俺の発現した個性が【オール・フォー・ワン】だったって、マジ?!! 作:AC6はいいぞ!!
「本題だと」
「そうだ。何を驚いているのかは知らないが、そのためにここに来たんだ、エンデヴァー」
そう、ここまでの自分語りは本題に入る前の前提知識を与えるため。本来の目的は今のこの状況を好転させることだ。ただ、普通にやっても好転させることなど不可能。だからこそ、ちゃぶ台返しの如き反則手を使う必要がある。
「そもそもの話、今回の件にブランチは大いに関係ある。クリニックの一斉摘発。クリニックでは俺らから個性抑止剤を大量に仕入れ、それを提供していた」
「むろん、違法であることには変わりない。だが、それらは異形系を始めとした個性関連で苦しんでいる人々を救っていた。それに代替する何かがあるのなら大人しく手を引いていたんだが・・・そんなものは存在しない」
そう、問題となるのはそこだ。政府が個性抑止剤に変わり、彼らを救う方法があれば何も問題なかった。それこそ、俺らにいくら損失を与えようが。元々、個性抑止剤に変わる手段があるのなら手を引くつもりでいた。
「聞くが会長。個性抑止剤に変わる手段があったからクリニックの一斉摘発を行ったんだよな」
「・・・」
「答えられないか。まあ、下の暴走。いや、洗脳されたことによって意図的に引き起こされた人災。あるはずもない」
日本における個性抑止剤の供給元である死穢八斎會を抑えられたのも痛かった。おかげで日本における個性抑止剤の販売網はなくなったと言っていい。
「こうなった以上、俺らは個性抑止剤を日本で供給させることはできない。利益を度外視しても公安に目を付けられている以上、それに関わる人。主にヴィランだが、例えヴィランだろうが危険に曝せない」
「では・・・個性抑制剤は」
「日本から消え去る。そして、既に投与された人々にも供給されなくなり、いずれ薬の効果が切れる」
個性抑制の効果は1ヶ月ほど。通院していれば問題ない期間だが、もう供給されないとなると大問題となる。
「今デモを起こしている人たちもだいぶ焦っている。彼らは個性抑止剤のおかげで人生を変えられた。言ってしまえば迫害対象ではなくなった。だが、個性抑止剤が無くなればどうなるか・・・迫害対象に逆戻りだ」
「政府が対策を」
「誰がそんなものを信じる?この状況を引き起こしてしまった政府に?というか、俺らが供給しなければ日本社会は実質詰み。大暴動からの治安崩壊は避けられない。それこそ、ヒーローが無理やり押さえつけてもだ」
間違いなく原作の終盤のような荒廃した国になるだろう。恐怖が恐怖を呼び、誰もがヒーローと言う存在を信じられず、明るい未来も見通せない国になってしまうだろう。
「君は・・・どうしたいんだ?」
「起きたことはもう元には戻せない。だが、可能な限り元に戻す。それは可能だ。もっとも、それを決めるのは俺じゃない」
残念ながら、俺に決定権はない。だが、彼らに打開策もない。だからこそ、俺は打開する手段を持ってきた。もっとも、受け入れる以外の選択肢などあってないようなもの。
「ブランチからの要望を伝える」
ブランチの要望は大雑把に言えば以下の4つ。
1.今回の件で被害を受けた関係各所への謝罪と賠償
2.今回の件で拘束したクリニックおよび死穢八斎會の関係者の即時解放
3.公安の解体および公安の代わりとなる新組織の創設
4.陰奪全部からの要望をすべて聞き入れること
「以上だ。質問は?」
「これは・・・1と2はわかります。ですが3は」
「公安は腐り過ぎた。自分でどうにかできる状況じゃない。なら、一度公安と言う箱ごと入れ替える必要がある。そうすれば、嫌でも腐敗は見つかるし、健全化も図れるだろう」
公安時代の契約・密約などを引き継げず、新たに契約する必要があるとすれば既得権益を排除することが可能。もちろん、全部無くせるとは思わないがそれでも大部分は排除できるだろう。
「4ですが、これは私利私欲が過ぎませんか?ブランチではこのような横暴が認められるのですか?」
「責任が取れるなら認められる。あと、ヴィラン相手に何言ってんだ?まさか、ヴィランが法の名のもとに行動していると本気で思っているのか」
「・・・」
「ちなみに、俺の要望を受け入れなければこの話は無しだ。俺はレイヴンから事態の収束を図るように言われたが、やり方については一切指示がない。言ってしまえば、俺の裁量で自由にやっていいってことだ。場合によっては、国の乗っ取りとかな」
