ヒノカミ神楽。
「なんだって?」
ヒノ……カミ?
確かにあの剣士はそう言った。
銀子とは僕、霞柱・時透無一郎の鎹鴉である。
通常、鎹鴉は鬼の詳細や情報、命令司令を隊士に通達するためのものだが、銀子は僕のために独自の調査も行ってくれていた。
そのため、無一郎はお館様からの伝令はなかったもの、十二鬼月の情報を独自に入手し、那谷蜘蛛山に向かっていたのである。
無一郎が十二鬼月を発見したとき、既に戦いは熾烈を極めていた。
水柱・冨岡義勇の頬には不思議な痣のようなものが浮かび上がり、糸の血鬼術を打ち破った。しかし、鬼は動きを先読みし、次なる血鬼術を放つ。
無一郎は全力で山を駆け抜けるが、まだ鬼のところには届かない。誰も僕に気づいていない。
義勇に血鬼術が当たる寸前で、ある鬼殺隊士が木の影から飛び出す。その剣士、無一郎が今まで見たことがない呼吸を用い、血鬼術を切断した。よく見るとその剣士の額にも、義勇のと似たような痣があるではないか。
「ヒノカミ神楽!」
「なんだって?」
無一郎は思わず呟く。
(あの痣……あの呼吸……見たことがある……?)
鬼の頸に到達する直前、その剣士の日輪刀は赫灼に染る。
(赫い刀……‼︎ どこだ? どこで見た⁉︎)
頭痛がして無一郎はその場に膝をついた。どうしても思い出せない。僕は何もかもすぐに忘れるから。
「俺と禰豆子の絆は……誰にも‼︎ 引き裂けない‼︎」
鬼の頸が切られ、宙を舞う。
それとほぼ同時に別方向から悲鳴が聞こえた。
(くそ……思い出せないけど、今は後回し。十二鬼月は死んだ……別の鬼がいるようだから、そっちに行かないと)
なんとか立ち上がると、無一郎は元来た方向へと戻る。
その十二鬼月はすぐに立ち上がるのだが、この時の無一郎には知る術もなかった。
「はい?」
「だから、蝶屋敷に滞在させてください」
無一郎は蟲柱・胡蝶しのぶの蝶屋敷に来ていた。
ヒノカミ神楽という呼吸を使った竈門炭治郎はここで機能回復訓練を行うらしい。様子を観察すれば何か分かるかもしれない。
「なんでですか? 特に怪我をしている様子も見られませんし……」
「調べたいことがあって。ヒノカミ神楽というものを聞いたことはありますか?」
「ありません」
「そうですか。では」
無一郎はしのぶの横を通り過ぎ蝶屋敷に踏み入った。
「まだ許可は出してないのですが……」
(ヒノカミ神楽……記憶を失う前に見たのかもしれない。だとしたら、それは、記憶を取り戻す鍵になるはず)
無一郎は蝶屋敷に潜伏し、炭治郎に気づかれないように彼を監視した。
しのぶはそれに気づいているようだが、特に炭治郎には何も告げず、黙認してくれているようだった。
数日が経過した。
特にヒノカミ神楽という呼吸について分かったことはなかった。
炭治郎は傷が癒えてきたらしく、日輪刀を用いて訓練を始めた。ここ数日で彼は、全集中・常中ができるようになったようだった。
(……!)
突如、刀を握る炭治郎の気配が変化する。
「ヒノカミ神楽……っ! 円舞‼︎ 碧羅の——」
炭治郎はヒノカミ神楽の呼吸を用い、型の練習をしているようだ。
しかし、まだ練度が低いようで、一つの型を使うだけで息が上がってしまっている。連続で型を出そうとしたようだが、すぐに膝をついてしまった。
(違う。いや違うわけじゃないと思うけど……その呼吸はもっと美しく舞うことができるはずなんだ)
また頭痛がした。やはりヒノカミ神楽というものが記憶を取り戻す手がかりになるのではという仮説は正しいらしい。
(もっと……そう、もっと美しく。こんな感じで)
無一郎は無意識のうちに日輪刀を手にしていた。
「ヒノカミ神楽 円——」
(な……⁉︎)
強く肺が痛む。体中がぎしぎしと悲鳴をあげている気がする。
思わず無一郎は地面に倒れ、激しく咳き込んだ。
(風の呼吸や、最初に霞の呼吸を使ったときだって、体にここまでの負荷はかからなかった……僕には適正がないのか?)
物音に気づき、炭治郎や仲間の2人がこちらへ近づいてくる足音がした。
無一郎は肺を抑え立ち上がると、早急にこの場を立ち去った。これ以上、ここに滞在しても得られるものはほとんど無いだろう。
(ヒノカミ……火の神? 力強い呼吸だ。火ということは炎の呼吸と関係がある? でも火の呼吸なんて聞いたこともないし)
ならば。
(詳しい人に聞けば良いよね。煉獄さんは任務だっけ? なら、先代の……)
向かう場所が決まると、無一郎は蝶屋敷を飛び出した。
記憶に引っかかる呼吸と、高まる興奮に、無一郎の瞳にはほんの少しばかり、光が灯っていた。
む、無一郎……何をするつもりなんだ……
本作で、累はどれくらいの強さになって欲しいですか?
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継国縁壱
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鬼舞辻無惨
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上弦の壱
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上弦の弐
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上弦の参
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上弦の肆
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上弦の伍
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上弦の陸