俺の発現した個性が【オール・フォー・ワン】だったって、マジ?!! 作:AC6はいいぞ!!
「ゼン君、私をかくまってください!!」
俺はいきなり家に訪れた女の子、渡我 被身子にそう言われた。
渡我 被身子
原作ではヴィラン連合に所属していたヴィランで"血の香りがするボロボロな人が大好き"というなかなかに歪んだ嗜好を持つ人物だ。
そんな人物が何故、俺を訪ねてきたのか。実は彼女とは接点がある。というのも
・・・・・・
2年前
『この辺りに渡我がいるんだよな?』
『はい、間違いありません』
俺は今、【変身】を手に入れるために渡我の住んでいる地域に来ている。いつもなら下調べはエアに全部任せ、夜中に対象の人物の元に赴き【個性】を手に入れるのだが
『今回はそうはいかないからな』
『彼女は将来、ヴィラン連合の一員になる可能性があります。今からでもその可能性を潰すべきではあります。ですが』
『俺がわざわざ、しかも陰奪 全部として会いに行く必要がないって?』
『はい、危険を冒すべきではないです』
確かに、わざわざ会いに行く必要はない。殺傷事件も中学の卒業式からだからまだ猶予もある。だが
『裏で仲間にするには性格に難があるし、まだ子供。かといって周りの人たちでは助けられない。それに幼少期から血液に興味を示している以上、早めに助けた方がいい』
『だからあなたが助けると?』
『まあ、彼女の境遇に少し思うところがあってな。大丈夫、彼女に必要なのは"理解者"。彼女の考えを理解できなくても、理解する意思を示す存在がいればヴィランになる可能性は低くなる』
実際、彼女がヴィランになった原因の一つが"両親による抑圧"。普通を強要され続け、中学の卒業時に爆発。俺も何かと異常、異端な部分が多いが、両親は俺に理解を示そうとしてくれた。そう言った意味で俺は恵まれ、彼女は恵まれなかった。
大半のヴィランはそうだが人に恵まれなかった結果、ヴィランになるケースが多い。トゥワイスはその典型例とも言っていい。
『随分と勝手ですね』
『勝手だが"勝手はヴィランの特権"でもある。それか"お節介はヒーローの本質"でもある。かな?』
そんなことをやり取りしつつ、道を歩いていると血の匂いを感じた。
『・・・どうやら近くにいるみたいですね』
『ああ、臭いも新しい。いるな』
俺は血の臭いを追いながら橋下にたどり着くと、そこにはスズメを抱え、血を吸う女の子がいた。渡我だ。なかなかにスプラッターな光景だな。
「だ、誰ですか?」
「俺は陰奪 全部。君は?」
「渡我、渡我 被身子です・・・怖くないんですか?」
「何が?」
「私、口が血まみれです」
なにを気にしているかと思えばそのことか。怖いかどうかで言われると、正直に言って怖い。年齢相応なら間違いなく泣いていた自信がある。だが
「いや、君血液嗜好症だろ。どんなものか知っていれば怖くはない」
血液嗜好症は異常性癖だが、色々と問題だらけの俺が今更どうこう言えるようなものでもない。
「怖く・・・ないですか?血を吸うのは普通じゃないです。普通じゃないと駄目なんです」
「その前に聞くけど、普通ってなんだ?」
そう聞くと、渡我はきょとんとした。どうやらこの質問は渡我にとっては想定外の質問だったらしい。
「えっと・・・みんなと同じことです」
「同じ必要があるとでも?」
「あります。普通じゃないと駄目なんです」
「なんで?」
「普通じゃないと怒られるから」
わかってたが、こっちでも両親に普通を矯正させられているみたいだな。だが、ハッキリ言って
「ゴミだな。そんな考え」
「えっ?」
「全人口の八割以上が何らかの特異体質だ。特異体質、つまり普通じゃないってことだ。それなのに普通じゃないとダメ。何か?まさか【個性】を持っていると駄目ってことか?」
「でも、みんなは使ってないし」
「ヒーローは使ってる。まさかヒーローに使うなと?」
全人口の八割以上が何らかの特異体質なのに、普通を追い求めるのがそもそも間違っているだ。みんなが特別、それはつまり
「みんなが特別、異常ってことは、喜べ渡我。お前の異常は超人社会にとっての普通だ」
「私が・・・普通ですか?」
「普通だ。少なくとも俺よりは普通だ」
転生者の俺と比較すれば、間違いなく普通の部類だ。渡我は納得したようだが、彼女が納得するだけでは意味がない。ということで