その言葉に場はざわめく。「そんなの無茶だ」と言うことが聞こえてくる。だが、そう思っていない校長や会長、オールマイトたちトップヒーローなどは顔が青ざめる。
「単純な話ここを今出て行って民衆の前で『今の政府は腐っている。今こそ革命のとき』って煽れば、割と簡単に革命を起こせるぞ。武力に関してはブランチが自前て持っている戦力で足りるし、大義名分は『政府によって迫害されている異形系の解放』とでも言えばいい。もちろん、そこらのヴィランが言っても説得力皆無だが、ブランチなら話は変わる」
「君は・・・ほんとにそれが正しいと思っているのか?君が起こす革命には、どれだけの市民が犠牲になると」
「オールマイト。革命に犠牲はつきものだ。とはいえ、こっちは犠牲を出す気はない。やりようはいくらでもある」
エアによる政府機関へのハッキングとか。イヴによる治療を辞めると世界各国の人々に脅しをかけるとか。後者に関しては、難病限定でしか治療をしていなかったため一般人相手には効果が薄いが、富豪相手に特殊な医療を提供していたため、そのことを考えると効果覿面だろう。
「言っとくが、これは最終手段だ。やる必要がないならやらない」
「でも、君は必要があればやるんだよね」
「当然だ。だから校長。そうならないように頑張って上を説得してくれ。俺だって好きで革命を起こすわけじゃないんだから」
「・・・」
「聞けないなら日本は終わりだ。なら受け入れるしかないだろ」
「・・・」
「24時間。それまでに決めろ」
決まるかな?まあ、決まらなければマジで日本終わりだ。誰が何と言おうが、要望を呑まなければどうしようもない。果たして、それを理解したうえで決めれるのか。
その後、会見場を後にして拠点に戻った。本当は家族の元に行きたかったが、今ここで顔を見せると政府関係者がいらんことを考える可能性があったため、泣く泣く諦めた。
・・・・・・
前代未聞の記者会見の翌日。ナガンとともにテレビを見る。
「結局、提案は受けいれられたんだね」
「まあ、それ以外の選択肢はないからな」
テレビでは記者会見が開かれており、日本政府はブランチの提案を一部を除き、受け入れることを発表した。一部に関しても、内容が少し変わるだけで提案そのものは受け入れられた形だ。
「まさか個人的な願望も通すとは」
「別にいいだろ。断って俺の機嫌を損ねる必要もないし、悪用を防ぐために色々と対策もするし大丈夫だろ・・・それよりも、そっちは決めたのか?」
「正直、不安で仕方がない」
俺がナガンに提案したこと、それはヒーローとしての復帰だ。今回の事件でナガンの裏の経歴が暴露され、世間がナガンのことを同情している。殺人などを行ってきたが、公安のやってきたことや当時のナガンの心情を考えると情状酌量の余地があり、ヒーローとして復帰させるべきだという流れになっている。
「昨日、随分と私について事細かくリークされたらしいんだが」
「そうみたいだな」
「今日の報道、昨日以上に私に同情的になるように流されているんだが」
「らしいな」
「今日の報道、今までの奴とは別の奴の仕業みたいだが」
「まったく、正義感にあふれたやつもいたもんだな」
横目でじっと見つめるナガンに対し、俺はしれっと知らん顔で答えた。
もちろん、そうなるように仕向けたのは俺だ。ナガンはブランチの中で唯一ヒーロー。今後のことを考えると、表で活動できるようにしたいし、個人的にもナガンはヒーローが似合うと思っている。
「ギルドに所属できるように話は通してある。正直な話、表で使える手札を増やしておきたい」
「言いたいことはわかるが・・・次は今回のようにはいかないんじゃないか?私たちだって馬鹿じゃない。敵がいることがわかり、手口もわかったし対策もした」
ナガンの言いたいことはわかる。確かに今回の件で敵の実態がある程度掴めた。次は今回のようにいかないだろう。だが
「そうとも言い切れない。今回の件、かなり用意周到に練られていた。だが、それ以上に中途半端であったことが否めない」
原作のUSJ襲撃事件。死柄木育成のためとはいえ、俺から言わせてもらえば中途半端すぎた。あの時の最適解、それは存在が知られていないというアドバンテージをフル活用して、最大限に準備したうえで全力でオールマイトを含めた1-Aのメンバーの殺害を行うことだったと俺は思っている。死柄木育成など後回しでもよかった。仮に育成に失敗したとしても、やり直しがききやすいため優先順位は低かった。
もちろん、様々な制約はあっただろう。だが、戦力の逐次投入などヒーローを育成するための糧にしかならないし、資源を消費するだけ。そう考えるとオール・フォー・ワンは完全に舐めプをしていたと言えるだろう。
