「あわわわわ……」
朝の祈りは虚しくも天に届かなかった。
朝早くから撃ち合いは始まっており、何とか回り道できないかと大回りしたが……
「……あ?」
バチッと、後方で待機していた一人の不良生徒と目が合ってしまった。
肩に乗せていたアサルトライフルを持ち直し、こっちに歩いてくる。
私はゆっくりと後ずさりながら、距離感を一定に保つ。
「おい」
不機嫌そうな声とともに、こっちに近寄るスピードが速くなる。
同時に私の後ずさりの速度も上がるため、距離は常に一定だ。
ピタッ……と歩みを止めるので、私も止まる。
「――待てコラァァァ!!」
いきなり地面を蹴り、私に詰め寄ってくる。
当然、私も振り返って逃げだした。
「私は無関係ですぅぅぅ!!」
一瞬目が合っただけで即バトル。
ポ○モンじゃないんだから……
ズガガガガ……ッ!! と撃ち込まれる弾丸の雨。
それらは肉体に到達することなく、バスンバスンッと背負っているギターケースに吸い込まれる。
「ぅわぁっ!? ダメダメダメ!! これだけはダメ!!」
弾幕に晒されるギターを背中から下ろし、両腕で抱える。
こんな風に撃たれるのは初めての事ではない。
入学してからというもの、何度撃ち合いに巻き込まれた事だろうか。
というより、もはや巻き込まれなかった日を数える方が早いだろう。
そんな日常を送ってきて今日まで生きているのは、キヴォトス人だからに他ならない。
というのも――
「あだだだだだっ!! ご勘弁をぉ!!」
背負うものが無くなった無防備な背中に、無慈悲に撃ち込まれる弾丸。
にも
それはこのキヴォトスの人間全員が有しているもの。
その程度で済むからこそ、銃ですら喧嘩の道具にされてしまう。
ただ、痛いものは痛いうえ、そもそも無関係な身の上であるため、私に撃つのは是非とも勘弁してほしい所だ。
「こうなったらアレを……痛い痛い!!」
ベチベチと体を痛めつけてくる銃弾を浴びながら、建物の角を曲がり、敵の視界から消える。
その瞬間に逃げるのをやめ、抱えていたギターを壁に立てかけ、護身用のショットガンを取り出す。
そのまま影で身構えながら、耳に全神経を集中させる。
近付く怒声と足音。
(まだ……もう少し……!!)
限界まで引き付け、そして今、すぐそこで地面を踏みしめる音を聞いた。
「うあぁぁあぁ!!」
思い切り地面を蹴り、身体ごと前に突進する。
「ぅぐぉっ!?」
狙い通りの、完璧なタイミング。
全体重を乗せたショルダータックルが不良の腹部に突き刺さり、そのまま地面へと押し倒す。
突進の勢い+全体重の衝撃を受けたまま、無防備な背中から地面へと倒された彼女は
私はその勢いのまま一回転し、スムーズに立ち上がると、倒れたままの彼女に向かってショットガンを構える。
「んなっ、ちょっ――」
セーフティを外し、躊躇なく発砲する。
ズギャン!! という音と共に散弾がさく裂、不良の腹部に集中して弾丸が浴びせられる。
「ぅげぇっ!?」
「うおあぁぁぁぁ!!」
相手の呻き声をかき消すように叫びながら、スライドして排莢・装填、即座に発射。
それを何度か繰り返した後、カチンッカチンッという音が、装填していた全てのシェルを撃ち果たしたことを告げる。
「ハァーッ……ハァーッ……」
叫びながら撃ち続けたために荒れ果てた息を整える。
不良は、目が明後日の方を向き、ピクピクと痙攣していた。
ちょっとだけ不安になり、手を口元へ持っていけば、ほのかに感じる風が彼女の命を教えてくれる。
息がある事に安堵すると、途端に身体から力が抜けた。
大きなため息を一つ吐きながら、ストンと地面に座り込む。
――グイグイ……
「……ふぇ?」
肩甲骨あたりに、何か硬いものが押し付けられるような感触。
間抜けな声を発しながら振り向くと、三人程の不良生徒が。
一人は私にライフルの銃口を押し付け、残り二人は肩に乗せたまま。
「……へ、へへ……」
思わず笑いが
三人はニコッ♪ という音が聞こえそうな笑みを浮かべると、
その三つの銃口を私の顔に向けた。
「もうやだぁぁぁぁぁぁ!!」
立てかけていたギターを再度抱え、逃走を再開する。
果たして登校できるのだろうか……