「今の話から両親が普通を矯正してくるのはわかった。早速行こうか?」
「どこに?」
「渡我の家に直談判、殴り込みだ!!」
「ええっー?!!」
渡我は驚いているようだが、これぐらいやっとかないと渡我はヴィランになってしまうだろう。それに説得に関しては問題ない、そもそもが間違っているんだから。
『ですが、もう少し考えて行動して欲しかったです』
ちゃんと考えてるよ・・・少し行き当たりばったりなのは認めるが
・・・・・・
あの後、渡我の家に突撃して渡我の両親を説き伏せた。
本人たちからしてみれば、子供がいきなりやってきて自分たちの考えを否定したんだ。相手が子供じゃなかったら怒鳴り散らしていただろう。
だが、今が超人社会であることや、普通を矯正する考えが"人の【個性】を否定すること"に繋がること、普通の矯正が虐待につながる可能性があるなど、ありとあらゆる点から説き伏せ、最終的に渡我の血液嗜好症をある程度容認させた。そして【個性】の影響によるものだとして、訓練させることで普通に近づけることになった。
渡我とは連絡先も交換し、定期的にやり取りをすることでヴィランになることを防ぐ。それでこの件は解決・・・のはずだったのに
「血を吸うのを辞めろだって?ちゃんと個性訓練の一環だって病院などからも説明があったんだろ?」
「ありましたけど、それでもダメだって」
母さんに頼んでリビングで話を聞いている。周りには母さんの他に薫と遊びに来ていた葉隠がいる。母さんたちには渡我の関係について聞かれたため、過去の出来事を踏まえて話をしていたが、このことについて聞いたときには驚いた。
最初は許容していたらしいが、段々と娘が血を吸うことを許容できなくなり、血を吸うことを辞めさせようとしたという。
「一応聞くが、ちゃんと病院の指示通りに血液パックの血だけ吸ってたんだよな」
「もちろんです」
「はあ~・・・なんでこうなるんだ」
周りの目が気になり我慢できなくなったのか。娘の異常性に耐え切れなくなったのか。どっちにしろ、そう簡単に解決できる問題じゃない。
「それで渡我はどうして欲しいんだ?言っておくが、匿うのは難しいぞ」
下手すれば誘拐事件になる。両親に迷惑が掛かる以上、無理だ。
「またパパとママを説得してください」
「説得か・・・無理だな」
一度説得したのにこうなったんだ。ほぼ確実に説得は無理だし、できたとしてもまた同じことを繰り返すことになる。根本的な解決にならない。どうしたものか
「お兄様、私がこういうことを言うのは間違っていると思いますが」
「彼女を助けて欲しいか?だがな」
両親がいる渡我に薫と同じ手は使えない。
それに薫の件は"両親が女の子を欲しがっていた"という理由で誤魔化したが、今回はその手は使えない。それに・・・同じ手を使えたとしても、使いたくない。
薫を助けたことに関しては後悔してない。ただ、薫は俺に恩義を感じているためとても従順だ。それはまるで・・・
「ゼンちゃん、大丈夫?」
葉隠が俺の異変に気付いたのか声を掛けてきた。いかんな。少しを考えすぎた。
「大丈夫だ。それで聞くが、両親から言われた内容は録音してるんだよな」
「それはもうバッチリです」
渡我には万が一の場合に備え、両親から普通を強要された場合、会話を録音するように言ってあったのだ。
「ひとまず、父さんにも事情を説明して相談しよう」
今日は土曜日で父さんは仕事に行っている。午後には帰ってくるはずだから、相談しよう。
・・・・・・
【Side:葉隠 透】
「大丈夫かな。なんかゼンちゃん、凄く乗り気じゃないけど」
「そうですね」
話をしているときのゼンちゃん、少し様子が変だったし助けることにとても消極的だった。
「でもお兄様は一度助けた相手を見捨てるほど薄情じゃありません」
「でも、なんか思い詰めているようだったよ。大丈夫かな?」
そう思っていると、ゼンちゃんがやってきた。
「渡我は?」
「今おばさんと話している。あの子どうなるの?」
「そうだな。父さんと相談するが、恐らく親元に戻ることになるだろう」
「え、それって」
「何も変わらないってことだ。いや、多少は変わるかもしれないが」
「それじゃあ、見捨てたことになるんじゃ」
「・・・」
「なんか言ってよ!!」
ゼンちゃんらしくないよ。確かにいつも危ないことばっかしてるけど、お人好しで助けた人を見捨てないヒーローでしょ!!
