柱合会議。鬼殺隊の最高責任者である産屋敷家当主によって開催され、柱との意見の交換を行う場だ。現当主は、九十七代目である産屋敷耀哉である。
「おはようみんな。今日はとてもいい天気だね。空も青いのかな。顔触れが変わらずに半年に一度の柱合会議を迎えられたことを嬉しく思うよ……」
産屋敷耀哉が口を開いた。彼の声は、不思議と聞き心地がいい。
しかし、嬉しいといいつつも、耀哉の声は普段と比べ、やや曇っているような気がした。
今、産屋敷邸には、蟲柱・胡蝶しのぶを除く鬼殺隊8名の柱が集っている。
「胡蝶は。胡蝶はどうした?」
音柱・宇髄天元だ。
「しのぶは那谷蜘蛛山で怪我をしてね。義勇によると、十二鬼月が出たとのことだ」
「「——⁉︎」」
十二鬼月が出た。そして、柱が2人いたにも関わらず、怪我をした。この場にいないということはそれだけの重症。それらが表すことは一つ。
それを悟った柱たちに戦慄が走る。
「上弦……ですか」
霞柱・時透無一郎が呟いた。しかしその想像は外れる。
「いいや、下弦だ。下弦の伍との戦闘以来、しのぶは目を覚ましていない」
十二鬼月とは言え、下弦。それも下から2番目である。柱なら勝利できて当然の相手だ。
「ここからは俺が」
水柱・冨岡義勇が前に進み出る。まだ傷が治りきっていないらしく、所々に手当てされた痕跡があった。
「知っての通り俺は胡蝶と共に那谷蜘蛛山の鬼を討伐しに行った。そこで下弦の伍と戦い、俺たちは負傷。下弦の伍は逃亡した」
「逃しただと? 下弦を」
風柱・不死川実弥が怒気を滲ませる。しかし、炎柱・煉獄杏寿郎が声を挟んだ。
「柱が2人いながら負傷、そして逃したんだ。予想できなかった何かが起こったのだろう!」
「そうだ。その十二鬼月は確かに下弦の伍だった。しかし、強さは上弦にも匹敵していたように思う。そして、その鬼と戦って生き残った証人がそこに」
義勇は岩柱・悲鳴嶼行冥の足元を指差す。そこには、竈門炭治郎が両腕を抑えられ、地面にねじ伏せられていた。
「ああ……なんというみすぼらしい子供だ……可哀想に……生まれてきたこと自体が可哀想だ」
涙を流しながら悲鳴嶼行冥は念仏を唱える。
「こいつは竈門炭治郎という。今日のもう一つの議題。鬼を連れていることについて」
「「⁉︎」」
再びこの場に衝撃が走った。
「隊律違反だ。どう処分する、どう責任を取らせる、どんな目にあわせてやろうか」
木の枝に横たわり、蛇柱・伊黒小芭内が指を刺す。
「伊黒さん相変わらずねちねちして蛇みたい! しつこくて素敵!」
恋柱・甘露寺蜜璃が1人ときめいているが、全員が無視した。
「そうだね、驚かせてしまってすまなかった。炭治郎と禰豆子の事は私が容認していた」
そういうと耀哉は一通の手紙を読み上げ始めた。
「禰豆子は強靭な精神力で人としての理性を保っています。飢餓状態であっても人を喰わず、そのまま二年以上の歳月が経過致しました。俄かには信じ難い状況ですが紛れもない事実です」
一息つくと再び音読を続ける。
「もしも禰豆子が人に襲いかかった場合は、竈門炭治郎及び鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します……これが元水柱・鱗滝左近次からだ」
「切腹するから何だと言うのか。死にたいなら勝手に死に腐れよ! 何の保証にもなりはしません!」
実弥が反論の声を上げる。杏寿郎も実弥と同じく異を唱えた。
「確かにそうだね、人を襲わないという保証ができない、証明ができない。ただ、人を襲うということもまた証明ができない。それに私の子供達に伝えておくことがある。炭治郎は鬼舞辻と遭遇している」
「そんなまさか! 柱ですら誰も接触したことが無いというのに!」
天元が驚きを表すと、他の柱たちは炭治郎が息を吐く間もないほど、質問攻めにする。
だが、炭治郎は無惨については答えなかった。
「うるさい! 禰豆子は人を喰ったことはないし、これからも喰わない! それに、禰豆子は人のために鬼と戦う! 那谷蜘蛛山でだって、十二鬼月と戦ったんだ‼︎」
炭治郎は無惨については触れず、禰豆子の無害を訴えた。
義勇は思い出したように口を挟む。
「そう、竈門禰豆子は那谷蜘蛛山で十二鬼月と戦った。竈門禰豆子の助力がなければ、俺と胡蝶は死んでいただろう」
「鬼舞辻はね、炭治郎に向けて追っ手を放っているんだよ。その理由は単なる口封じかもしれないが、私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を掴んで離したくない。恐らくは禰豆子にも鬼舞辻にとって予想外の何かが起きているのだと思うんだ。わかってくれるかな?」
「だがこの目で直接見ないと納得できねぇ。お館様! 証明しますよ俺が! 鬼というものの醜さを!」
実弥は荒々しく日輪刀を鞘から引き抜くと、自身の腕を浅く切りつける。
そこから血が流れた。
「無理することはねぇ! お前の本性を出せばいい! 俺がここで叩っ斬ってやる!」
実弥は影のある場所へと移動すると、禰豆子が入る箱に日輪刀を突き刺した。
「やめろー‼︎」
中から悲鳴が聞こえる、しばらくすると禰豆子が姿を表す。
「どうした鬼? 来いよ、欲しいだろ?」
血を目の前に垂らして見せると、禰豆子は低く唸り声を上げ、涎をたらした。
しばらくそのままでいたものの、禰豆子はそっぽを向く。
「これで禰豆子が人を襲わないことを証明できたね」
話を戻すよ、と耀哉が炭治郎と義勇に那谷蜘蛛での一部始終を話すように促した。
実弥はしぶしぶ引き下がる。
そして2人は那谷蜘蛛山で起きたことを話し始めた。
話し終えると、しばらく沈黙が続く。
「今ここにいる柱は戦国の時代、始まりの呼吸の剣士以来の精鋭が集まったと私は思っている」
耀哉が沈黙を破る。
「だがそれは鬼の側も同じなのかもしれない。上弦にも匹敵しうる下弦……何かが今、変わろうとしている」
既に運命の歯車は狂い、その歯車が描く奇跡の先に何が待っているのかは誰にも予想できなくなりつつあるのであった——
今回はあっさりと読み流していただいても大丈夫です笑
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継国縁壱
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鬼舞辻無惨
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上弦の壱
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上弦の弐
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上弦の参
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上弦の肆
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上弦の伍
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上弦の陸