累が当時するのはまだ先です。
伊黒小芭内は森の最深部と思われる場所へ到着していた。
(ここまでは雑魚しかいなかった。どれも異形の鬼ばかり)
そこそこ大きな館のような建物だ。気配からして、この中に十二鬼月がいるのだろう。
(嫌な予感がしてたが、気のせいだったようだな)
この感じだと、手に負えないような強力な鬼はいないだろう。後ろを追う3人にも危険はないはずだ。
だが、柱でもない3人に十二鬼月の相手をさせるわけにもいかず、小芭内は建物に足を踏み入れた。
ふと左に殺気を感じ、抜刀する。雪玉のようなものが連続で飛んでくる。小芭内はすばやい剣技で全て打ち払うと、後ろにも殺気を感じ、館の奥へ踏み入り回避した。
「待っていたわ、柱」
額にツノを生やした女の鬼だ。瞳には“下肆”
(十二鬼月……下弦の肆か。冨岡の情報から察するに、こいつも数字以上の実力を備えている可能性がある。油断はしない)
「血鬼術 霜冷淡!」
下弦の肆が血鬼術を行使する。周囲の地面が盛り上がり、氷の壁が四方に立ち上がった。それと同時に複数の鬼も地面から現れる。
(逃げ道を塞いだか……無駄なことを)
「わたしの氷壁は柔らかく硬いのよ!」
「蛇の呼吸 壱ノ型 委蛇斬り」
誰も氷の壁の性質なんて聞いていないのだが。
周囲の鬼を斬りつけ、下弦の肆に接近する。下弦の肆は必死に氷の槍の血鬼術で行手を阻もうとするが全て避け、肉薄した。
近づかれたくないのが見え見えだ。
「血鬼術——」
「今更遅い」
「自縛氷」
今にも刀が鬼の頸に食い込もうとした時、鬼が爆散した。
(何⁉︎ 自爆だと?)
この部屋はそこまで広くなく、更に氷壁で覆われていたため、爆発の威力が収束する。あまりの威力に小芭内は防ぎきることができなかった。
(……蛇の呼吸は水の呼吸と違って防御に適した型がない……それが仇となるとは)
小芭内が立ちあがろうとすると、更に別の鬼の気配を感じた。
「血鬼術 魔魍怪魎・極‼︎」
先程までは部屋であったこの場所が揺れ動くと、巨大な異形の鬼が地面を突き破り出現した。
大小様々な手足が生え、体が常に流動的に蠢いている。驚くことに、複数の頭が体中から突き出ていた。他にも、体の一部が何かの動物のように変化している。
『俺は“下弦の陸”‼︎ 釜鵺! あのお方から力を認められた最強の鬼の一角だ!』
部屋一つ分はあるであろう巨大の、全ての口が同時に同じことを喋った。とても耳障りな声が反響する。
小芭内は立ち上がった。
「気色悪いな、悪鬼めが。さて、どれが本物の頸だか」
十二鬼月が2体もいるとは想定外だったが、先の一体は自爆してから姿が見えない。死んだのだろうか。
『柱よ。俺の患者たちはどうだった?』
「患者?」
『ここへ来るまで、何体か異形鬼を斬っただろ?』
察するに、道中にいた鬼はどうやら下弦の陸の血鬼術で異形化させられていたようだ。
『俺が手術してやってな。人間や鬼の手足をもぎ、別の鬼に移植してるんだよ。より高次な、より強力な鬼にするためにな』
「ああ、あのカス共のことか。弱過ぎて反吐が出た」
『なんだと? 死にたいようだな。どの道生かす気はないが。お前も俺の患者にしてやろう。血鬼術 喧噪波々!』
鬼は大きく体を後ろへ仰け反らせると、こちらへ音の衝撃波を放った。
(耳に悪い……音は防ぎようがないな)
様子を見るに、この鬼は耐久特化なようだ。この鬼自身はそこまで身体能力は高くはなさそうだ。先の音の血鬼術も、そこまでの殺傷能力はない。
「伊黒さん!」
「俺様も来たぜ!」
「……」
「竈門炭治郎か」
「俺も一緒に戦います!」
「こいつらは十二鬼月だ。下弦とはいえ想定よりも強い。雑魚が出しゃばるな」
3人を一蹴する。
「……! もう一体鬼のにおいがする!」
「何?」
小芭内が驚いた刹那、炭治郎の影から下弦の肆が飛び出した。
「ふぇぇ⁉︎ な、なに⁉︎」
「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦!」
くるみに飛び掛かろうとした鬼を、炭治郎はギリギリのところで迎撃した。
下弦の肆はまだ生きていたらしい。当然か。
「はぁ……はぁ……あんなので死ぬわけないじゃない……」
(弱っているな。そりゃそうか。死んで欲しかったがな)
「そっちの雑魚は任せる」
「はい!」
炭治郎らに肆を任せると、陸を斬るべく走り出した。
下弦の肆・零余子登場!
名前に零ってあるので、零度=冷たい=じゃあ雪(氷)で笑
釜鵺は名前に鵺って文字があるので
鵺=キメラ みたいなイメージです笑 なんかキモチワルイのを想像してください