角付きの演奏者   作:落日

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ep4.それは「組織」とは言い難く

 

「と、いう訳で――」

 

「「「一週間、お疲れ様~!!」」」

 

「お、お疲れ様、です……?」

 

 MomoTalkでチナツを遊びに誘い、計画していた通りにカフェで「お疲れ様でした会」を開いた。

 会の事は話していなかったため、少し戸惑っていたチナツだったが、ちゃんとノッてくれて嬉しい。

 

「チナツ大変だったでしょ~? 結構大規模な銃撃戦は起きるわ、カナメが配信してたせいで爆破事件に駆り出されるわでさ~?」

 

「アレ私のせいになるとかマジ?」

 

「い、いえ、そんな事は……結局、風紀委員が動くのは確定だったでしょうし。むしろカナメの配信のおかげで早期解決した面もありますから……」

 

「だって~。良かったねぇ、カナメ~?」

 

「なんだコイツ」

 

 ダル絡みしてくるヘチマに辟易しつつ、アイスココアを口に運ぶ。

 前世でもコーヒーは苦手で飲めなかったが、それは今世でも変わらないらしい。

 

「チナツは頑張りすぎだよ……ううん。チナツが……というより、風紀委員全体が」

 

「まぁ、頑張りすぎというか……第一校舎の面々が問題起こしすぎだね」

 

「私達も精一杯努めてはいるんですが……犯罪が減るどころか、むしろ増えていく一方で……」

 

 心底うんざり、といった表情で溜息を吐くチナツ。

 以前から第二校舎で姿を見かけない事はあったが、ここ最近、本当に姿を見かける回数が減った。

 それほど、風紀委員の方の仕事が多くなっているという事だろう。

 

「人手不足だからね~、風紀委員って。人材もあまりいなそうだし~」

 

「ちょ、ちょっとヘチマ!? 面と向かってそんな……!!」

 

「……いえ、事実ですから……」

 

「委員長と行政官さん、三年生だったよね? 来年とか、本当どうなるんだろう……」

 

「……ちょっと、考えたくありませんね」

 

 風紀委員長「空崎(そらさき) ヒナ」と、行政官「天雨(あまう) アコ」。

 両人とも風紀委員の中核を担う人物で、特に委員長の空崎 ヒナは、その突出した戦闘能力で恐れられており、存在そのものが抑止力になってしまう程。

 

 無論、他の風紀委員とて日頃から訓練しているし、その辺のチンピラ程度なら簡単に鎮圧するほどには強い。

 ただ、どうしても一人だけ異質に目立つ人物がいると、全ての威光、名声がそこに集中してしまう。

 それゆえ、「風紀委員が恐ろしいのではなく、空崎 ヒナが恐ろしい」というのが現状の風紀委員の実態となってしまっている。

 そして、さらに悪循環なのが――

 

「次の委員長……順当にいけば、二年の銀鏡(しろみ)先輩かなぁ?」

 

「イオリ、ですか……彼女に委員長の代わりが務まるでしょうか――」

 

「あー!! ダメダメ!! そういう考え本当ダメ!!」

 

「えっ……?」

 

「私だってゲヘナ学園生だから、風紀委員長がどんなに凄い人かは分かってるけど……でも、だからといってずっとその影に囚われたままじゃ、いつまで経ってもワンマンチームから抜け出せないよ!!」

 

 風紀委員全体が、彼女に依存してしまっているという事実だ。

 本物の天才というものを目にしてしまい、自分の努力をバカバカしく思う……おそらく、風紀委員のほとんどはそうなのだろう。

 ……私も、前世で経験したことだ。それを非難することはしないし、出来ない。

 

「そうだね~。来年とか『ヒナ委員長がいてくれたら』なんて、ずっと言われちゃうだろうしねぇ~」

 

「たぶん、犯罪件数も跳ね上がるだろうし」

 

「それは……そう、ですね……」

 

「だから、今からでも来年に向けて変わらなきゃ……なんて、軽く言えるけど……」

 

 分かっている。

 それがどんなに困難な事かくらい。

 そんなに容易に自分を変えれたら、人間、苦労などしない。

 だが、変わらなければ風紀委員会に未来が無い事も確かなのだ。

 

「いざとなったら、ほら。私達も手伝うしさ。ね?」

 

 同意を求めるように二人を見る。

 勝手に巻き込んでしまったが、二人とも嫌な顔一つせず頷いてくれた。

 

「友達のためだしね~」

 

「まぁ、手伝える事ならね」

 

「……では、いっそのこと風紀委員に――」

 

「「「うん、ゴメン。それはムリ」」」

 

 予想していたのか、さして残念でもなさそうに溜息を吐くチナツ。

 気まずい雰囲気を誤魔化すため、すっかり表面が水の膜で覆われたアイスココアを口に運び――

 

ボガァァァン!!

 

「なっ――」

 

 背後から爆発音が響く。

 突然のことに驚き、振り向けば、そこにはヘルメットを被った集団が銃を構えていた。

 

「ヘルメット団……!!」

 

 チナツが顔を(しか)めながら呟く。

 ヘルメット団……キヴォトスの各地で様々な悪事を働く、武装不良集団。

 私利私欲で暴れることも多いが、ときおり誰かの依頼で暴れまわるなど、傭兵まがいの活動をしていたりもする危険な集団だ。

 

「やれ、やれ! 全部壊しちまえ!!」

 

 その言葉を皮切りに、ヘルメット団員達は一斉に銃を乱射し始めた。

 とっさに私達は伏せ、身の安全を少しでも確保する。

 

「いや~、面倒なのが来ちゃったね~」

 

「わわわっ……!? あ、あぶなっ……!!」

 

「やーばい……どうしよう……」

 

 三人して緊張感があるのか無いのか、そんなやりとりを繰り返していると、突如チナツが立ち上がった。

 

「ちょっ!? チナ――」

 

「風紀委員の火宮(ひのみや) チナツです!! 今すぐ犯罪行為をやめ、武器を捨ててください!!」

 

 どこからか取り出した風紀委員の腕章をつけ、ヘルメット団に立ち向かうチナツ。

 当の犯人たちの大体は怯んだものの、そのうちの一人が冷静だった。

 

「風紀委員? ふーん。 でも今、委員長の空崎 ヒナはいないんだろ?」

 

「――っ!!」

 

「それに今なら他の風紀委員もいないだろ? いたら今頃、囲まれてるはずだもんなぁ?」

 

 真っ黒なバイザー越しでも分かるくらい、声に余裕があった。

 そして、その言葉に、他の団員の動揺も収まってしまう。

 

「風紀委員には、今まで散々コケにされてきたからなぁ……」

 

 団員たちが、チナツに向けて銃を構える。

 いくらチナツが風紀委員でも、この戦力差じゃ……

 

「――たっぷりお返しさせてもらおうかぁ!!」

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