「セレン、それはなに?」
僕たちが出会って三日目。その3日の間は特に何もなく各自で勝手に何かをやっていただけだった。
旅といっても行き先もなにも決めていない状態だったからだ。
僕は街の図書館に通い、魔族や影の能力について調べていた。
影の能力の使い手であるミルエルに教えてもらおうと思ったのだが……僕は早々に諦めた。
今日は街の外れの方にある広大な野原でのんびりとしているとセレンがなにやら紙を取り出した。
「これは魔物の討伐依頼のポスターよ。セルノクは
「何だそれ…」
永劫の秩序なんてとんでもなくやばい組織の匂いがする…
「魔族や魔物が減っている理由としてこの組織の影響は大きいわ。なんせ魔物、魔族専門の討伐部隊なんだから。でも普通の動物とは比べ物にならないほど危険な狩りよ。」
特殊能力を持った魔族。そして普通の動物とは桁違いの力と、耐久力も化け物な魔物。どちらが危険かは考えるまでもないだろう。
「400年前の戦争から存在するこの組織は数こそ減ったものの圧倒的な軍事力で権力は一国の王をも上回るわ。人間側はその組織にすがらないと平和が保てないもの。」
脅威である魔物を狩るのはそれと同レベルの脅威である、か。
歯向かうのはやめておいたほうがよさそうだ。
「それでその
「このポスターはその組織が作っているの。自分の討伐部隊+我こそはという勇気と誇りを持った狩人を入れて討伐しに行くのよ。
危険すぎるけど報酬は弾むわ。ほらみて」
セレンが指さした先の文字を目で流れるように読む。
えー…一、十、百、千、万、十万、百万________
0が何個かわからなくなってきた。
「________こりゃ…すごいね」
「でしょ?私達お金がなくなったらこーゆーのを使ってなんとか暮らしてるのよ」
ん?いやまてよ。
僕は向かい合って座っているセレンの後ろで地面の毛虫で遊んでいる狂気的な少女を見る。
ミルエルの頭にはどう見ても角としか思えない物体が生えている。あれは魔族の特徴の一つだ。
あれが生えているミルエルがいるため街の宿には泊まれないのだとか。僕は魔王と同じ特徴の眼だが、魔王が死んだことは常識として染み込んでいるので気味悪がられるだけで済んでいるのだ。
「ミルエルを連れて行ったら普通にバレるんじゃないの?」
「それは心配ないわ。ちょっと来てミルエル!」
今度は蝶を掴んでは離して、掴んでは離してという蝶にとって地獄のようなゲームをしていたミルエルがセレンの声に反応し、こちらへやってくる。
「なんだ!!魔王がいたのか!!?」
「いないわ。そんなことよりミルエル。角を隠してみて」
「しょうがないな!!」
ミルエルがグッと身体に力を込めると、驚いたことにミルエルのピンク色の角がズズズと頭に仕舞われていく。
そんな便利な機能が魔族にはついているんだな
「どっちかというとこっちが素の状態ね。能力を開放するときに角は生やすものなんだけどミルエルは角が生えていたほうがかっこいいとかなんとか言ってずっと生やしたままなの」
「だってかっこいいだろ!!」
なんてくだらないことで街には簡単に行けないという苦労をしているのだろう。セレンも大変だ。
まぁ昔から仲がいいと言っていたから慣れたものなのだろう。世話焼きなセレンもミルエル相手だとたまに冷たいところがある。
「とにかく、そろそろ出発したいところだし、一旦ガッポリ稼いで来ましょ?」
「それには賛成ですネ」
ダクリールが突然僕の影から姿を現す。
しばらく姿を見ていなかったが最近加わった元気ハツラツなミルエルのせいだろうか。この2人は結構仲が悪い。ミルエルはなんとも思ってなさそうだが。
「セルノク様、のほほんとした顔をしていますが貴方様の懐にあるお金はもはや無いにも等しいのでハ?」
この魔族は僕の懐事情も完璧に把握しているらしい。
別にのほほんとしてたつもりはなかったが懐が最近寂しいのは事実…