「薫は偶然助けられた。父さんと母さんが娘を欲しがっていたからな。だが」
「お兄様、その件なら知っています。お兄様がお義父さんとお義母さんに頼み込んだことを」
「・・・」
「お兄様との約束を破れないから録音した内容を聞かせてもらいました」
「"私たちの口からは言わない"だっけ?上手い事してやられたな」
呆れた様子だったけど、どこか納得した様子でもあった。
「お兄様、何をためらっているんですか?」
「ためらっている?俺が?」
「はい、躊躇っています。いえ、何かを恐れています」
「そんなこと」
「お兄様には言ってなかったですが最近、オーラを目に集めることで他人のオーラを見ることができるようになりました」
「俺が教えたことだな・・・今関係ないだろ」
「実は他人のオーラが色のようなものも同時に見えるようになりました。そして色はその人の精神状態で変化するようでして、今のお兄様の色は不安・恐怖の色になってます」
「俺、そんなことできないけどな・・・そう見えてるのか」
「はい、私も驚きました」
ゼンちゃんがカオルちゃんに教えていた【オーラ】の応用。ゼンちゃんはオーラの有無しか判別できないけど、カオルちゃんはオーラの有無に加えてオーラに含まれている色を見ることで精神状態を知ることができる。
「まったく、どこでその能力を身に付けたのやら」
「お兄様のおかげです。私はお兄様と違ってオーラを強化できないから、オーラそのものの質を高めるべきだと教えて頂き、頑張って鍛えました」
「鍛えすぎだな」
「お兄様、私は感謝しているんです。助けて頂いたことに。家族にしてもらえたことに」
「・・・それが俺の思い通りになる女を作り出すためだとしてもか?」
「何か問題でも?」
「・・・」
「ゼンちゃん、そんな嘘言わなくていいよ。絶対にあの時のゼンちゃんそんなこと思ってなかったし」
「無意識で思っていたら?」
「だからなに?」
そんなこと言ったらキリがないよ。下心があったとしても、薫ちゃん絶対に気にしないだろうし。
「ゼンちゃん、ハッキリ言うよ。ヒミコちゃんを助けてあげて」
「いや・・・だが」
「手段はあるんでしょ」
「・・・」
ゼンちゃんのことだから方法はあると思っていた。もし方法が無かったら、私たちに言っていたはず。
「褒められた手段じゃない。犯罪じゃないが金はかかる。それに悪評もつく。俺はともかく、周りにもだいぶ迷惑がかかる可能性がある」
「それ、今さらじゃない?」
ゼンちゃん、2年生のときに散々やらかしていたじゃない。今だってたまにやらかしてるよ。
「ああもう、ゼンちゃんいい加減にして!!そんなクヨクヨ言っているゼンちゃん全然カッコよくないよ!!」
「そうですよ。悪評がなんですか。私たちはお兄様を信じます」
「妄信的だな。下手すれば一緒に地獄に落ちる羽目になるぞ」
「そうですか。万が一、お兄様が地獄に落ちるようなことがあったら」
「私たちもついていきます。どんな手を使ってもです」
「・・・」
「冗談だと思ってますか?本気ですよ」
カオルちゃんの目が笑ってない。笑顔なのにとても怖く感じてしまう。
そしてカオルちゃんがこっちを向いた。そう・・・まるで「覚悟がないなら手を引いて」そう言われている気がした。
正直、カオルちゃんのような覚悟は私にはない・・・でも
・・・・
それでも、諦めたくない。カオルちゃんと一緒に私もゼンちゃんの隣に立つ!!
「なんで俺の周りの人間はそう覚悟を決めたがるんだ?」
「お兄様の危うげな生き方を見ているからじゃないですか?」
「普通、拒絶したり逃げたりするもんじゃないのか?」
「そうかもしれませんが、お兄様の生き方は憧れるところがあります。不器用でも力強く生きようと必死になっています。それを見てると、手助けしたくなるんです。それにみんなで力を合わせれば困難も乗り越えられるんじゃないですか?」
「・・・薫、本当に小学生?知見が深いような」
「お兄様に鍛えられてますから」
ゼンちゃんにはいろいろなことを教えてもらい、考え、色んな所に行き経験していたらできるようになっていた。これが普通に考えて話をしているだけだったけど「年の割には賢いね」と先生たちに言われたことがあった。
「俺は欲深いぞ」
「私も欲深いです」
「俺には誰にも言えない秘密がある」
「私にもあります」
「私も」
「生涯、誰にも言う気はない。例え家族にもだ」
「言いたくなったら言えばいいんじゃない?」
「それが実は"人を殺していた"だとしてもか?」
「はい。それでもです」
「いつか身も心もヴィランになるかもしれないぞ?」
「その時はどんな手段を使ってもヒーローに戻します」
「ゼンちゃんだろうが、容赦しないよ」
「そうか。はあ~・・・俺は一方的な考えを押し付けて逃げていただけなのか?」
「はい。もっと堂々と前を向いて進んでください。間違った方向に行こうとしたら私たちが止めます」
「そうか・・・俺は恵まれてるな。こんなに素敵な女性が傍にいてくれるんだから」
そう自嘲気味に言っていたけど、どこか嬉しそうだった。
「そうだな・・・そうか。俺は逃げていただけか。怖かったんだな、あいつみたいになることが。周りの人間を不幸にしてしまうことが」
どこか吹っ切れて様子で笑っていた。いつものゼンちゃんに戻った。
「覚悟を決めるか・・・そうだな、まずは」
「薫、透、お前たちのことが好きだ。俺と共に生きてくれ」
?!!
