エターナルリゾナンス   作:オロナミンD

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出会い 3

無音

 

 

 

限りなく長い時間が経ったように思えた。

 

 

 

僕の耳が壊れてしまったのだろうか。あるいは外の世界すべての音が消えてしまったのだろうか。そう思えるほどに静かだった。

時が動き出したのは厨房の蛇口から滴り落ちる水の跳ねる音が聞こえた瞬間。

 

僕はまだ地に伏したままだった。でも生きている。

息遣いは荒く、鼓動が早い。心臓が暴れだしそうなほどに。苦しいとさえ思うほどに。でも生きている。

本来なら銃声が厨房に鳴り響き、僕の頭を銃弾が貫通、鮮やかな血と共に僕は地に伏しているはずだ。だが僕の頭から赤い血も、その匂いも無い。流れ落ちているのは汗だけ。

 

恐る恐る顔を上げる。顎が砕けているようだ。ニット帽の男の手袋の中には鋼鉄かなにかが入っていたんだろう。痛みを感じ、またもや生を実感する。一体あの一瞬でなにが起きたのだろうか。

 

ゆらゆらと厨房のロウソクが踊る。

 

 

 

「________!!」

 

 

 

目を疑う光景だった。

 

あの強盗二人組がまるで時を止めたかのように静止していた。

そしてさらに驚くべきは顔を上げた目の前________

それは、僅か数センチ先にまたしても時を止めたかのように静止している銃弾だった。

 

息を呑む音が聞こえた。

はっとしてその音の元を振り返ると、血と汗と涙でぐちゃぐちゃの店長がいた。店長も僕と同じく銃弾が目の前で止まっている。

 

僕は安心した。

何が起きたかわからないけれど僕は店長を救えたんだ。

 

だが、店長の顔には安堵の表情などなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店長が何かを言っているようだ

 

 

視界がどんどん暗くなる

 

 

顎の怪我のせいだろうか。でも意識自体ははっきりしている。

 

 

なにかに呑み込まれそうだ。

 

 

真っ暗な______闇の中に引きずり込まれるような

 

 

あれ…僕はなにをしようとしていたんだっけ

 

 

店長に_____ああそうだ店長。店長に謝ろうとしたんだ。

周りに邪険にされ、すれ違うたびに嫌味を言われるような僕を1度でも雇ってくれた恩人…

 

 

だけど店の中には強盗がいて、店長が殺されかけていた。

 

 

戦闘経験なんかないのに助けようとして、失敗して。

 

 

殺されると思ったけどなぜが生きてて。

 

 

店長も助かった。嬉しい。

 

 

だけど、なんでだろう。すごく苦しい。

 

 

その後、店長になにか言われたんだんだっけ。

 

 

 

________ああ思い出した

 

 

 

 

 

 

「ば、化け物だ……!、

人を…………銅像みてぇに______!!

噂はほんとうだった…!てめぇ…魔族の生き残りかぁ゙!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィと店の扉を開ける。

そこにはなんとダクリールが待ち構えていた。

満面の笑みを浮かべて。

 

 

「店長には謝れましたカ?」

 

僕は静かに首を横にふる。

 

 

「そうですカ。ではこれからどうするんですカ?」

 

 

 

 

「_______…ダクリール」

 

 

 

 

「はイ」

 

 

 

 

「僕は魔王じゃない」

 

 

 

 

 

「まだそのようなお考えヲ?

それにしては________

 

________随分と魔王様らしいことをやっていますよネ」

 

 

 

 

ダクリールが店内の奥の厨房に目をやる。

扉の隙間から見えるのはピクリとも動かない3人の人影。

うち二人は愉快そうな、勝利を確信した顔で止まり、もう一人は________恐怖の表情が焼きついたままだ。

 

 

 

 

「貴方様がなんと言おうと、何を行動しようと、結局人間は我々魔族を裏切るのですヨ。そして自分たち以外の者を消し去ろうとすル。それが正義だと理不尽を振りかざしテ。人間と魔族での共存はもはや不可能に近いのでス」

 

 

 

 

子供を諭すように話すダクリール。いつもの僕ならそれを否定し、僅かな希望を語るかもしれない。

でも今は少し違った。

 

 

 

「そうなのかも…しれない」

 

 

 

それが本当だとしても。無理だとしても

 

 

 

「________だけど僕は人と関わって生きていきたい!!」

 

 

 

 

瞬間、厨房の方から物音がした。

時の止まっていた厨房が動きだしたのだ。店長の悲鳴と強盗二人組の騒ぎ声が聞こえてくる。

 

僕は固まっている二人をなんとか移動させ一緒に紐で縛った後、店長を銃弾の軌道からずらしていたのだ。

確証は無かったが僕があの場を氷漬けにしたのなら、きっと動かすこともできると思っての行動だった。

 

 

ダクリールが今まにで見せたことのないような表情をする。

 

 

「貴方はまた…そのようなことを言うのですね…」

 

 

僕に届かない声量でダクリールがなにかつぶやく。

しかしすぐに切り替え、いつもの何を考えているのかわからない顔に戻る。

 

 

 

「________驚きましたヨ…魔王様。貴方は400年の間でまるで別人のようにお変わりになられタ」

 

 

「僕はなにも変わってないよ。僕はルミノックス王国出身の平民________セルノクだ。」

 

 

 

ダクリールは三日月型の目を限界まで細めて笑う。

 

 

「______面白いですネ魔王様…いえ、セルノク様と呼ばせていただきますヨ。貴方様こそが魔王だということを思い出すその日まで_______」

 

 

 

 

 

優しく降り注ぐ月明かりが僕らを照らしていた。

でもそれは明るい未来なんかじゃなくて、暗く険しい闇色の長い長い旅の先にあるものだった。

 

 

それがわかるのはきっと________

 

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