アビドス砂漠の砂糖スレ自作概念置き場   作:砂糖堕ちハナエちゃんの人

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2025年9月に砂糖スレ及びテレグラフに先行公開した試作版です。
なんとなくこちらにも投稿しようと思いました。

文章の飾りつけや微調整を行っていない為、テレグラフ公開版を見る事をお勧めします

テレグラフ公開版
https://telegra.ph/%E8%A9%A6%E4%BD%9C%E7%A0%82%E7%B3%96%E5%A0%95%E3%81%A1%E3%83%8F%E3%83%8A%E3%82%A8%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%81%AE%E3%81%8A%E8%A9%B1-%E3%82%B2%E3%83%98%E3%83%8A%E7%B7%A8%E7%AC%AC%E4%B8%80%E8%A9%B1%E3%83%92%E3%83%8A1-09-21




砂糖堕ちハナエちゃんのお話 ゲヘナ編
第1話ヒナ(1)


 

「部長~!メグちゃん~~!!早く早くっ!!」

 

温泉開発部の部員に手を引かれ、メグとカスミが裏口から飛び出てくるとワァっと歓声が上がる。

 

「みんな~!お迎えありがと~。ささっカスミ部長からも一言っ」

 

「ハーッハッハッハッ、諸君!手厚い歓迎ご苦労っ!!そして3日間に渡り私とメグに素敵なホスピタリティを提供してくれた風紀委員会に感謝の贈り物をしようじゃないか!」

 

カスミが懐からリモコンを取り出し掲げると温泉開発部の部員達の目が輝き満面の笑みが浮かぶ。

 

「じゃぁみんないくよ~。せーのっ!!」

 

メグが音頭を取り、皆が息を合わせる。

 

 

「「「「爆破ぁぁぁぁあああ!!!」」」」

 

 

次の瞬間、大音響を響かせ風紀委員会本部棟の全フロアが吹き飛んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲホッゲホッ……うううっ……アコちゃん、チナツ……生きてるかぁ……?」

 

崩れて倒れたキャビネットをどかしてイオリが起き上がる。

 

「ゲホッゲホッ……はい、私はなんとか無事です」

 

少し離れた場所の大量の書類ファイルの山の中からチナツが顔を上げる

 

「ゲホッ、ゲホッ………まったくやってくれましたわね……」

 

倒れたデスクをどかしてアコが起き上がる。三人とも顔も身体中も煤と埃で真っ黒になっていた。

 

「アコちゃん、指示くれ」

 

「まずは風紀委員会の人員の安否確認と建物設備の被害調査をしましょう。チナツは怪我人の数を確認後治療を。イオリは無事の委員を纏めて温泉開発部の追跡をお願いします」

 

「了解」「了解です」

 

アコの指示を受け、チナツとイオリが動き始める。二人が立ち去り、静かになったフロアを眺め、アコは溜息をつく。少なくともここのフロアの設備と備品は全滅なのは明らかだ。買い換えなければならない。

そのためにこれから備品購入の手続きに必要な申請書類をまとめ、提出しなければならない――あの万魔殿に。

 

「はぁ……これは面倒なことになりそうですね」

 

これから起きるであろう出来事が容易に想像でき非常に気が滅入るアコであった。

 

 

 

 

 

 

 

「却下だ」

 

 

「まだ何も言って無いんですけどっ!?!?」

 

念入りに作成した申請書類の束を抱え、訪れたゲヘナ学園最高意思決定機関――生徒会でもある万魔殿を訪れたアコにその主である議長の羽沼マコトは言い放つ。

まだアコは書類の提出と説明どころかどうしてここに来たのかのかすら言っていない。議長室に通されマコトと目が合った瞬間いきなり上記の台詞をぶつけられたのだ。

 

「フン、どうせ破壊された風紀委員会本部棟の設備や備品の購入申請に来たんだろう?」

 

「ぐっ……何故それを……」

 

「キキキ……あの爆発から何時間経ったと思ってるんだ?既に状況はすべて把握済みだぞ。ああ、この程度我が万魔殿情報部を頼るまでも無い。何せこの学園(ゲヘナ)は私(マコト様)の庭でもあり私(マコト様)の身体の一部のようなものだからな。壁に耳あり、窓に目ありだ」

 

「だったら尚更説明の必要は無いはずですよね?さっさとこの書類にサインをしていただけますか?」

 

「だから、却下だと言ってる。恥ずかしくないのか?ろくに捕まえる事も出来ず連中(温泉開発部)に何度も好きなように振り回された挙げ句、己の本拠地の中枢である本部棟を爆破されたんだぞ?これが戦争なら完全敗北でお前たちは全員――」