いきなり何言ってんの?!!好きだって・・・え、いきなりプロポーズされたの私?!!
薫ちゃんも真っ赤にして俯いている。でもとても幸せそう。私もきっと同じなんだろうな。
「お、お兄様。結婚は1人の人としかできません」
「そうか。じゃあどっちか諦めるか?」
「「それは嫌(です)」」
絶対に嫌。それだけは認められない。
「じゃあ、結婚しない。両方ともずっと俺の恋人にする」
「恋人って」
「結婚はしないの?」
「してもいいが、その場合だと妻1人に他は愛人ということになる。それだと誰が妻になるかでも揉めるだろうし、上下関係ができるから人間関係もギクシャクする。安心しろ、絶対に幸せにする」
ゼンちゃん。吹っ切れてから更に危なさが加速してない?!!
「恋人でもやりようによっては夫婦と同じようにできる。法律的に少々面倒だがやりようはある」
「ほ、本気で言ってんの?」
「本気だ。二人を幸せにするためならそれぐらいはやる。それとも何か?諦めるか」
「「絶対に嫌(です)」」
色々と思いことはあるけど諦めるのは嫌。
「ならハッキリと答えてくれ。俺の恋人になるのか・・・いや、複数人の妻が持てないから問題なんだ。それなら法律そのものを変えて、複数人の妻を持てるようにすることを目指すのもアリか?」
「段々と規模が大きくなってる」
最初はゼンちゃんが私たちの猛攻に困惑していたのに、今じゃ私たちのほうが困惑している。でも、考えなかったわけじゃない。お嫁さんは1人しかなれないから、いずれはどちらかが諦めるしかないと思っていた。正直、色々と思うところはあるけどこの方法なら・・・大丈夫かな?
もう、なるようになれ!!私はそう思うことにした。
・・・・・・
俺は・・・怖かった。
オール・フォー・ワンのようになるんじゃないかと。
だからこそ、彼女たちの好意を無視した。仲間たちを遠ざけようとしていた。俺と共に地獄に落ちる可能性をなくすために
俺は・・・自信がなかった。
欲に溺れ、闇に落ち、自分自身を見失うかもしれないと、だが
「開き直ってしまえば、案外どうでもいいことに悩んでいたな。未来なんて誰にもわからない。あるかもしれない可能性にただただ怯えるなんて論外だ」
ほんと、何を迷っていたのか・・・エアやナガンが心配していたのも納得だな。むしろ、こんな駄目な男を必死に支えようとしてくれたことに感謝だな。本当に俺にはもったいない存在だ。
もう既に俺はヴィランだ。人も殺している。だがヒーローも目指している。そう言った意味ではナガンのいうところの二面性にも苦しんでいたんだろう。だが、彼女たちのおかげで吹っ切れた。
正直、陰奪 全部としてもレイヴンとしても、本当の意味で最善の手段を取っているかわからない。だが、俺は俺の信じる最善の道をひたすらに突き進むだけ、俺自身の、周りの人たちの幸せのために。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
薫というオリキャラには役割が色々とあり、その中の1つが"オリ主を闇落ちさせない"というものです。この役割は元々葉隠に与えようとしたのですが"葉隠1人では性格的にも無理だ"ということで役割を薫に移しました。葉隠も闇落ちを防ぐ役割をしますが、主体となっているのは薫です。
"オリ主のような危なそうな人間についていくとか本気で言ってるのか"とか"小学生あんなこと言うのか?"と思いますが、崇拝にも近い恋慕を抱いているのであればあり得なくもないです。宗教を信じるようなものと思ってもらえればわかりやすいかもしれないですね。(神=オリ主?)
これで闇落ちを防げるかは人にもよると思いますが、オリ主の場合は責任感が強く"どこまでもついていく"と言われると、彼女たちのためにも"自分一人さえ犠牲になれば"という考えは放棄します。ぶっちゃけた話、覚悟がなかったとしても、この発言されるだけで
可能性を考えてしまうため闇落ちを防げます。
これで事実上、闇落ちは防げたのですが、その代わり今まで躊躇していたためにかかっていた思考のブレーキ―の制御が効かなくなり大暴走しました。