俺の発現した個性が【オール・フォー・ワン】だったって、マジ?!!   作:AC6はいいぞ!!

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ep51:騒乱の拡大と雄英高校記者会見

 

「俺はやってねえ!!どういっていいのかわからんが俺は裏切ってねぇ!!」

「いや、裏切ってないのわかってるから」

 

 

USJから逃走した後、拠点で俺はトゥワイスに必死の土下座をされている。自身が裏切ってないことを弁明しているが、そもそも裏切ったと微塵も思っていない。ただ、状況的にはそう思われても仕方がないことは理解している。

 

 

「死柄木と黒霧が複製体。ナガンが頭を撃ち抜いたらトゥワイスの複製体と同じようにダメージを受けたら泥となって消滅。似たような個性の可能性もあるが」

 

 

普通に考えたらその可能性は非常に低い。類似の個性は数多く存在するが、それでに似通っているだけで全くの別物であることが大半。だからこそ、トゥワイスは自身が裏切ったと思われることを恐れているんだろう。

 

 

「あのな・・・こう言っちゃなんだが、俺がメンバーの裏切りを想定していないと思うか?それこそ、エアに対しても裏切りを想定しているぞ」

 

 

そう言うとトゥワイスは驚いて顔を上げる。

 

 

「ああ、想定していると言っても起こさないようにするためだ。裏切りに繋がる可能性を想定して、前もって全力で叩き潰す。そういうことをしているからこそ断言する。トゥワイスは裏切っていない」

「いや・・・だが」

「それを言ったら俺の【個性】は【オール・フォー・ワン】だ。あのクソ野郎と同じ【個性】だ・・・もっとも、完全に一致しているというわけじゃないが」

 

 

少なくとも裏切ってないと思っているのは事実。仮に裏切っていたとしても俺の、というかエアの監視を潜り抜けることができると思ってないし、仮にできたとしたらここでボロがでるはずがない。

 

 

「まあ、あれがトゥワイスと同じ【2倍】でも驚かない。コピーの【個性】もあるからな」

「そう・・・か」

 

 

心底安堵しているが、まだどこかで不安に感じているな。メンタルケアが必要か。

 

 

『必要だとは思いますが、数日後にはケロッとしていると思いますよ』

 

 

そうか?・・・いや、普通にありそうだな。そう考えると、問題があるのは俺のほうかもしれないな。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

雄英襲撃事件から数日後。俺はブランチの拠点で黄昏ていた。ヴィランになる可能性は考えていたが、まさかここまで速く、しかも冤罪でなるとは思ってもいなかっただけに意外とショックが大きかった。

 

 

「おいおい、しけた面してんな。大丈夫か?」

 

 

ソファーで寝転がっていると、トゥワイスが上から覗き込んでくる。普段なら野郎に覗き込まれても嬉しくはないが、今だけは俺を気遣ったくれる人物がいると思うだけで無性に嬉しく思う自分がいた。

 

 

というか、本当に数日で元に戻った。信用されていることがわかると途端に戻った当たり、トゥワイスが大物だと思ってしまった。逆に俺は小物だと自虐してしまうな。

 

 

「どうだろうな。正直何が何やら」

 

 

そう言うと、俺はテレビを付ける。そこには雄英高校襲撃事件のニュースが流れており、襲撃事件の内容や、俺が行ったとされる犯罪について特集されていた。

 

 

もっとも、俺が行った犯罪については思ったよりも懐疑的に見られている。俺が逃走したというマイナス点は確かに存在するが、俺を擁護する声も多く、一部のトップは表立ってかばっているからだ。

 

 

「オールマイトはともかく、エンデヴァーには俺を切り捨てろと言ったんだがな」

「いやいや、仮にもトップヒーローだ。切り捨てられないだろ」

 

 

原作でのこの時点のエンデヴァーならあり得たかもしれないが、この世界のエンデヴァーは原作の物語終盤のエンデヴァーに近い感じとなっている。そのためか親しい人間を切り捨てるような真似はできなかったらしい。

 

 

ミルコに関しても同様だ。ギルドのメンバーも俺がリーダーとは言わないが、俺をギルドの候補生として鍛えていた旨の発言をしており、表立ってかばっている。NEXTも同様だった。創生もそうだが、俺と関わったことのある社員は全員擁護してくれている。

 

 

擁護してくれるのは正直、メチャクチャ有難い。だが、擁護の声が多過ぎる気がする。俺と関りのある人はほぼ全員擁護している。俺、そんな好かれるタイプではないと思うんだが