 

 

「マコト先輩っっ!!」

 

 

突然アコとマコトの会話を遮るような大きな声が議長室に響き渡る。振り向けば入り口のドアに大きく開かれていてそこにイブキが立っていた。今の大声は彼女が発したようである。

 

「イ、イブキ!?どどどどどうしたんだい?そんな怖い顔をして大きな声まで出して?」

 

さっきのアコへの高圧的態度から一変したマコト。そんなマコトに構わずイブキは叫ぶ。

 

「マコト先輩っ!イブキのプリン買って来てくれるって約束どうなったのっ!!もうプリン全部なくなったんだよ!!早く出してっ!!イブキのプリン!!」

 

「なななにぃっ!20個もあったんだぞ!もうぜんぶ食べたのか?さ、さすがに食べ過ぎなのでは無いか?」

 

「足りないっ!足りないっ!!ぜんぜん足りないっ!!!早くプリン出してよっ!!早くプリン出せッッ!!」

 

ついに愛銃のアサルトライフルを構えると、マコトに向かって容赦なく撃ち始めるイブキ。

 

「あだっ!?痛いっ!痛いっ!分かった!分かった分かった!すぐ買いに行くからっ!!今すぐ買いに行くからっ!撃つのをやめてくれイブキぃぃぃぃ~~~!!!」

 

「ふんっ、だ。イブキ下で待ってるからね。約束だよマコト先輩っ。一分以内に来ないと怒るからねっ!もっと暴れるからね!」

 

そう言うとイブキは銃を仕舞いトタトタと走って部屋を出て行く。

 

「待ってくれイブキっ!すぐ準備して行くからなぁ!」

 

急いで身支度するとイブキの後を追うためマコトも部屋を出ようとして入り口でまで走ると振り返りアコに指さし、

 

「と言う事でこれからマコト様は可愛いイブキと買い物に行かなければならないからお前たちの相手をしてる暇なぞ無い、もう一度言う備品購入の件は却下だ。わかったらさっさと帰って掃除でもしていろ」

 

そして何か言おうとするアコを無視して部屋を出てたところでもう一度振り返ると、

 

「ああ、ヒナに伝えておけ。コーヒーが飲みたいなら万魔殿の排水溝の泥水でも啜ってろ。偉大な万魔殿とマコト様の威光にひれ伏し地面に這いつくばりながらな」

 

ほくそ笑みを浮かべそう言うとバタバタと出て行く。静かになった議長室に一人残されたアコの悔しさのあまりに強く握った書類のひしゃげた音が響くのだった。

 

 

 

天雨アコは気が付かなかった。イブキが普段よりも凶暴な態度を取っていた事を。すれ違う時、彼女の身体から甘い香りが漂っていた事を――。

 

 

 

 

 

 

 

「ずいぶん派手にやられたわね」

 

「――ヒナ委員長」

 

 

無惨な状態になった風紀委員会本部棟のフロア入り口で呆然と立ちすくんでいたアコに後ろから声がかかる。振り向けば風紀委員長の空崎ヒナがいた。

 

「も……もうしわけございません。委員長の留守を守れず、カスミたちを捕り逃したあげく風紀委員会棟をこんなに、して、しま、て……」

 

最後は涙声になり言葉を詰まらせるアコ。きつく閉じた瞼に浮かぶ涙にそっとハンカチが当てられる。ヒナが少し背伸びをしてアコの頬に腕を伸ばしていた。

 

「あまり自分を責めないで。アコ達は悪くないわ、今回カスミ達を捕まえたのは私だもの。あの二人いつも以上に大人しくて取り調べにも従順だったから私も安心してたの。今度こそ懲りてくれたのねって、私の完全な油断と慢心が招いた結果なのだから」

 

「いえ、それは私達が――」

 

「だからアコ達に非は無いわ」

 

謝罪の応酬になりそうになったところでヒナの視線が下がる。震えるアコの手に握りられた書類の束へ向いていた・

 

「万魔殿に行って来たのね。その様子じゃマコトに却下されて来たみたいね」

 

「申し訳ございません……」

 

「ちょっと見せてくれる?」

 

そう言うとやや強引にアコの手から書類の束を引き抜くヒナ。すっかりクシャクシャになった紙の皺を伸ばして内容を読んでいく。

 

「――うん、文句も非の付け所もない完璧な内容、この短時間で仕上げるなんてさすがはアコね。まったくこれを見もせず却下するんだからあのタヌキどもは……」

 

溜息をつくとヒナはポケットから分厚い財布を取り出すとアコへ差し出す。

 

「あの……委員長?どこへ?……この財布は……?」

 

