十二鬼月・累の物語 〜Another〜   作:葵巴鈴蘭

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43話 無慈悲な再開

 

「音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々(めいげんそうそう)!」

 

「騒がしい技で押してきた所で意味ねぇんだよなあぁぁ」

 

 天元が押したと思ったのも束の間、すぐに妓夫太郎の双鎌によって刀が押し返される。

 

(血鬼術なしの白兵戦でもこの強さ……いかれてやがる)

 

「血鬼術 飛び血鎌」

 

 妓夫太郎の意のままに操られる血の鎌が放たれ、天元を背後から狙う。

 

「チッ……」

 

 火薬玉を使い妓夫太郎と距離を取り、背後に目を向ける。

 

「参ノ型 空刻跫音(くうこくきょうおん)!」

 

 宙を舞う血鎌が天元の刀と接触すると同時に、刀の角度を僅かに傾けた。

 

 衝撃を受けつつも、こちらの刀で力の方向性を調整することで、攻撃の起動を逸らす防御に特化した型だ。

 

 起動を変えられた血鎌が妓夫太郎めがけて飛んでいくが、煙を払うかのように撃ち落とされた。

 

「よくも妹の頸を切りやがったなあ」

 

 妓夫太郎が口を開いている間に急接近した。

 

(隙あり)

 

「血鬼術 円斬旋回・飛び血鎌」

 

 予備動作もなく、突如として妓夫太郎の周囲に斬撃が発生した。

 

(⁉︎ 棒立ちのままでも攻撃できるのかよ!)

 

「肆ノ型 響斬無間!」

 

 咄嗟に攻防一体の型を繰り出し、衝撃を緩和する。

 

 相殺しきれず、吹き飛ばされた天元に妓夫太郎は追い討ちをかけようと鎌を繰り出した。

 

(捻くれた性格の割には練磨された剣技、体術、それに行動傾向……)

 

 大まかな動きは把握した。

 

 攻勢に出られる。

 

「譜面が完成した‼︎ 勝ちに行くぞォ‼︎」

 

 天元の速度が跳ね上がった。

 

「三!」

 

「⁉︎」

 

 カンっと妓夫太郎の鎌が弾かれる。

 

「飛び血鎌!」

 

「七! 五!」

 

 ぎりぎりのところで血鎌の威力を受け流し、妓夫太郎へ双刀が迫った。

 

「読めてんだよ! てめえの汚ぇ唄はよォ‼︎」

 

 

 

 

 

(飛び血鎌を弾いただけでなく、攻撃までしてきやがった! さっきまで防御で手一杯だったくせに!)

 

「円斬旋回・飛び血鎌!」

 

(さっきのは手加減しすぎた)

 

 先程よりも出力をあげた円斬旋回が天元を押し返した。

 

(譜面……譜面だと? 俺の血鬼術を曲にして動きを先読みしてやがんのか?)

 

 馬鹿な。アレ(・・)をして、俺の血鬼術はより精度が上がったというのに。

 

 まだこんな切り札を隠し持っていたとは、と歯を食いしばる。

 

 だが切り札を隠し持っているのはこちらも同じこと。

 

 誰よりも狡猾に、貪欲に。餓死しかけているならず者のような風体をしていながら、策を何重にも巡らす。妓夫太郎とはそんな男なのだ。

 

「血鬼術 飛び血鎌——」

 

 

 

 

 

「いまさら何をしたって遅い!」

 

 飛び血鎌を捌ききった天元の刃が妓夫太郎へ迫る。

 

(いける!)

 

 その瞬間、妓夫太郎が鎌を納刀するかのように腰のあたりへと当てた。

 

「——闇月 宵の宮・狂」

 

(?)

 

 気がついた時には、妓夫太郎は抜刀し終えたかのように鎌を振りきっていた。

 

 体の平衡感覚が崩れる。見下ろすと、自身の腕が——

 

「⁉︎」

 

 血が噴き出た。切断された天元の腕が宙を舞う。

 

(何が起きた? まったく反応できなかった。異次元の速度の抜刀、それに付き従うかのような超速の血鎌)

 

 完成させた譜面でも対応できないほどの敏捷性。まるで他の誰かの技をそのまま真似たかのような動きだ。

 

 なのに動きに違和感がなかった。

 

 技を極めれば極めるほど、動きは洗練されていく。

 

 新しい技を習得してすぐは、その技と従来の技を組み合わせることは難しいものだ。どうしても型と型の間に一瞬の隙が生まれる。

 

 また、同じ技でもその技には個人の癖が生まれる。そのため、どれだけ予測不能な動きをしようが、対極的な動きを取ろうが、癖や隙を分析して利用することで、相手のどのような行動にも対応できるようになるのだ。

 

 これらのことは“譜面”を完成させる上での基盤でもある。

 

(今の技は明らかに今までの技とは違った。別人の技だ)

 

 だが付け焼き刃とも言えない。

 

「宇髄さん‼︎」

 

 炭治郎の叫び声が聞こえる。

 

(やっちまった)

 

 この鬼は譜面があっても甘く見積もったところで互角の相手だ。肝心の柱である俺が片腕ではとてもじゃないが勝ち目はない。

 

 だから俺にできることは。

 

(せめてあいつらが逃げるための時間稼ぎを——)

 

 

 

 

 

 鬼は残酷なことをする。それは、人を喰うという行為のみを指すわけではない。

 

 悔しくも、運命の再会はこの鬼の手で引き起こされる。

 

 

 

 

 

「音の呼吸 伍ノ——⁉︎」

 

 動きが止まる。血が地面に滴り落ちた。

 

「ようやく会えた——」

 

 天元の胴から刀が生えた。

 

 硬直した天元。その瞳が、自身を背後から突き刺した相手を捉える。

 

「お、ま……え」

 

 その瞳は限界まで見開かれた。

 

「——きょうだい殺しめ」

 

 顔には大きなばつの字のような切り傷。瞳には“下参”

 

 耳には天元と同じ耳飾り——

 

 

 

 天元がかつて自身で手にかけた、殺したはずだった弟の変わり果てた姿がそこにはあった。

 

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