「――セキ!! ヘチマ!!」
「うん!!」
「ほ~い」
二人が力を合わせて、テーブルをヘルメット団に投げつける。
「な、ぁっ!?」
突然のことに怯んだヘルメット団。
「チナツ!!」
「――えっ、あ……」
その隙にチナツの手を引き、ヘルメット団の対角線上に避難する。
本当は逃げたかったのだが、入り口は、そのヘルメット団に塞がれて使えない。
裏口もあるだろうが、従業員でもないため、場所が分からない。
なにより、
「ッックソがっ!! ナメやがってナメやがってナメやがってぇぇぇ!!」
もはや狙いなど一切付けずに乱射される。
近くのテーブルなどをバリケードとして使うが、いつまでもつか……
「チナツ? チナツ!!」
「あ……すみません、その……」
そして、自虐するように呟く。
「――あらためて、風紀委員の見られ方を……委員長の偉大さを思い知りました……」
たしかに、これが空崎 ヒナ委員長だったなら、犯人たちも投降した可能性はあった。
だが、今はそんな事を考えている場合ではない。
「……チナツ、考えるのは後。今はここを切り抜けよう」
「……はい」
暗い表情のままだったが、やるべき事は理解してくれたようだ。
「でもどうする~? 結局、多勢に無勢だよ~?」
「まともに撃ち合っても、勝ち目ないよ……」
それはそうだ。
正面からいくなど、負けに行くようなもの。
だから。
「だからこそ正面から行くよ」
「な……何を考えているんですか、カナメ!?」
「もちろん、このまま突撃なんてしない。セキ、ヘチマ」
これは賭けだ。
そもそも戦いなんて詳しくない私に、この状況を打開する策なんて思いつくわけがない。
だから。
余計な策で勝率を下げるくらいなら。
「さっきみたいに、あいつらにテーブル投げつけて」
「え……で、でも、さすがに……」
「同じ戦法は対応するんじゃないかな~」
「――承知の上、だよ」
私はもう、腹をくくった。
失敗する公算は高い。
だが。
今回は自分の事だけじゃない。
友達の安全が掛かっているのだ。
「二人とも、手榴弾はあるよね」
「……ま、まさか……」
「ま~……やれって言うなら、やるけど~……」
私のやりたいことを察した二人は、少し躊躇したようだが、承諾してくれた。
「チナツ」
「? は、はい……?」
「骨は、拾ってね」
「――え」
「――いくよ!!」
私の言葉と同時に、セキとヘチマが指示通りに動く。
投げつけられるテーブル。
それと同時に。
私は地面を蹴った。
「――ッ!! 何度も同じ手に――」
ヘルメット団は銃を持ち直し、振り上げると――
「――かかるかぁ!!」
銃のストックを思い切り、飛んでくるテーブルに叩きつけた。
テーブルは真っ二つに砕け――
「ん、なぁっ!?」
そのテーブルの欠片を弾き飛ばしながら、私はヘルメット団に肉薄する。
周りの団員は呆気にとられたようで、私を撃っては来なかった。
「――く、そ……!!」
慌てて銃を持ち直そうとするが。
――私の方が早い。
「ッおらぁ!!」
懐に飛び込んだ私は、そのまま体ごと垂直に飛び上がる。
バギィッと音を立てて、敵の顎が跳ね上がった。
「んが、ハァ……ッ!?」
間髪入れずに跳ね上がった顎にショットガンの銃口を突きつけ、引き金を引く。
ズガァン!! という爆音とともに、顎に散弾が撃ち込まれた。
「ごばぁっ!!」
衝撃をもろに受け、身体が一回転し、頭から地面に落下する。
「……っ!! う、撃て!! 撃てぇ!!」
無防備な背中に、無数の弾丸が突き刺さる。
全員の注意が私に向けられたこの瞬間。
これこそ、私が欲しかった時間だ。
「ぐ……がぁっ!! セキィィィ!! ヘチマァァァ!!」
痛みに耐えながら二人の名前を叫ぶ。
その次の瞬間、
――ゴトンッ……
重い音を響かせ、いくつも転がってくる。
その緑色の、デコボコした表面の物体は――
「――っ!? しゅ、手榴だ――」
私を撃つことに意識が向いていたヘルメット団。
気付いた時には、もう手遅れ。
退避も間に合わず、ヘルメット団は全員手榴弾の爆発に呑まれた。
――もちろん、その中心にいた私ごと。
「ご、ほ……」
私は生きていた。
ただ、もう自力で起き上がる気力は……いや、指一本すら動かす気力も無かった。
どう、なっただろう。
上手く行っただろうか……
――ザッ……
耳元に、足音が響く。
この身体になってから異常なほど耳が良くなった私には分かる。
……この足音は、知らない人物のものだ。
「て、めぇ……よくも、やってくれやがったな……!!」
この声は知っている。
私がショットガンで顎を吹き飛ばしたヘルメット団員だ。
……悪運も、ここまでか。
「てめぇは、絶対ぶっ殺し――」
――バゥン!!
銃声。
だが、痛みも衝撃も来ない。
これは……
「っがぁぁ!?」
この銃声は知っている。
――風紀委員の訓練の時に、何度も聞いた音。
「――大人しく武器を捨ててください」
チナツの、銃。
「っクソがぁ!! たかが一人の風紀委員と、ワケの分かんねぇゲヘナどもに負けるかぁ!!」
「――鎮圧します」
数回の銃声が響き、人が倒れる音と振動を感じる。
そして再び、足音が近づく。
今度は、よく知ってる音。
「カナメ」
名前を呼ばれ、抱きすくめられる。
ポタッ……と、一つの雫が落ちてきた。
「よかった……っ!!」
ギュウッと抱きしめられ、耳元ですすり泣く声が聞こえる。
あぁ。
感動を分かち合いたいのに。
私の意識は、闇に沈んでいった……