“奇怪林”。聞き込みをしたところ、すぐに場所が分かった。昔からこの辺の人からは気味悪がられ、あまり人が寄りつかない森があるらしい。人が惨殺された事件があったのだとか。
俺、竈門炭治郎は森に踏み入ってから、空気が変化するのを感じた。
(那谷蜘蛛山の……十二鬼月にも似た匂いだ。油断はできない)
柱の伊黒さんは先を進んでいるようだ。すぐさま走り去ってしまったため、別行動するはめになってしまった。
「なんでこんな怖いところに毎回行かないといけないの⁉︎ ねえなんで⁉︎」
善逸は伊之助にしがみついて喚き散らしている。この調子では、鬼と戦うのは無理そうで心配だ。できることなら伊黒さんと共に行動したかった。
くるみが小芭内の速度についていけず、背負おうにも両手が塞がると鬼と戦えないため、仕方なくここまで歩いてきた。だから小芭内とは別行動になってしまっている。
禰豆子に背負ってもらおうかとも考えたが、一向に起きる気配がない。
「伊之助。どっちに向かえばいいか分かるか?」
「獣の呼吸 漆ノ型 空間識覚」
伊之助が地面に刀を突き刺し、気配をさぐる。この技の途中は伊之助自身が無防備になるため、誰かが護衛をする必要があるのだが、近くに鬼の匂いはしないため、今回はその心配はなかった。
「あっちだ! 強ぇ鬼の気配を感じるぜ! 猪突猛進! 猪突猛進!」
「ちょっと待て、伊之助!」
刀を地面から引き抜くと、伊之助は走り出した。
だが、森の雰囲気に気押されたくるみを置いて行くわけにはいかない。
くるみと手を繋ぐと、炭治郎はすぐ後を追い、善逸は置いていかないでと叫びながらついてきた。
「ついでに何体が雑魚がいるから任せるぜ!」
「それを先に言え!」
伊之助は道中の鬼を無視して、どんどん先へと進む。そのせいで、伊之助に気づいた鬼が全て炭治郎たちのほうへ集まってきた。
(ここの鬼……異形ばかりだ)
腕が2本以上ある鬼、四足歩行の鬼、挙げ句の果てには頸が二つある鬼もいた。頸と胴体の比率がおかしく頭でっかちの鬼なんかもいる。
とにかく、見た目が変なのだ。
(さっき、くるみちゃんを襲ってた鬼もそうだけど……選抜試験の時の手鬼を思い出して嫌だな)
「水の呼吸 肆の型 打ち潮!」
(再生能力が、普通の鬼よりもやや高いような気がする。でも、不思議なことに、血鬼術を使う鬼はいないみたいだ)
「善逸! くるみちゃんを守ってくれ! くるみちゃん、目を閉じているんだ」
善逸にくるみを任せると、炭治郎は積極的に鬼を斬りはじめる。
「ぎぇぇぇぇ‼︎」
奇声を上げながら、巨大な腕が炭治郎を叩き、吹き飛ばした。
(腕だ。腕だけが、宙に浮いてる)
肩から先の腕。人が乗れる馬車ほどの大きさはあろう、巨大な右腕が宙に浮いていた。弱点である頸がない。
(落ち着け。落ち着くんだ。頸のない鬼とは那谷蜘蛛山でも戦った)
「水の呼吸 弐の型・改! 横水車!」
腕鬼を一刀両断した。
「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦!」
刀に腕が巻き付くようにして鬼をねじり込むと、地面に叩きつけた。鬼は崩壊していっている。
(良かった。このタイプの鬼は再生力がそこまで高くない)
「雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃」
意識を失った善逸が抜刀し、頸が二つある鬼を斬るのが見えた。
一方の頸が切断されたものの、鬼は死ぬことがなく、頸が再生していく。
「あ゛……がが」
「雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃」
再生しきる前にもう一つの頸を落とすと、鬼は崩れ落ちた。
(頸が一つじゃない鬼なんているのか⁉︎ なんなんだここは……これが十二鬼月の力なのか)
「おい」
「……⁉︎」
(鬼だ。鬼の匂いだ。どこにいる⁉︎)
炭治郎の近くにいた鬼を全滅させた途端、急に鬼の気配が現れるのを感じた。今までの鬼よりも強い。
「ここだよ!」
下から声がしたと思うと、地面を突き破り、鬼が現れた。その鬼は炭治郎の左脚を掴むと、そのまま振り回し、投げ飛ばす。
「か、はっ!」
木に叩きつけられたが、受け身を取り、すぐに体勢を立て直した。
「耳飾りの鬼狩り、お前を殺す」
(地面に潜っていたのか……気配に気づくのが遅れた。しかもこの鬼、俺を知っているのか⁉︎)
右腕の筋肉だけが異様に発達したこの鬼の瞳には“下陸”と刻まれていた。
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