「アコ、後は私に任せて。今回の事は私にも責任があるから、風紀委員長として万魔殿(タヌキども)にキッチリ話を付けてくるわ。その間、あなたには買い物を頼みたいの。業務に直接関係ないと予算がすぐに降りない給湯室の備品を買って来てほしい」

 

アコの手に財布を握らせると、ヒナは微笑む。

 

「外へ出て街の景色を見て空気吸って気分転換なれば嬉しい。アコの淹れてくれるコーヒーがまた飲みたいわ」

 

「はいっ!いってまいりますヒナ委員長」

 

ヒナの気遣いに再び涙が浮かびそうになるのを堪えるアコであった。

 

 

 

 

 

「ええっと、これで大体の物は買えたかしら」

 

ゲヘナの街へ出て買い物を勤しむアコ。数件の店を周り大体の物は買いそろえ、最後に食品スーパーに訪れていた。

そこで来客や風紀委員達のためのお菓子や栄養ゼリードリンクやお茶やコーヒーを買いそろえていた。

 

「あら…これは何でしょうか……?――アビドス砂漠の砂糖?」

 

スーパーの調味料等のコーナーの一角にそれはあった。

陳列棚の並ぶ列の端、セール品や目玉商品を並べる平台の上に積まれた砂糖の袋。アビドスの校章の入ったそれはアビドス砂漠で作られた砂糖だと言う。

 

「砂漠でどうやって砂糖を作っているのかしら。それにしてもずいぶん安いですわね」

 

ちかくの砂糖が置いてある棚の商品と比べると3割~4割引きとかなりお得な価格設定になっているようだ。

 

「アビドスの皆さん頑張っているのですね」

 

ふと、アコの脳裏に少し苦い思い出が浮かび上がる。

今年の春、アビドスに逃げ込んだ便利屋68を捕らえるため――正確にはエデン条約ひいてはゲヘナの安泰に重要な影響力を持つ不確定要素であるシャーレの先生を捕らえゲヘナ――風紀委員会の庇護下に置き政治的有利な立場を手に入れる為、アコは独断で委員会を動かしアビドスへ乗り込んだのだった。

結果は散々で政治的有利な立場どころか戦争一歩手前の危険な状況になり風紀委員会の立場は政治的にも窮地に追い込まれそうになったのであった。

幸い、シャーレの先生とアビドスの面々が温情を掛けてくれたおかげで最悪の状況は回避できたのだかアコにとっても思い出しなくも無い苦い経験となった。

 

「そうですね……応援とお詫びをかねて一つ買いましょうか」

 

ゲヘナ風紀委員会として公式にアビドス及びシャーレには謝罪を申し入れそれを受け入れて貰った。アコ個人でも謝罪はしている。でもまだお詫びの行為はしていなかったはず。なら、応援を兼ねて一つこのアビドス産の砂糖をかってみようと思った。

例え実際にはアビドスで原材料を収穫しておらず他自治区から購入した砂糖を精製と再パッケージしてるだけだとしてもこれはれっきとしたアビドスの商品には違いないのだから。

 

「アビドスの皆さん頑張ってくださいね。私達も頑張りますから」

 

アビドス復興を頑張るあの5人の少女達を思い浮かべ、それに温泉開発部によって破壊され再び再スタートを切ろうとする自分達(風紀委員会)を重ね、アコはレジへと向かうのであった。

 

 

 

 

「おかえりなさいアコ」

 

「ヒナ委員長!?……もう帰ってらしたのですか?」

 

 

風紀委員会本部棟に帰り、フロアの入り口から中に入ると既にヒナが帰って来ていた。ひっくり返った委員長専用執務机を起こし、煤汚れを雑巾で拭いていたところだった。

 

「はい。備品と設備の購入申請は無事通ったわ。早ければ明日の昼頃には来るはずよ」

 

鞄から取り出した申請書類の控えをアコに渡すヒナ。開いてみればすべての書類に万魔殿の決済印と議長の承認済みサインが入っていた。

 

「……さすがですね委員長。私にはこんな事とても……」

 

「卑屈にならないでアコ。私は大したことはしてないわ。あのタヌキがイブキに甘えられてご機嫌だったところに行っただけよ。まぁ多少の"お話合い"はあったけどね」

 

ああ、イブキと言えば……、とヒナは続ける。

 

「イブキがマコトからプリンを貰っていたわ。とても甘い香りがする物だったの。それを見ていたらなんだか甘いコーヒーが飲みたくなったわ。アコ、コーヒー淹れてくれるかしら?いつもと違って砂糖入れたものを」

 

「は、はい!すぐにお持ちしますね!」

 