 

 

「いやいや、お前内に入れた人間はメチャクチャ大事にするじゃん。なんだかんだ言ってメチャクチャ人助けするし」

 

 

トゥワイスは俺の自身が原因だと言ってきた。俺はそこまで人当たりがいい人間ではないと思うが・・・そう言うと、身内に対してはかなり人当たりが良く、逆にそれ以外には人当たりが悪いという。まあ、心当たりは・・・普通にあった。

 

 

それは横に置いとくとして、意外なのは会長も擁護に回っており表立ってかばってこそいないが、すでに事態の収拾に動いている。もっとも、俺の行った犯罪が冤罪であるという根拠がなく、それどころかいくつかの事件で証拠が出てきているため事態の収拾に動けずにいる。

 

 

雄英に関しても、俺の擁護に回っている。逃走後に秘密裏に校長に連絡を取り、状況を話し合った結果、冤罪であると確信して俺の擁護に回ってくれた。もっとも、雄英襲撃事件の後始末のせいでそれどころではないが。

 

 

「用意周到にねられた計画だ。証拠のねつ造も抜かりなし・・・か。一応、エアが俺の無罪を晴らす証拠を集めてくれているが、違法なうえにブランチが集めた証拠だからな」

「使えないってことか」

 

 

使い方次第ではあるが、使えないことはない。問題なのが有効性。正規の手段で集めた証拠でない以上、世論に冤罪だと認めさせることはできても法的に冤罪を晴らすことは難しい。逃亡したという事実もなかなかに重い。仮に冤罪を晴らすことができても、公安と対立している以上ヒーローになれるかどうかかなり怪しい。

 

 

雄英襲撃事件のほうもだいぶ世間で叩かれている。死傷者こそ出なかったが、だいぶけが人を出しており、雄英側の管理体制が問題視されている。あと、生徒の俺に凶悪ヴィランを相手にさせて自分たちは逃げたともうバッシングを受けている。

 

 

一応擁護すると、先生方も自分たちが加勢しても足手まといになると分かったうえでの判断だ。実際、逃げたのではなく近くにいた生徒を回収して避難したのであって、この行動に俺はかなり助けられた。ただ、それを知らない人からしてみれば、そう思われるのもある意味無理はない。

 

 

USJにしても問題だ。こちらでも生徒が主体となって戦ったため、校舎での出来事と同様に叩かれている。そして、逆にブランチは褒めたたえられている。雄英側も不始末を身を挺して守ったとして。

 

 

どこで取られたのかわからない映像も込みで堂々と紹介されていた。そのおかげで信ぴょう性も増したし、できればかくしておきたかった秘密が普通にバレた。周囲に人影も機影もなく、本来不可能なアングルから取られていることから察するに、かなり特殊な【個性】によるものだと思う。

 

 

ヴィランを可能な限り人道的に抑え込んだことも評価されている・・・か。ああ、トゥワイスは非殺傷弾を使っていたことか。

 

 

フードちゃん相手に非殺傷弾なんて論外だからレイヴンは仕方ないにしても、トゥワイスには実弾を使わせなかった。

 

 

これはブランチのイメージダウンを避けるため『私たちは可能な限り殺人を控えるように努力した』ということをアピールするためだったが、それが逆に利用されたか。

 

 

ナガンの存在、トゥワイスの個性、色々バレた・・・ああ、頭が痛い。

 

 

「事実ではあるが、意図して過大評価している。明らかに俺らを上げることで雄英を下げようという魂胆が見え見えだ」

「そう言えば、クリニックの件はどうなったんだ?」

「大荒れだ。全国各地でデモが起きている。一部では暴動も起こっていて、大規模なものになるのはもう時間の問題と言っていい」

 

 

後から調べたが、死穢八斎會にも大規模なガサ入れが入っており逮捕者まで出ている。そのためすぐに個性抑制剤を供給できない。このままだと不満が爆発するのは目に見えている。

 

 

「そう考えるとやべぇな。お前はこんなところで寝転がっていていいのかよ」

「今はこうでもしないとやってられない。それにどうせこの後は忙しくなる」

 

 

あと数時間後、雄英と公安の合同記者会見が行われる。雄英襲撃事件も含めた複数の事件に対しての会見だが、波乱が起きるのは間違いないだろう。

 

 

個人的にはどうにか対処してほしいところだ。身内だけ保護して逃げるという手もなくはないが、それはほぼ確実に誰も幸せにならない。ここでの逃げは最悪の悪手だろう。

 

