角付きの演奏者   作:落日

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ep16.私の大切な友達

「ラキア、やっほー」

 

 風紀委員の一件が終わった後、私は今日もラキアの下へ来ていた。

 ただ、今日は伝えなきゃいけない事がある。

 

「んぁ? なんだ。今日は来ねぇかと思ってた」

 

 素っ頓狂な声をあげるラキア。

 いつもは真っすぐ来るのが、今日はかなり時間が経ってしまっている。

 言わずもがな、風紀委員の件があったから。

 

「……ラキア。今日は話があって来たんだ」

 

「話ぃ? んなの、いつもしてんだろ」

 

「あぁ、いやそうじゃなくて……いや、そうなんだけど……」

 

 変な言い回しをしようとして空回り。

 どう収集つけようか苦心していると、ラキアが鼻で笑った。

 

「冗談だよ。わざわざ宣言すんだから、重要な話かなんかなんだろ」

 

 ラキアの助け舟に感謝しつつ、少し情けなくもある。

 風紀委員の人達と話している時は、あんなにスラスラと言葉が出てきたのに。

 

「……トリニティから連絡があったみたいでさ。ラキアをあっちに引き渡す事になったみたい」

 

「……そうか。まぁ、分かってたことだ」

 

 大きな溜息を吐き、目を伏せるラキア。

 放たれた言葉からは諦めの感情が読み取れた。

 

「それで……」

 

「――いや、待て」

 

 ラキアは私の話を遮り、伏せていた眼をあげて私を見る。

 

「なに?」

 

「なんでお前がソレを知ってるんだ?」

 

 それは妥当な疑問だろう。

 なぜトリニティからの連絡を、ただの一般生徒である私が知っているのか、と。

 

「今から話すのが、その答えだよ」

 

 ラキアは胡散臭そうに私を見るが、ひとまず納得したようで、続きを促す。

 私はうん、と1つ頷いてあの話をし始めた。

 

「トリニティからの要請はもう一つあってさ。ラキアの引き渡しを私にやって欲しいんだって」

 

「ふ~ん、お前が……

 

 

 

――は?」

 

 ラキアは、当初の私の様に固まってしまう。

 その気持ち……私にはよく分かる。

 

「どうやったんだろうね。私が貴女と仲いい事、知ってるみたい」

 

「――はっ。陰湿な腹黒女どものやりそうな事だな」

 

「ちょ、ちょちょ……き、聞かれてるかもしれないのに……」

 

「今更なにを怖がれってんだよ。むしろ聞かれてんだったら好都合。清々すらぁな」

 

 意地悪な笑みを浮かべるラキア。

 彼女の性格的に、やられっぱなしは気に喰わないのだろう。

 私としてはハラハラするので止めて欲しいが。

 

「んで? お前はどうすんの?」

 

「受けるよ。ココに来る前に、その話をしてきたんだ」

 

 ラキアは鼻で笑うと、自嘲気味な笑みを浮かべて私を見る。

 

「お前も大変だな。こんな下らねぇことで生徒会に目ぇ付けられて」

 

「生徒会……? あぁ、ティーパーティーのこと?」

 

「あ? ちげぇよ。ゲヘナにもあんだろ、生徒会」

 

 ……なにかおかしい。

 噛み合っていない。会話が。

 

「……どうしてそこで生徒会が出るの?」

 

「は? 生徒会に呼ばれたんじゃねぇの?」

 

「ううん? 風紀委員だよ」

 

「はぁ~?」

 

 なるほど、やっと分かった。

 彼女は生徒会同士がやり取りしているのだと思ったのだろう。

 ただ、この学園は……というより、今の状況が特殊というか……

 

「こんなこと普通、生徒会すっ飛ばして話し進めるかぁ?」

 

「まぁ、いろいろあるというか……特殊というか……」

 

「ことごとく変な学校だな」

 

 彼女の言うことも、もっともだ。

 言われて初めて気付いた私は、だいぶこの学園に慣れてしまっているのかもしれない。

 

「まぁいいや。で? アタシはいつ送還されんの?」

 

「それが、今朝急に言われたみたいで……何も決まってないんだって」

 

「……ふ~ん」

 

 私の言葉に考え込む素振りを見せるラキア。

 少しの間を置いて相槌だけが返ってくる。

 私もこの件に関して話せることはコレ以上ない。

 

「で、もう1つあるんだけど……」

 

「まだあんの?」

 

 若干うんざり気味の顔で私を見るラキア。

 まぁ、重要な話の後だから気持ちはわかるけど。

 

「大丈夫。これは楽しい話だから」

 

「お前が楽しいだけじゃねぇのか?」

 

「はぁ~? 私と話してる時が一番楽しいって言ってたじゃん!」

 

「言葉の綾。建て前。わかる?」

 

 あれからラキアは、怒りながら返事するっていう事が無くなった代わりに、知的に返してくるようになった。

 嬉しいような、悔しいような……

 

「……まぁ、楽しいのは事実だけどよ」

 

「え、なに、急にデレられると困る……」

 

「撃ち抜くぞ」

 

 ギロリと睨みつけられても、私の笑みが止まらない。

 そんな私を見てなのか、ラキアは大きく溜息を吐き、呆れ顔を見せる。

 

「んで? なんだよ。もう1つの話って」

 

「それはねぇ……」

 

 背負っていたギターケースを開き、中身を取り出す。

 いつも入っている物より少し小さいソレは、ずっしりと重い。

 

「ジャ~ン」

 

「――お前、それ……」

 

 ラキアが目を丸くする。

 その顔を見れただけで、頑張った甲斐があったというものだ。

 

「返してくれるって。さっき貰ってきたんだ」

 

「貰ってきたんだ、って……お前……」

 

 はい、とラキアに銃を手渡す。

 彼女の目線は私と銃を行ったり来たりし、おずおずと私から銃を受け取る。

 

「……たしかに、アタシの……」

 

 受け取った銃をしげしげと眺めると、彼女は大事そうに抱きしめた。

 その姿を見ると余計に嬉しくなる。

 

「ありが、とう……」

 

 ポツリと呟かれたその言葉。

 普段の彼女から想像できないしおらしい口調に、思わず目尻が下がる。

 昔から、こういうギャップには弱いのかもしれない。

 

「良いって。友達なんだから」

 

 出会いは最悪。

 交流時間も短い。

 それでもラキアは、私の大切な友達だ。

 

 

 

 

 

「……そういえばソレ、ギターケースだろ? 中身はどうしたんだよ」

 

「ん? あぁ。あの子は、ちょっと廊下でお留守番」

 

「防犯意識皆無か?」

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