十二鬼月・累の物語 〜Another〜   作:葵巴鈴蘭

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一応、時系列的には1話〜21話のどこかですね





閑話 虚狼神 零

 血のにおいがする。流れてきた血が目の前に血だまりを作った。

 

「れ、零ちゃん……あたしたち、ど、どうなるのかな」

 

 零の隣に倒れるように地面に手をつき、涙を流し絶望している少女……羽美(うみ)の目は既に希望を失っているように見えた。

 

 彼女らは狼によって取り囲まれている。

 

 近くには人間であったと思われる肉片が転がっていて、吐き気を催す空気が満ちていた。

 

 なぜこんな事になったのか……

 

 

 

 

「……はっ」

 

 狼のような、艶のある灰色の髪を腰まで伸ばした少女——虚狼神 零(うつろがみ れい)は寝床から飛び起きた。

 

「ゆ、め……夢か……」

 

 またあの時の夢。今も彼女を蝕み続けている永遠の呪いとも言える、零を取り囲む日常が一変したあの日。

 

「チッ……」

 

 零は舌打ちし、身支度を整えると鉛色をした大剣を手に取った。

 

 そう、彼女は鬼殺隊、それも甲の階級の隊士だ。甲というのは柱になるための最低条件でもあり、柱を除いた鬼殺隊の最高の位だ。

 

 

 

 いつも通り、鴉に導かれるままに彼女は鬼の元へと向かった。巨大な鬼だ。

 

「ははは! 俺様の体は鋼よりもなお硬く、どんな大木よりもなお太い! 最強の耐久力を誇るんだよ!」

 

 なるほど。確かに鬼は三十尺はありそうなほどの巨大をしていた。強度もそれなりにはあるらしい。

 

「ふん……雑魚か」

 

 零は見かけ倒しの小物に失望し、ため息を吐く。

 

「俺様は十二鬼月になる男! 2枠空いてる今こそその時だ!」

 

 巨大な腕か振り下ろされ、辺りを薙ぎ払った。腕だけでも十尺はありそうだ。

 

「攻撃範囲は広かろうと、動きが遅く、大雑把だな。それでは私には当たらない」

 

 零は背中の大剣に手をかける。そして、引き抜いた。

 

 子供の丈ほどはありそうな刀だ。このような日輪刀は他に例を見ない。

 

 目にも止まらぬ速度で振り抜かれた大剣は鬼の片腕を軽々と切り飛ばし、大剣の遠心力を利用し零は高く飛び上がった。

 

 全集中の呼吸で身体能力を強化しているとはいえ、それでも異常と言えるほどの脚力だ。

 

「狼の呼吸 壱ノ型 狼子野進(ろうしやしん)

 

 空中で斜め下に振り下ろされた大剣は、鬼を袈裟斬りにする。

 

「ば、馬鹿な……」

 

 あり、え……ない、貫通力……

 

 鬼はそう言い残すと、全身が崩れ落ちた。

 

「手応えがない。三下を狩ったところで、面白味もないな」

 

(やはり十二鬼月……最強の鬼を殺す。そして……)

 

 零はとある人間を思い浮かべた。

 

 人間は醜い。自分だけが生き残ればいいと考え、どんなに仲の良い友人だろうが見捨てる。

 

(あいつに、後悔させてやる)

 

 心に深い傷を負う少女は、野心を燃やし、それを糧に今日も鬼を狩る。

 

 狼が獣を狩るように——

 

 

 

 

 

 その近くで、零の気配を感じ取った鬼がいた。

 

「あれぇ? 今の気配? 柱でもいたのかな?」

 

 一度見たら忘れられないであろう虹色の瞳。その瞳には、左には“上弦”、右には“弐”。

 

「もうどこかに行っちゃったか。女の子だといいなぁ!」

 

 前に殺した女の柱は食いそびれたのを思い出し、今度はちゃんと吸収したいと思いながら、上弦の弐……童磨はまだ見ぬ剣士への思いを馳せた。

 

「猗窩座殿の分まで俺が頑張るからねぇ!」

 

 食い殺した女の死体を捨てると、童磨は夜の闇に溶けるようにして姿を消した。

 







刀というか大太刀というか大剣なんですよね〜零ちゃんの武器は

頑張ってクールヒロインにしたい
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