私が殺した、ゆめにっきの女の子   作:最後のかしわもち

11 / 14
小説11話 それでも何故か、今でもふと思い出す

「……やっと着いたぁ」

 

 家の前だ。

 今の私の、大事な大事なマイホーム。

 ……私は、窓付きとは違う。

 この扉をくぐれば、私には幸せだけが待っている。

 それは私という人間を癒し、慰め、そして本当の私を薄めてくれる。

 

「………………」

 

 扉の前で、私は少しだけ立ち止まっていた。

 立ちすくんでいたと言ってもいい。

 ……今日は久々に、窓付きの事をあそこまで深く思い返した。

 だからなのだろうか?

 何となく、このまま日常に戻ってしまいたくなかった。

 

「はは……」

 

 悪い冗談だと思う。

 私はこんなにも、恵まれた毎日を過ごしているのだ。

 それなのに、それでもそれはそれで、この扉を開けるのには別の勇気がいるらしい。

 

 

----

 

 

 私はこれからも、普通の中で生き続けるのだと思う。

 そしてきっと、寿命が尽きて無になるまで、目先の欲求のままに全てを曖昧にし続けるのだと思う。

 

 

 あの子はきっと、あれから先もあのゆめにっきを描き続けたのだと思う。

 そして、何かを完成させ、それを抱いて、彼女なりに何かに納得をしながら死んでいったのだと思う。

 

 

 私の人生には、お金がある。

 愛もあり、名誉もあり、そこそこの幸せすらもある。

 ……けれど、おそらく彼女が抱いた、その為に死んでしまえる程の何かだけはそこにはない。

 

 

 あの子のゆめにっきに描かれた私は、最後は、一体どんな顔をしていたのだろう?

 ……きっと、私がこれから会う全ての人が、その答えを知らない。

 そして、どうしようもなく醜く愚かな私も、本当に深い所では、それを知りたいとは願えない。

 だからきっと、それを私は一生知りえない。

 

 

 もういないあの子だけが、その答えを知っていたように思う。

 

 

「……寒」

 

 外は、どうしようもなく肌寒かった。

 だから、そろそろ暖房の効いた家の中に入りたかった。

 きっと私は、ただそれだけの理由で、この躊躇いなども忘れてしまう。

 

 長くても、この発作はあと3分くらいだろう。

 その後にはもう、私はこのドアに手をかけ、ただいまと言い、柔らかな暖かさにだけ包まれている筈だ。

 

 だって、私はおばけだ。

 私は結局、どうしようもない程に、ただのおばけなのだ。

 

「あはは……。なのに、なんでなんだろうね?」

 

 それなのに、今でも時々、発作のようにこれは起こる。

 どうせ一瞬後には忘れる癖に、その一瞬の間だけ、どうしようもなく苦しんでしまう。

 亡者の癖に。答えなど、どうせ出せない癖に。それでも何故か、一丁前に、今でも時々、考えてしまう。

 

 

 あの子は一体、どんな子だったのか。

 この世界は、本当はどんな形をしているのか。

 私は一体、何者なのか。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。