十二鬼月・累の物語 〜Another〜   作:葵巴鈴蘭

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どこかの閑話で魘夢と轆轤の回想でも入れようかなー

間に合わなかったの…………笑





29話 霞柱

 列車は線路を脱線したまま、地面を抉り進む。

 

 まだかろうじて原型を保っていたらしい魘夢の頸が地面を転がった。

 

「悪夢だ……」

 

 轆轤の頸はすぐに真弓に射抜かれ、一瞬で消滅している。

 

 列車は酷いありさまだった。この様子では中にいる人たちはただでは済まないだろう。だが今は乗客に構っている余裕はなかった。

 

「すまん。俺のミスだ。まさか頸が斬られてなお無駄な足掻きをしてくるとは思っていなかった」

 

 まったくの無傷らしい真弓は倒れている炭治郎に言った。

 

 だがそれよりも。

 

 目の前では柱の時透無一郎と煉獄杏寿郎が鬼と激しい戦いを繰り広げていた。

 

「壱と弐は死んだか。本当は吸収したかったんだけどね」

 

 炭治郎の目が累を捉え、見開かれた。

 

「あ、耳飾りのお前。生きてたんだね。そういえばあの時は名乗り損ねたけど、なんて名前なの? 僕は累」

 

 杏寿郎と距離をとり、累は炭治郎に話しかけた。

 

「累イィィィィ‼︎」

 

「下弦の雑魚とはいえ、よく十二鬼月に勝てたね」

 

(あいつが下弦の伍。それに上弦もいやがるとは)

 

 柱が2人いるとはいえ、十二鬼月との実力は拮抗、いや上弦の鬼はまだまだ余力を残しているように思える。

 

(俺が加勢するか? いや、下手に上弦の参を刺激したら全滅する可能性もある。ならば)

 

「時透! 煉獄! ここは撤退——」

 

「お前もあいつらには及ばずとも、悪くない闘気だ。弓なんか捨てて白兵戦を楽しもう」

 

(……⁉︎ おいおい速すぎるだろ!)

 

「空の呼吸 青天井の傾‼︎」

 

 弓の間合いの内側に入られたため、刀を手に壱ノ型で迎撃を試みる。しかし何枚も上手な一撃には対応できず、後方の列車に叩きつけられた。

 

 遠くに、無一郎が地面に伏せているのが見えた。

 

(くそ……俺が邪魔したからか。均衡が崩れた)

 

 

 

 

 

 無一郎は猗窩座の激しい猛攻を捌ききれず、拳を脇腹に受けた。

 

「な……⁉︎」

 

 直撃はせず、掠っただけだ。にも関わらず無一郎は地面に叩きつけられたまま起き上がることができない。

 

 幸か不幸か、無一郎が倒れるのを見た猗窩座は加勢にきた他の隊士のほうへ向かっていった。命拾いしたということになる。

 

(今この瞬間見逃されたところで……僕は、もう)

 

 直接的な傷はほとんど受けていないのに、無一郎は疲労困憊で手が震えていた。いや、強者と対峙し怯えているだけかもしれない。

 

(あの弓……なんだっけ? 弓を背負った強い隊士がいるって聞いたことあるような……)

 

 しかし、その男も猗窩座を前に一瞬で吹き飛ばされた。

 

(ダメだな。終わった。応援が来てくれるといいけど。お館様、俺と煉獄さんは死ぬから、せめて四人、柱を頼みます)

 

『どうしてそう思うんだ? 先の事なんて誰もわからないのに』

 

(誰だ? 赤い瞳の……あ、柱合会議のときの)

 

 記憶障害で、何もかもすぐに忘れてしまう無一郎にしては、珍しく覚えていた。

 

 少し霞がかっているが、目の前に赤い瞳の人が立っている。竈門炭治郎?

 

『自分の終わりを自分で決めたらダメだ』

 

(君からそんなこと言われてない……そもそもまともに話したことすらないのに)

 

『絶対どうにかなる。諦めるな。必ず誰かが助けてくれる』

 

 結局人任せ? それは1番だめだ。

 

『一人でできることなんてほんのこれっぽっちだよ。だから人は力を合わせて頑張るんだ』

 

(誰も僕を助けられない。みんな僕より弱いから。僕がもっとちゃんとしなきゃいけなかったのに……判断を間違えた。自分の力を過大評価していたんだ無意識に……柱だからって)

 

『無一郎は間違ってない。大丈夫だよ』

 

(いくつも間違えたから僕は死ぬんだよ)

 

 猗窩座が、炭治郎や弓の隊士にとどめを刺そうとしているのが見えた。

 

(どうせみんな死ぬんだし。助けられたとしても、助ける価値もない)

 

『そんなことはない。人のためにすることは、巡り巡って自分のためになる』

 

 目の前の人間にかかる霞が徐々に晴れ始める。

 

『そして人は自分ではない誰かのために信じられないような力を出せる生き物なんだよ……無一郎』

 

(うん……知ってる)

 

 そうだ。僕の父は、炭治郎と……君と同じ赤い瞳の人だった。

 

 なんとか体に力を入れ、刀を杖に地面に膝をついた。

 

 それに気がついた猗窩座が振り向く。

 

「ほう、まだ動けるとは」

 

 炭治郎と目が合った。

 

「ごめん、でも僕は……」

 

「時透くんなら大丈夫!」

 

『無一郎なら大丈夫。さあ立って』

 

 炭治郎と父の姿が重なる。

 

 そうだ……父は杣人だった。息子である僕も木を切る仕事の手伝いをしていた——

 






勘のいい皆様は既にお察しでしょう。累と同じくらいに無一郎推しです() 活躍させますはい。
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