十二鬼月・累の物語 〜Another〜   作:葵巴鈴蘭

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お久しぶりですこんばんは!
リアルのほうで色々あり(色々の一言で片付けてしまって申し訳ないです)メンタルがずたぼろだったので長らく療養させてもらってました
またぼちぼち再開していきます〜





44話 きょうだい殺し

 

「な、ぜお前……が……天——」

 

「その名で呼ぶな」

 

 下弦の参が短刀を持つ腕に力を入れた。

 

 天元が呻き声をあげる。

 

「いまの俺は十二鬼月、下弦の参・病葉! お前を殺すために死の淵から這い上がってきてやったんだよ」

 

 天元の脳内に、あの日の光景が蘇る。

 

「あ、あ゛あ゛‼︎」

 

 

 

 

 

 まだ忍といて生きていたある日のことだ。

 

「近ごろ、我々忍の一族を探っている者がいる。そいつらを始末しろ」

 

 父親から告げられた任務。

 

 こちらの情報を漏らさないためにも、覆面を外さないようにとこの男は付け加えた。

 

 普段から単独で任務を遂行することはよくあった。それ以外にも、過酷な修行や任務は日常茶飯事で、現に9人いたきょうだいは既に6人しかこの世に残っていなかった。

 

「敵はこちらの動きを熟知していると思え」

 

 父親の最後の言葉が少し引っかかったが、そのときはこの言葉について深く考えることもなく、忍び装束に身を包むと家を飛び出した。

 

 

 違和感。

 

 最初に感じたのは火薬玉を使い敵の視野を遮った時だった。

 

(後ろに回り込み、先手を取る)

 

 こちらよりやや背が低い。まだ15にもなっていないのだろうか。

 

 そんなことを考えつつクナイを敵の首目掛けて振り下ろした。

 

「……ッ!」

 

 首を掻き切る直前で、敵は突然振り向き、天元のクナイを叩き落とした。

 

「チッ」

 

(速い。いや速いというより、元からこちらの動きを知っているかのようだ)

 

 違和感を覚えつつも、武器を短刀に持ち替え再び敵に肉薄した。

 

 一族の中でも特に、移動および攻撃の速度に定評のある天元である。実際、天元は自分より素早い敵と対峙したことがなかった。

 

(これにも対応してくるか……動体視力が高いのか?)

 

 敵は防戦一方になってはいるものの、天元の攻撃をある程度捌けていることもまた事実だった。

 

(俺たちの情報を知っているというのは本当らしいな。ならこれならどうだ!)

 

 懐から複数の煙玉を取り出すと、それぞれの別の方向へとまいた。

 

 天元の聴覚は常人の域を遥かに超えている。音の反響を聞いただけで、人や物の配置や建物の構造を把握できるほどだ。

 

 忍はどのような環境下でも活動できるよう、光がほとんどない夜の暗闇の中でも訓練を行なっている。しかし天元の空間把握能力はそれの比ではなかった。

 

 つまり、天元は視界が制限される夜の暗闇や、霧の中でも普段通りに動くことができるのだ。

 

 減速することなく、天元の短刀は敵の喉を正確に貫いた。

 

 父親曰く、敵の素性はある程度割れているようで、身柄を拘束する必要はないとのことだった。だから容赦なく殺せる。

 

 ひとり始末したのも束の間、すぐに背後から複数のクナイがこちらをめがけて飛んできた。

 

 すべて撃ち落とすと、木々の間を縫うように走り、敵に接近した。

 

 飛び道具を使うということは、自身がどこに潜んでいるかを敵に教えているのと同義である。

 

(ひとり敵を殺した直後で、緊張の弛緩した瞬間を狙うのは悪くないが……それでも今のは悪手だ)

 

 なによりクナイの軌道が不安定だった。そこまで練度が高くないということだ。

 

(さっき殺したやつほど強くない)

 

 相手の間合いの3歩手前ほどまで接近すると、短刀を相手の顔面めがけて飛ばした。

 

(こいつもまだ子供じゃねえか?)

 

 だが忍に情けは無用だ。

 

 相手が短刀を撃ち落とし、一瞬視界が隠れた瞬間に、クナイを両手に持つと、足に力を入れ一気に前へと飛んだ。

 

 あいつから見れば、天元が瞬間移動したように見えただろう。

 

「⁉︎」

 

 ばってんを描くようにして相手の顔面を深く切り裂く。声無き悲鳴をあげながら倒れる敵を目の端で捉えながら、天元は近くの木を凝視した。

 

(この距離になるまで気配を感じなかった。何者だ?)

 

「素晴らしいよ。仮にも同じ訓練を受け、同じ釜の飯を食ったきょうだいをこんなにも無常に殺せるなんて」

 

 木の影から姿を現した人物に驚くとともに、天元は先ほど殺した忍の元へと駆け寄った。

 

(まさかまさかまさか)

 

 十字を描くように顔面が切り裂かれた忍から覆面を剥ぎ取る。

 

 そこには——

 

 

 下弦の参・病葉は天元につけられた傷を治すことなく、きょうだいとしてではなく鬼として復讐しにやってきたのだった。

 

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