「じゃあ決まりね!」
セレンが元気よく言う。しかし僕は心配でならなかった。
自慢じゃないが僕自身の攻撃力はゼロに近い。
ダクリールがいるとは言えそんな危険な狩りに僕は生き残れるのだろうか________
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ルミノックス王国の最北端に僕たちはいた。僕たちと同じ志を持つ者達も一緒だ。今回の狩りには僕含め6人が集まったようだ。
ルミノックス王国の周りには頑丈な結界というものが何重にもかけられており、国に申請をしないと入れず、また出れない仕組みになっている。これは犯罪者が王国内で現れた場合逃げ出せないようにするためだったり、外部から他の王国が攻めてきても全くの犠牲者を出さず迎え撃てるというまさに鉄壁の要塞である。
ルミノックス王国は他の王国よりも魔族の影の能力の解明が進んでいるらしくそれを応用して結界や様々な兵器を開発しているとか________
「来たぞ」
不意に誰かが言った。
街の方角から集団がやってくるザッザッという音が聞こえる。
その正体はおそらく________
「待たせてしまったようですね。
私は
物腰柔らかい雰囲気の若い男だ。しかしなぜだか油断できないような、そんな雰囲気も持っている。隊長という名前は伊達ではなさそうだ。そんな評価をしていると、
「どうかな!それで任せた結果お前らが勝手に死んで私の背中ががら空きになってしまうかもな!!まぁそれでも私は死なんけど!!」
ミルエルがサユキ率いる部隊全体を馬鹿にする。
挑発めいた言葉に部隊の大半がミルエルを睨み殺さんとばかりに睨みつける。対するミルエルはそよ風と言わんばかりの舐め腐った目をしていた。
「こらミルエル!!これから討伐に行くのに雰囲気壊してどうするのよ!」
ぽカッとミルエルの頭を叩くセレン。
「セ、セレン…なんで叩く…?」
「なんでじゃないわよ!謝りなさい!せっかく優しく対応してもらってるのに!」
ミルエルはセレンに対しては強気に出れないのだ。
「おや、貴方はミルエル…というのですか?」
サユキが興味深そうに話しかける。
知り合いだろうか。
「話には聞いていますよ。時々討伐部隊に加わってとんでもない戦果を挙げて帰って来る少女がいると…しかもその狩りで討伐隊はほとんど仕事が無く、あっという間に帰り支度をしているとか…」
何をやっているんだこいつは
本来なら狩られる側の魔族なはずなのににしっかりと組織に目をつけられているではないか。よくバレないで来たものだ。
しかし角をしまって力をセーブしている状態でその強さなんて、ミルエルの力の底は見えない。
「おっといけない、あいさつはここまでにしておいて早速狩りに行きましょうか。お喋りは歩きながらでもできるでしょうし________」
サユキと一瞬目が合う。
でもそれはほんとに一瞬ですぐに逸らされてしまう。
少し違和感を覚えたが、僕の噂を知っていたからだろう、とすぐに切り替えた。
森の奥深く。森にはよく1人になりに来るがそんな僕でも来たことが無いような奥地に踏み込む。鬱蒼と茂る森の木々で昼間なはずなのに夜のような暗さがある。
「怖いですカ?」
ダクリールがコソコソっと僕に話しかける。
余計なお世話だ、と思いながら無視する。
前方ではセレンとサユキの何気ない会話が展開されており、その後ろではミルエルと兵達の睨み合いが続いていた。
「さぁ、着きましたよ」
全員が足を止める。目の前には森が大きく開けた場所が広がっていた。先ほどまで暗かったためか視界が少しチカチカする。
慣れてくるとその全容が明らかになった。
「今回の獲物は________」
この場所は元から開けていたのではない。その魔物によってここら一帯の木々が消滅してしまったのだ。
「ドラゴンです」
僕は死ぬのかもしれない。