 

だが、雄英側はともかく公安はほぼ確実に対処できない。敵がどれくらい公安の情報を持っているか。もしも、前会長の悪事に関する証拠まで持っていたら・・・俺も覚悟を決めるか。

 

 

 

・・・・・・

 

 

【Side:根津校長】

 

 

私は今、公安の会長と共に記者会見に臨んでいる。事態の収拾もままならない状況ではあるが、事態の収拾する時間がないほど、事態は切迫していた。

 

 

当校への襲撃事件もそうだが、陰奪君の冤罪、クリニックの一斉摘発、どれもヒーロー社会の根幹を揺るがしかねない事件だ。

 

 

当校への襲撃は死傷者こそ出なかったが、負傷者はそれなりの数出ている。また、校舎を襲撃したヴィランと陰奪君だけが戦ったのもマズかった。あの時、私たちでは足手まといになるため不本意ではあるが彼にヴィランを任せ、私たちは生徒の避難・救助を優先した。

 

 

今でも最善の行動だと胸を張って言える。だが、世間はそうとは考えておらず、例え彼に実力があったとしてもまだ子供。そのせいで"雄英は生徒を見捨てた"、"犯罪者だと知ってて切り捨てた"などと言われている。

 

 

陰奪君の冤罪は証拠が揃っているため、罪は確定的だと報道当初は言われていたが、後々不信な点の多さや、彼が事実上のギルドのリーダーであることを含めた経歴、そしてギルドと公安との確執が報道されると、冤罪ではないかとネット上では賛否両論の論争が激化している。

 

 

クリニックの一斉摘発も異形系の【個性】持ちに恐怖を与える結果となり、全国各地でデモが発生。一部では暴動も起こっている。供給源であるヤクザをガサ入れしたとこもだいぶ良くなかった。

 

 

会長の顔色もだいぶ悪い。ここ数日で事件に関与した職員を捕らえ、調査した結果洗脳されていることが判明した。また、報道関係者などにも洗脳を受けた人物がいることが判明し、犯人を特定しようにも数が多過ぎる。

 

 

あまりにも後手に回り過ぎた。まさか、ヴィランがここまで大規模かつ大胆に社会の崩壊を狙うとは。油断していた。そう言う以外に言葉がない。

 

 

「今回、雄英がヴィランに襲撃されましたが」

 

 

会見が始まり、記者たちから様々な質問を、いや非難を浴びせられる。彼らも見方によっては加害者なのに、と思ってしまう自分がいる。もっとも、たとえそうでなかったとしてもこの状況を変わらなかったと、現実逃避にも似た考えに耽ってしまう。

 

 

とはいえ、ただ黙って非難を浴びるつもりはない。今回の襲撃で雄英側に過失があったことを認めつつ、問題点や改善点などを今後の方針も踏まえ、説明する。

 

 

会長も真摯に回答に応えるがクリニック一斉摘発、ギルドとの対立にに加え、前会長の悪事に関する確信ともいることを質問され段々と追い詰められている。前会長の悪事に関しては私も詳しくは知らなかったが、まさか何十、何百と言う犠牲者がいたとは。

 

 

「公安はヒーローの腐敗を隠し、あまつさえヴィランを利用したうえで口封じしていたのですか」

「いいえ、そのようなことは」

「では、これは一体どういうことですか!!匿名で送られた資料によれば、ヒーローを暗殺者に仕立て上げたと言うではないですか。ここに書かれている公安直属ヒーローであるレディ・ナガンは数年前から消息不明です。あなた方が口封じをしたのではないですか?」

 

 

その言葉に、必死に会長は弁明する。だが、表向きレディ・ナガンが消息不明である以上、口封じではないことを証明することはできない。もちろん、公安も今回の件でレディ・ナガンがブランチにいることは掴んでいるが、公安所属だったナガンがヴィランになったことなど公表できるはずがない。そして、証明できなければ記者が、世論が納得することはない。

 

 

「陰奪全部。彼に関しては冤罪という話があります。聞いたところによるとかなりの数の犯罪を犯していて、いくつかの事件に関しては証拠もあるそうですがそのあたりはどうなのでしょうか?」

「証拠に関してはこちらでも把握しています。ですが、早急な対応で発見された証拠は彼の犯罪を犯したという根拠としては弱く」

「聞きたいのは無実か、そうではないかということです」

 

 

その言葉に会長は反論できなかった。会長も証拠は偽物だと思っているが、様々な現場に残された血痕、指紋、監視カメラの映像など、普通に考えれば決定的ともいえる証拠の数々。陰奪君が逃走中であることも考えると公の場で無罪だと言うことはできなかった。