アコは急いで給湯室へ行くと買い物袋から物を取り出し始める。本当は時間をかけて全部出したいのだが今はヒナ委員長にコーヒーを入れるのが先である。コーヒーに必要なモノだけを取り出し急いで並べて行く。本当は豆から淹れたいのだが道具や材料を準備するのに時間が掛かってしまう。委員長にお伺いをすれば「インスタントで構わないわ」と言われたのでインスタントコーヒーの粉を入れ沸かしたてのお湯をカップに注いでいく。

 

「そうでした。今日はブラックではなく砂糖入りでしたね」

 

淹れたてのコーヒーを運ぼうとして、砂糖を入れ忘れた事に気が付き慌ててシンクテーブルにカップを置き、買い物袋からアビドスの砂糖を取り出す。

袋を開け、あまり上品ではないが時間が無いため直接スプーンで掬おうとして――。

 

「きゃあっ!?」

 

思わず手を滑らせてしまう。手から離れ床へと落ちようとした砂糖を袋を掴もうとして掴み損ねくるりと回転する砂糖の袋、運悪く開いた口が下を向き、さらに不運な事に丁度コーヒーのカップの真上だったため、袋の中の砂糖が大量にカップの中に降り注いでしまった。

 

「どどどどどうしましょうか」

 

目の前にはカップから溢れんばかりの山盛りの砂糖があった。もはやコーヒーの黒い液体は何処にもない

 

「い。急いで取り出さないと………ああっ待って待って!!」

 

一瞬フリーズしてしまったもの急いで上に乗ってる砂糖を取り出そうとすると目の前で不思議が現象が起きた。まるで吸い込まれるのかように砂糖が溶けて消えて行ったのだった。気が付けば目の前には少し嵩の増えたコーヒーが入ったカップがあるのみ。

 

「これどうしましょうか……」

 

完全に溶けて消えたものの、明らかに過剰な量の砂糖が入ったコーヒーがある。とても濃い甘い香りを漂わせるソレは強烈な甘さを飲んだ者に与えるのが目に見えていた。

 

「アコ、何してるの?」

 

「い、委員長っ!?」

 

後ろからいきなり声をかけらて思わずアコは飛び上がりそうになる。給湯室の入り口にいつの間にかヒナ委員長が立っていたからだった。

 

「いつまでたっても戻ってこないから様子見に来たんだけど……それ、コーヒーでしょ?コーヒー出来てるなら貰うわよ」

 

「あの……これは……間違えて……しまって」

 

「何を間違えたの?良い香りしてるじゃないの?何で捨てようとしてるの?勿体ないから頂くわ」

 

「あっ委員長っ!」

 

アコの手からカップを取るとクイっとコーヒーを飲むヒナ。

 

「!?!?!?」

 

「委員長っ!?」

 

その瞬間、カップを手に持ったまま大きく見開いた目を激しく白黒させながらヒナは固まってしまう。

 

「委員長っ!大丈夫ですかヒナ委員長っ!!」

 

「おいしい……」

 

「えっ!?」

 

「これはとても美味しいわっ!!」

 

目をキラキラと輝かせながら満面の笑みを浮かべるヒナ。

 

「あの……委員長……。そのコーヒー、砂糖をこぼしてしまって大量に入っているのですが……甘すぎないですか?」

 

「何を言ってるのアコ、全然そんな事無いわ。丁度良い甘さで最高に美味しいのよ!こんなに美味しいコーヒーは生まれて初めて飲むわ!」

 

テンション高めに興奮気味に話すヒナにアコは思わずたじろいでしまう。そんなアコをよそにカップに残ったコーヒーを一気にあおり飲み干すヒナ。

 

「ありがとうアコ。あなたの淹れるコーヒーは世界一よ。大好き愛してるわアコ」

 

「ひゃい!?ああああああありがとうございます……委員長……」

 

飲み干し空になったカップを置くとアコに抱き着くヒナ。至近距離でヒナの体温と心臓の鼓動、そして甘い香りにトドメとばかりに愛の籠った囁きを耳に吹きかけられアコは一気に頭が沸騰してしまう。

ゆでだこみたいに真っ赤になったアコに「今日のアコとても可愛いわ」と囁くと鼻歌混じりにスキップしながら出て行くヒナ。

 

「委員長に褒められました……大好きって……言われた……」

 

放心状態になりながら漸く事態を飲み込めたアコは愛しの委員長にかけられた言葉を何度も噛みしめながら嬉しさに身体をくねらせている。

 

 

 

これがアコ達風紀委員会を地獄へ墜とすきっかけだとは露とも知れずに……。

 

 

(続く)

 

 

 

 

 

 

 

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