角付きの演奏者   作:落日

2 / 19
原作知識無い時に色んなブルアカの漫画見てたらハマってしまって、つい1週間前に新任の先生になりました。

3章の途中で詰み中なので、頑張りたいところ。

新参ですので、間違った知識があるかもしれません。
気付きましたら、ご指摘いただけると嬉しいです。


――2024/03/17――
ヘイローのデザインについて、ちょっと追記しました。


ep0.貴女のいない世に未練など無く

 

「ねぇ」

 

 月明かりに照らされた湖。

 波打つ湖面に揺られるボート上で、私は口を開く。

 

「ここにしよっか」

 

 持っていたオールを引き上げ、同乗者へと目を向ける。

 水面に反射する光が映っている筈なのに、どこまでも闇が続く錯覚を覚えさせる瞳の彼女は、静かにコクン……と頷いた。

 私はそれを見て、水と一緒に揺れる月を眺める。

 

――トントン

 

「ん?」

 

 肩に伝わる呼びかけに、水面に向けられていた目線を向ける。

 彼女の手には一枚の紙が。

 

【来なくていい】

 

 彼女なりの心遣いだということは、すぐに理解した。

 そのうえで、溜息を一つこぼす。

 彼女の手を、その紙ごと握り締めながら(ひたい)を寄せ合わせる。

 

「なに言ってるの」

 

 呆れながらも、その気遣いに心を震わせながら(たしな)める。

 私がここで止まっても、彼女はやるだろう。

 私が必死に止めても、彼女はやるだろう。

 なら、私がするべきことは一つしかない。

 

「私の命は貴女の物、貴女の命は私の物」

 

 私達は二人で一つ。

 私に無いものが、彼女にはある。

 でも、彼女に無いものが、私にはある。

 

「……前に、そう言ってくれたでしょ」

 

 貴女のいない世界は、私がいないも同じ。

 貴女のいない世界に、未練なんてない。

 目を伏せた彼女は、カリカリとペンを走らせる。

 

【ごめん】

 

 その三文字は、私の時を数秒だけ止めた。

 自分の事ではないのに、心が締め付けられる。

 ごまかす様に笑いを浮かべ、彼女を抱きしめる。

 ――この温もりも、最後のものになる。

 

「……じゃあ、行こっか」

 

 お互いの手のひらを重ねて、指を絡ませる。

 恋人繋ぎと呼ばれる繋ぎ方だが、今さらソレで恥ずかしがるような間柄でもなかった。

 ゆっくりと立ち上がり、湖を見下ろす。

 ふと横を見れば、彼女もこちらを見ていた。

 いろいろな思いを胸にしながら笑みを浮かべる。

 そして。

 どちらからともなく。

 冷たい月に、その身を投げた。

 

………

……

 

「――っ!」

 

 一瞬跳ねた身体とともに、まぶたが開かれる。

 数秒の経った後、ゆっくりと体を起こす。

 

「……久しぶりに見た……」

 

 それは追憶。

 私の経験であり、私の過去であり……

 ――私の、前世。

 

 布団から起き上がり、部屋の隅に置かれた姿鏡を見る。

 そこには、前世とは似ても似つかぬ美少女が映っていた。

 

「……まぁ……この世界の顔面偏差値バカほど高いから、これでも平均以下レベルだけど……」

 

 前世の記憶を夢に見たからだろうか。

 この世界の異常さを改めて思い知る。

 

「……異常……だよねぇ……」

 

 自分の頭を触りながら呟く。

 空色の髪に、先端が緑がかっている角。

 角は対称的に二本生えているのだが、生まれつき左側が折れてしまっている。

 そしてもう一つ。

 

「なんなんだろうなぁ、コレ……」

 

 頭の上に浮かぶ光。

 緑色の輪の中心に、ゲームによくあるような形状の青い盾のようなものが。その盾には船の(いかり)のようなデザインが描かれている。

 頭に浮かぶコレはヘイローというらしいが、解明されていないことが多く、少し不気味だ。

 しばらく角を撫でていると、ベッド脇に置いていたスマホが鳴り響く。

 今日は夢のおかげで、予定していたより早く起きてしまっていた。

 アラームを消して、掛けていた制服を着る。

 

「まぁ……ウチの学校じゃあ、制服なんてほぼあって無いようなものだけど」

 

 今世で通う学校……ゲヘナ学園は、非常に自由な学校だ。

 それこそ、純正の制服を着ている生徒を見る事の方が少ないほどに。

 自由、といえば聞こえは良いが……どちらかといえば、無秩序が正しいだろうか。

 とはいえ、その無秩序な学校を選んだのは自分であり、その自由さを利用させて貰ってる事もあって、悪く言うつもりはない。

 ……いや、治安の悪さだけはちょっと文句の一つも言いたくなるが……

 

「……今日は無事にたどり着けるかなぁ」

 

 辟易とした声を漏らしつつ、愛用のギターと、護身用のショットガンを背負う。

 ……こうして平然と銃を持ち歩くことが何よりの異常ではあるが、この世界では持ってない方が危険でもある。

 というのも、この世界――少なくともここ、学園都市「キヴォトス」では、銃撃戦など日常茶飯事だ。

 それが無秩序なゲヘナなら尚の事。

 

「……携帯、財布……うん、学生証もある」

 

 鞄を漁り、持ち物を点検。

 携帯、財布を確認し、「高科(たかしな) カナメ」と書かれた学生証も、財布内にあるのを確認した。

 

「よし……じゃあ、行ってきます」

 

 何事もありませんようにと、届きそうもない祈りをしつつ、今日も私は学校へと向かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。