「と、いう訳で――」
「「「一週間、お疲れ様~!!」」」
「お、お疲れ様、です……?」
MomoTalkでチナツを遊びに誘い、計画していた通りにカフェで「お疲れ様でした会」を開いた。
会の事は話していなかったため、少し戸惑っていたチナツだったが、ちゃんとノッてくれて嬉しい。
「チナツ大変だったでしょ~? 結構大規模な銃撃戦は起きるわ、カナメが配信してたせいで爆破事件に駆り出されるわでさ~?」
「アレ私のせいになるとかマジ?」
「い、いえ、そんな事は……結局、風紀委員が動くのは確定だったでしょうし。むしろカナメの配信のおかげで早期解決した面もありますから……」
「だって~。良かったねぇ、カナメ~?」
「なんだコイツ」
ダル絡みしてくるヘチマに辟易しつつ、アイスココアを口に運ぶ。
前世でもコーヒーは苦手で飲めなかったが、それは今世でも変わらないらしい。
「チナツは頑張りすぎだよ……ううん。チナツが……というより、風紀委員全体が」
「まぁ、頑張りすぎというか……第一校舎の面々が問題起こしすぎだね」
「私達も精一杯努めてはいるんですが……犯罪が減るどころか、むしろ増えていく一方で……」
心底うんざり、といった表情で溜息を吐くチナツ。
以前から第二校舎で姿を見かけない事はあったが、ここ最近、本当に姿を見かける回数が減った。
それほど、風紀委員の方の仕事が多くなっているという事だろう。
「人手不足だからね~、風紀委員って。人材もあまりいなそうだし~」
「ちょ、ちょっとヘチマ!? 面と向かってそんな……!!」
「……いえ、事実ですから……」
「委員長と行政官さん、三年生だったよね? 来年とか、本当どうなるんだろう……」
「……ちょっと、考えたくありませんね」
風紀委員長「
両人とも風紀委員の中核を担う人物で、特に委員長の空崎 ヒナは、その突出した戦闘能力で恐れられており、存在そのものが抑止力になってしまう程。
無論、他の風紀委員とて日頃から訓練しているし、その辺のチンピラ程度なら簡単に鎮圧するほどには強い。
ただ、どうしても一人だけ異質に目立つ人物がいると、全ての威光、名声がそこに集中してしまう。
それゆえ、「風紀委員が恐ろしいのではなく、空崎 ヒナが恐ろしい」というのが現状の風紀委員の実態となってしまっている。
そして、さらに悪循環なのが――
「次の委員長……順当にいけば、二年の
「イオリ、ですか……彼女に委員長の代わりが務まるでしょうか――」
「あー!! ダメダメ!! そういう考え本当ダメ!!」
「えっ……?」
「私だってゲヘナ学園生だから、風紀委員長がどんなに凄い人かは分かってるけど……でも、だからといってずっとその影に囚われたままじゃ、いつまで経ってもワンマンチームから抜け出せないよ!!」
風紀委員全体が、彼女に依存してしまっているという事実だ。
本物の天才というものを目にしてしまい、自分の努力をバカバカしく思う……おそらく、風紀委員のほとんどはそうなのだろう。
……私も、前世で経験したことだ。それを非難することはしないし、出来ない。
「そうだね~。来年とか『ヒナ委員長がいてくれたら』なんて、ずっと言われちゃうだろうしねぇ~」
「たぶん、犯罪件数も跳ね上がるだろうし」
「それは……そう、ですね……」
「だから、今からでも来年に向けて変わらなきゃ……なんて、軽く言えるけど……」
分かっている。
それがどんなに困難な事かくらい。
そんなに容易に自分を変えれたら、人間、苦労などしない。
だが、変わらなければ風紀委員会に未来が無い事も確かなのだ。
「いざとなったら、ほら。私達も手伝うしさ。ね?」
同意を求めるように二人を見る。
勝手に巻き込んでしまったが、二人とも嫌な顔一つせず頷いてくれた。
「友達のためだしね~」
「まぁ、手伝える事ならね」
「……では、いっそのこと風紀委員に――」
「「「うん、ゴメン。それはムリ」」」
予想していたのか、さして残念でもなさそうに溜息を吐くチナツ。
気まずい雰囲気を誤魔化すため、すっかり表面が水の膜で覆われたアイスココアを口に運び――
ボガァァァン!!
「なっ――」
背後から爆発音が響く。
突然のことに驚き、振り向けば、そこにはヘルメットを被った集団が銃を構えていた。
「ヘルメット団……!!」
チナツが顔を
ヘルメット団……キヴォトスの各地で様々な悪事を働く、武装不良集団。
私利私欲で暴れることも多いが、ときおり誰かの依頼で暴れまわるなど、傭兵まがいの活動をしていたりもする危険な集団だ。
「やれ、やれ! 全部壊しちまえ!!」
その言葉を皮切りに、ヘルメット団員達は一斉に銃を乱射し始めた。
とっさに私達は伏せ、身の安全を少しでも確保する。
「いや~、面倒なのが来ちゃったね~」
「わわわっ……!? あ、あぶなっ……!!」
「やーばい……どうしよう……」
三人して緊張感があるのか無いのか、そんなやりとりを繰り返していると、突如チナツが立ち上がった。
「ちょっ!? チナ――」
「風紀委員の
どこからか取り出した風紀委員の腕章をつけ、ヘルメット団に立ち向かうチナツ。
当の犯人たちの大体は怯んだものの、そのうちの一人が冷静だった。
「風紀委員? ふーん。 でも今、委員長の空崎 ヒナはいないんだろ?」
「――っ!!」
「それに今なら他の風紀委員もいないだろ? いたら今頃、囲まれてるはずだもんなぁ?」
真っ黒なバイザー越しでも分かるくらい、声に余裕があった。
そして、その言葉に、他の団員の動揺も収まってしまう。
「風紀委員には、今まで散々コケにされてきたからなぁ……」
団員たちが、チナツに向けて銃を構える。
いくらチナツが風紀委員でも、この戦力差じゃ……
「――たっぷりお返しさせてもらおうかぁ!!」