逆転裁判 -緑の弁護人- 作:みどりん
逆転裁判 -緑の弁護人-
みんなは子供の夢はなんだったかな。
無茶に掲げた夢が多いだろう。俺も、昔は何も考えずただサッカー選手になりたいと思っていた。サッカーの知識もなく、経験もない。ただ、俺の前の子が、そう言ったから続けて言ってしまった。
何も考えないていないという指摘はもっともだ。
子供のころは、本当に何事も興味はなかった。好き嫌いは人並、人との付き合いもそれなり、熱中する趣味もなければ、人並の感性しかない。
だからだろう―――
表面で言っていること、心の中で感じていることの差に大きく感じ、何事もめんどうになってしまったのは。
このまま一生凡人として生きていく覚悟を固めつつ、着実と人生というものを自分勝手なモノサシで測りだした。
『あなた、おもしろいわね』
そんな空虚な俺の人生に、突然光が差し込んだ。急にだ、急に大きな光が俺の進む先の道を照らしたのだ。目の前の女の子は、まだ俺と同じ幼いながらも美しく、野望を抱いたような目には芸術性を感じる。
そんな彼女は、俺をみてまるで映画をみた感想のようにそう言ってきた。
『あなた、名前は?』
光はだんだんと大きくなり、俺自身を確実に包み込んだ。
俺はあの日、やっと好きなものができた
「―くん、カイくん!」
「ッ!? ハ、ハイ!?」
隣に話しかけられ、飛んでいた意識を無理やり引き戻す。やばい、緊張しすぎたのか昔の思い出が走馬灯にように蘇った。
綾里さんも呆れているし、不甲斐ない・・・。
「す、すいません・・・。緊張しすぎて、ちょい走馬灯を・・・」
「気持ちはわかるけど、タイミングが悪いわ。それに――」
綾里さんはため息をつきながらも、すぐさま目つきを鋭くしたと同時に、この空間にわずかな緊張の空気が強くなる。
タイミングが悪いというのは同感だ。しかも、この状況であればかなり失礼にあたる・・・。
俺と綾里さんは視線を左に移し、俺よりも緊張し汗がダラダラと滝のように流れている男性に期待と不安を向ける。
「一番緊張しているのは、この中でナルホドくんよ」
「うぅ・・・だ、大丈夫かな・・・か、勝たなきゃあいつが・・・」
「ナ、ナルホド先輩・・・」
俺の先輩である成歩堂龍一さん。特徴的な髪型と、似合い過ぎる青いスーツ。左胸には自分の身分を象徴する弁護士バッチ。しかし、俺と同じ、いや以上の緊張のせいか独り言がおおくなり、また呟くごとに汗を垂らしている。
綾里法律事務所―――
新進気鋭の弁護士事務所。綾里千尋さんという美人、敏腕弁護士所長を筆頭に、ナルホド先輩と俺の3人が所属している。
いままでは綾里さんが弁護をし、俺たち二人がサポートをしているという動きではあったが、経験をさらに積むため、また一番の理由だがナルホド先輩の私事的な理由込みで、今回はナルホド先輩が弁護をし、俺と千尋さんがサポートする体制。
もちろん、ナルホド先輩自体が弁護になるのは初である。しかも、殺人事件。
判決によって、人の人生を大きく変えることは間違いない。弁護士というわけで、俺たちは被告人を死んでも守らなきゃいけない、守んなきゃダメなんだ。
今回の被告人は強く、ハッキリと「やっていない」と言っている。綾里さんはそれを信じ、ナルホドさんも信じ、俺も信じた。なら、死ぬ気で無罪を勝ち取る。
けど、この裁判所の空間は異常だ―――
初めて裁判所の弁護側に立っている。サポートではあるが、いままでは本当に裏方の裏方であるため、傍聴席側で聞いていた。けど、初めてこっちに立ってると自分が思っている景色と違いすぎて気持ち悪くなる。
自分らと主張が全く違う検事、人の罪を審判する裁判長、多種多様の傍聴席にいる人たち。
この空間はまさに聖域だ。誰も傷つけてはいけない、誰も裁判を妨げてはいけない。
そんな聖域でありながらも、どこか・・・この、なんとも言えない間隔はなんだ。
「・・・二人とも、あそこを見なさい」
綾里さん、俺たちの緊張をほぐすように柔らかい声で語りかけてくる。あそことは思い綾里さんを見ると、さっきまでの優しい声とは裏腹に、表情は覚悟を決めているようだった。
ナルホドさんと俺は綾里さんに質問せず、その目線を追い最終的の目的地に注目した。
証言台であった
「ここ裁判所は真実という光を追い求める、まさに聖域といってもいい場所よ。ここより厳格で、ここより平等なところはほぼないと言ってもいいわ」
「聖域・・・ですか」
「えぇ。でもね、生易しい聖域じゃないのはもうわかってるわよね。ここは罪を暴き、人を裁くところ。罪という魔は、人をいとも簡単に怪物にする」
「・・・そうですね」
ナルホド先輩はその言葉を受け、どこか悲しげに証言台を見つめる。ナルホド先輩の過去は以前聞いたから、何故彼がそんな表情になったかの理由は理解できる。
だからこそ、ナルホド先輩はさきほどと違い緊張はせず、しっかりと物事に目を向け始めている。
「あなたたち二人なら、あの証言台に立つ思いならわかるはずよね。証言台に立ったら、人は覚悟を決めちゃうのよ・・・真実も、嘘も全てを語ることに。いい? 私たちはこれから、あそこに立つ人たちを相手に戦わなきゃいけないの」
傍聴席がわからでる雑音が減っていく。これは合図でもある。裁判長も姿勢を整い、木づちを持ち始める。向かい側の検事も先ほどまでは冴えないおじさんであるという印象ではあったが、眼鏡に隠れている目線は確実に俺たちを捉えている。
俺たちを殺す――そんな意図を感じてしまう
生唾が溜まり、緊張を無理にほぐすよう飲み込む。それは、本当に緊張を和らげるために飲んだのではない。覚悟を固めるためだ。
「だけど、やる事は二つ。真実を追求すること。人の罪は人じゃないと裁けない、だから私たちがいるの。怪物たちを真っ向から立ち向かい、死ぬ気で真実を追い求めなさい。これは所長命令よ」
「・・・はい!!!」
「ナルホド先輩、頑張りましょう。俺も、全力でサポートします!!」
「ありがとう、カイくん。やっと、僕は弁護士になれたような気がするよ」
たははと不敵な笑いをうかべるナルホド先輩。やっぱり、先輩はそういう感じがとても似合いますよ。
綾里さんは口元が緩み、一歩下がり俺たちの背中を優しくたたいてくれた
「最後にっ・・・。自分を信じなさい。それが正義だろうが、悪だろうが関係ないわ。自分を信じて、とことん突き進みなさい。私は、あなた達二人を信じる私を信じるわ。ナルホドくん、あなたは被告人を信じる自分を信じなさい。カイくん、あなたもナルホドくんを信じる自分を信じなさい」
「「はい!!!」」
「よしっ!! じゃあ、いくわよ!」
その言葉と共に、偶然なのか開廷の号令がなった。
綾里さんの言葉は胸にささる。嫌な気持ちではない、むしろ暖かい。弁護士である綾里さんの弁舌の高さには頭が上がらないな・・・はは。
いつも離さずもっている古い六法全書を強く抱え、俺はやりたい事を目指す―――
俺は、ちゃんと弁護士になったよ、冥
久しぶりの逆転裁判でうろ覚えですが、よろしくお願いします。