 

 

彼の冤罪を晴らすためには時間が、人手が、何もかもが足りなかった。

 

 

結局、先程の質問も回答することができず、段々と記者たちの質問が過熱する。もはや悪意に満ちていると言わんばかりの質問の数々に会長は追い詰められる。

 

 

覚悟はしていたが、このままでは致命的なまでにヒーローに対する不信が・・・いや、もうすでに致命的と言えるほどの不信が世間に蔓延している。今、ギリギリのところで踏みとどまっているが、この会見を乗り切れなければすべてが崩壊する・・・一体どうすれば。

 

 

「わかっていたことだが、記者たちに押されているな」

「まあ、公安のやらかしが酷すぎたからね」

 

 

聞き覚えのある声が聞こえ、聞こえた方角を見るとここにいるはずのない人物。レディ・ナガンと陰奪君がいた。

 

 

「君たち・・・何でここに」

「この事態を収束させに来たんだ。言ってしまえば、尻拭いに来た。と言ったところだ。ああ、そこの人たち。今俺らを拘束しようとすれば冗談抜きで社会が崩壊するぞ。まあ、それ抜きにしても・・・俺らをどうにかできるとでも本気で思っているのか?」

 

 

レディ・ナガンが【個性】で右手をライフルに変え、彼らを拘束しようとした人物をけん制する。記者たちも何が起こったと言わんばかりに騒ぎになっている。

 

 

私としては、なぜ彼らが一緒に現れたのか・・・ものすごく嫌な予感がする。まるで、ヒーロー社会の根幹を崩壊させるような事変が起きる。そんな気がしてならない。

 

 

「さて、まずは自己紹介からかな。先にナガンから」

「そうだね。改めて、私はレディ・ナガン。ブランチ所属のスナイパーだ」

 

 

その言葉に記者も含め、事情を知らなかった人物は唖然とする。

 

 

「俺のことは色々と知っているだろう。雄英襲撃事件でヴィランの襲撃を防いだと思ったら、あらぬ冤罪を掛けられて逃亡中の陰奪全部。そして、今回はそこにプラスの情報を追加だ」

 

 

その言葉に、記者たちはみな思う。まだ、明かされていない情報があったのかと?

 

 

「雄英高校1年、陰奪全部改め、ブランチ所属のヴィラン。レイヴンに次ぐNo.2、コードネーム『リンクス』だ。よろしく」

 

私はその言葉を聞いた瞬間。ヒーローに対する信頼が崩壊していく音が聞こえた気がした。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

ああ~、校長にはちょっとショックが強すぎたか・・・まあ、しょうがない。なんせ、自分のところの生徒がヴィランに、それも特級ともいえるほどヤバい組織のNo.2だからな。

 

 

ヒーローに任せて何とかなるならそれでも良かったが、残念ながらそうはならない。雄英はともかく、公安は負の遺産を積み上げ過ぎた。それこそ、よほどのどんでん返し、ちゃぶ台返しがなければヒーロー社会が崩壊するほどに。

 

 

「ブランチのNo.2って・・・冗談、だよな」

「いや~、残念ながら冗談じゃない。その証人がナガンだ。彼女がブランチ所属であるのは雄英、公安共に知っている。もしも、ここで語っているならそれこそ後ろからズドンだ」

 

 

ネットでの反応を見るに、大混乱と言ったところだ。ネットでは既に色々な考察がされており、『今回の件でブランチに入った』とか『元からブランチ所属だった』とか言われている。もっとも、騙りだと思われているのが大半。ナガンがいるとはいえ、やはり信用が足りていない。

 

 

「じゃあ、証拠を見せようか。『起動』」

 

 

そう言うと、俺はASを起動させた。量子格納されていた機体を纏い、白を基調とした機体が姿を現す。

 

 

AS『ホワイトノヴァ』

 

 

レイヴンと言う存在から【個性】を合わせて生み出した『ナイトフォール』とは違い、こっちは逆。俺の【個性】である【強化】に合わせて魔改造を施した期待が『ホワイトノヴァ』。そのため名前も違うし、ACfAの『ホワイトグリント』とは別物となっている。

 

 

「陰奪!!これはどういうことだ!!」

「陰奪少年・・・これは一体」

 

 

そう思っていると、会場にエンデヴァーとオールマイトが乱入してきた。会見場の周囲を警護していたらしく、騒ぎを聞きつけて駆け付けたようだ。

 

