「手こずってるな、どうしたのかな?まだ誰の核も破壊できてないじゃないか」
下弦の壱・魘夢は列車の戦闘車両の屋根に立っていた。
俺はいつも細心の注意を払って戦う。眠ってしまえば、柱だろうが何だろうが赤子と同じ。
だが念には念を入れて、鬼狩りを眠らせた後に下弦の弐を差し向けた。
魘夢が眠らせることで無力化し、轆轤が眠った鬼狩りを殺す。完璧な作戦だ。
だが何故。
「空の呼吸 弐ノ型 沖天の勢」
車両の天井を突き破り、何かが屋根へと着地した。
「あれぇ、起きたの? おはよう。まだ寝ててよかったのに」
弓を背負った男だ。刀を握っている。鬼狩りだ。
「壱! どういうことだ! 何でこいつは眠っていない!」
弓の男を追って、轆轤もやってきた。
「さぁ? そもそも血鬼術を食らってないのかな?」
弓男は口を開く。
「下弦の壱と弐か。外にも他の十二鬼月がいるようだし……最強の鬼の一角と言っても安いものだな」
(他の?)
魘夢が首をかしげる。
「貴様!」
だが、そのうちに轆轤は挑発に乗り飛び出した。
「おい馬鹿……」
「空の呼吸 壱の型 青天井の傾」
真弓の刀が轆轤の腕を切断する……と思われたが、刀は腕を切らずに滑った。
「!」
真弓は宙返りすると、後ろに飛び退く。
「俺の体は刀じゃ切れない……」
それが弐の血鬼術。摩擦力を操作する……抵抗が限りなく0に近くなることで、あらゆる攻撃が滑り、無に帰る。
「そして、俺の攻撃は」
轆轤は飛び上がった。真弓めがけて拳を振るった。
真弓は拳を避ける。その拳は車両の屋根に突き刺さり、大穴を開けた。
「衝撃が逃げない。だから実際の筋力を超える一撃を繰り出せる」
「俺のことも忘れちゃいけないよ……血鬼術 強制昏倒催眠の囁き」
魘夢は手の甲を真弓に向けた。そこから音波攻撃が発生した。真弓は驚いたように目を見開くと、よろよろと地面に倒れる。
その時、もう1人何者かがやってきた。
「お前が……!」
よく見ると、耳に飾りをつけている。無惨様がおっしゃっていた剣士だ。
「運がいいなぁ! 夢みたいだ! これでもっとあの方の血を頂ける! そしてもっと強くなれたら上弦の鬼に入れ替わりの血戦を申し込めるぞ!」
耳飾りの剣士……炭治郎にも血鬼術をかける。
「血鬼術 強制昏倒催眠の囁き」
しかし、一瞬よろめいたかと思うと、すぐに立ち上がった。
(眠らない?)
「水の呼吸 捨ノ型!」
炭治郎は魘夢に接近した。
「眠れ」
眠らない。
「眠れ」
何度血鬼術をかけても炭治郎は眠らない。
「ねーむーれー!」
(効かない? どうしてだ? いや違う、これは! コイツは何度も術にかかっている)
かかっていないように見えるが、炭治郎は一瞬はよろめいているのだ。それが表すことはただ一つ。
(かかった瞬間にかかったことを認識して覚醒のための自決をしているんだ)
夢の中だったとしても自決するということは、自分で自分を殺すということは相当な胆力が要る。
(このガキはまともじゃない)
今こいつは、死んだ家族の夢を見ている。家族からの責め苦を味わっているのに。
「言うはずが無いだろう! そんなことを‼︎ 俺の家族が‼︎」
徐々に炭治郎は近づいてくる。
「俺の家族を! 侮辱するなァァァァァァ‼︎ 」