらないため、みじん切りにする。
どこかが弱点だったのだろう。脚鬼は灰となり崩れ落ちた。
「なんだ。もう鬼は死んでるじゃねぇか。俺様の出番が!」
「伊之助落ち着け。鬼の匂いはまだ消えてない」
「もう帰ろうよぉ……」
大声で喚き散らす猪頭と、黄髪の剣士、見知らぬ少女、そしてあいつは……
「竈門炭治郎。弱いやつは帰れ」
柱合会議のときに議題に上がった。鬼を連れた剣士、竈門炭治郎だ。こいつらもここへ派遣されたらしい。
「あなたは、柱の伊黒さん!」
4人はこちらに気づくと、声をかけてきた。雑魚と話しているほど暇じゃないんだが。
「隊士が何人も死んでる。十二鬼月がいるかもしれない。足手纏いの厄介者は引っ込んでいろ」
冷たく言い放つ。
「俺も戦います! こんなところで逃げてはいられない、十二鬼月にすら勝てないで、鬼舞辻無惨に勝てるはずがない!」
「……口だけじゃなく行動で示せ」
こういうタイプの人間は何を言っても言うことを聞かないだろう。そのせいで、こいつらがどんな目にあっても、俺の知ったことじゃない。
「⁉︎ 鬼のにおいが濃くなった‼︎ みんな気をつけろ! くるみちゃんは俺から離れないで!」
「え?」
炭治郎が、状況を理解しきれていないくるみと、皆に注意を促す。
しかし俺はもっと先に気づいていた。
「蛇の呼吸 壱ノ型 委蛇斬り」
建物の影から飛び出した鬼に小芭内は肉薄した。
円形の軌道を描く一閃で鬼の腕を切り裂いた。
「速い……! 刀を抜くのが見えなかった」
炭治郎が呟く。だが、俺は目の前の鬼に目を向けていた。
瞳に刻まれるは、“下陸”
「十二鬼月‼︎」
黄色頭の剣士が猪頭にしがみつく。鬼を前にして何をやっているのか。
「柱と耳飾りの剣士……お前ら——」
その言葉が最後まで紡がれることはなかった。言い終える前に鬼は蛇行刀によって一刀両断される。
すると、鬼の腕から口が生えた。
「さすがは柱。この先の“奇怪林”で待ってるぜ?」
再生できずに鬼は崩れ落ちる。
「十二鬼月倒したの? これで帰れるよぉ」
黄色頭が喜びを表すが、そんなはずがなかった。
「下弦とはいえ、弱すぎる。十二鬼月じゃない」
小芭内は思案した。おそらくは、見た目だけ十二鬼月に似せた偽物。斥候といったところだろうか。
「まってください!」
炭治郎が声をかけてきたが、小芭内はすぐに走り出す。少しだが嫌な予感がした。たまたま近くの地域を探索していて、一緒に行くと言った甘露寺を連れてこなくて良かった。
帰ったら、甘露寺に何をご馳走しようかと考えながら小芭内は森を駆け抜けた。