だが、今回の事件を起こした敵はそんな舐めたことは全くしていない。いや、ヴィラン連合は完全に舐めていた。情報収集を怠り、彼我の戦力差を見誤った結果、大敗北と言う結果につながった。
「今回の件での敵対勢力は2つある。ヴィラン連合と謎の勢力。協力関係は確実にある。同盟かと言われると・・・たぶん違うな。それぞれの目的が違う」
ヴィラン連合の目的は原作通りオールマイトの抹殺。だが、もう片方の勢力の目的はヒーロー社会の崩壊。目的が違う以上、同盟関係はないと思われる。もっとも、校舎への襲撃のことも考えると、一定の協力関係はあるだろうがそれ以上の関係にあると思えない。
「何をもってそう判断したんだ?」
「1つが未来の知識。本来の世界線での『USJ事件』は文字通りUSJ内部で完結した事件だ。これはこの世界でも発生し、概ね俺の知っている知識通りだった」
そう、USJだけに限定すれば、一部不可解なことはあるが概ね原作通りだった。
「であるなら、ヴィラン連合は俺の知っている通りに動き、それ以外の別の何かが別で動いていたと考えればしっくりくる。俺と同じ転生者とかな」
転生者は何かしらの影響でサーの【予知】を外すことができる可能性が高い。ただ、USJの件まで予知できなかったことは気になる。
サーの予知を外すのはそう簡単でない。それを簡単に外したとなれば・・・転生者であること以外に何かしらの仕掛けによって外されたとみていいだろう。
「ヴィラン連合と謎の勢力は協力関係にある可能性が高い。USJ以外はその勢力による仕業。フードちゃんが謎の勢力が使っていたのもそのせいだろう」
そう考えるとつじつまが合う。あれだけ俺らにしてやられたオール・フォー・ワンが独力でここまで巻き返したとは考えにくい。誰かの手を借りたとみるのが妥当だ。
「ヴィラン連合のほうはともかく、謎の勢力のほうは中途半端どころかほぼ完璧だっただろ。見事にヒーロー社会崩壊一歩手前まで行った」
「そうだな。俺らでちゃぶ台返ししたが不信は残り続ける。それこそ致命的な不信が。だが、中途半端と言ったのはそこじゃない。俺に対してだ」
俺をヴィランに仕立てた目的は公安とNEXT、ギルドを致命的なほどに仲たがいさせ、公安が、政府が異形系を含めたアウトローな存在を排除するという認識を植えさせるため。
「なら、目的は成功じゃないか」
「成功だな。だが、ヴィランに仕立てるなら俺以外にも最適な人がいただろ。被身子とか薫とか」
ぶっちゃけた話。被身子の過去、吸血衝動やヴィランとしての適性、薫の父親の失踪など、触れられては困る話はあった。やりようによっては雄英から複数人ヴィランを出すことになっていたかもしれなかった。
「だが、誰も彼女たちのことを・・・いや、誰も俺の周りの人のことに触れなかった。最初はすぐに保護されていたからだと思ったが、どこも俺の周りの人たちを悪く言わなかった。あれだけ俺のことで騒いでいたマスゴミ連中もだ」
「それは・・・変だね」
「そこがよくわからないんだよな。何で俺の周りを攻撃することを避けたのか」
「なんで標的にすることを避けたんだ?」
「もしかしたら俺を怒らせることを避けたのかもしれない。俺自身はともかく、俺の周りに被害が及べばたとえ刺し違えることになったとしても排除に動いていただろうからな」
俺の性格を知っていたとすれば、そう考えればおかしくない。俺自身はヴィランになることにさほど抵抗はないから俺をヴィランに仕立て上げても俺が本当の意味で怒ることはない。そして本当の意味で怒らなければ、積極的に排除に動くこともない。
「ただの高校生相手にやるようなことでもないだろ。仮に怒らせたところで何もできないだろうし、場合によっては排除する、なんてことも」
「それなんだが、俺がブランチとつながりがあったことを知っていたとすれば」
「なっ・・・あれだけ秘匿していたのにか?!!」
「俺の実力からつながりがあると思ったのかもしれないな・・・まあ、これらは結局推察にすぎない」
情報が少なすぎて妄想の域を出ない。もしかしたら、まったくの的外れなのか知れない。
だが、わかっていることもある。それは敵がこれで諦めるとは思えないということだ。存在は明らかになったが、それ以外に関しては全くわかっていない。だが、これほどのことを実行するほどの人物が1回の失敗で諦めるとは到底思えなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。