そーいえば伊之助善逸がモブになってた件……
(異空間……無限城……? ここに呼ばれたということは……)
上弦の陸・堕姫は内心、気が気ではなかった。普段は無惨様が自分に会いに来てくださるのである。呼び出されることは滅多になかった。
(まさか上弦が鬼狩りにやられたの……?)
十二鬼月上弦とは、陸である堕姫と同等かそれ以上の強さを持つ鬼により構成されている最強の鬼たちの総称だ。
誰がやられたのかは分からないが、堕姫ですら鬼狩りの柱を7人も屠っているのだ。それ以上の強さを持つ鬼狩りがいるなど考えたくもない。
地面に降り立つと、そこには壺が一つあった。少し離れたところには、階段の手すりにしがみつくようにして醜い老人がうずくまっている。
(伍と肆は生きてる……じゃあ誰が)
「これはこれは堕姫殿」
壺から手が生え、気色悪い鬼が姿を表す。上弦の伍・玉壺だ。
「何十年ぶりでございましょうか? わたくしはもしや貴女がやられたのではないかと心配で胸が苦しゅうございました!」
社交辞令を述べたように思えた玉壺は、通常なら目がある位置にある口を歪ませた。
「なんせ、上弦最弱ですからねぇ?」
自身の血管が浮き出るのが分かったが、堕姫はそれを無視した。この壺はこういう鬼なのだ。
「琵琶女! 無惨様はまだいらっしゃらないの?」
兄である妓夫太郎の姿も見えない。実は、訳あって2人は別行動をしていた。
「まだ御見えではありません」
空間を操作する血鬼術の使い手である、琵琶を携えた鬼は簡潔に述べるた。
「なら上弦の弐! 童磨さんは⁉︎」
童磨とは、記憶は朧げだがかつて死にかけていた堕姫を助けてくれた恩人である。兄である妓夫太郎と、無惨以外で堕姫が唯一気を許している鬼でもある。
「おうおうおう、久しぶりだねぇ堕姫ちゃん」
不意に背後から手が伸び、堕姫の肩に触れた。虹色の瞳を持つ彼は優しげな笑みを浮かべる。
「俺も皆を凄く心配したよ。大切な仲間だからなだぁ。誰も欠けて欲しくないんだ俺は」
久々の邂逅に、喜びを示そうとしたが、醜い壺が邪魔に入った。
「童磨殿」
「久しいな玉壺。それは新しい壺かい? 綺麗だねぇ」
どうやら玉壺は壺を新調したらしい。自分では傑作だと思っているようだが、堕姫からしてみればただの骨董品にしか見えない。
「お前がくれた壺、女の生首を生けて飾ってあるよ俺の部屋に」
「あれは首を生けるものではない……だがそれもまたいい」
「今度ウチに遊びにおいで。堕姫ちゃんもね。それよりも……」
童磨は奥に目を向けた。
「なんで下弦がいるのかな?」
下弦の伍・累。彼がここにいる理由を童磨たちは知らない。だがただ1人知る人物がいた。
「私が、説明しよう……」
童磨が目を見開いた。それに続くようにして玉壺も肩をびくつかせる。
上弦の壱・黒死牟。最強の十二鬼月にして、数百年間一度たりとも負けたことのない歴戦の猛者。
堕姫は遅れて、今ようやく黒死牟の存在を認知した。
「な、なによ、あん……」
「猗窩座が……死んだ」
文字の通り堕姫のことを眼中に入れず、黒死牟がこちらへと一歩足を踏み出す。
突如黒死牟から凄まじい圧が放たれ、十二鬼月たちはあまりの衝撃に硬直した。
「無惨様は……お怒りだ」
殺気に耐えられず堕姫は後ろに尻もちをついた。
「そんな、死んでしまうなんて。悲しい、1番の友人だったのに」
童磨にしては珍しく目頭を抑え、涙を流した。
上弦の肆である半天狗はヒィッと奇声を上げ、玉壺は驚いたように声を漏らした。
「まさか……それは悲しいですなあ」
玉壺は馬鹿にしたような笑いを隠そうともせず言葉とは裏腹に感嘆の意を示す。
「累は……その場に居合わせた……」
上弦の鬼たちは累がこの場にいることを忘れそれぞれの反応している。
黒死牟の圧が強まり、半天狗と堕姫が更に縮こまったところに、別の声が降る。
「黒死牟さんよお。俺の可愛い妹が足りねぇ肝を据えてここにいるんだからよお」
いびつに歪められた口からはギザギザの前歯が見える。顔をぼりぼり掻きながら現れた姿勢の悪い鬼は瞳に“陸”を宿している。
「もっと優しくして欲しいんだよなあ?」
「……妓夫太郎」
彼こそが真の上弦の陸である。
堕姫はあくまでおまけにすぎないのだが、彼女はそれを知るよしもない。
堕姫妓夫太郎と童磨の絡みはちょっとやってみたかった〜
多分、さん付けで会話するはず笑