 

「どうもこうも、見ての通りだ」

「何でお前がヴィランになる。ヴィランになる必要など」

「いやいや、もう既にヴィランになることは確定事項と言っていい。今回の冤罪、どうあがいても晴らすのは難しい」

「いや・・・だが」

「仮に晴らすことができても公安に目の敵にされている。どのみち、真っ当な方法で表で堂々と生きていくのは不可能と言っていい。なら、裏だろうが真っ当に近い方法で生きていく道を歩んだ方がいい」

 

 

その言葉にエンデヴァーは俯き、何も言わなくなる。家族ぐるみで交友があっただけに、不本意な形で身近な人間がヴィランになったのはショックだったのだろう。

 

 

「いつからだ・・・いつからつながりが」

「それも含め、説明しようか」

 

 

オールマイトの質問はここにいる記者たちも含め、画面の向こうのすべての人々が知りたがっていること。俺はASの展開を解除し、記者たちの目の前に立ち、俺自身について語ることにした。

 

 

「まず初めに、俺は数時間前までブランチに所属していない。そして、No.2になったのもブランチに入ってすぐだ」

「・・・はぁ?」

「ただ、ブランチとのつながり自体はあった。数年前からだな。あれは・・・俺がNEXTに数千万出資した直後か、そのあたりからつながりがある」

 

 

俺は事前に用意していたカバーストーリーを語り出す。

 

 

「NEXTは実は、ブランチも目を付けていた。当然と言える、その当時はどこにでもあるベンチャーだが、可能性に満ち溢れていた。それこそ、今のような大企業になる可能性、その種と言うべき可能性がたくさんあった」

「そして、それにいち早く気づき、数千万の投資を行った少年にレイヴンは目を付けた。とある目的を達成するための存在になりえるかもしれないと」

 

 

実際、そんなことはないんだが。

 

 

だが、記者たちはそのようなことつゆほど思わず、ネットの状況でも俺の発言に注目が集まっていることがわかる。

 

 

「そして、レイヴンは俺に接触してきた。もっとも、真っ当な方法じゃない。拉致だ。俺を【個性】で拉致しやがった。そりゃあ、俺も大層驚いたよ。そして、色々あって、あのクソガ・・・レイヴンと死闘を演じる羽目になった」

 

 

これに関しては本当。ある日、演習も行ったが些細なことがきっかけで口論となり、戦闘がヒートアップした結果いつの間にか死闘に化けていた。色々と被害が凄かったな・・・エアにもメチャクチャ怒られた。

 

 

「死闘・・・って」

「結果は引き分け。当たり前だが、当時最高峰のヴィランに勝てるはずもない。もっとも、俺もただ黙ってやられてやる気はない。だから、道連れ覚悟で戦って、ギリギリのところで交渉からの引き分けに持ち込んだ」

「ただ、メチャクチャ悔しかったな。おかげで更に【個性】を磨くことになって、今に至る」

 

 

【強化】の【個性】の練度が爆発的に伸び始めたのもこの頃から。やはり、強者との戦闘は経験値が美味しい。これは現実でも同じだ。

 

 

「その後、無事に戻ってきたのに何故警察に行かなかったのですか?目を付けられていると言うことは、また被害に遭う可能性もあったのではないでしょうか?」

「警察に行ってもまともに取り合ってもらえないだろ。子供のイタズラと思われるのがオチ。あと、被害に関しては、週一で拉致されて訓練や実験に突き合わされてたから今更だろ・・・まあ、そのおかげで俺も強くなれた。それに色々あって専用のASも作ってもらえた・・・もっとも、このことを想定してではないが」

 

 

俺の話を聞いているうちに、記者たちも「こいつ、何言っているんだ?」という顔になっていく。逆の立場なら、俺もそういう顔をしてたんだろうな。

 

 

「ああ、言っておくがただただ黙って被害を受けていたわけじゃない。ギブアンドテイク。俺も貰うものを貰っていた。パワードスーツを開発するためのASに関するデータとか、使えそうなサポートアイテムのネコババとか」

「まさか、パワードスーツがあれほど高性能なのは」

「データが十分そろっていたから。あれが無ければ数年は販売が遅れていただろうな」

 

 

実際、ASの基礎的なデータがあるとないとでは開発期間やかかるコストなどがけた違いに変わる。あまりの開発の速さに専門家たちも色々と怪しんでいたな。

 

 

