なので、この小説を読んでから考察集を読み始めて貰えると、より理解が深まると思います。
「そういえば、あの子って結局どうなったの?」
それは、同窓会の最中の出来事だった。
15年前に付き合いがあった、中学時代の友達の一人。その子がふと、私へとそんな話題を振ってきた。
「あの子って?」
「ほら、あの子だよ。あの、夢日記を見せてくるって言ってた、変な子」
「……ああ」
……あの子か。
「……さあ? 途中から疎遠になったから、知らない」
私はただ、そんな事だけを答える。
「ふーん」
友達は、その一言だけで興味を無くす。
そんな事もあるか。……ただ、それだけの反応だった。
「そんな事よりさぁ……」
私は、意図的にその話題を変えようとして……。
「あはは、あったあったそんな事ー!」
その企みは、当然のように成功してしまう。
だから、それだけだった。
何時間も続いた同窓会の中で、窓付きの事に触れられた瞬間は。
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「じゃあ、また会おうねー!」
「うん、また何時かー!」
夜も遅くなって、今日の同窓会はそのままお開きとなった。
「……さて」
そして私は、みんなと別れて一人で帰路に就く。
喧噪に包まれている街から離れ、人が疎らな駅へとたどり着き、ホームで帰りの為の電車を待ち続ける。
「…………」
電車が来るまでにはまだ時間があり、その間は、先程までの賑やかさが嘘のようにやる事がなかった。
「……夢日記のあの子、か」
だからなのだろう。
ふと、改めて思い出してしまう。
今日の同窓会の中でたった一瞬だけ触れられた、私しか知らない、15年前のあの不思議な友達について。
「窓付き……。私、もう30歳になったんだよ」
この駅は人が少なくて、だから、独り言を呟いてもきっと誰にも聞こえない。
「私がもう結婚もしてて、子供もいるって知ったら……、あなたはまた、裏切られたって思ってくれるのかな?」
呟きはただ、夜の闇に吸い込まれていく。
それは、誰に聞かせる為の話でもない。だから、呟いても別に何の形も成さない。
「こんな私に裏切られても、あなたはまだ、ほんの少しでも傷ついてくれるのかな……」
でも、きっと意味などないからこそ、私はぼんやりと思い返す。
子供の頃にだけ会えた、私が殺してしまった、あの最愛の友達について。
夜の闇は全てを吸い込んでくれるようで、だから私は、今だけは、あの子の事を思い出しても少しだけ赦されるような気がしていた。
……私には昔、とても奇妙な友達がいた。
その子は、とても変な子だった。
私とは比べ物にすらならない程、あの子は世間から浮いていた。
私とは比べ物にすらならない程、あの子は毎日を生き辛そうにしていた。
だけど、私などとは比べ物にすらならない程、あの子は特別で、輝いていた。
私は最後まで、あの子の本名を知らなかった。
知らなかったけど、何時も、「窓付き」というあだ名で呼んでいた。
そして私はその子に、何時も「ポニ子」と呼ばれていた。
……もう、今から15年も前の話になる。
子供の頃。とても歪な関係だったけれど、私は確かに、あの子と友達だった。