「それはヴィランとの取引になるのでは?」

「いいや。勝手に貰うもんを貰っていたから取引にはならない。窃盗ではあるが・・・ナガン。ブランチは被害届は出したか?」

「いや、出せるわけないだろ」

「じゃあ、問題ないな」

 

 

ナガンが呆れたようにこちらを見るが、被害届を出されていないため問題ない。

 

 

「まあ、なんだかんだ言って関りを持ち続けたのは事実。そう言った意味ではヒーロー失格だが、こういう状況に備えての保険は欲しかったからな」

「保険・・・ですか?」

「ああ、ヴィランとして生きて行かなくなった場合、逃げ込める先が欲しかった。色んな意味でブランチは逃げ込む先として優秀だったからな」

「いやいや、なぜヒーローを頼らないのですか!!」

 

 

記者からのツッコミに、盛大に呆れてしまった。彼らはヒーローに対して不信を抱きながら、いざとなったときには頼りにする気だったからだ。

 

 

ただ、彼らの言うことはある意味正しい。ヒーローが文字通りの存在であるなら。

 

 

「なぜヒーローに頼らないか・・・じゃあ、この状況は何だ?」

 

 

そう言って俺は両手を広げ、周囲を見渡すように促す。記者たちはそれに釣られて周囲を見渡すが、多くの記者は俺の意図がわからずに困惑する。

 

 

「いや・・・これは」

「ヒーローに頼った結果がこのざま、そうだろ」

 

 

一部の記者は俺の意図に気づき、反論しようとするが反論できなかった。当然と言える。ヒーローに頼った結果が、この状況、記者が、世間がヒーローに不信を抱き、袋叩きにする状況を生み出した。

 

 

「それと俺の座右の銘を言おう」

 

 

そう言って、一呼吸置く。正直、この座右の銘は理想を追い求めるなら語るべきでないうもの。だが、現実を見るなら真実ともいえるもの。

 

 

「ヒーローに頼ると馬鹿を見る。なら、自分で何とかするべきだ」

「陰奪少年・・・それは」

「個人では信頼している人はいる。自分で出来ないことを頼むこともある。ただ、ヒーローとしてではない、個人として。ヒーローとしてはほとんど信用していない」

 

 

エンデヴァーやオールマイトなどを頼ったことはある。だが、それは個人を信頼していたのであって、ヒーローとしてではなかった。むしろ、ヒーローとしてはほとんど信用していない。彼らがどう思おうが、様々な制約がある以上、助けられる存在など高が知れている。それこそ、今俺を助けられなかったように助けられない存在があまりにも多過ぎた。

 

 

「まあ、オールマイトたちのせいじゃない。社会がそうなのだからある意味仕方がないこと」

「オールマイトではあなたを助けられないと?」

「助けられないだろ。今の状況もそうだし・・・それに、俺の座右の銘は経験によるもの。俺はヒーローを信用せず・・・いや、自分が守りたいと思ったものを守るために他人任せにしなかった結果、馬鹿を見なかった」

 

 

記者の質問に答えると同時に俺はある2人の存在を思い浮かべる。どちらも俺がヒーローを頼らなかったからこそ救えた存在。ヒーローに頼っていたら、最悪もうこの世にはいなかっただろう。

 

 

「だが、なぜレイヴンは君をNo.2に」

「それはもっと簡単だ。俺の思考はレイヴンと似ていて、なおかつレイヴンよりも若い」

「?!!・・・まさか後継者に」

「別に不思議じゃない。レイヴンは自由の象徴。そして、今のレイヴンは色々と背負い過ぎている。だが、それらを全て捨てて空を翔けるほどレイヴンは無責任じゃない。なら、自分の後を任せる存在を作ればいい」

「それが君だというのか?」

 

 

オールマイトは驚愕の表情でこちらを見つめる。

 

 

実際、表の俺がレイヴンの後を継ぐというプランはあった。レイが後継者としての地位を確立したためになくなったが。

 

 

「リンクス。地を自由に駆け回る山猫。そして『繋がる者』。空を翔けようにも数多の鎖によって空を翔けることができず、鎖を・・・様々なつながりを断とうにも断つことができずに地を駆け回る存在。自由象徴がすべてを託して再び空を翔けるためには都合がいい存在だ」

 

 

レイヴンをバックに、俺がそれらの遺産を全て引き継ぐことができれば・・・相当なことがない限り、身近にいる人たちに危害が加わる心配はない。

 

 

「さて、俺についてはこんなもんでいいだろう・・・それじゃあ」

 

 

「早速本題に入らせてもらおう」

 





最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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